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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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やさぐれ


 新しく迎えたセリーは、頭がよく、いろいろとものを知っていそうだ。
 この世界について全然知らない俺には役に立つだろう。

「すみません。何でも知ろうとするんじゃないと母からもよく怒られました」

 セリーが頭を下げる。

「別に悪くはないが」
「己の分を超えて知ろうとすることは身の破滅をもたらすと言われました」
「ああ、なるほど。うーん」

 そういう考えも分からないわけじゃない。
 身の程をわきまえろというやつだ。
 奴隷制度があるようなこの世界では普通のことなんだろう。

「ご主人様もよく実験をなさっていますし、いいと思いますよ」
「そうなのですか?」
「そうなんですよ」

 ロクサーヌ君、含むところがあるなら聞こうじゃないか。
 普通に笑顔であるところを見ると、ないのかもしれないが。

「まあ、ほどほどにな」
「はい」

 知ることが悪いとはいえないが、俺に深く突っ込まれても困ってしまう。
 魔法を使えることとか、詠唱省略のこととか。
 あと、パーティーメンバーのジョブを変更できることとか。
 これはどうやって説明しよう。

「そういえば、セリーのアイテムボックスの中には何も入ってないな?」
「入っていません」

 確認したので、セリーのジョブを村人Lv3に変更する。
 探索者がLv11になってしまうとまずいかもしれない。

「しかし村人Lv3はちょっと低いな」
「え?」

 セリーが不審そうな目で俺を見た。
 なんかまずったか。

「……」

 ロクサーヌに目をやると、困ったやつだみたいな顔で俺を見ている。
 いや。それはそうか。
 パーティーメンバーのジョブレベルが俺に分かることは二人とも知らない。

 ロクサーヌにすれば、またわけの分からないことをぼやいて、というところだろう。
 今日のロクサーヌは少し冷たい気がする。

「ええっと。英雄というジョブについて何か知っているか」

 しょうがないので、セリーに質問を出してごまかした。

「初代皇帝が就いたとされる伝説のジョブです」
「伝説なのか?」
「はい。実際にはそんなジョブは存在しないとひそかにいう人もいます。ギルドもありませんので」

 やはり英雄はレアのようだ。

「ではそのジョブを持っている人がいたら存在することの証明になるか」
「初代皇帝だけが就任したジョブですから。そんな人がいたら謀反の罪に問われるかもしれません」

 え?

