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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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限界

 
 言われたとおりに七万七千七百ナールを支払って、商会事務所を後にした。
 くそっ。
 何が公爵様からの紹介なので特別サービスだ。
 ただ三割引が効いただけじゃねえか。

 まあしょうがない。
 何がしょうがないか分からないが、しょうがない。
 ボーデの冒険者ギルドからベイルの迷宮を経由してザビルの迷宮に飛ぶ。
 迷宮の小部屋で、コハクのネックレスをロクサーヌの首に着けた。

 上から見ると胸のせりあがり具合が。
 そこにコハクが載って艶かしい雰囲気を。
 ……買って正解だ。

「ありがとうございます、ご主人様。でも、よろしかったのですか」
「大丈夫だ。二人にはペルマスクでコハクを売ってもらうわけだから、自分でネックレスの一つも着けておかないといけないだろう。これは必要経費だ」

 実際、考えてみればそのとおりではある。
 ある種の実演販売だ。
 コハクを売るセールスレディーならコハクを身に着けておくべきだろう。

「それでは、お借りしますね」
「借りるのか?」

 続いてセリーの首にネックレスをかけながら、訊く。

「所有者が奴隷のために買ったものも、当然所有者のものです。消耗品や肌着や生活必需品なら別になりますが」

 セリーが答えた。
 そういうものなのか。
 二人のために装備品を買いそろえても、所有権は俺にあるということか。

「なるほど」

 セリーにもネックレスを着ける。

「ありがとうございます」
「いずれにしても、二人ががんばってコハクの原石を売ってくれればすぐに元は取れる。少なくても倍以上で売ってきてくれ」

 鏡の方は騎士団相手に安く売って三倍で売れた。
 コハクもそれくらいで売れるのではないだろうか。
 鏡よりも持ち運びが楽だから、そこまで高くはならないかもしれないが。

 鏡もコハクも、魔物が残すアイテムではないし、ドロップアイテムを素材に作られた装備品やなんかでもないから、アイテムボックスには入らない。
 しかし、コハクの方は所詮小石だ。
 かばんにでも詰めれば、一度でそれなりの量を運ぶことができるだろう。

 セリーに次回分の鏡の手付けも併せ銀貨六十枚とコハクの原石を渡す。

「えっと。今回も行かれないのですか」
「もちろん二人に行ってもらうことになる」
「ネックレスも入れると、一財産になりますが」

 確かに二人が持っているコハクの総額は十万ナールを超える。
 ペルマスクでは高く売れるだろうから、もっと高額にはなるか。
 持ち逃げするということも考えられなくはない。
 しかしそんなことをいっていては、今後高額な装備品を着けたときに片時も離れられなくなるだろう。

「二人のことは信用している。問題ない」
「ありがとうございます」

 最後に税金の銀貨一枚ずつを二人の手に持たせ、ペルマスクへと飛んだ。
 税金が無駄にもったいない。
 遮蔽セメントのある建物でもかまわず飛ぶか。
 さすがにそれはまずいか。

 二人を見送った後、迷宮で時間をつぶし、迎えに戻る。
 冒険者ギルドに帰ってきた二人はちゃんと鏡を持っていた。
 直接家にワープし、すぐに迷宮へ移動してMPを回復する。
 まだあと三回もある。

「コハクは一個銀貨四十枚で全部売れました」
「おお、やった。えらいな」

 五倍で売れるとは。
 想像以上だ。
 コハク商に払った金額を上回っておつりがきた。
 二人のネックレスはもうただでもらったようなものだ。

 俺の三割アップがあればもっと儲かったが。
 まあそこまでは欲をかくまい。
 三割アップが効くかどうかも分からないし。

「今回は特別だと親方がロクサーヌさんのネックレスを見て言っていました。次があってもそこまでの値段は出せないと」
「そうか」

 親方に売ってきたのか。
 装飾も何もついていない鏡は工房へ行けば買えるといっていたから、工房の親方なんだろう。
 三割アップは効かなそうだ。
 しかし何故ロクサーヌのネックレス?

