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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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頭脳派


 金貨十四枚と銀貨三百七十八枚を出して、セリーの代金を支払った。
 残りの資金はもうあまりない。
 金貨が一枚に銀貨も百枚以上はあるが、セリーの装備品などを買いそろえる必要もある。
 あと一万ナールも高かったらやばいところだった。

 お金を数えて奴隷商人が出て行き、代わりにロクサーヌが帰ってくる。

「きてもらうことにしたから」
「そうですか。それはよかったです」

 一瞬ロクサーヌの顔が曇ったように見えたのは、気のせいだろうか。
 後ろめたさからそう見えてしまっただけだろうか。
 あるいは、嫉妬してほしいという俺の願望か。

 たとえロクサーヌの表情がかげったとしても、それはほんのわずかで、表面上は歓迎しているように見える。

 そもそも買っていいといったのはロクサーヌだ。

 と思ったが、奴隷の立場では反対することはできないか。
 嫌ならせめて消極的態度を示してほしかったとも思うが、それも難しい。
 迷宮に入る以上、パーティー戦力の充実は絶対に必要だ。
 男ならいいかといえば、別の問題が起こる可能性もある。

「ロクサーヌには悪いが、これからよろしく頼む」
「はい。お任せください、ご主人様」

 ロクサーヌが笑顔で答えた。
 いやまあ、俺がセリーに手を出さなければいい話ではあるのだが。
 高いお金を出して買ったのにいまさらそれはないだろう。

「お待たせいたしました。セリー、こっちへ」

 代金を持って出て行った奴隷商人が部屋に戻ってくる。
 後ろにセリーも一緒だ。
 セリーが頭を下げた。

「よろしくお願いします」
「よろしく頼む」
「一番奴隷のロクサーヌといいます。よろしくお願いしますね」

 いつの間にやらロクサーヌは一番奴隷の地位に登りつめたようだ。
 最初に買ったのだから一番には違いないが。

 他に言い方はないのだろうか。
 筆頭奴隷とか。奴隷首座とか。
 どちらもあんまりなりたくない。

「やはり奴隷だったのですか? 若奥様かと思いました」

 ロクサーヌの発言にセリーが驚いている。

「若奥様だなんて、とんでもない」

 ロクサーヌよ、そこはきっぱりとは否定しないでほしかった。

「昔ここにいたとはうかがいましたが、服も上等のものですし、血色がよくて肌もあまりに綺麗だったので」
「ご主人様が優しくて素晴らしいおかただからです。衣食住に関してセリーは何も心配する必要はありません」

 奴隷二人が話している間に、俺は左手を持ち上げる。
 セリーも手を伸ばした。
 奴隷商人がなにやら唱え、インテリジェンスカードを操作する。

「契約が完了しました。年齢もご確認ください」

 耳が細くても若いということを確認しておけということだろう。
 インテリジェンスカードがある以上、年齢の詐称はできないのか。
 何かごまかす方法があるかもしれないが。


セリー ♀ 16歳 探索者 初年度奴隷
所有者 加賀道夫


 16歳であることはすでに鑑定で判明している。
 セリーの耳は、確かに細いが、俺にとっては気にするようなものでもない。
 耳のおかげで安かったのだからむしろ好都合だろう。


加賀道夫 男 17歳 探索者 自由民
所有奴隷 ロクサーヌ セリー


 俺のインテリジェンスカードの方も所有奴隷が増えていた。
 所有奴隷数の上限とかあるのだろうか、とふと疑問に思ったが、インテリジェンスカードは、実際に表示されているわけではなくて表示されているように見えるというだけだから、数が増えようと問題はないか。

「確かに」
「衣装は作るのに時間がかかります。十日後に受け取りに来てください」

 その後、ロクサーヌのときにもあった細かな注意事項を聞かされた。
 受け取りが完了し、商館を出る。
 外に出たら、セリーをパーティーに加入させ、一応メッキをかけた。


 探索者Lv10、村人Lv3、薬草採取士Lv1。


 パーティーに入れたのでパーティージョブ設定でジョブを見てみたが、やはり鍛冶師は持っていないようだ。
 ジョブが少ないのは、まだ村人Lv3だからか。
 戦士や剣士、商人などは多分村人Lv5で解放になる。鍛冶師も村人Lv5で解放という可能性があるかもしれない。
 盗賊を持っていないのは感心だ。

