レシハーム・アフター
用務員さんは勇者じゃ有りませんので第6巻、10月25日発売予定です。
ただ一部書店様にてすでに販売されているところがあるようです。
お手にとっていただければ幸いです<(_ _)>
(約一万六千字ほど)
ラロ、そして蔵人が戻らないまま、リヴカが蔵人の家を次の人に明け渡すべく掃除をしてから、数日後のこと。ミド大陸の勇者たちがレシハームの南東にあるアルバウムの租借地に到着したという連絡が協会に入った。
もっとも、一介の協会職員でしかないリヴカに何か影響があるということもなく、リヴカは日常業務を行いながら、帰らない蔵人たちのことを案じていた。
蔵人と話し合ってみたいこともある。
先日伝えられた、賢者の言葉。ファルシャの死の真相。
レシハームを外から見る蔵人ならばどんな結論を出すか、己の結論とどう違っているのかを。
『――僕の雇っている者が仕事中にミスをして、ファルシャという少年になすりつけを行ったようなんだ。ただ、その人は責任を感じ、仕事を終えると自害してしまった。巻き込んでしまった少年には本当に申し訳ない』
トールは本来ならば隠しても仕方ないような身内のミスを認めた。その沈痛な表情から嘘は見えなかった。
リヴカは驚き、怒りが込み上げてきたが、その怒りの矛先をどこに向ければいいかわからなかった。
賢者の部下などどれほど数がいるのか。拡大解釈をすれば精霊教徒のすべてが部下ともいえる。そのすべての責任を賢者に負わすことなどできなかった。
もしリヴカが致命的なミスをしたとき、協会の支部長が責任を取るかと言えば、おそらくは取らない。リヴカが罰せられ、リヴカの上司が上層部に叱責される程度であろう。ましてやなすりつけた当事者は、トールの言葉を信じるなら、もう自害している。
リヴカがその自害した情報員はどんな仕事をしていたのかと聞くと、トールは答えた。
『――彼の持ち帰った情報はギディオンを失脚させる上でとても重要なものだった』
だから、なんだ、とも言えるし、ファルシャの死は無駄ではなかった、ともいえる。そもそもパーティを逃がしきっただけでもファルシャの死は無駄では無いが。
自治区を弾圧していた急先鋒であるラザラスが失脚し、ギディオンの影響力が削がれたからといって、すぐに何か好転したということはない。
だが、自治区の雰囲気や二級市民が暮らすこの協会の周辺はなんとなく明るい。
だからというわけではないが、リヴカはそれ以上、トールに何も言えなかった。
証拠も無く、当人は自害している。
もちろん賢者に傷をつけたくないという思いも、精霊教徒としてはあった。
今までなら、それに違和感などなかったかもしれない。だが、レシハームの外にいる蔵人という存在と親しくなり、その視点を想像しようと努力すると、どこにか違和感があった。
だからこそ、蔵人と話し合ってみたかった。
翌朝。
リヴカは朝の祈りを終えると、朝食を食べ始める。
小さな食卓テーブルに座ってパンをかじり、温めた乳を飲んでいると、ふと蔵人の絵が目に入った。
蔵人の貸家から回収してきた何枚もある内の一枚を、壁に飾っていた。
レシハームで蔵人が出会ったであろう人物たちが集った絵である。
朝の祈りを終え、食事を食べ、蔵人の絵を見つめる。いつのまにか日課のようなものになっていた。
それをじっと見つめていると、かつてあった疼痛がなくなっていることに気づく。
ただまだどこかむず痒かった。まるで瘡蓋のように。
リヴカはしばらく見つめていたが、立ち上がり、家を出た。仕事の時間である。
今日もまたいつもと変らぬ日々が始まる。
だが蔵人たちが帰って来ない日常が、いつもの日常に変ってしまうのではないかという恐れが、いつも心のどこかにあった。
「――リヴカさんっ」
協会に出勤した途端、ハンナがいつものように泣きついてくる。
ただ、今回は少し事情が違っていた。
「――イ、イ、イっ」
「落ち着いて」
なぜか妙に興奮しているハンナを宥め、そして用件を聞き出した。
このときばかりは、リヴカもさすがに驚いた。
********
アルバウム王国の東港であるニルレアンを出発したハヤトたちは、サウラン大陸にある精霊教国レシハームあるアルバウムの租借地グァザに到着した。グァザはレシハーム南東の海岸線沿いにあり、サウラン砂漠と隣接している。街というよりは基地に近い。
早朝。ハヤトたちは砂漠に近づくほどに上がっていく気温に驚きながらも船を降りると、この地にいた召喚者たちが出迎えた。
「久しぶりだね、学園以来かな?」
こちらではコースケ・サトーと呼ばれている佐藤弘祐が、召喚者たちの中から一歩進み出てハヤトと握手した。
コースケは召喚当時高校三年生であったこともあり、ハヤトとそれほど親しいわけではない。そもそも印象が地味であったことからハヤトはほとんど覚えていなかった。