 いや。ありうる、のだろうか。
 ないと思いたいが。
 初代皇帝だけが持っていたジョブだとすれば、ありえるかもしれない。

「え、えっと。じゃあ買い物に行くか」
「はい」

 これ以上話をごまかすのも大変なのでこの場は逃げ出すに限る。
 思案げな表情のロクサーヌは、何かに気づいたかもしれないが。

「買い物の後、俺は風呂を入れるので、夕食はロクサーヌとセリーで頼む。セリーは何か料理ができるか?」
「はい。ある程度はできます」
「では」

 セリーも料理はできるということなので、ロクサーヌを見てうなずいた。
 いろいろな意味を込めて。

「かしこまりました」
「あ、あの。風呂というのは、あのお風呂ですか」
「どの風呂かは分からないが、風呂だ」

 風呂に種類があるのだろうか、と思ったが、あるにはあるか。
 サウナとか、温泉とか、公衆浴場とか。

「分かりました」
「ロクサーヌとセリーはちょっと待っててくれ」

 逃げ出すように立ち上がる。
 二人をその場に残し、壁まで移動した。

「王侯貴族のかたは風呂に入ると聞いたことがあります。実はすごい人だったのでしょうか?」

 ワープで移動するとき、セリーがロクサーヌに話しかけるのを聞いた。

「いってらっしゃいませ、ご主人様」
「い、いってらっしゃいませ」

 二人が頭を下げたので、ロクサーヌがそれになんと答えたかは不明だ。
 冒険者ギルドまでワープし、防具屋に行く。

 防具屋で、皮のジャケット、革の帽子、革の靴を購入した。
 全部空きのスキルスロットつきだ。
 ロクサーヌに選ばせても時間がかかるだけだし。

 値段的にもおそらく能力的にも、皮装備の次は革装備になるらしい。
 手の装備品については、皮のミトンが一個あまっている。

 一度家に帰る。

「おかえりなさいませ、ご主人様」
「おかえりなさい」
「この皮の靴はロクサーヌに。ロクサーヌはサンダルブーツをセリーへ回せ」

 はいている皮の靴を脱いでロクサーヌに渡した。
 買ってきた革の靴をはく。

 セリーは、ロクサーヌのときと同様裸足だった。
 買うと分かっていれば予め靴を用意しておいたのだが。

「はい、ご主人様。ありがとうございます」
「セリーは皮のジャケットでいいか? 皮の鎧というわけにはいかないよな」

 アイテムボックスに入れておいた皮のジャケットも取り出す。
 皮の鎧よりも皮のジャケットの方が値段が高いのだから、本来なら皮の鎧をセリーに回すべきなのだろうが。

「た、確かに胸は小さいですけど……」

 セリーが下を向いてしまった。
 いや。別にそういう意味で言ったのではない。
 セクハラではない。
 断じてセクハラではない。

 そもそもセリーの胸が小さいかというと、必ずしもそうではない。
 だぼだぼの服の上からだが、それなりにはあるように見える。
 俺としてはむしろ楽しみだった。
 風呂場で洗い倒し、ベッドであれこれすることが。

 服の加減でふくらんでいるように見えるだけで、実は小さいのだろうか。

 ロクサーヌのように胸のある女性の場合、皮の鎧だとぴったりとフィットしすぎて、巨乳が強調されてしまう。
 だから、皮の鎧でもいいだろうということは、胸がないといっているに等しい。

「悪い。別にそういうことがいいたいわけじゃないんだ」
「いいんです。どうせ小さいですから」
「大丈夫ですよ。あんなものはどうせ飾りです」

 ロクサーヌが慰める。
 あんなの飾りです。エロい人にはそれが分からんのです。

 ますますいじけているセリーに黙って皮のジャケットを渡した。
 いじけたくなる気持ちは分かる。
 ロクサーヌよ。この件に関してはおまえが何を言おうと逆効果だ。
 セリーが靴をはくのを待って、武器屋に出かけた。


「これが槌です」

 ようやく気を取り直したセリーが店の一角に俺を引っ張る。
 ハンマーやらモーニングスターやらメイスやらが置いてあった。
 大きさも小さいのから大きいのまでさまざまだ。

「いろいろあるな」
「最初の安い槌はこれになります」

 セリーが示したところに、棍棒がおいてあった。
 棍棒じゃねえか。


棍棒 槌


 一応、槌に分類されるようだ。
 かなづちという感じではないが、槌には違いないのだろうか。
 空きのスキルスロットつきのものをいくつか選んで、セリーに渡す。

「このあたりがしっかりとした出来だな」
「ありがとうございます」

 三割引をさせるには、複数の武器を買わなくてはならない。
 今日のところは別に槌一本でいいのだが、もう一つは何にするか。
 俺の杖かロクサーヌのシミターをグレードアップするか。
 あるいは槍を買っておくべきか。

 思ったのだが、槍で魔物を倒すことによって獲得できるジョブがあるかもしれない。
 ランサーとかファランクスとか。


銅の槍 槍
スキル 空き


 店主に尋ねると、銅の槍が初心者向きのお求めやすい品らしい。
 銅の槍といっても柄の部分は木でできている。
 先端の刃のところが銅でできているのだろう。

「槌はそれでいいか?」
「はい。お願いします」

 セリーが選んだ棍棒を受け取った。
 店主に渡して、棍棒と銅の槍を買う。
 しめて八百四十ナール。銅の槍はさすがに少し高いようだ。

「じゃあ、これね」
「よろしいのですか?」

 棍棒をセリーに渡すと、驚かれた。
 目が輝いている。

「うっ。か、かまわない、だろう、多分」
「ありがとうございます」

 いけなかっただろうか。

「いけなかった?」
「いいえ。ただ、奴隷はあまり武器を持ち歩くことはありませんので」

 ロクサーヌがこっそりと教えてくれる。
 そうだったのか。
 セリーの反応を見ても、そういうものなんだろう。
 ロクサーヌはいつもシミターを腰に差しているし、いまさらだが。

 その後、洋品店で靴下やかぼちゃパンツ、雑貨屋でリュックサックと小さな木桶、房楊枝を購入した。
 食材も買って家に帰る。
 帰るのは冒険者ギルドから家までワープだから楽なもんだ。

「では、俺は風呂を入れるので夕食は頼む」
「かしこまりました」
「お風呂の方を手伝わなくてよろしいのでしょうか?」

 セリーが訊いてくる。

「暑くて大変なのでな」

 誰かがお湯を水がめから風呂桶に移してくれたりすると楽なのだが、そういうわけにもいかない。
 途中から風呂場の温度が上がって大変になる。
 風呂場の中で作業をするのは、誰か一人で十分だろう。
 湯を沸かすのは俺の魔法で行うのだから、俺がやるしかない。