 セリーはチュニックとズボンを着ている他は何も持っていない。
 ロクサーヌも衣装ケースだけだったし、そんなものなんだろう。

「一度探索者ギルドに寄るぞ」
「かしこまりました」
「か、かしこまりました」

 帰りがけ、ベイルの探索者ギルドに寄って黒魔結晶を一つ買う。
 もう一つ、朝にクーラタルの探索者ギルドでも購入している。黄色になった魔結晶の替わりにベイルの迷宮で使用した。
 即日即金で奴隷を買うと分かっていれば、二つ買ったのだが。

 結局、一回だけ見つけた黒魔結晶を融合した後は、迷宮で魔結晶を見つけることはできていない。
 残しておけばよかった。
 俺の判断は間違いっぱなしのような。

「じゃあ冒険者ギルドまで行って、冒険者ギルドから一度家に戻るか」
「かしこまりました」
「は、はい?」

 セリーが微妙な顔をしたような気もしたが、先頭で歩きだす。

「何でしょうか?」
「えっと。他に冒険者のかたもパーティーメンバーにいらっしゃるのですか」
「いませんけど、どうして?」
「家に帰ると言われたので」

 後ろをついてきながら、ロクサーヌとセリーが会話した。
 冒険者ギルドの内壁から自宅まで飛べるのは、冒険者のスキル、フィールドウォークだ。
 セリーも俺のインテリジェンスカードを見たから、俺が探索者だとは知っている。
 それでおかしいと思ったのか。

「大丈夫ですよ。ついてくれば分かりますから」

 あ。ロクサーヌは説明を放棄しやがった。
 説明しておいてくれると楽なのだが。
 内密にといったからだろうか。

「え? あ、あの?……」

 案の定、ベイルの冒険者ギルドから自宅までワープするとセリーは困惑したような表情を見せる。

「とりあえず座れ。これから買い出しに行くが、時間もあまりないので当座に必要なものだけな」

 俺も説明は放棄することにした。
 ダイニングのイスに座る。

「まだそれほど遅くはありませんが」
「今日は風呂も入れようと思う。せっかくだし」
「はい。それは楽しみです」

 隣に座ったロクサーヌが満面の笑みを見せた。
 ロクサーヌも風呂は気に入ってくれたようだ。
 笑うとイヌミミがさらに可愛らしい。
 ついなでてしまう。

「あの。ひょっとしたら複数のジョブを使うことがおできになられるのでしょうか。そんな話は伝説か神話でしか聞いたことがありませんが」

 納得いかない表情のセリーが割り込んできた。
 伝説でならあるわけか。

 しかし実は結構いい線をいっている。
 俺が冒険者のジョブを得たら、インテリジェンスカード上は探索者でありながらフィールドウォークを使うことも可能だ。
 ノーヒントでここまで割り出すとは、やはり頭はいいようだ。

「惜しい。冒険者のジョブは使えない。あれはワープという魔法だ」
「時間空間魔法ですか?」
「時間空間魔法?」

 オウム返しに訊いてしまう。
 ただの空間魔法じゃ駄目なんだろうか。

「えっと。あまり知られていませんが、フィールドウォークで移動するとき実は空間だけではなく時間も変わっています。だから正確には時間空間魔法というのだそうです」
「時差のことを言っているのか?」
「時差というのが何か知りませんが、移転元が昼間だったのに移動先が夕方になっていたり、朝方移動したのに移転した先がまだ夜だったりします。フィールドウォークはこのように時間も司る魔法です」

 それが時差なのだが。
 毎回同じところに行けば同じだけ時間がずれるのだから分かりそうなものだが、分からないのだろうか。

「まあとりあえず座れ」
「えっと。座ってもいいのですか?」

 セリーは六人がけの食卓で俺の横に座ったロクサーヌに小声で訊いている。
 パーティーメンバーは六人までだからと六人がけの食卓にした俺は慧眼だった。

「はい。ご主人様の隣に座ってください」

 俺が座っているのは、三人ずつかける食卓の真ん中のイス。
 左右両方に美女が座って、両手に花だ。
 さすがにロクサーヌはよく分かっている。
 えらい。
 ちなみに、今までは二人だったから、食事のときは俺の対面がロクサーヌの指定席である。

