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侵入者を歓迎しよう。2

(残酷描写ありますよ! ホントですよ!)

 螺旋階段の段の数だけだと適当な数字を言って行けばいつか正解してしまうが、底の扉の色を合わせて追加することで……上からは見えないので、降りなければ分からない、という寸法だ。


『ダンジョンの奥に行かなければ解けない、と……これは誘われてるな』

『くそ、油断しすぎたか。前の『ただの洞窟』とは大違いだって分かってたはずなんだが』

『おい! 死にたくなければ気を引き締めろ! ここはもうEランクダンジョンじゃねぇ――Aランク級ダンジョンに迷い込んだと思え!』


 おっとしまった。相手に気合いを入れさせてしまったようだ。

 ……ま、ちょうどいい。こちらの性能を試すには本気を出してもらった方が良いもんな。

 そうこうしているうちに、騎士団チンピラは『螺旋階段エリア』に進んでいく。吹き抜けで、板状の足場が壁から螺旋状に生えているという螺旋階段だ。そこを一段一段、落ちる足場ではないかを確認しているな。……その懸念は正しい。ここの足場に人の重さで落ちる足場になっているものがある。


『落ちる足場が混じってる。踏み込むなよ』

『ああ。慎重に進もう。……落ちる足場も数えるのか?』


 一段一段確かめて、ゆっくりと降りていく。そのまま降りさせるわけないけどな。


「さ、レイ。キヌエさん。ネルネ。……敵が『螺旋階段エリア』に入ったぞ。――押せ」

「「「了解しました、マスター」」」


 この螺旋階段エリアは、吹き抜けになっている。それはカッコいいから、という他に、ちゃんと理由がある。

 そこに仕込んでいるのは分厚い――とても分厚く、階段の幅を超える――石壁ゴーレムだ。

 そして吹き抜けの螺旋階段を降りている騎士団(チンピラ)にむけて、壁に埋まっていた石壁ゴーレムがせり出す。その結果起きる現象は、つまり、


『うわぁ?! は、早くいけ! トラップだ!』

『ちょっ、ま、後ろ戻れ!』

『馬鹿、こっちも……ひ、うわぁああ!』


 押し出されて落ちる。簡単な話だった。落ちる足場に気を取られすぎて逃げ遅れた4人が、石壁ゴーレムに押し出され、吹き抜けを落下していった。……階層にして、地上第2層から地下第3層まで。降りている最中だったとはいえ、4階分の高さの吹き抜けを最速で突きぬけてしまった4人は、床まで到達したところでモザイク必至の赤いシミとなった。

 手に入ったDPはEランク冒険者4人分程度。……ふむ、閉じ込めた状態で始末しても倍にならないようだな。


 しっかし……うわぁ、予想以上にヤバいなこれ。この世界に来てから山賊を皆殺しにしてるし、今更罪悪感はない。が、見た目的な問題でヤバい。鎧の質量とかもあるんだろうけど4人とも見事に頭から行ってはじけた。グロい、深夜アニメでも黒く影に隠すレベルだ。うぇっぷ、今日は肉食べられないな……。


『チッ、4人も食われたか』

『どうする、戻れないぞ』

『…………いや、見ろ。もう壁が戻ってる。……さっきはいきなりで驚いたが、出てくる速度はそれほど速くなかった。それに出てくるにもスキマがあった。一気に駆け抜けるか、出てきた壁をよじ登ればいけるだろう。壁に追われるように下まで降りちまったが』


 ……残り、6人。さすがに隊長格は無事のようだ。

 死体から無事な装備と金目のモノを回収している。すごいメンタルだな、見習いたいところだ。


「すみません、4人しか落とせませんでした」

「いや、このくらいでちょうどいい。むしろよく4人も落とせたな。……あと6人。戦闘訓練に付き合ってもらおうか」


 俺は、螺旋階段の上の方に、ハニワゴーレムを設置した。ノーマルで、元々ボスだったけど一度も出番がなかった悲しい存在だ。騎兵であるハニワゴーレムに、ゆっくりと足音を立てさせて、螺旋階段を降らせていく。


