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温泉

 宿建設4日目。

 木材も十分だし、イチカにはニクと模擬戦してて貰おう。

 布の服ゴーレムバージョン2こと、メイド服ゴーレムに身を包むニクとイチカ。

 武器はそれぞれ木で小刀と包丁を用意した。形だけだけど。


「うぉっ?! なんやこの服、力全然入れてないのにすごい力やな……へぇ、ニク先輩の強さの秘密はこれかぁ。確かにこれがあれば見かけによらない運動性能と、思い通りの動きが出来そうや」

「ご主人様のためにも、いろんな動きをためすのです」


 俺の役目は模擬戦を見ること……といっても、正確にはメニューからモニター開いて録画することだ。

 あとは通常ゴーレムより人型に近づけて作ったマネキンゴーレムに、俺の服を着せて録画した動きの反復練習を代わりにしてもらえば、動作アシスト機能完備の布の服ゴーレムが完成する。

 いちいち自分でモーション作らなくていいってのは楽だなぁ。これがロボットだったらいちいち自分で足の角度とか腕の角度とか決めてプログラム書かなきゃいけないもんなぁ。


 しっかし俺が何もできなくても二人が強ければ大丈夫とか、パーティーランクってほんといい救済策だ。そもそも俺は冒険者をやりたいわけじゃない、ただ気持ちよく寝ていたいんだよな。


 それなのに最近なんだかんだでずっと働いてる気がする、解せぬ。


 よーしそれじゃあ張り切って休むぞー。と、宿の外で模擬戦をしている二人を録画しつつ俺は宿の自室にお布団を敷く。


「ケーマ! 地下水源を掘り当てたわ! しかもあったかいやつよ!」


 ……休もうとした矢先にこれだよ。

 いやいいんだけどね、温泉見つかったんだし……


「じゃあさっそく温泉のほうに引き入れるか」

「ところで温泉ってどういうのなの?」

「温かい池だな。入ると気持ちいい。血行が良くなって健康にいい」

「へー、それ、私も入っていいのよね?」

「いいけど、『浄化』も必要なく不眠不休で動けるダンジョンコアにも効果があるかは保証しないからな?」

「私がオーナーなんだから、そこのところちゃんと確認したいじゃないの!」


 きゃっきゃっとはしゃぐロクコ。

 やる気があるのはいいことだ、俺の代わりに頑張ってくれ。


「あ。ただし温泉の質によってはとても臭かったりもするな」

「くさいの?! ニンゲンってかわってるのね、臭いお湯に好んで入ろうだなんて……『浄化』でニオイ落ちるのかしら?」

「…………」


 うんごめん。正直、温泉でひとっぷろ浴びたら気持ちよく寝られるだろうなー、としか考えてませんでした。

 硫黄のニオイがいいという人もいるけど、卵の腐ったような刺激臭と表現されるだけあって慣れない人にはかなりキツイよな……。

 ……硫黄泉だとしたら武器とかに悪影響ありそうだし、冒険者向けの宿としては微妙か?

 まぁ、実際の温泉がどんなもんか確認してからだな、


  *


 温泉を掘り当てた場所は地下100m地点だった。思っていたより浅いところで見つかったな。

 温泉の水源の空間をダンジョンとして設定し、お湯を少しだけ「回収」してウッドゴーレムで作った桶に入れる。(温泉にはやっぱり桶だよね、ってことで気合いを入れて作った一品だ)


「……透明だな。温度も結構高いし、臭くもないな」


 さすがにこのまま「味も見ておこう」とはいかないが、そのまま飲めそうなくらいである。

 ん? まてよ、そういえばイチカは毒見が得意だと言ってたな。

 飲んでみろとまでは言わないけど、毒がありそうかどうかくらいは分かるかもしれない。


「イチカ、模擬戦を一旦中止してこっち来てくれ」

「ん? わかった、すぐいくわ」


 窓の外でニクと模擬戦をしていたイチカを呼ぶ。すぐにやってきた。

 とりあえず俺は桶とその中のお湯を見せる。


「このお湯について見てもらいたいんだが、毒とか大丈夫かな」

「ん? どれどれ」


 イチカは桶を手にとり、そしておもむろに桶に口を付けてぐいっと飲んだ。


「ちょっ、イチカなにしてんだ?!」

「ぷはぁー。 あ、これであと2時間くらいしてウチになんともなければ毒はないと思うで!」

「毒が入ってたらどうすんだよ!」

「あー、大丈夫大丈夫、悪くてもせいぜい腹下す程度や、そのくらいはニオイと見た目、あと味とのどごしで大体分かるわ。……くふふ、心配してくれたん? ありがとうなぁ♪」