「あの。失礼します」
「この星、いやなんていうか、大地が丸いという説は知ってるか?」

 とりあえず聞いてみた。
 時差を説明するとしたら、この辺りからか。
 地球でも地球球体説はかなり昔から知られていたはずだ。
 北へ行けば星の位置もずれる。

 時間空間魔法だなんていうくらいだし、セリーは頭がいい方だろう。
 そういうタイプには、ご主人様も頭がいいんだということを見せつけてやるのが多分有効だ。
 球面と太陽との角度から時差についてきっちりと説明してやれば、少しは俺のことを尊敬するに違いない。

 セリーのような美少女に尊敬されるのは気持ちがいい。
 それに、今後の生活を円滑に進めるのにも役立つだろう。
 何も俺が発見したのではなく過去の地球の科学者が考えたことだが。
 先人の努力に感謝。

「昔の偉い学者さんがそう主張したという話は知っています。でも、その話を私にしてくれた人は、こんなアホなことをいっているようだから駄目なんだと馬鹿にしていました」
「ちなみに、馬鹿な説だということの根拠は」
「大地が丸かったら、反対側に立っている人は落ちてしまいます」

 うーん。
 何と言っていいやら。
 いや、確かにそうかもしれないが。重力を知らなければ。

「時間空間魔法かは知らないが、俺にはいくつか使える魔法がある。このことは第三者には内密にな」
「かしこまりました」

 説明はあきらめよう。
 重力について話して深く突っ込まれたら、俺も知らないし。
 ご主人様の知識をアピールするつもりで持ち出したのに、何言ってんだこの馬鹿は、となりかねない。
 やはり不断の努力が大切なようだ。

「伝説では複数のジョブを持てる人もいたのか?」
「過去にそんな人がいたという伝説があります」
「俺についても、その類だと思っておけばいい」
「え?……」
「今日買うのは、装備品、リュックサック、木の桶くらいでいいか」

 強引に説明を打ち切って、ロクサーヌに話を振った。
 ロクサーヌも俺の今の発言に多少驚いているようだが、動揺はしていない。
 いまさらなんだろう。

「えっと。そうですね。服は商館から支給された服で今日明日は十分ですが、肌着は新しいのを買ってあげてください」
「分かった。あそこの洋品店でいいな」
「はい」

 服も買ったクーラタルの迷宮の向こう側にある洋品店でいい。

「あの。まだそんなに汚くないですし、そんなことまでしてもらうわけには」
「買っておけ。後、得物は何が?」

 というか、肌着なんだから明日着るのをどうするかという話だ。

「あ、ありがとうございます。得物は、前衛になるなら槌、中衛になるならば槍がいいです。槍の方が得意ですが、最前列では槍は振り回せません。味方に当たるのを避けるには槌の方がいいです。力はあるので、槌でも大丈夫です」

 槍は長いので、狭い迷宮内では扱いにくいのだろう。

「槍の場合なら、後ろから突くのか?」
「そうです。前衛の間から、勢いをつけて魔物に突き刺します。手数は少なくなりますが、威力は大きくなります」

 槍で攻撃させるというのも悪くはなさそうだ。
 とはいえ、現状では前衛に出てもらう必要がある。

「ご主人様のパーティーでは、私が魔物を抑えている間にご主人様の魔法で敵を殲滅するというのが今まで一つの形でした。火力としてはご主人様がいらっしゃるので、前衛で槌を振るってもらうのがいいでしょう」

 ロクサーヌも俺と同じ意見のようだ。

「え? 魔法ですか?」
「はい」
「どういうことでしょう?」

 セリーがロクサーヌと俺を交互に見やった。

「使えるのです」
「使えるのだ」
「えっと……」
「人に知られてよいものではないので、内密にな」

 納得いかない表情のセリーを無理に納得させる。

「は、はい。……本当に、複数のジョブが?」
「そうだ。そんなことよりも気になっているのだが、セリーは槌で魔物を倒したことがあるか?」

 そっちの方が問題だ。
 魔物を剣で倒すのがジョブ剣士の獲得条件で魔物を素手で倒すのが僧侶の獲得条件なら、槌で倒すのがジョブ鍛冶師の条件、ということはおおいにありうるのではないだろうか。
 鍛冶師がハンマーを振るうのはいかにもという感じがする。