 よく分かっていなさそうなセリーをおいて、風呂場に向かった。
 面倒だが、後のことを想えば苦にはならない。
 先に憂えて後で楽しむ。
 立派な人はこうでなくては。

「そんなにお食べになるのですか」

 途中、MPが減ったので台所に行くと、ロクサーヌとセリーが話していた。

「そうですね、これくらいは。セリーも遠慮しないで食べてくださいね」
「えっと。これはあの方の食事ですよね」
「三人分ですよ」
「三人分ですか?」

 何か食事の量に問題があるらしい。
 ドワーフは大食いなんだろうか。

「ええ」
「でも、お肉も上等のものがいっぱい入っていますし。あ。そういえばパンも上等なものだけを買っていました。私たちの分はないのかと思っていましたが、食べ残しをいただけるのですね」

 セリーは何を言っているのだろうか。
 聞いていられないので、声をかけて割り込む。

「ロクサーヌ、いつものやつ、頼めるか」
「はい、ご主人様」

 ロクサーヌが来たので、皮のグローブと木の盾を渡した。
 皮の帽子は直接ロクサーヌの頭の上に乗せる。
 乗せるときにはもちろんイヌミミをひとなでして。

「美味しい料理を私たちにもいただけるみたいで、ありがとうございます」

 続いてセリーもやってきた。
 旨いかどうかは君の腕次第だ。

「これから迷宮に行くけど、セリーも行ってみるか?」
「迷宮ですか」
「今回はセリーを戦わせることは多分ない。いってみれば見学だな。料理の手が放せないなら、来なくてもいい」
「まだ大丈夫なので、行ってもよろしいでしょうか」

 セリーも来るそうなので、皮のミトンをセリーに渡す。
 皮の帽子をセリーにもかぶせた。

「なんというか、すごいな」

 セリーの髪の毛はすごくこんもりしている。
 こんもりというか、もわもわというか。
 初めて見たときからちょっと気になっていた。

「ドワーフは髪の毛が多いので」
「そうなのか」
「ドワーフの男性は顔中がひげだらけになります。女性の場合ひげは生えませんが、代わりに髪の毛が大量に伸びるのです」
「そうなんだ」

 帽子を乗せても、頭皮まで距離がある。
 ヘルメットなどなくても衝撃を吸収しそうだ。
 帽子を動かすと、髪の毛全体が揺れた。
 特に癖毛ではないのに、頭がアフロになっている。

「横でまとめてすぐ切るようにしているのですが、どうしても多くなってしまいます」

 ドワーフが全世界にいる髪の毛の不自由な人々を敵に回す種族だということは分かった。

「ではいくか」

 俺も装備を身につけ、デュランダルを出す。
 ベイルの迷宮五階層に飛んだ。

 五階層なのは、ここの魔物ならばデュランダル一撃で屠れるからだ。
 長引けばセリーを戦いに巻き込むことになる。
 いきなり七階層に連れて行くのではなく、徐々に慣らしていくべきだろう。

 もう一つ、一撃の下に倒した方がかっこいい。
 新しくパーティーメンバーになったセリーにいいところを見せたい。
 美少女だしな。
 俺も俗物だな。

「えっと。あの。ここは」
「こっちです」

 戸惑っているセリーを尻目に、ロクサーヌが魔物のいる方向を指示する。
 フィールドウォークでは迷宮の中に直接飛べないから、戸惑うのだろう。

「そ、そういえば狼人族の一部の人は魔物のにおいが分かると聞いたことがあります。ロクサーヌさんも分かるのですか?」
「ええ」
「すごいです」

 俺よりも前にロクサーヌがかっこいいところを見せてしまった。
 まあしょうがない。

「いました」

 しばらく進むと、すぐに魔物と遭遇する。
 ロクサーヌが見つけたのはチープシープ二匹だ。

「あ。ほんとに。こんなに早く。さすがです」

 気持ちは分かる。
 セリーも探索者Lv10だったから、迷宮にはそれなりに入ったのだろう。

 ロクサーヌがいないときは、俺も延々と迷宮の洞窟をうろついたりした。
 結構エンカウントしないのだ。
 当たらないときにはそれこそ十分以上も。

 実にロクサーヌはありがたい。
 セリーの言葉に、ロクサーヌへの感謝の気持ちを新たにする。

「ありがとう、ロクサーヌ。では行くぞ」
「はい」

 二人で並んで進んだ。
 やってきた魔物にまずは一太刀。
 デュランダルを振り下ろして袈裟がけにする。
 羊が倒れた。

 見よ、この剣さばき。
 かっこいい。
 あまりにもかっこいい俺の姿。

 続いてロクサーヌが相手をしているチープシープを横から一突きする。
 こちらも一撃だ。
 魔物が倒れ、煙となって消えた。

「すごい。すごいです」

 そうだろうそうだろう。

「どうやったらあんなに華麗に避けられるのですか?」

 あら。
 どうやら、俺が戦っている隙にロクサーヌが魔物の攻撃を回避してみせたようだ。
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