「……お久しぶりです。先輩もお変わりなく」
ハヤトは大事の前の小事と当たり障りなく応えるが、コースケという先輩がこれほど逞しい身体をしていたかと内心で首を捻っていた。
コースケはアルバウムの学園を出てすぐにアルバウムにスカウトされ、ここグァザでサウラン砂漠横断のために訓練を行っていた。自らの加護である『大地の眼』を使いこなすと共に、砂漠でも不自由なく活動するために。
そのあと、何人かの召喚者たちもグァザでの訓練に合流したが、一番先にここで訓練していたコースケが自然、リーダーを引き受けるような形になっていた。
「横断は十日後を予定している。よろしく頼むよ」
「……聞いていたとおりですね。少し準備もありますが、間に合うかと思います」
ハヤトがそう答えると、コースケは場所を譲った。
「――随分と活躍しているようだね、こっちの商人までハヤトのことを知っていたよ」
『帆船創造』や『有限収納』、『魔力譲渡』といった日本にいた頃から友人たちと再会を喜んでいたトールが、ハヤトに手を差し出した。
「お久しぶりです。そちらこそ、賢者様と呼ばれているとか」
「普通に話していいよ。ああ、うん、それはまあ、周りが言うことだからね。話半分で」
『精霊召喚』という精霊を一つだけ召喚することができる加護を持つトールは、精霊を信仰するレシハームにお飾りで招聘されたと言われている。
しかしトールは衛生観念の徹底により出生率を向上させ、傷病の悪化を防ぎ、他にも海藻食を広め、砂漠の緑化技術を研究、さらにはレシハームを襲った先の干魃では救荒作物を見つけて提案した。
これらはすべて対価なく提供され、トールは賢者と称えられるまでになっていた。ギディオンの影響力を削いだ今、トールと繋がりの深い穏健派の議員の力も含めれば賢者という名に相応しいだろう。
「こっちも同じだ。話半分に聞いておいてくれ」
言われたとおりに早くも言葉を崩したハヤトがそう答えると、トールも苦笑した。
「そのとおりだね。まあ、つもる話は中でしようか。これからまだまだ暑くなるからね」
その言葉に、すでにこの時点で猛烈な暑さにうんざりしていたハヤトと他の召喚者たちがさらに嫌そうな顔をした。
猛烈な暑さにうんざりしながらも、召喚者たちが再会を喜び合ったその夜。
ハヤトはベレツにあるトールの私室を訪れていた。
年代物の頑丈な木製の机と応対客用ソファーしかない質素な部屋にはハヤトとトール、そして三人の召喚者がいた。
『暗算』のユキコ、『劣化模倣』のアキラ、そしてギディオンにすら隠しとおした吉岡蓮、レン・ヨシオカであった。
女子二人は加護を発揮しきれなかったり、加護をいいように使われるのを恐れて加護を過少申告し、結果トールに保護されたのだが、レンはあまりに気弱過ぎるためにアルバウムに使い潰されることを恐れたハヤトが、トールの元に送って匿ってもらっていた者である。
「ヒビキとカナデ、ヤマトを守ってくれたようで、助かったよ」
アルバウムに協力してはいたが、ハヤトの傘の下にいた『有限収納』の五十嵐響、『魔力譲渡』の五十嵐奏、『帆船創造』の名波大和は日本にいた頃から親しくしているトールの友人たちであった。
「三人にはこちらも助けられている。お互いさまだ。それにレンのことは本当に助かった。……今回はあんたも参加すると考えていいんだよな?」
「もちろん。ギディオンのほうもどうにか片付いたからね」
そもそもレシハームにサウラン横断をするよう余力はない。北部のアスハム教国と自治区に潜伏するテロリスト、さらにはサウラン砂漠から溢れ出てくる魔獣の対処で手一杯であった。今油断をして、レシハームを失うわけにはいかなかった。
ギディオンの財力ならば可能であるが、そうするとさらにギディオンの影響力が増してしまう。
だからこそトール、いやレシハームの穏健派はギディオンの力を削ぐ必要があった。
「そうか。期待させてもらう」
「はは、勘弁してよ。僕ができるのはが後方支援さ。サウランの資料は嫌ってほど調べたからね」
「――おれの目を誤魔化せると思うなよ? 」
ハヤトはトールが机の脇に立てかけている長杖に目をやった。
「ただの精霊魔法士用の杖だよ」
それからいくつか情報交換して、夜も更けた頃、トールが切り出した。
「……ところで、帰る手段は見つかった?」
「ないな。あったとしても隠しているという可能性はあるが、それに近いような技術すらない。アリスに召喚した魔法式を研究してもらってるが、やはり召喚と送還は別物のようだ。適当に飛ばすなら理論上はできないこともないらしいが、指定する場所に帰るというのが困難を極めるらしい」
「そうか。こっちもユキコとアキラに手当たり次第やってもらってるけど、見つからないね」
二人の加護のことはハヤトも把握していた。
「――帰りたいか?」
「――僕は帰らない。ただ、帰りたい人たちは帰してあげたい」