『お、これが底にある扉、か。赤色だな。よし、戻るか。階段の数は?』

『……160段だったな。底と一番上を含むかどうかで数が……まて団長。何か降りてきてる。少なくともユニークレベルだろう』

『上からか? どこから出てきた? ……やれるか?』

『分からん、初めて見る形だ、未知数すぎる。警戒してくれ』


 ハニワゴーレムは、ゴーレムの馬に騎乗している鎧ゴーレムだ。顔がハニワ。俺の安眠を守る兵士というコンセプトのゴーレムだ。

 これを普段はオートで勝手に動くように徘徊させているのだが、今はニクが指示を出し、操縦している。


「ではまずわたしがお手本をみせますので、見ていてください」


 一段一段、丁寧に階段を下りていたハニワゴーレムだったが……生き残りの6人が戦闘態勢を整えると同時に吹き抜けを飛び降りる。

 本当なら気付かれる前に奇襲するべきだろうが、今回はレイたち新人のゴーレム操縦訓練のため、いまやすっかりベテラン操縦士となっているニクにお手本を見せてもらうことにした。


 馬部分の足を十分に使って着地の衝撃を消し、そのまま背中の魔剣ゴーレム薙刀をすらりと、滑らかな動きで構える。普通の人間より1.5倍くらい大きな鎧ゴーレムと、それに合わせた馬ゴーレム。このサイズ差はなかなか威圧感があった。


 武器を持った6人に囲まれているものの、ゴーレムに動揺はない。後ろに目があるかの如く――実際、モニターで見ているので死角はなく――じりりと動くことも許さない張り詰めた空気だ。


「いきます」


 ニクのつぶやきは、俺達に向けてのものだった。次の瞬間、弾き飛ばされるように馬ゴーレムだけが飛び出し、1人を壁に弾き飛ばした。それに数瞬だけ遅れて、着地した鎧ゴーレムが膝の高さで薙刀を振るう。

 馬ゴーレムの突撃に驚いて反応が遅れた2人の膝から下が、すっぱりと切り払落とされ、滑るように地面に転がり落ちた。


『いでぇえええ!! 団長! 助けてくれぇ!』

『逃げろ! ッ、階段をふさがれてる、奥へ!』


 ハニワゴーレム――ニクが狙っていたのは、階段を封じること。馬ゴーレムが突撃した一人目。気絶していて、馬ゴーレムが踏みつけているそいつは、階段の前に陣取っていた。さらにそれを守るように薙刀を構えて睨みを利かせる鎧ゴーレム。

 逃げ道を封じる。……それと同時に、一瞬で3人を行動不能にする。

 DPがまだ増えていないところから、まだ殺していない。そして、新人の戦闘訓練用に半数を残しておく。俺の注文を完璧に守った、素晴らしい仕事だった。

 残った3人は、ゴーレム倉庫に逃げ込んでいった。


「……パーフェクトだ」

「ありがとうございます、ご主人様」


 ……っつーか、あれぇー?! 馬ゴーレムってあんな早く射出するような動作ってできたっけ?!

 一応ギアを使って出力を犠牲にある程度早く動かせるようにはしたけど、ちょっとニク、今のどうやったの? ねぇ?!


