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最果てのパラディン 作者:柳野かなた

〈第三章:鉄錆の山の王 後編〉

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 邪竜が悠然と身構える。
 脇腹に僅かに、負傷が残る程度だ。

【さて】

 状況は、圧倒的に不利だ。
 ぎゅっと、《おぼろ月》の柄を握りしめる。
 そうしなければ、絶望に呑まれてしまいそうだった。

【《最果ての聖騎士》よ。――勇戦、見事であった】

 意外にも、というべきだろうか。
 ヴァラキアカは、すぐに僕を殺そうとはしなかった。

 けれど、返答する余裕はない。
 視線を巡らせば、皆まだ死んではいないようだけれど――いや、死んではいない? 竜の腕力で完全な奇襲を成し遂げて、全員殺し損ねた?
 そんなはずはない。殺さなかったのだ。
 であればつまり――

【その戦いぶりに免じて、提案する。我が下僕となる気はないか?】

 こういうことだ。

「…………」
【察してはおるようだな。……言い訳は用意してやったぞ?】

 ヴァラキアカは笑う。
 楽しそうだ。
 実際に、楽しいのだろう。

【断るのであれば、おぬしの仲間を骨も魂も、全て灼き尽くす。
 ……そう脅され、仲間の命を守るという名分があれば、我に下る口実にもなろう?】

 左右に散開した状態で倒れたメネルとルゥ、レイストフさんとゲルレイズさんを、一度に庇うことはできない。
 そもそもこの竜を相手に、短期で決着を付けうる手札が、もう、ない。

【おぬしは、おぬし自身を灼き尽くすと脅したところで、けして怯むまい、靡くまい。
 おぬしのような目をした人間を、幾人も見てきた。……今ですら絶望に抗い、しぶとく切り抜ける手を探しておる】

 そうだ。
 今も僕は、何か手がないかと必死に考えている。
 無言で、返答を保留しながら。

【だが、何もない。――そうだろう? そのように状況を整えたとも】

 ……邪竜の言うとおりだと、認めざるをえない。
 もう何も、都合のいい打開策はない。

【いや……何もなくはなかったか。我に屈さぬ手が、一つあったな】

 その言葉に、僕は眉をひそめた。
 この状況で、僕に、手?


自決すれば良い(・・・・・・・)


 思ってもみなかった発言だった。

流転の女神(グレイスフィール)に愛されておるのだろう? その首を自ら断ち切れば良い】

 そしてヴァラキアカの言葉に、嘲笑の気配はなかった。

【次があるのだろう? その次の次もあるのだろう? 次の次の次の世界があるのだろう? どこまでも続きがあるのだろう?
 無理だと思ったならば、遊技盤を投げるように首を吊れば良い。悲劇を拒みたければ胸に短刀を刺せばいい。
 「まだだ。次がある、おれが戦うべき場所はここではないのだ」とな】

 それは醜悪な誇張画めいた言葉だった。
 実際に、そんなふうに単純化できるものではないことは、誰もが知っている。
 ただ、竜が言いたいのは、そういうことではないのだろう。
 僕は首を左右にふる。

「それは、選びません。――僕はもう、投げ出さない」
【ならば良し。仮におぬしが、己の生にその程度の価値しか認めぬのであれば、従える価値も無い】

 神話の時代から、この世界に執着し、生き続けるヴァラキアカにとって。
 己の生をまっとうする気があるかというのは、譲れぬ一線なのだろう。

【では、選ぶがよい。――我に与するか、抗い消え果てるか】

 仲間たちは行動不能の重傷。
 僕とて無傷ではなく、そしてなけなしの決定打はすでに破られた。
 通常の手段では何千回の攻防を成功させれば勝てるのか、それすらも分からない。

 完全に詰んでいる。
 不死神の《木霊》との戦いの時以上に、絶望的な状況だ。
 けれど――

「あなたに与すれば、あなたが僕をどう使うかは、容易に予想がつきます」
【で、あろうな】

 戦乱を拡大させ。
 混乱を巻き起こし。
 この竜好みの状況を作り上げていくだろう。
 そういう生き方しかできない相手だというのは、ここまでの対話で十分に分かった。