「いいえ。ありません」
「そうか。それならば得物は槌にしよう」

 まずはそこら辺から攻めてみよう。

「は、はい?」

 セリーが微妙に首をひねりながらうなずいた。
 槌では魔物を倒したことがないといっているのに何故槌なのか、ということだろうか。
 確かに脈絡通ってない。
 細かいな。

「当面の得物は槌にする。ドワーフは槌を使うことが多いのか?」
「他の武器を使う人もいますが、普通に使われます。私も少しなら使ったことがあります」

 才能のあるドワーフなら普通に槌で魔物を倒したことがある、というくらい使われていれば十分だ。

「ロクサーヌは使ったことある?」
「私はありません。重すぎてスピードが減殺されかねません」

 なるほど。重い槌を持てば、ロクサーヌの美点であるあの回避能力が落ちることになるのだろう。
 軽い片手剣なればこその動きか。
 実際にはシミターだってそれほど軽くはないが。

「槌は両手で持つのか?」
「私はそうです。片手で持つ人もいますが、両手で振った方が威力が上がりますので」

 セリーに確認する。
 盾はいらないと。

「今はまだ装備品にお金をかける余裕がないので、装備品は安いものになるが了解してくれ」
「大丈夫です」
「そういえば、装備品の空きスキルって、分からないよな」

 なにげなく訊いてみた。

「スキルスロットのことでしょうか」
「知ってるのか?」
「昔の偉い学者さんがそういう説を唱えたそうです。装備品にはスキルスロットというものがあり、それを備えていない装備品にモンスターカードを融合しようとしてもスキルがつかない、という説です」

 なんとなく尋ねてみただけだが、そういう説があるらしい。
 まあ誰でも思いつきそうではあるか。

「昔の偉い学者様と同じことを知っているなんて、ご主人様はさすがです」
「あ、えっと。さっきの大地球体説の人とは別の学者さんです。でも、スキルスロットなんてドワーフでも知っている人は少ないのに、よくご存知ですね」

 昔の学者は偉かったということだ。
 同じことを唱えていた人がいるなら、装備品に空きスキルスロットがあるとそこにモンスターカードを融合できるという考えは正しそうではある。

「その説、今では駄目なのか?」
「知られてはいないですね。それに、誰もスキルスロットなんて見たことがありませんので」

 鑑定ができれば見えたりするのかもね。

「検証はされていないのですか」

 ロクサーヌが問う。
 検証は簡単だ。
 同じ装備品に何度もモンスターカードを融合させればいい。
 もしスキルスロットというものがあるなら、失敗する装備品は必ず失敗するし、一度でも失敗した装備品にその後融合できるなら、スキルスロットなどというものはないということだ。

 あれ?
 検証されていないはずがないな。

「どちらかといえば、否定する人の方が多いです」
「完全には否定されてないのか?」
「融合に失敗したとき、モンスターカードは失われ、装備品は素材に分解されてしまいます。素材が残るので装備品は作り直せますが、スキルスロット説を唱える人はまったく同じものが作られるのではないと主張しています」

 失敗すると装備品も壊れるのか。
 それでは検証は無理だ。
 空きのスキルスロットはあってもなくても鑑定以外で見た目の変化はない。
 やはりスキルスロット説は正しそうだ。

「セリーはどう思う」
「スキルスロット説の方は屁理屈をこねているだけに思えます。あれこれ難癖をつけて、否定させまいとしているようです。それで通るのならどんな批判もパスできてしまいます」

 セリーは不賛成なのか。
 しかし、いいたいことは分かる。
 反証可能性がないというやつだ。
 何らかの結果になったとき否定されるような説でなければ、まじめに検証するには値しない。

 そんなことまで考えつくとは。
 セリーはかなり頭がいいようだ。

「そうか。しかしよく知っていたな」
「すみません。いろいろと興味がありましたので。詳しい人に尋ねたりしていました」

 なんにせよ物知りだったり頭がいいことは役に立つだろう。
+注意+
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