 照れくさそうにニコッと笑うイチカ。


「……お、おう。ちょっと心配したじゃないか。もし死ぬような毒だったら銀貨50枚がパァだからな」

「そかそかー、ウチもこうやって献身的に仕えて仲良ぅしとけばそのうち奴隷解放してくれるかもしれないっちゅー考えがあるからなー」

「……生憎だけど、ダンジョンの裏側に関わった以上奴隷解放は無理だな」

「それでもええで、ご主人様は美味いモン食わせてくれるからな。んじゃ、模擬戦に戻るわー」


 イチカは笑いながら手をひらひら振って外へ出て行った。


 2時間後、イチカは問題なくピンピンしていた。お湯に問題はなさそうだ。

 ……いや、まさかいきなり飲むとは思わなかったよ。ホント。びっくりしたわぁ。


  *


 温泉にお湯を張ってみた。湯気がすごいな、まだ熱そうだ。

 俺は温めの湯で長風呂するのが好きなんだよな。あとでゆっくり入るとしよう。


 と、これにて温泉もできたので、ついに宿の完成だ。


 湯の入れ替えや何かあるたびに毎回俺かロクコが「回収」でお湯を補給しなければならないのも面倒なので、将来的には直径30cmのドリルゴーレムが掘り進んだ跡をそのまま配管として温泉をくみ上げるのに使うとしよう。ゴーレムが掘り進んだ跡は既にダンジョンの壁となっていて、崩れる心配もないからな。

 今はまだDPに余裕がないのと、ポンプを作るにはゴム素材が欲しいのとで検討中。しばらくは「回収」で、ストーンゴーレム製のタンクにぶちこんで、冷めないように溜めたお湯を使うようにしておけばいいだろ。なんならファイヤーボール打ち込んで沸かしなおせばいいし。


 温泉掘りを含めて宿に費やしたDP消費はおよそ5000DP。

 水道として宿には『水源(1000DP)』も設置してある。主に温泉掘りが4000DPだ。……あれ、これ普通に『水源』の水をなんかの熱で温めるほうがはるかに安く済んだんじゃ……いや、天然温泉が手に入ったんだ、良しとしようじゃないか。

 DPで家(20万DP~)を建てるよりはるかに安上がりに仕上がったが、残りDPは約15000……いや、そろそろ細かく出そうか。

 残り16390DPだ。ダンジョン地下4,5階の分のとりおきと、前にロクコに自由に使っていいと渡した分は除外してある。

 また収支をこまかく気にしなければ……ああやだやだ。早く儲けて寝て過ごすんだ。


「で、ケーマ。この温泉っての、どうやって使えばいいの?」

「うん、まず服を脱いで、体を洗ってから入るんだ」

「……服を脱ぐの? 流石に下着姿は恥ずかしいわね……ああ、だから壁で囲って中が見えないようにしてるのね」


 ロクコが感心して頷いた。


「いやまて、下着も脱ぐんだぞ?」

「は?」

「風呂には服着てはいったりしない……これは常識だ」

「ちょっとまって。……これ、一人で入るんじゃないのよね? ニンゲンはそういうの平気なの?」

「…………そうだな、文化の違いを忘れてたよ」


 今更ながらお風呂についてイチカに尋ねる。おしえてイチカせんせー。


「んー、たしか帝都に風呂屋はあったな。そこだと簡単な服に着替えてからはいるかな」

「体洗うのが大変そうだ……いや、浄化があるのか……!」


 くっ、せっかく身体洗うスペースもちゃんと作ったというのに!

 先に聞いておくべきだったなぁ、……それぞれで蛇口とかシャワー(ホースなしの壁設置型)とか作ったのに……無駄に凝ったのが逆に哀愁を誘うぜ……


「……全裸はないんだ?」

「あー、えーっと……勇者が残したっちゅーとある風呂屋では全裸にタオルまで可、やったかな? ……まぁ、それは勇者様の趣味やし、宿の参考にはしない方がええよ」

「……分かった、それなら着衣可としよう……湯浴み着を推奨として宿で売るか貸出しだな」


 まぁ、とりあえず温泉については俺が入りたかっただけだから、それでいいか。


「あ、ウチやニク先輩なら奴隷やし、全裸で一緒にはいっても問題ないで? どない?」

「……いちおう男湯と女湯分かれてるから。あ、イチカ。ロクコとニクに風呂の入り方教えてやってくれ、女湯でな」


 いや、見たくないわけじゃないんだけどね。足とか脚とか気になるけどね。

 大浴場のほかに、最初から服着たまま使える『足湯』も作ったからそっちで見させてもらうよ。フフフ。


残っている書き溜めは あと1話分。

せめて日間ランキング5位以内に載っている間は毎日投稿したいところだったんですけどね…どうしてこうなった。

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