きっぱりと言い切ったトールの目をじっと見て、ハヤトは頷いた。
「おれも同じだ。どんな力を持っていようが、帰りたい者は帰す。だが、おれは帰らない」
お互いに捨てられないものが多すぎた。
それからしばらく話を続けてから、ハヤトはレンを連れて部屋を出ていった。
出ていったドアを、トールはしばらくじっと見つめていた。
いくつか懸念があった。
弾道鳩で秘密裏に連絡を取り合い、ハヤトが他の勇者たちの協力を得て、国を造ろうとしているのは知っていた。
サウラン砂漠を横断し、誰のものでもないサウラン大陸の東端に国を造る。日本にいた頃ならば夢物語と笑ったかもしれないが、今この現状では悪い手ではない。
ただ、サウラン砂漠の先に現地民がいたときはどうするか。国家があったときはどうするか。あまりにも過酷な環境であると予想されるため人種に類する存在はいないとされているが、存在した場合、国造りが頓挫する恐れがある。
それに国造りに適した地なのかもわからない。
これはもちろんハヤトも認識している問題であるが、何か秘策があるらしい。
他にも北部列強が現地民をどう扱うかも課題であった。国造りがなくとも、アルバウムから要請を受けた以上は横断自体を避けることはできないが、未だ植民地が残り、骨人種を人と認めない世界である。どうなるかは、想像に難くない。
それでも、もう進むしかなかった。
トールはそう決めていた。
レシハームで暮らし、この地の現状を知り、手を尽くした。それでもなお救えない者、こぼれ落ちた者、そして犠牲にしてしまった者がいた。自分たちの身とて決して安全とはいえなかった。
レシハームは融和派が主導権を握った。だが、その融和派がいつ過激な行動を起こさないとは限らない。それにそれでもなお救えない者がいる。
国造りは自分たちの身を自分たちで守りつつ、そんな救えない者、差別や迫害の恐れがある者たちを保護することを可能とする。もちろん国である以上、国のルールを守れない者まで受け入れる気はないが、多民族国家というものは可能であるはずである。最初から民主主義など言わない。まずは王政を敷き、その下に議会を置く。そして近代国家として育てていくのである。日本にいた頃に蓄積した知識を、叩き台にすればいい。
机上の空論という言葉はいつも脳裏にあるが、それでもやるほかない。
こぼれ落ちる命を、自分たちの命を守るためには、前に進むしかないのだから。
だからこそ、リヴカには真実を告げつつも、こちらの弱みは見せなかった。
賢者の部下が仕事でミスをして、誰かを巻き込んだ。しかしもう当人は自害した。それで話は終わり。
卑怯と罵られようが、これしかできない。すれば、すべてが無駄になる。
賢者の影響力が落ちれば、ギディオンが顔を覗かせる。穏健派への攻撃材料になる。
トールはこの世界に骨を埋める覚悟をしていた。
もう退く道はない。
それが、己が行動で命を失った者たちに報いることなのだと。
それが、故郷の融和を願った諜報員や必死にこの地で生きようとしていた少年の死に向き合うことなのだと。
無論、自らの大切なものを守るために、何かを別の何かを犠牲にすることが正しいなどとは思わない。
だが、そこで歩みを止めてしまえば、すべてが無に帰する。
ファルシャという少年の死も、自分に従ってくれる者の死も、清も濁も併せのまなければ前に進めないならば、呑むしかない。
いつか真実を知られ、罵られるのは覚悟していた。
この胸に刃が突き立つ可能性すらも。
じっとドアを見つめていたトールの背後に、全身黒ずくめの格好をした男が音もなく現れた。
「――あとは任せたよ」
トールの短い言葉に、黒ずくめの男はただ頷いた。
影なき牙は死に、弟がすべてを引き継いだ。
影なき牙は、その影となったのである。
運命の悪戯か、それともトールの加護がなんらかの作用を起こしたのか、それとも最後のトールの言葉がその心に届いたのかはわからない。
だが、使える者は使う。
トールはもう退かない。
*******
一方、ハヤトたちの船に同乗してサウランに到着したイライダたちは、ハヤトたちと別れ、レシハームの首都ベレツにいた。
ベレツの協会にあるカフェで視線を集めながら、それを無視して食事をする二人。
『蜂撃』とも名高いイライダ、それに並ぶのが腕利きのハンターらしいとなれば誰もが放っておくわけもなく、今も周囲のハンターたちがちらちらと視線を送っていた。
「――初めまして、『砂漠へ』を担当させていただきます、ダニエル・レビと申します」
そこへ協会の職員がやってきて、そう言った。
例に漏れず精霊教徒の男の決まりとして伸ばしている長い髪を編み込んで、銀環で止めていた。背筋も伸びているし、客観的に見れば紳士然としたイイ男である。
「言っただろ? ここへは仕事をしに来たわけじゃないと」