「……滅びればいいんです」

 セリーが呪いの言葉を吐いた。

 な、なるほど。
 親方は男だったのか。
 それでロクサーヌのネックレスを見ていたのか。

 くそっ。
 俺のロクサーヌをなんという目で。

「確かに、滅びればいいな」
「親方の奥さんにも会って話をしてきました。コハクのネックレスを金貨二十五枚までなら買ってくれるそうです。親方への罰だそうです」

 親方、奥さんがいるのか。
 それなのにロクサーヌをいやらしい目で見ていたのか。
 罰といっているから、それがばれたのだろう。
 まあ、ロクサーヌが高く買ってもらいましたといえば、後はその意味を奥さんが勝手に解釈する。

「セリー、よくやった」
「はい。鏡も一枚につき銀貨二十枚にまけさせました。今回六十枚出して、鏡二枚分の手付はすでに払ってある状態です」

 鏡一枚分の手付け金、銀貨三十枚はすでに払ってあった。
 この分には変更がなく、今回払う分から二十枚ということか。
 ただし、手付けは鏡一枚分から二枚分へと増加している。

「ずいぶんと下がったな」
「あんな親方のやっている工房に利益は必要ありません。滅びればいいのです。奥さんには直接セールスをしないからと言ったのですが、これ以上は下がりませんでした。この価格が本当にぎりぎりのようです」
「そ、そうか」

 三分の二にまけさせるとは。
 容赦ないな。

「下がらなかったので、もちろん奥さんにも会ってお話してきました。悪は滅びました」

 親方はまけさせられた上に奥さんにもばらされたと。
 積極的にばらさなくとも、ロクサーヌが安く売ってもらいましたといえば。
 セリー、恐ろしい娘。

「まことこの世に悪の栄えたためしはないな」
「はい。ちなみに、金貨八枚で受け取ってきています。ええっと。合っていますよね」
「大丈夫だ」

 セリーは、計算もできるが、一個当たり銀貨四十枚のコハクを二十個で金貨八枚という勘定には自信がないレベルのようだ。
 うなずいてやると、安心した表情でアイテムボックスを開き金貨を出す。
 俺もアイテムボックスを開けて受け取った。

 これで所有する金貨は二十一枚。
 親方の奥さんに売るネックレスもある。
 ゴスラーに鏡を売り終わったら、帝都の奴隷商館を訪ねてもいいくらいの金額になるだろう。

 ただし、迷宮以外で稼いだというのが少々納得のいかないところではある。
 迷宮よりも地道に稼いだ方が儲かるのか。
 貿易商に鞍替えした方がいいんじゃないだろうか。

 まあペルマスクまで行けるのは迷宮でレベルアップしたおかげだ。
 最初にワープしたときはベイルの宿屋からすぐ近くの迷宮に飛んだだけでへたっていたのだから、迷宮に入っていなければこの稼ぎはなかった。
 鏡やコハクを購入するための初期費用も必要だ。
 迷宮である程度稼いでなければ、そのお金もなかっただろう。


 貿易商がそんなにうまくいくものでもないと分かったのは、二日後にコハク商のところへ出向いたときだ。

「前回から日にちがないため、あいにくと用意できておりません」

 ネコミミのおっさん商人が告げた。
 コハクというのはそんなに大量に採れるものではないらしい。

 それもそうか。
 十分に数があるなら、こんなおいしい商売には誰かが参入するだろう。
 このコハク商が冒険者を雇って遠くまで売りさばいてもいい。
 それをしていないのはそこまでの供給がないからだ。

 逆にいえば、希少だからこそ遠くに持っていくことで値段が跳ね上がるのだろう。

「ないのか」
「コハクは嵐の後に海岸に打ち上げられていることが多くあります。そのうち嵐でもあれば、手に入るかと思います」

 親方の奥さんに売るネックレスがほしいが、今日は買わない方がいい。
 一緒に買えば三割引が効く。

「そういえば、タムエルだかタルエムだかいうのは入手可能か?」
「タルエムですね。木目の美しい白木です。この辺りの特産品ですので、手に入れること自体は可能でございます。当商会では特には扱っておりませんが」

