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帝都観光(7)

 ばかめ、ダンジョンマスターが正面から戦うわけないだろ。

 さすがに土台がひっくり返ったらいくら踏ん張ったところで関係なかったな。


「よーし、勝ったぞ」

「さすがケーマ、ずるい。卑怯な勝利なら右に出る者はいないわね」


 笑顔のロクコ。褒めてんのかそれ。褒めてんだろうな。ダンジョンマスターに卑怯とかずるいは褒め言葉だもんな?


「……あらあら、負けちゃいましたねミーシャ?」

「いやその! さすがに今のはずるいですよね?!」

「一歩でも動いたら負け、で、ミーシャは一歩以上動いたじゃない。これ以上ないほど立派な負けでしょうが? そもそもルールを聞いた時点で土魔法を警戒しない方が悪いのです。ふふ、これで知将とは片腹痛いですねぇミーシャ?」

「うわあん……」


 ミーシャが泣こうが、ハクさんの判定は覆らなかった。


「それじゃ、666番コアのことについて、ね。何が聞きたいのかしら、答えられる範囲で教えてあげるわよ」

「それじゃ早速。666番コアって何型のダンジョンコアなんですか?」


 俺が聞くと、ハクさんはんー、とすこし思い出すように目をつぶった。


「んー、人化してるから正体はうろ覚えね。とりあえず魔王派閥だし、物質系か悪魔系かしら」

「物質系、っていうのは?」

「うちにもリビングアーマーが居るけど、ああいうのよ。ほかには偽宝箱(ミミック)とかもね」


 そういうものか。なら、ダンジョンバトルではやはりそういうのが出てくることを想定した方がいいか。


「そうねぇ、あとはロクコちゃんも知ってる情報になるけど……赤髪で、燃える魔剣を持ってるわ。そして、今回の勝利条件の『ダミーコアの破壊』。タッチではなく破壊を条件にしたのは666番よ」

「そうそう。そういえばそうだったわ。きっと何かしらぶち壊したかったに違いない」

「おいロクコ、そこわりと重要な情報だぞ」

「えっ、ぶち壊したかったに違いないところが?」

「いや、破壊の方だ」


 自分から提案した、ということは、そこに何か意図が隠されている。

 それを逆手に、ということも考えられるが……やはりそれも666番の意図がある。

 すくなくとも、ネズミをあつめて特攻させるだけでは勝てなくなる。さすがにネズミじゃ攻撃力がたりないからな。


「んー、これ以上は666番については言えないですね。そもそも人化しているコアの正体を話すのはマナー違反ですし」


 そう言ってハクさんは話を切り上げた。

 マナーとかいいからもっと教えてほしいところだけど、ハクさんからしては最低限必要なことは話したってところか。


「それよりもケーマさん、見事な【クリエイトゴーレム】でしたね」

「ええ、得意なんですよ。【クリエイトゴーレム】」


 手札を1つ見せてしまったが、これは元々見せる予定の手札だ。

 ゴーレムの水増しをDP使わずにできるということは、すぐにバレるだろう。実際、このスキルは少し珍しいが冒険者でも覚えている人が居ないわけでもない。

ましてやDP交換で手に入るんだから、ダンジョンコアであるハクさんなら当然このスキルのことは知ってるだろう。


「クリエイト系やサモン系のスキルがあればDPをあまり使わずにモンスターを増やせる……ふふ、最近はやっていませんが、昔は私もよくやっていた手です」


 だよな。ハクさんがこんなコスパのいい方法を使わなかったはずがない。

 サモン系はこの世界のどこかにいる野良のモンスターを呼び出して使役するという魔法スキルだ。使役している間は魔力を消費し続けるのでダンジョンではあまり使い勝手がよくないが、ボス代わりにピンポイントで召喚するならこちらの方が手間がない。あと呼び出したモンスターの強さで魔力消費量は変わるらしい。


「他におススメのクリエイト系やサモン系のスキルがあったら教えてくださいよ」

「あらあら、DPのカタログにあるでしょう? それは全部おススメよ」


 ……なら今回の50万DPでとれるだけとっちゃうのもアリだな。仮にダンジョン没収されたとしても、自分に使ったスクロールなら無駄にはならないし。


「ちなみに【クリエイトゴーレム】の上位互換に【サモンゴーレム】というのがあってね。こちらは熟練すればストーンゴーレム、アイアンゴーレムも呼べるわよ」

「それはいいことを聞きました」


 うまくすればミスリルゴーレムや、オリハルコンゴーレムなんてのも呼び出せるかもしれないな。もしできたらダンジョンのボスにスポット採用するのもいいかもしれない。

 俺がそんなことを考えていると、ニクがミーシャに稽古をつけてほしいと頼んでいた。


「ミーシャ様、わたし、強くなりたいです。……おねがいします」

「いいですよー。獣人とワービーストは親戚みたいなもんですからね、仲良くしましょ、クロイヌちゃん」


 手を差し出すミーシャ。ニクはこくりと頷くと、ミーシャと握手した。

 そしてそのままミーシャはニクを殴りつけた。

 3mくらい吹っ飛ぶニク。


「ひゃっはー! わんこふぜいに上等な稽古など必要ないのです! ましてや私は子供でも容赦しないで実戦形式ですよ! 戦場で気を抜くなど言語道断ー!」

「ぐ……これは油断しました……」

「まだ立てますね? 大怪我しない程度に手加減はしてあげますから存分にボコボコにされなさい。優秀な冒険者はギルドの宝です。だがわんこよりニャンコの方が優れているということを魂に教えてあげましょう!」

「望むところです……!」


 この世界でも犬と猫でなにかしらの確執があるのか、ミーシャはノリノリでニクをいたぶるように稽古をつけた。

 ある程度怪我したら、ハクさんが【ヒーリング】で綺麗に治してくれて、またボコボコになるニク。

 夕方までそれが続き、ニクは最後までミーシャに一撃を入れられなかった。


「……ふぅ、わんこのくせに、なかなか筋がいいですね。見込みありですよ」

「はい……ありがとうございました……」


 ニクはぐったりと地に伏せっていた。お疲れさま。ほんっとお疲れさま。今日の晩御飯はニクの大好きなハンバーガー食べ放題だよ。

 一方ロクコは途中からハクさんのお膝枕で寝てた。いいなぁ、でもロクコ専用だよなありゃ。


「……はっ、終わった?」

「あら、起きたのね。丁度終わったところよロクコちゃん」

「……はっ、す、すみませんハク姉様、よだれがっ! 『浄化』しますっ」

「ふふ、気にしなくていいのに」


 ちなみに、ミーシャは休憩なしで7日間戦い続けることができるらしい。

 寝ずに一週間戦えるとか、人間じゃねぇ……あ、ワーキャットだった。


 ……ずっと見てたら俺も疲れたなぁ。家に帰ったらニクを抱き枕に寝るとしよっと。



(書籍化作業の息抜きに本編を書く……この手があったか! ちなみに私は犬も猫も大好きです)

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