レシハームの協会には独特の制度があり、それぞれのハンターやパーティーに担当職員がつくということはイライダも知っていた。だから担当はいらないと、受付で最初に断っておいたはずであった。
「はい。しかし先日の討伐作戦の失敗もあって、今のレシハームはハンターが不足しておりまして、ぜひ『砂漠へ』にはご協力を仰ぎたいと」
「……なら、クランドってハンターがどこにいるかわかるかい?」
今のイライダは三つ星である。他のハンターの動向知りたいという多少無理な願いも容易に通る。
男の名前が出たことを少し気にしながらもダニエルは調べにいって、すぐに戻ってきた。
「……サウラン砂漠での依頼中にアンデッドが発生し、遭難。死亡は確認されておりませんが、行方不明となっております」
イライダとヨビは顔を見合わせた。
「ここに来てからの詳しいことはわかるかい?」
「いえ、担当についていた職員ならわかりますが……」
「そうかい。どこの職員だい?」
イライダは自分たちのほうから行くつもりであったが、ここで依頼を受けてもらいたい、そしてできればお近づきになりたいダニエルにとってそれはよろしくない。
「いえ、こちらに来るように連絡します」
「……わかったよ。それと、元のケイグバードに住んでいた巨人種たちのことを調べてくれないか? そうしたらその間にアタシたちも依頼を受けたっていい」
イライダがこの地に来た理由。それはかつてケイグバードにいたサウラン固有の巨人種を調べるため。
いや、正確に言えば、自らの『母』を探すためであった。
ケイグバードと聞いて、生粋のレシハーム人であるダニエルの口元が僅かにひくついた。
「……それはミド大陸の巨人種の総意としての調査ですか?」
エルフやドワーフ、巨人種たちはこの国で何があったかをおおよそ把握している。だからといってなにかするわけではないが、それが生粋のレシハーム人には言いがかりに聞こえているらしい。彼らの知る事実は、微妙にねじ曲げられているのだからこの反応も当然といえば当然であった。
「まさか。これはアタシの個人的な問題さ」
母親を探すため、などとはあえて言わなかった。
「わかりました。可能な限り、調査してみます」
ダニエルはしれっとそう言ったが、調査などろくにしないだろうなとイライダは察し、こちらも一つの依頼だけを受けて、平行して独自に調査をすることにした。
とはいえ、言葉の問題があった。協会内はミド大陸の言葉で通じるが、自治区の情報を集めるとなればそうもいかない。調査しないだろうなと思いながらもダニエルに話したのは、より大きく手を広げるためであった。
「まずは……あそこかな」
協会を出たイライダはベレツの街を歩きながら、協会で集めた情報を元に行動を始めていた。
「あそこ?」
「蛇の道は蛇ってね」
イライダが向かった先は、情報屋だった。ここならばレシハームや自治区の言葉がわからなくても欲しい情報を得ることができ、情報がなくても筋の良い通訳を雇うことができる。
「クランドがいればよかったんだけどねぇ」
「……ご主人様は無事でしょうか」
「クランドはともかくユキシロがいるからねえ。どうにかなってそうな気がするよ。あれも意外にしぶといしね」
イライダとてよもや遭難して行方不明などとは思わなかった。雪白がいるから蔵人が死んでいるなどとはまったく思っていないが、それでも多少は心配している。
「ああ、雪白さんがいれば安心ですね」
雪白の評価が最上であるのに対して、蔵人の評価があれなことになっているが、親しいからこその言葉である。
ヨビも蔵人を追ってはいたが、いるといった場所にいないとなれば、しばらくはイライダと行動することに決めていた。イライダにも返しきれない恩があるのだから。
そうしてイライダたちは情報屋へ行き、通訳を見つけ、母親の情報を探しながら、依頼をかたづけた。
三日後。
「――だからっ、なんで俺と付き合えねぇっ」
「申し訳ありません」
依頼を終えた夕暮れに協会へ戻ってきたイライダたちは、珍しい半円眼鏡をかけた真面目そうな女性職員がハンターに絡まれているのを目撃した。
そしてすぐに察する。
担当職員が受け持ちハンターと結婚する。それは担当制度の裏の顔であったが、すべてが上手くいくわけではない。現にイライダたちもダニエルやその仲間の職員からしつこく言い寄られ、心底辟易していた。ハンターと職員という差はあれど、同じであった。
「――はいはい、そこまで。しつこい男は嫌われるよ」
イライダが割って入った。
ハンターは頭に血が上っていたのか、怒りのままにイライダを睨みつけようとして、固まった。
巨人種のハンターというだけで人種のハンターが喧嘩を売ることはほとんどない。たとえそれが女だとしても。それにその横には、ごつい鈍器を腰に二本もぶら下げた蝙蝠系獣人種である。
が、男も引けない。