「であれば、従うわけにはいきません」
【仲間が死ぬぞ?】
「それは違います」

 ヴァラキアカは首をかしげた。

【何が違うというのだ】
「僕たちはすでに覚悟してきています。誰かが失われようと、誰か一人があなたの喉元に刃を突き立てられればそれで良し、と」

 戦いの中で仲間の命を庇うために勝機を失うようなことを、誰も望んではいない。
 戦士とは、そういうものだ。

【だがもう、勝てる見込みなどあるまい】
「あります」

 覚悟を決める。
 ヴァラキアカを見上げる。


「……この刃を、幾千か、幾億か叩きつければ、僕が勝つはずだ。違いますか?」


 ヴァラキアカは虚を突かれたかのように目を見開き。
 そして、興がるように笑った。

【さてそれは、幾千の奇跡の果てにあるのだろうな?】
「幾千でも、幾億でも、幾兆でも構いません。――勝つ可能性が、誓いを果たせる可能性があるならば、それに賭けます」

 それが、僕の選んだ道だ。

 ――そんで、一撃もらったら我慢して前に出ろ
 ――どうせ引いても死ぬんだから捨て身だ捨て身。攻撃の回転率上げて、剣でも槍でも拳でもガンガンぶちこめ。

 ブラッドに教わった、戦いの基本でもある。
 痛みを受けたら、前に出る。
 前に出てやりかえす。

「僕は、ここからが、しぶといですよ」

 勝てないだろう。
 死ぬだろう。 
 でも、無理矢理に、獰猛に笑ってみせる。
 邪竜も、応じるように牙を剥き、笑った。

「邪竜ヴァラキアカ――」
【《最果ての聖騎士》よ――】

 手に馴染んだ短槍を握り、身構え、

「あなたを、討ちますッ!」
【返り討ちにしてくれようッ!】

 僕は最後の戦いに向けて、走りだした。




 ◆



 それは洪水の中を、溺れかけながら力の限り泳ぐような、そんな時間だった。

 序盤、打てる限りの《ことば》と攻勢で、メネルたちの倒れた場所から戦域を移す。
 余波で死んでしまうかもしれないけれど、できるだけのことはしておきたかった。
 それでもヴァラキアカが強固に抵抗すれば、戦域を移すことは不可能だっただろうけれど、竜はそうしなかった。
 倒れたものに構うだけ無駄と判断したのか、それとも僕という敵が全力を出しやすいよう計らったのか。

 駆ける。
 鋭い爪が、太い尾が、踏みつけ(ストンピング)が、時には体当たりや吐息(ブレス)が来る。
 加速して躱し、タイミングを図って《ことば》や槍を叩き込む。

 軋るような発声とともに、数々の、時には未知のものすら含む凶悪な《ことば》が叩きつけられる。
 こちらも知恵の限りを尽くし、出せる限りの《ことば》で応手する。

 時には、山を揺るがすような強烈な咆哮も来た。
 加護を重ねがけして、鼓膜が破れることや、恐怖にかられることを防ぐ。

 何度か後手にまわり、ブレスの余波や、飛来する礫で負傷する。
 そのたびに祝祷による癒やしによって再び立ち上がる。
 何度も即死しかけた。
 大盾など、とうにへし曲がって割れていた。

「ぁあああああああああああああああッッ!!」

 狂乱したように叫び。
 自らの血に塗れながら、戦い続ける。

 右、爪。
 回避。
 槍。
 鱗抜き。
 踏みつけ。
 斜めに前進。
 潜る。
 遮蔽。
 ことば。
 応手。
 打ち消し。
 爪。
 尾。
 躱す。
 槍――


【があッ!】


 赤い口腔が迫る。牙。

「ッ!?」

 ヴァラキアカが、初めて噛みつき(・・・・)を使用した。
 幾度も続く爪と尾と踏みつけとの応酬に慣らされた体が、とっさに反応できない。
 それでもやや遅れて反応し、強引に《おぼろ月》で体をかばう。
 牙がかすめ、吹き飛ばされる。
 立ち上がり、槍を構えようとし――それが異様に軽くなっていることに気づいた。