 公爵が鏡の装飾に使うといっていたやつだ。
 やっぱり木材のことだったのか。
 価値のある木らしいから、ヒノキとかチークとかマホガニーみたいなものなんだろう。

「そのタルエムを使って、ネックレスを入れる小箱を作ってもらいたい」

 この前買ったコハクのネックレスは布の袋に入れられていた。
 日本で買ったら絶対に何かのケースに入ってくる。
 そういう慣習はこの世界にはないらしい。

「小箱でございますか」
「コハクのネックレスは高級品だからな。タルエムの箱があれば、さらに高級感を出せるだろう」
「なるほど。確かにおっしゃられるとおりでございます。ですが、何故私どもにそのことを?」

 コハク商が食いついてきた。
 やはり箱があった方が高級感を演出できるようだ。

「俺だけが箱に入ったネックレスを売っても、どうせ評判になればすぐに真似されてしまう。それに俺はこの地方の出身ではない。タルエムの小箱を作ってもらうには、地元にあるこの商会の方がうまくやれるだろう」
「コハクのネックレスをお売りになられるのですか」
「遠くの地方でもほしいという人はいるからな。あまり近場では売らないようにするので安心してくれ」

 近場にはこの商会が直接売るのだった。

「私どもが小箱をつけて売ってもかまいませんか?」
「かまわない」
「かしこまりました。早速検討させていただきます。よいことを聞かせていただきました」

 原石は手に入らなかったが、小箱を頼んで商会を出る。
 高価なネックレスなのに、布の袋ではちょっと寂しい。
 箱があった方がいいだろう。

 コハクのネックレスは、まだ二回しか着けさせていない。
 迷宮に着けていくものではないだろうし。
 一回はペルマスクに行ったとき。
 もう一回はその日の夕方だ。

 薄紅色と白のキャミソールをコハクのネックレスがよく飾っていた。
 ロクサーヌの突き出た胸にそえられた大きなコハクのネックレス。
 セリーの控えめな胸元で輝くゴージャスなネックレス。

 最強の一品といっていいだろう。
 美味しくいただいてしまった。

「親方の奥さんには、いいネックレスを探していますと言っておいてくれ」

 家に帰って三回めのネックレスを持ち出し、二人をペルマスクに送り出す。
 公爵に売る鏡を二枚手に入れた。
 あと二回。


 その日の夕方近く、ベイルの迷宮十階層のボス部屋に到着した。
 探索は順調に進んでいる。

「一応、十一階層の魔物と戦ってから引き上げるか」

 そろそろ今日の探索を終えようかという時間だったので、十一階層には少しだけ足を踏み入れることにする。
 十階層ボスである強いだけのアリは、もちろんロクサーヌの敵ではなかった。

「ベイルの迷宮十一階層の魔物はスパイスパイダーです。クーラタルの迷宮で戦っていてベイルの迷宮で戦っていないのはそれだけになります」

 例によってセリーに情報を聞く。
 一階層から十一階層までに出てくる魔物のグループはどの迷宮も同じだ。
 クーラタルの迷宮で戦っていてベイルの迷宮では戦っていないスパイスパイダーが、残ったベイルの迷宮十一階層の魔物ということになる。

「毒を使ってくるんだよな」
「はい。ただし、ニートアントより低確率です。クーラタルの迷宮でも戦っているようですし、問題はないと思います」
「上の階層に行くほど毒を多く受けるということはないのか」
「そういうことは言われてないようです。あったとしても少しだけでしょう」

 すでに戦ったことのある魔物というのは大きい。
 二つの迷宮を同時攻略するというのは思ったよりも利点があるようだ。
 十一階層を進む。

 スパイスパイダーLv11は魔法七発で倒れた。
 一発増えてしまった。
 ただし、デュランダルだと二振り、ラッシュ一発だ。
 これは十階層と変わらない。

 ニートアントLv11は、水魔法を使っても倒すのに四発かかった。
 こちらに来るまでには倒しきれず、常に戦闘するようになってしまった。
 少しの時間だし、このくらいはしょうがない。
 ベイルの迷宮十一階層でも戦えるか。

 翌朝、クーラタルでも十階層を突破する。
 エスケープゴートのボス、パーンとはベイルの迷宮で二回も戦っている。
 その経験が無駄にはならずにすんだ。

「クーラタルの迷宮十一階層は難易度が高いとされています」

 ボス部屋を抜けて十一階層に移動するとセリーがレクチャーしてきた。

「そうなのか?」
「クーラタルの迷宮十一階層の魔物はグリーンキャタピラーです。十一階層に出てくる魔物の中では一番の難敵です。しかも、九階層の魔物ニートアントもまだ出てきます」