「なんっ、うっ――」
しかし、言葉は喉に詰まり、うめき声だけが漏れる。
「押しも必要だが、すっぱりと身を退くのも男だろ?」
イライダの置いた手が、男の肩をぎりぎりと圧迫していた。
くそっ、と男が振り払うのに任せてイライダが手を放すと、男はふんっと鼻を鳴らして、そそくさ協会を出ていった。
「やれやれ、担当制度なんてもんがあるからこうなるんだ」
イライダがそう言うと、生真面目そうな女性職員は困ったような顔をしてそれには答えず、礼を言った。
「ありがとうございます。……イライダ・バーギンさんとヨビさんでしょうか?」
イライダとヨビが頷くと、職員は名乗った。
「リヴカ・シモンズと申します。クランドさんの担当をしておりました」
とんだ偶然もあったもので、イライダとヨビは顔を見合わせ、そしてリヴカに改めて名乗ったのであった。
リヴカは焦るハンナからイライダ・バーギンさんが首都ベレツで待っていると連絡を受け、急いでこちらに来た。用件は蔵人のことであるというのは、なんとなく察しはついていた。
「……そうかい」
この国に来てからの蔵人のおおよその行動と、現時点ではやはり行方不明であるというところまでリヴカは語り終えた。
「それと、旧ケイグバードの巨人種についてですが――」
リヴカがそう切り出すと、イライダが顔を上げた。
ちらりと小耳に挟んだので調べておきましたと当然のように言うリヴカが、どことなくこの国の職員らしくなくて、イライダはまじまじと見つめてしまった。
「アスハム教国のほうへ逃げ込んだ者がほとんどで、あとはそれぞれの自治区に散っております。どなたか、お探しの人がおられるのでしょうか?」
「……ウィルダという女だ。身の丈を超える大槍の使い手で、鼻の辺りに横一文字の傷があると聞いている。王族とも親しかったらしい」
リヴカはじっと何かを考えている風であったが、話し出す。
「かつてケイグバードを統治していた王族はすべて死亡したとされていますが、生き残った王女の噂というか伝説があります。末の王女は密かに逃がされ、海を越えて龍華国に流れついたというもの。そしてもう一つは大槍を操る傷のある女戦士に守られ、サウラン砂漠へ逃げ込んだ、というもの」
これは亡国を憂う者が生んだ、ただの伝説かもしれないが、イライダの母と骨人種の王女を匿った巨人種はよく似ていた。
イライダは何も言わず横にいるヨビを見る。
ヨビの目的である蔵人は目下サウラン砂漠で行方不明。だが、偶然にもイライダの母も砂漠に消えたという。現状、龍華国の内陸には入れないことを考えれば、サウラン砂漠に母親が逃げ込んだほうに賭けるしかない。
だが、サウラン砂漠は別名『死の砂漠』。安易に飛び込める場所では無い。
「――わたしはかまいません。足手まといでないなら、一緒につれていってください」
足手まといなわけがない。イライダにとってもヨビは背中を任せてもいいほどの女となっていた。
「……それにしても、奇遇奇縁は重なるのかね」
イライダはふと、船の上で鍛えたどことなく不安感の漂う勇者たちと、ハヤトの言葉を思い出していた。
********
サウラン砂漠突入を三日後に控えたグァザの基地本部にコースケとその上司、そしてラファルと名乗る男の姿があった。
「――奴らの動きに注意しろ。それと、横断には私も行く。『互助会』の代理人としてな」
元体育教師のゴウダは現在アルバウムに雇われている。加護は『双身』と言ってもう一人の自分を作り出すというもの。『双身』はどれだけ離れていても己が身として行動することが可能で、お互いの情報が共有できる。ただ『双身』はオリジナルの十分の一程度の力しか発揮することができないため、今はリアルタイムの遠隔通信士として情報に携わっている。職務上それほど自由は無いが
かつてカジノの知識をアルバウムに提供したのがゴウダだとも言われているが、それ以外は役職すら不明。ただ少なくともコースケよりは上の地位にいるらしかった。
であれば、組織人としては否やは無い。
たとえ目の前の男が全身に得体の知れない魔法具を常時発動していると『大地の眼』で察知できたとしても、ラファルなどというあからさまに平凡すぎる名前が偽名臭くても、それはかわらない。
ちなみにラファルというのは、太陽神サンドラに遣える風の天使の名前であるが、男性の名前としては一般的なものである。
コースケは出来る限りのことを述べた。
「ハヤトを始めとした要となる勇者の監視をさらに強めます。『浮艦』を始めとした主要施設への出入りを制限、公的なスケジュールを組んで勇者たちを分断するよう政府関係者に働きかけます」
「いや、勇者の監視は全員だ。加護の全貌を明かしていない勇者もいるはずだ。何人かこれまでの行動と合わない不可解な動きをする者がいることがわかっている」