「全身を、流れるように体重移動させ、すべての関節を同時に最大まで稼働させます。そして上にのってる方でも蹴りだすことで、さらに加速をつけることでこの速度に……ロクコ様と練習しました。これはロクコ様もできる技です。やはりボスともなればこのくらいできるべきでしょう」


 なので覚えてくださいね、と新人3人に説明するニク。

 いつの間に……って、俺が寝てる間か。俺が一番ゴーレムをうまく使えると思ってたんだけどそうじゃなかったらしい。


「あの3人、それと残りはどうしますか、ご主人様」

「……ゴーレム倉庫に牢屋を併設する。無力化したやつはそこにぶち込んでおけ。死ぬまで適当にDPを搾り取らせてもらおう。……残りも戦闘をしながら指定のポイントまで追い立てろ。けど倒すなよ、倒されるのはいい。色々なゴーレムがあるから、色々試してみろ」

「「「はい、マスター」」」


 ゴーレム倉庫エリアの廊下をひたすらに追い回すアイアンゴーレムとストーンゴーレム。そいつらは動物の形だったり、手が4本だったり4脚だったり、武器が弓矢だったり槍だったり、ひたすら通常のゴーレムにはない特徴があった。


『くそっ、くそっ、なんだこのモンスターは、どうなってんだ、何だってんだ、俺らが何をしたってんだ!』

『こっちだ、こっちの方が手薄だ!』

『ひぃ?! 針山?! うわ、くるな、くるなァアア?!』


「この4脚ゴーレムは、遅いですがどの体勢でも安定して弓が引けます」

「箒が武器のゴーレムは戦闘には向かないですね」

「へー、ハリネズミゴーレムとか走るだけで威圧になるんですねー、らくちんですー」


 俺は、試作で色々つくったゴーレムを3人に好きに使わせて指定のチェックポイントを通過させる。

 そのポイントには、


『うわっ、ひ、網だとっ くそ、とれないっ』

『引きはがすぞ!』

『いぎゃああああ! ぐ、くそ、針がついてやがるッ』

『おい、後ろきてるぞ! はやく!』

『うわああ! アイツが、アイツがきてやがるッ!』


 罠を仕掛けたり、ハニワゴーレムを回り込ませたりだ。追いかけ、追い立て、ひたすら走らせてやった。


『はぁ、はぁ、くそっ、こっちだ……こ、ここはッ』


 そして、最後にたどり着かせたのは螺旋階段の部屋。唯一の帰り道だ。


『別の部屋、じゃないな……だがあいつらの死体が無い。もう消えたのか』

『このダンジョンはおかしい、ヤバイ』

『生きて帰るぞ……ッ 階段の数、もう一度数えろ! 数え間違えるなよ! 壁にも気を付けろ!……ッ! ヤツだ、ヤツがきてるうぅぅいそげぇえぇえ!!』


 ダメ押しでハニワゴーレムが追い立てる。かつーん、かつーん、と、ゴーレム特有の堅い足音を立てて、一段一段。

 壁は出さずに素直に登らせてやる。崩れる足場はそのままだったので、ズリ落ちそうになっていたが。


「マスター、いいんですか? このまま帰らせても?」

「いや、帰すわけないだろ。……このまま返したら、ウチのダンジョンは初心者御用達から要警戒ダンジョンになっちまうからな。……ちょっとイタズラを仕込んでみたから、楽しんでくれるといいんだが」


 そして、謎解き部屋へたどり着く生き残り3人。


『謎解きだっ、ヤツが来る前に早くっ! 段は数えてたか?! 俺は160段!』

『俺もだ! 160!』

『160! 扉は赤!』

『よし、回答する……ぞ……?』


 動きが固まる3人。その視線の先には、謎解き問題があった。

 しかしそれは、階段の段数と扉の色を答える問題ではなく。


『……「特別に答えが『簡単』な問題にしました! 25+39は?」……だと? なんだこれは……』

『問題が変わってる?!……だが、さすがにこれは俺にもわかるぞ、66だ!』


 団長がそう答えた瞬間、部屋の床が落とし穴に替わった。

 ……落ちる瞬間『なぜだ?!』って顔してたけど、そこ間違えるとかこっちも予想外だよ。





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― 新着の感想 ―
[一言] なぞなぞっていざどんなのがあったか思い出そうとしても思い出せないよね
[一言] はに丸君としんべいかな?
[一言] 隊長の命がけのボケ! 吹き出しました。 そうきたかぁ!?
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