 グリーンキャタピラーってそんなに強かったっけ?
 毒を使うわけでもないし。

 と思ったが、糸か。
 グリーンキャタピラーは糸を吐くのだ。
 そして、スキルは上の階層に行くほど多く使ってくると。
 確かに厄介だろう。

 糸に捕まって動きの鈍くなったところにニートアントの毒攻撃も加わる。
 凶悪なコンボだ。

「そういうことか」
「糸は避けることも可能です」

 できる狼人族はそんなことをおっしゃっておられますが。

 一度戦ったからといって簡単ではないようだ。
 とはいえ、戦ってみるより他はない。
 迷宮を進む。

 何度か戦ったが、グリーンキャタピラーLv11もそうむやみやたらに糸を吐いてくるということはなかった。
 エスケープゴートLv11は逃げるのが四発めの魔法の後なので、残り三発で倒せる。
 クーラタルの十一階層でも戦えなくもないか。

 グリーンキャタピラーが最初に糸を吐いたのは十一階層に入って四戦めだ。

「来ます」

 そう言ってロクサーヌが飛びのいた。
 ロクサーヌのいた辺りに、糸がまき散らされる。
 白い糸が空しく宙に舞った。
 本当に避けるのな。

 前衛とは少し距離を取っていたので、俺にはかかっていない。
 ニードルウッドの魔法対策で距離を取ることを覚えたのが幸いした。
 ただし、あまり距離を取りすぎると後ろから別のグループが来る恐れが高まるらしい。

 二回めの糸吐きスキルもロクサーヌが華麗にスルーする。
 三回めは、デュランダルを出しているときだったので未遂に終わった。
 四回めに糸を吐いてきたとき、セリーが捕まる。

 白い糸がセリーをおおった。
 何十、何百もの糸がセリーに絡まる。
 糸で動きの鈍くなったセリーにグリーンキャタピラーが体当たりをかました。

 すでに六発めのファイヤーストームを撃つところだったので、六発めの火の粉が消えると同時に七発めを放つ。
 グリーンキャタピラーが動けないセリーに追撃を加えたところで、火魔法が襲いかかった。
 グリーンキャタピラー二匹と逃げ出している途中のエスケープゴート一匹が火にまみれる。
 そのまま倒れ、煙となって消えた。

「大丈夫か?」

 手当てをしながらセリーに確認する。

「はい。すみません。糸を避けられませんでした」
「それはしょうがない。多分俺にも避けられないだろう」
「ありがとうございます。もう大丈夫です」

 六回めの手当てをしようとしたところで、セリーに止められた。
 手当て五回か。
 結構きついだろうか。
 メッキはしていなかったが。

 ニートアントやエスケープゴートをデュランダル一振りで倒すには、戦士のスキルであるラッシュが必要だ。
 デュランダルを出すときに戦士をつければ、現状では錬金術師をはずさなければならない。
 錬金術師をはずせば、メッキの効果は切れる。

「最悪の場合、魔法を四回撃つ間、耐えてもらうことになる。いけそうか?」

 セリーに確認した。
 接触するまでに魔法を三発放つとして、接触した直後に糸を吐かれれば、倒すまで四発の間、その状態で耐えてもらわなければならない。
 メッキで軽減する手もあるが、魔物の殲滅がメッキをかける時間分遅れるから、本末転倒だろう。

「そうですね。がんばれると思います」

 がんばれると思う、か。
 セリーは合理的だから、実際に駄目と思えば、駄目だと言ってくるだろう。

 しかし、五分五分の状況ならどうか。
 若干厳しいが無理をすれば行けるというような場合ならどうか。
 俺に遠慮して行けると答えるのではないだろうか。
 セリーの答えは、多少割り引いて受け取らなければならない。

 がんばれると思うという答えは、少なくとも確実に大丈夫だとは言えないということだ。
 もちろん安全は第一に優先すべきである。
 現状では、クーラタルの十一階層は適正レベルの限界を超えたところにあると判断すべきだろう。
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