帰還手段が見つかれば地球に帰るという条件でアルバウムに帰化したコースケにとって、この世界の超大国といっても過言ではないアルバウムに逆らう者の気が知れなかった。
逆らわずとも協力すれば、無茶を命じられるようなこともない。元の世界の軍人のような扱いではあるが、それはコースケが望んだからに過ぎない。自らの生存力を高めながら、自分の力を生かせる、さらにはファンタジーのような世界で冒険を出来ると、サウラン砂漠横断になんら不服はない。
今のところは大きな戦争がないから、ともいえるが、戦争で殺すことと盗賊や海賊退治で殺すことにどれほどの差があるといいうのか。殺すという時点でもはや正義も悪もないというのに。
「わか――」
「――勇者がっ、砂漠に突入しましたっ! 」
コースケの言葉を遮って、兵士が駆け込んできた。
突然の出来事にコースケは一瞬思考停止しかけるも、すぐに兵士を問いただす。
「――監視はっ。いや、いま奴らはどこにいるっ」
ハヤトたちはどこから見つけてきたのか、大型帆船のようなもので砂漠へ突っ込んでいったとか。
いかに『帆船創造』だろうとも、砂漠を進む船を召喚はできない。それはもはや帆船というカテゴリーでは無いからである。そもそもどうやって監視の目を潜ったというのか。
「――艦長、出るぞ」
ラファルがコースケの上司である艦長に告げた。確かに準備自体はおおよそ整っている。
「ですが、他の国に――」
「――出し抜かれるほうが悪いといま理解しただろう? 安心しろ、後の始末は彼がしてくれる」
彼とはゴウダのことであるが、そんなことができるゴウダがますますコースケは気になった。
「――分不相応な好奇心は身をぼすぞ」
その一言でコースケは詮索を辞めた。
郷に入れば、郷に従え。あとは日本にいた頃となんらかわらない。大きな野望を持つこともなく、己の能力の範囲内で、普通に生きていく。そのためには長い物に巻かれることもあるだろうが、それが普通だと思っている。ハヤトのように厚顔無恥には生きていられないし、トールのように強くも賢くもない。
『大地の眼』というのはサンドラ教の神官に名付けてもらった。そうしたほうが良さそうな雰囲気があった。すべてを見とおす神の眼ほどではないが、それに次ぐ、大地のすべてを見とおす眼、というサンドラ教の啓典に伝わる言葉であるという。
コースケには啓典の難しいことはわからなかったが、確かに神の眼ほどではない自分の能力にはぴったりな気がして受け入れた。
ついでに入信もしたが、特に何かを求められてもいない。日本にいたときの仏教徒とほとんどかわらないのだから、それでこの地の人に受け入れられ安くなるのならそれでよかった。
「――コースケ、頼むぞ」
正規の組織図に属さないコースケを艦長は気楽に、しかし厳しく扱ってくれた。だからこそ、コースケも信頼していた。
「――はいっ」
他の国に知られぬように密やかに非常呼集がかけられると、訓練された勇者や兵士たちは迅速に浮艦へ集まり、出航の最終準備を始めた。
コースケは真っ先に艦首に立って、『大地の眼』を発動する。
すると砂漠の闇が払われ、視界がクリアになっていく。同時に風や砂の動きの微細に至るまでを感じ取れるようになった。
コースケはいらない情報を遮断し、船の姿を探した
すぐに、遙か遙か前方にハヤトたちの船を捉える。
これで問題ない。『大地の眼』は捉えた対象の動きを記憶する。
ただし、『大地の眼』は精霊までは見ることができない。ミド大陸よりも精霊が荒々しく、精霊の悪戯が頻発するサウラン砂漠を横断するために、『精霊の最愛』をもつハヤトが必要であった。
それゆえに、本来ならばハヤトの補助として艦の進行を手助けする予定であったのだが、こうなってしまえばハヤトの船を追跡して、横断を決行するしかなかった。
だが、推測するに、ハヤトたちの船はおそらく『船舶創造』が生み出し、なんらかの手段でそれを陸上に用いているだけ。いくらサウラン砂漠には砂が流れる場所があるとはいえ、最初はただの砂漠である。ただの海船では進むだけでも難しいはずである。
アルバウム側には最新鋭の『浮艦』がある。『浮遊』の術式を砂漠横断用に十数年をかけて改造した結果、艦を浮かせて砂漠を進むことを可能にした。推進には精霊球による精霊魔法と魔法具を併用する。
舵取りの『大地の眼』、さらなる推進力のために『風の外套』や『岩窟鎧』、水を無限に生み出せる『水珠の杖』、砂漠の温度対策に『氷姫』と『業火の弓』。そこに砂漠に特化した特殊部隊、艦長、交渉員、ラファルを加えたのが浮艦の総員である。
残念ながら『有限収納』がハヤトと行ってしまったために、食料こそ浮艦に積んでいくことになるが、水を積む必要がないため充分に詰め込める。
何も問題はない。
浮艦は迅速にグァザを出航した。
だがしばらくして、コースケたちにも誤算が発生した。