「ぁ……」

 《おぼろ月(ペイルムーン)》が、壊れていた。
 ずっと使ってきた、最愛の武具が。

 柄はへし曲がり、穂先は砕け。
 ――もう、誰にも直せない。

「ぁああああああああああああああッッ!!」

 叫ぶ。
 槍とともにへし折れかけた戦意を奮い立たせ、《喰らい尽くすもの(オーバーイーター)》を抜剣する。
 ヴァラキアカも体中に傷を受けている。
 どこかに叩き込み、生命力を吸収すれば、まだ――


【残念だが】


 踏み出した瞬間。
 足先が、吹き飛んだ。

「が、ァアッ!?」

 踏み込んだその足元に、まさかの《しるし》が刻まれていた。
 いつの間に仕込まれていたのだろう。
 この戦闘の最中にか、それとも事前にか。


【その魔剣ならば、我の知るものよ】


 そうだ。ヴァラキアカは、元は《上王》陣営――

【確かにそれは脅威の魔剣よな。元は剣狂いの《上王》と対峙し殺すため、どこぞの《王級》の悪魔が手ずから鍛えた曰くつきだ。
 ……が、種さえ分かれば、潰しようはある。このようにな】

 激痛に耐えつつ祈り、足先を治す間にも、邪竜の周囲に幾つもの《火の矢》が浮かぶ。
 ばさりと翼を広げ、竜は僕から大きく距離をとった。

 もう、接近戦を演じるつもりすらないようだ。
 ブレスと、射撃系の《ことば》で僕を片付ける構えだ。

【……戯れもあったとはいえ。まさか人の子を相手に、これほどまでに手こずらされるとは思わなんだ。
 《最果ての聖騎士》ウィリアム・G・マリーブラッド。我に幾多の傷を与えたこと、称賛しよう】

 意識が朦朧とする。
 集中が保てない。

【あるいはこれが互いの腕試しであったならば、竜を相手に天晴見事と、我はおぬしに勝利の花冠を譲ったやもしれんな。
 その力、神代の英雄にも劣るまい。……おぬしこそは、真のちからびと、当世の勇者よ】

