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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

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第89番ダンジョンコア

次回がちょっと短めです。
「で、丁度、89番姉さまに今までのことをお話ししてたとこなのよ。ケーマのことも話してたところ」
「よし、ロクコ。ちょっとこっちに来なさい。……失礼、少し借ります」

 一言断りを入れてからロクコを引っ張り、こそこそ話す。

「……どこまで話したんだ?」
「えーっと、今ちょうど山賊倒したとこの話してた。あ、『めろんぱん』ごちそうしてあげたらとてもおいしいって喜んでくださったの!」

 キャー、と、憧れのお姉さまに喜んでもらえてうれしい様子のロクコ。
 俺はゴチっと頭を殴りつけた。

「痛い! 何すんのよ!」
「いいか、これ以上余計な情報を漏らすんじゃない。敵かもしれないだろ。……特に、ゴーレムのことは絶対話すなよ」
「う、分かった……けど、89番姉さまが敵なわけないじゃない」
「……お前にゴブリンを出すだけの浅はかな戦法を教えたのは誰だ?」
「……89番姉さま」
「1部屋でモンスターいっぺんに出すのが強いって教えたのは?」
「…………89番姉さま」

 うん、つまりは、そういうコトだ。
 89番ダンジョンコアは、ロクコを『ダンジョンとして成長させなかった』のだ。
 ……その一方で自分はダンジョンかなんかのランキングで上位になっている。
 そこには確実に何らかの意図があり、これからの俺たちにとって邪魔になる可能性がある。
 いや、俺たちが邪魔になった場合に排除される危険性が高い。

「ねぇ695番ちゃん。内緒話、まだかかりそう? そろそろ私も混ぜて頂戴?」
「は、ひゃいっ! 今行きます89番姉さまっ」

 それでも89番ダンジョンコアに呼ばれて、ロクコは嬉しそうにしていた。……マスターとしての絶対命令権がなかったら絶対ボロだすな、こいつ。いや、無意識でぽろっと、とか十分あり得る。

「それで、山賊は結局どうなったの?」
「え、えっと……」

 ちらっと俺の方を見るロクコ。話していいかどうか分からないのだろう。
 代わりに答えてやる。

「……ええ、見ての通り、居なくなりましたよ」
「騎士団が綺麗に片づけてったのね。うん、よかったわ……で、どれくらいDPになったのかしらね? 報告から見ると、1万くらいじゃないかと思うのだけど」
「報告? ……失礼、俺はあなたのことをよく知らないのですが、どういう事です?」
「ああ、この世界のニンゲンではないのでしたね。……自己紹介からしましょう」

 89番ダンジョンコアは、すっと姿勢を正し胸に手を当て、凛と通る声で名乗る。

「私は第89番ダンジョンコア。……マスターからは、ハクと呼ばれています。ニンゲンは番号呼びよりこちらの方が一般的でしょう、ハクで構いません。ラヴェリオ帝国の首都において『白の迷宮』を運営しています。……第695番ダンジョンコアの姉です、以後お見知りおきを」

 にっこりとほほ笑む89番ダンジョンコア。……ハクでいいとのことなので、ハクさんと呼ぶことにしよう。

「……これはご丁寧に。私は増田桂馬と申します。ケーマとお呼びください。僭越ながら妹さんのダンジョン『ただの洞窟』にてダンジョンマスターを務めております。以後よろしくお願いします」
「あら、礼儀正しいのですね、感心しました」

「わ、私も自己紹介した方がいいのかしら?! 第695番ダンジョンコアとしてっ」
「お前は別にいらんだろ……と、そうだ、そういえば冒険者が来るぞ、対策しないと」
「あら、それは……もしかして、コレが情報源かしら?」

 ハクさんが胸元から『ただの洞窟』の調査依頼票を取り出す。

「……それは……」
「私、こうみえてAランク冒険者としての顔ももっていまして、ちょっと使いました。我が国の騎士団から『ただの洞窟』について報告をうけて、いてもたってもいられなくなったのですよ」
「……一応2人以上、とのことでしたが」
「Fランク2人がAランク1人に勝てる道理はありませんわ。まぁ、一応こちらの……彼女はサキュバスのクロウェで、ともにAランク冒険者ということになっておりますわ。私と彼女のペアで受注しました」

 紹介されてスッと頭を下げるクロウェ。執事服が実にサマになっている。
 やはり男装の麗人だったか。モンスター、こういうのも居るんだな。
 しかしサキュバスにしては胸が残念なのではないだろうか……ハクさんの方がサキュバスと言われたら納得するぞ俺。清純派サキュバス。清純派AV女優よりは現実味があるのではなかろうか、ファンタジー世界においては。

「なので暫くは……半月ほどは大丈夫ですよ、ケーマさん」

 手のひらの上ですよ、と言わんばかりに、にっこりと微笑むハクさん。……確かに、今すぐ侵入者が来るということはなさそうだ。目の前の二人を除いて。

「そうだ、ケーマさん。単刀直入にお聞きしてもよろしいですか?」
「何でしょうか」
「あなたは、神の先兵ですか?」

 神の先兵……えーと、どうなんだろう。この世界に来るとき、神様になんか言われたけど別に先兵ってわけじゃないよな……

「神様とやらにはお会いしましたが、……特にそれらしい事は言われていませんね」
「そうでしたか。失礼、嘘を判別する魔法を使っておりました。どうやら本当のようですね……異世界からの召喚者と695番から聞いて、ずっと気になっていたのです」
「……すみません、神の先兵、とは?」
「異世界より召喚され、神の意思に従いダンジョンを破壊する者です。……私が倒した者は『ダンジョンがマナの循環を阻害する存在だから』と言っておりましたね。こちらでは勇者とも呼ばれていますよ」