ほんの数人ずつ、エルロドリアナやユーリフランツの精鋭である特殊部隊が潜り込んでいた。砂漠仕様の小型浮艇で浮艦に丈夫なロープを結んでいたという。なんとも原始的な方法だが、それゆえに気づけなかったらしい。
「……仕方有るまい」
ラファルがそう呟いた。元々合同で横断する予定であったのだから、拒絶もできない。なにより、今さら引き返すわけにはいかない。『大地の眼』とはいえ、いつまでもハヤトたちの航跡を記憶し続けられるわけではない。
「……とりあえず及第点といったところか」
出し抜かれはしたが、ほんの些細なミスというレベルである。追跡は可能。しかも、ハヤトたちの中に『虫』も潜り込ませている。万が一、先に到着されても問題はない。
ラファルが小さく笑う姿を、コースケは頼もしいような、不気味なような気分でちら見していた。
訓練された兵士たちである。閉鎖空間でも争いなど起きるわけもなく、艦長の人柄も手伝って問題なく横断、いや追跡は続いた。
攻撃を仕掛ける必要などなく、横断することが重要である。
どれだけ砂漠を進んだが、砂漠の常識外れの気候のせいで日にち感覚も危うくなってきた頃、先を行くハヤトたちの船が、原始的ともいえる舟の集合体と接触した。
コースケはさらに遠くを見つめ、大きな街を見つけ、艦長に報告。ラファルとも相談の末に、そちらに行くことになった。
コースケはそこで出会うことになる。
この砂漠最大の部族のアルワラ族と奴隷となったハンター、そしてどす黒い怨念を滾らせた赤い獅子に。
*****
遠ざかる基地を見て、ハヤトは一つ息を吐いた。
まずは第一関門突破というところか。
アルバウムの紐付きのままサウランを横断してしまえば、到達した土地の領有権をアルバウムが主張することになる。それでは、もしその土地に原住民がいた場合に大きな問題が生じるのは地球の歴史を見ても明らかであった。
だからこそ、ハヤトたちはアルバウムを出し抜く必要が、一切アルバウムの支援を受けないで、横断を成功させる必要があった。
『帆船創造』を陸上で発動して強引に『砂船』とし、トールが匿っていたレン・ヨシオカの力、『傀儡創造』の力で砂船を動かし、舵取りは『精霊の最愛』で砂や風に尋ねながら進む。
召喚当初ならともかく、今のレンならば砂の上で動く運搬用ゴーレムも創造可能であるが、それでは疲労が激しく、自衛にも手が回らなくなる。だからこその『帆船創造』であった。
他にもトールたちを筆頭に、『結界師』、『治癒の千手』、『有限収納』、『魔力譲渡』、『魔獣使い』、『不安定な地図と索敵』、『飛行鎧』、『重装鎧』など、サウラン砂漠を横断できる人員を揃えた。無論、『暁の翼』やそれぞれの仲間も乗っている。
食料と水に関しても、『有限収納』がすでに多量に備蓄していた。そのために、ハヤトが監獄に入っている間、フォンたちが各地を巡ってさまざまな種族から物資を買い集め、魔獣調査がてら諸国放浪していたアキカワが食料を買い集めていたのだ。
本来であれば、『有限収納』にそれほどのものは入らない、ということになっている。実際は能力を過少申告していたに過ぎず、ほぼ無限に入る。ちなみに『魔力譲渡』もリトルなどとはいえないくらいの魔力を補給できたりする。
アルバウムの追跡があることも理解しているが、横断をしなければならないという前提ではこればかりは防ぎようがない。基地の人員を皆殺しにすることなどできないのだから。
アルバウムよりも先に到達すればいいだけのこと。
もしそこに原住民がいた場合は……、とそこまで考えて、ハヤトは魔獣使いの猟獣たちの影に隠れるように立つローブの女、ベアトリクスを見つめた。
長い銀髪に黒い瞳、蒼白い肌は氷の彫刻さえ思わせるほど冴え冴えとしている。クラシックな黒い外套に身を包んだ姿は、周囲にいる魔獣たちを思えばまるで闇の世界の女王のようにも見えた。
ベアトリクスはミド大陸存在しない『吸血種』の女、それも王族であった。とある事故でアンクワールの遺跡の奥に放り込まれたらしく、そこでハヤトと出会うことになった。
「――やっとここまで来たわね」
蠱惑的な声に脳の奥から痺れるような感覚が広がるが、それはすぐに甘い余韻を残して消えていく。
「でも、随分と性急ね。わたくしのためかしら? 」
さすがの吸血種もサウラン砂漠を独力で越えることは難しく、ハヤトたちに便乗することになった。
「違う。こっちの事情だ」
国造りを急ぐ理由。それは、召喚者たちが本当の意味でばらばらになる前に、自分の意思以外のあらゆる力に影響されてどうにかなってしまう前に、全員を一つのところに帰属させておきたかった。誰も使い潰させないためにも。
もし帰る手段が見つかったときに敵同士になって誰かが誰かを殺す、そんなことになってしまうのは避けたかった。何人かはすでに離脱しているし、どこに帰属しているかわからない者たちもいるが、少なくとも七割前後は集められる心算であった。