 腕に力が入らない。
 声が震え、《ことば》もろくに発せない。
 ――それでも竜は、健在だ。

【だがこれは、殺し合いだ】

 竜が僕を、殺しに来る。
 僕は竜を、倒さなくてはならない。
 神さまと、約束したんだ。
 戦わないと。

 ……なけなしの力で、剣にすがって立ち上がる。
 マナをかき集める。
 必死に意識を集中し、気休めでも傷を癒やす。

【苦しませはせぬ。――死ぬがよい】

 竜が息を吸い。
 僕の全てを灼き尽くすであろう焦熱の吐息が、放たれる。

「…………」

 ああ、だめだ。
 これは、どうにも、ならないな――

 そう思いながらも、僕はなんとか剣を構え、《ことば》を発しようとした。

 与えてもらったのだから。
 最後まで、ちゃんと生きないと。
 そう思った。

 そうして、瘴気と酷熱の吐息が僕に叩きつけられ――
 けれど、終わりの時は、いつまでもやってこなかった。

「……ぁ」

 ほのかな灯火が、目の前に浮かんでいた。
 灯火を中心に、透明な結界のようなものが生じている。
 ……竜の吐息から、僕を守るように。

【《遣い(ヘラルド)》か。ふん、《木霊(エコー)》を降ろすには力が足りぬか? 灯火の女神も無駄なことをする】

 吐息が叩きつけられる。
 繰り返し叩きつけられる。

 灯火が揺れる。
 結界に亀裂が走る。
 それでも彼女は、僕を守る。

【さほどに己が英雄が惜しいか? だが神の一柱(ひとはしら)の、その《遣い》ごときが肩入れしたところで、何も変わらん】

 それでさえ、竜の暴威に対しては時間稼ぎに過ぎない。
 それでも彼女は、諦めない。
 何度も何度も、竜の吐息を受け続ける。

 ――わたしはあなたを強め、あなたを助け、わが灯火で、あなたを守る。

 ああ。
 彼女は、約束を果たそうとしてくれている。

「かみ、さま……」

 灯火は何も言わない。
 いつものように、寡黙なまま。
 ただただ、僕を庇い続ける。

 ――それにも終わりの時がやってきた。

【……■■■■!】

 軋るような竜の《ことば》。未知の波動がほとばしり、結界が余さず砕け散る。
 邪竜の口には既に、十分な吐息が蓄えられていた。

【聖騎士よ! 汝は我が吐息で殺すに足る敵手であった! その姿を我が記憶にとどめ、しかしてその魂、骨も残さず灼き尽くしてくれよう!】

 《大空洞》に、ヴァラキアカの叫びが反響する。
 それはヴァラキアカなりの、僕に対する手向けだったのだろう。


【……いや、それは困るな】


 けれど、不意に横手から新たな言葉が響いた。
 飄々とした声だ。

【何奴――ッ!】

 竜は即座に吐息を叩きつけるけれど、声の主は空中に凄まじい軌跡を描いてそれを回避する。

【これなる英雄は、私の獲物だ。私の敵手だ。この戦いぶりをみて、そう確信したよ。――横から奪われるのは、やはり気に食わん】

 夜よりもなお黒い羽。
 不吉に輝く赤い瞳。
 宙を滑るように、僕のもとへとやってきたそれは、その姿は――

【不死神スタグネイト、だと……!?】

 邪竜が、呻いた。



 ◆



 驚きを露わにするヴァラキアカを前に、不死神は滔々と語り出す。

【さてさて、邪竜ヴァラキアカどの? 神の一柱(ひとはしら)の、その《遣い》が肩入れしたところで何も変わらないと言ったね。
 ハハッ、その通りだ。私もそう予言したよ。英雄たちでは足りぬ、英雄たちと灯火の神でもなお足りぬ! 邪竜たる《災いの鎌》は殺せない、とね! だが――】

 《遣い鴉》が、かちかちと嘴を鳴らす。
 さも愉快そうに。

【そういえば、二柱(ふたはしら)の神あらばどうなるかは、考えてもみなかった。
 どうだろうな? この英雄たちに勝ち目はあるだろうか? ――私は幾らかある気がするが、どうだろうな? ヴァラキアカどのよ】
【相変わらずの饒舌ぶりだな、不死神】
【――君とはなんだかんだ同族嫌悪だなぁ、ヴァラキアカ。趣味は近いと思うのだが】
【我は貴様ほど悪趣味ではない。燃やし尽くし、きらめいてこその命であり魂よ。無限に永らえさせて何になる、この俗物め】
【それこそ悪趣味であろう。美しきものを永遠に――自然の情さ。壊したがりめ】

 ヴァラキアカは不快げだ。
 戦いに水を差されたのだ、それはそうだろう。

【そして大した色男ぶりだな、聖騎士よ。危地にあって女神が二柱も駆けつけるとは! 神話の時代にもまず見ぬほどだぞ?】

 皮肉っぽい発言なのだけれど、なにか衝撃の事実が判明した気がする。
 めが、み……?

【私が女神(めがみ)でも男神(おがみ)でも、どちらでもいいだろう。性別など神にとっては飾りのようなものだ。なぁ?】

 鴉が首をすくめるような仕草をして、それから僕の肩に止まると、頬に頭をすり寄せようとしてくる。
 神さまの灯火が、なんだか猛烈な勢いでそれをブロックした。
 肩のあたりで無言の牽制合戦が始まっている。

【ハハハ。そう怒るなよグレイスフィール。手を貸してやろうというのではないか。少しくらいは役得があってもよかろう……
 ン? その反応は、なぜ今になってといったところか。
 そもそも、私は手を貸さぬつもりだったのだぞ? だが、ここまで滾る戦いをみせつけられてはなぁ……肩入れしない方が後悔しそうだ】
【それだけの理由で、このヴァラキアカの戦いに嘴を差し挟むか。英雄狂いの享楽主義者め】