 あ、俺先兵かもしれないわ。やる気ないから違うけど。

「さて。……少しケーマさんと二人きりで話したいですね。ちょっとよろしくて? ああ、695番ちゃんはクロウェと待っていてもらえるかしら」
「は、はいっ」
「かしこまりました、お嬢様」

 俺はハクさんに連れられてロクコ達と離れる。ニクも一緒に置いてきた。
 ……非常に危険な気がする。ハクさんが立ち上がって気が付いたが、この人の足すっごい綺麗だ。やばい、危険とわかっているのに目が足を追ってそのまま付いて行ってしまう。薄布のスカートごしに足のラインが垣間見えて、ヤバイ。スカートの中直接見たい。靴を脱がせてじっくり観賞したい。

「……さて……」

 十分離れたところで、ハクさんが俺の方を向く。たったそれだけなのに綺麗だと思うあたり、ロクコが憧れるのも分かる気がした。
 そして、そのまま言った。

「ダンジョンマスターをやめてくださいます?」
「それは困ります!」

 こっちの世界の布団はひどく質が悪かった。到底許容できるモノではない。
 まず『オフトン』、そしてそれ以上の寝具を手に入れるためにもダンジョンマスターを辞める気はない。

「というかあなた、私のかわいい695番ちゃんに何してるのよ。よくもあの子を汚してくれたわね、マスターを辞めないって言うなら、絶対服従権破棄した上で今すぐ自害なさい」

 それって結局ダンジョンマスターやめろってことだよね?

「……おっしゃる意味がわからないのですが……まぁ、絶対服従権は破棄してもいいですが自害はちょっと」
「あら。殊勝な心掛けね。でも、本当に破棄するのかしら?」

 うん、絶対命令権については思うところもあるので、破棄したいと思っていた。
 夢で見たことだが、俺が「ゴブリン5匹だけだせ、他はするな」と言ったら、たとえコアを壊される事態になっても何もできなくなるのだ。だから、少なくともある程度は自分で判断して自衛できるようになってもらいたい。

「どうせ695番ちゃんにいやらしいこと命令してるんじゃないの? その上で都合の悪い記憶を忘れるよう命令したり……くっ、やりたい放題じゃないの! これだからニンゲンは!」
「ちょっとまて言いがかりだ!」
「ふん、どうかしらね。『少しずつ俺のことを好きになってくれ』とか『結婚してくれ』とか命令して私のこと好き放題する種族よ、あいつが死んでようやくそのことに気が付いて……ニンゲンは信用ならないわ。695番ちゃんにもそれをしっかり教えておいたはずなのに……ッ」

 ああ、そういう事があったのね。……言った方、無意識だったんじゃないかそれ。

「……無理矢理とか趣味じゃないので、さっさと破棄しましょう」
「そう、なら私の目の前で……ん、ちょっと待ちなさい。それはつまり、絶対命令権が無ければ趣味であるということよね……? 695番ちゃんに何する気?!」
「想像力豊かですね?!」

 もはや言い掛かりレベルである。

「まぁいいです。……こちらからも一つ確認させてください。ハクさん。あなたはロクコの敵ですか?」
「何言ってるかわからないわね。私に695番ちゃんの敵になる要素なんてないと思うけど」

 ……そう来ますか。

「……ロクコにあのような戦術を教えてたのはなぜですか?」
「あのような? 色々教えたけど、どのような戦術かしら」

 俺は、ひとつずつ確認するように尋ねた。

「では、ゴブリンを出すようにさせたのはなぜです?」
「このダンジョンで呼べる中で、一番効率が良いモンスターだからです。強いモンスターを呼んでも、維持費がまかなえないでしょうし」

 確かにそうだろう。効率は良い。

「DPの限り、一度に多く出すというのは?」
「数が多い、というのはそれだけで脅威ですよ。それに、コアに危機が迫った時にDPの出し惜しみをするコアはいません」

 確かにそうだろう。死にかけて余力を残すなんてことは普通しない。

「部屋を作るより、モンスターを配置した方が強い、っていうのは?」
「部屋を作ってもそれだけでは侵入者を倒せないでしょう? モンスターを作ったほうが仕留められるのは事実ですよ」

 確かにそうだろう。いくら部屋だけあっても、武器がなければ倒せない。

「それならトラップを教えなかったのは?」
「一度攻略されれば無効になるようなものですからね。小さいダンジョンですし、設置できる数に限りもありますから。何度も使えるようなものは高いですもの」

 確かに……と、そろそろいいだろう。
 それらは確かにこのダンジョンの前提がある限り、正しいアドバイスだと言える。
 だが、その前提がなくなれば途端にほころびが見えてくるアドバイスでもある。

「ダンジョン側の条件をそろえた方法は分かりました。では、どうやって人から見て『安全で無害なダンジョン』に仕立て上げたんですか?」

 そう。これらの条件は『人に管理されたダンジョン』である必要がある。
 そうでなければ、ゴブリンを蹴散らされた時点でダンジョンコアを破壊されて終わりの、ただのダンジョンコアの置いてある洞窟だ。

「あら、分かってるじゃないの。……簡単よ。帝国も、冒険者ギルドも私が作ったものだからね」

 うすうす気が付いてたけど、やっぱりお偉いさんだった。
 あ、ダンジョンコア以外としても、っていう意味でね。

今回で10万文字いきました。
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