ハヤト一人であればこんな確信は得られなかっただろうが、アキカワやタジマ、イサナにトールといった協力者の存在がハヤトの確信を深めた。
かつてのハヤトでは仲間を頼ることなどなかった、いやそもそも仲間すらいなかったのだから、自分でも驚いている。だが、それは嫌な感情ではなかった。
「……彼も見つけて誘いたかったが」
イライダは秘密を守り、蔵人がサウラン砂漠にいるかもしれないという情報をハヤトに明かさなかった。
「彼? ……ああ、それが貴方の『罪』ね」
ベアトリクスが秘密を漏らすことはない。そもそもベアトリクス自体が秘密の塊のような女だった。
「本来であれば、真摯に許しを乞わなくてはならない相手だが、こんな状況下ではそうも言ってられない」
「へぇ、どんな男なの?」
そう聞かれて、蔵人のことを思い出したハヤトはなんともいえない顔をした。
「貴方にそんな顔をさせるなんてね。どんな豪傑かしら」
「……普通の人だ。そう普通の。だが、誰にもそれを譲らない。どれだけ力の差があろうとも」
蔵人個人を特定させるようなことには言及せずに、ハヤトはそう言った。
「普通、つまり市民よね。なのに譲らない。……統治者にとっては一番厄介ね」
「……厄介?」
「普通の生活をするためにはルールを守る必要がある。だからこそ、市民として生活できる。だけど、統治者はそのルールを逸脱しなければならないこともある。敵国だけじゃない、最大多数の最大幸福のために市民にもそうしなければならないときがある。だけど、彼はそれをも譲れない。彼にとっての敵は敵国だけじゃない、自分の平穏を乱す統治者も敵なのよ」
ベアトリクスは、ハヤトがじっと耳を傾けていることに気づき、続けた。
「もし彼を敵にしたくないのなら、真摯に向き合いなさい。誠実に対応なさい。彼は常に自分が切り捨てられる少数者だと思っている。それを払拭してあげなさい。……でも、もしどうでもいいと思っているなら、関わることをやめなさい。それが出来ないなら、殺すしかない。反抗的な市民を統治者は必要としていないのだから」
そもそもの蔵人の状況からして、切り捨てられたともいえるのだから、ベアトリクスの言葉は決して間違っていなかった。
「――それが統治者の覚悟よ」
ハヤトはじっと砂漠の闇を見つめた。
「それでもおれは……」
闇の中でベアトリクスが小さく微笑んだ。
「それもまた統治者よ。それでも、と考えられない統治者に先はない。新しい未来はない」
夜が明けようとしていた。
それから幾夜を過ごしたのか。
あまりに過酷な環境、でたらめな気候故にそんなことを考える暇もなかった。
ハヤトの力とトールの知識、そして勇者たちの加護で砂幻にこそ惑わされなかったが、馬鹿でかいムカデが襲ってきたり、岩竜同士の縄張り争いに巻き込まれかけたり、台風のような砂嵐に呑み込まれかけたり、砂丘が倒れてきたりとさまざまなことがあったが、ハヤトたちはサウラン砂漠横断を続けた。
そしてついに、人の影らしきものを見つける。
それは払暁の砂漠にぽつんと浮かんだ、小舟が寄り集まった舟団の姿であった。
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残留組のアオイやイサナ、タジマ、アキカワはというと、アルバウム在住の召喚者たちと密にコミュニケーションをとり続けていた。
いきなり建国の話などしても、ついていけないだろうし、どこから話が漏れるかもわからない。
だから、ハヤトや自分たちのこれまでを世間話のように語った。
特にアオイの話は現状無職となっているため、現実味があった。
アオイは事実のみを語った。話せないことはあったし、多少は印象操作もあったが、嘘はつかなかった。
監獄をやめたことも、ハヤトへの理解を含ませて話し、事実の審判がうまくいかなかったのはアルバウムや他国の妨害があったことを。
さらにはこれまで伏せられていた主要な召喚者たちと政府の暗闘を語った。
ようするに、建国組への好感度を上げることに努めた。
無論、無理に付き合わせる気はない。アルバウムに帰属したっていいのだから。
ただ、ハヤトが建国する以上はアルバウムとハヤト、どちらかを選ばなければならない。
そして選んだ以上は、別の国の人同士となり、最悪戦争になることもあり得るのだ。
ゆえに、こうして地道に好感度を上げつつ、アルバウムの危険性を説いた。
もし、アルバウムが召喚者を強引に利用しようとしなければ、ハヤトたちはアルバウムに帰属したかもしれない。だが、一部とはいえ、彼らを利用しようとする者たちがいる。
それは看過できない問題だった。
本編はここまでです<(_ _)>
またしばらく時間をいただきたいと思います。
年内を目安に、新章を始めたいと思っております<(_ _)>