 吐き捨てるように告げたヴァラキアカに。


【その通り! ――これなる英雄、この物好きな聖騎士殿には、狂う価値があろうよ!】


 スタグネイトは、堂々と叫び、答えた。

【さぁ、戦いはまだ終わっていないぞ! 再び戦う意志はあるか、ウィリアム・G・マリーブラッド! 愚かで賢い私の敵よ、灯火の聖騎士よ!
 誓いを守り、信仰を胸に。死して倒れるその一瞬まで戦い続けるといういつかの言葉、よもや嘘偽りではなかろうな!?】

 ……僕は、苦笑した。
 もうすっかりボロボロだ。
 手足は何度も千切れかけては、祝祷術で再生している。
 体力も集中力もすっかり尽き、槍も折れている。
 剣を支えになんとか立っているだけで、正直、限界だ。
 意識を手放して、何もかも放り出して寝てしまいたい。

 それでも――それでも、不死神にこう言われては。
 灯火の女神が見守っているのでは。

「……やらないわけにも、いかない、ですよね」

 ふらつく体で、どうにか身構える。
 身構えて、竜を見据える。

「ヴァラキアカ」
【何だ】

 笑いかける。

「ここからがしぶといと、言いましたよね?」
【ハハハ……確かにそうだ、恐ろしくしぶとい。そのしぶとさで、ついには神々すら動かしたか】

 まさに英雄よな、と邪竜は笑う。

【良かろう。神に満身の祝福と加護を与えられ、ようやく人と竜とは対等であるゆえな。――そして、神に嘉されし英雄を焼き滅ぼしてこその竜!】

 翼を広げるヴァラキアカは、依然として健在だ。
 いくつも傷を与え、いくつも鱗を剥いだけれど、それ以上ではない。

【さあ、魂を司りし慈悲の女神どもよ! 戦の加護なき手弱女どもよ! これなる英雄にいかなる加護を与え、いかにして我を殺す?】

 傲然と。
 やれるものならばやってみろと、ヴァラキアカは身構える。

 ――実際に、灯火の神さまも不死神も、戦神ではない。
 灯火の神さまは明らかにそういう性質の神ではないし、不死神も実際に一度やりあって武の心得など無いに等しいと知っている。
 たとえ新たに不死神の加護を得られたとしても、竜に刃を届かせることは――

【ン? ……与えないさ(・・・・・)

 不死神があっさりと言った。

【これなる男は私の敵手だ。そう在り続けると宣言した男だ。――私が加護を与える理由はあるまい】
【ほう?】
【しかしな、ヴァラキアカ。忘れてはいないか、ここがどこであるのか(・・・・・・・・・・)を】

 その言葉に、竜は目を見開いた。
 そうだ。
 そうだった、ここは――


【ここは《くろがねの国》! かつて悪魔の軍勢と邪竜を前に散り果てし、炎の勇士たちの無念彷徨いし山!】


 不死神の《遣い鴉》が、その身から膨大な力を発する。
 発された力は、無色透明の波のように、山全体へと波及してゆく――

【さあ、帰り来たるが良い! 汝らの仲間が、子孫が舞い戻ったぞ! まごうことなき英雄を連れて来たぞ! 悪魔を倒し、竜に挑み、故郷の山々を取り戻しに!】

 靴音が聞こえた。
 無数の靴音だ。

【眠り彷徨い、これを座視するは戦士にあらず! いざ、報仇雪恨の剣を取れ! 勇気の炎を、今一度、燃やせッ!!】

 鎧の音が聞こえる。
 斧で盾を打ち鳴らす音。
 地をどよもす叫び声。



【――ドワーフの戦士たちよ!!】



 青白い霊体の軍勢が。
 《大空洞》の各所の入り口から、溢れ出してくる。

 帰ってきた。ドワーフの戦士たちが。
 ――もう一度、竜に挑みに。帰ってきたのだ。


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