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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、海に行く
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75 クマさん、お店を購入する

 数日ぶりに帰ってきたクリモニアのクマハウス。

 前回は卵を取りに来て、プリンを作ったらすぐに王都に戻ってしまった。

 だから、久しぶり感はかなりある。


「ユナお姉ちゃん、とても楽しかったね」

「喜んでもらえてよかったわ。それに、転移門があるからいつでも行けるよ」

「うん、でも今度は家族みんなで行きたいな」

「そうね。でも、この転移門のことは誰にも話さないでね」

「うん」


 フィナは家に帰るのでここで別れることにする。

 わたしはお世話になっている人に帰ってきたことを伝えるためにクマハウスを出る。

 まずは冒険者ギルドに向かう。


「ユナさん。帰ってきたんですか」

「今日にね」

「でも、誕生祭は昨日では」

「まあ、それはね」

「召喚獣はそんなに速く移動できるんですね」

「とりあえず、これ、お土産」


 王都で人気があるアクセサリーを買ってきた。


「アクセサリーですか、ありがとうございます」


 異世界の流行物は分からないのでお店の人に言われるままに買ったけど喜んでいるのを見ると大丈夫だったみたい。


「それで、ギルドマスターいる?」

「はい、少し待ってください」


 ヘレンはギルドマスターを呼びに行ってくれる。

 戻ってくると、部屋に来るように言われる。


「おお、来たか。戻ってくるの早かったな」

「はい、お土産」

 

 適当に買ってきた食べ物を取り出す。


「あと、紹介状ありがとうね」

「役に立ったか?」

「手紙を渡す前にトラブルになったけど、そのあとは王都のギルドマスターにいろいろお世話になったわ」

「役に立ったならなによりだ。それでこれからどうするんだ」

「う~ん。商業ギルドしだいかな」

「なにか、あるのか?」

「お店を作るから。ちょっとね」

「店って、おまえ冒険者だろう。冒険者辞めるのか」

「お店は他の人がしますよ。わたしはお金と食材を提供するだけ。そうすればいつでも、自分が食べたいものが食べられるから」

「そのためだけにお店を作るのか」

「十分な理由でしょう」


 ギルドマスターにあきれられたが、気にせずに商業ギルドに向かう。

 商業ギルドに行くとミレーヌさんがわたしを見ると受付から名前を叫びだす。


「ユナさーん」

「大きな声で人の名前を呼ばないでください」

「だって見かけたからつい」

「はい、おみやげ」


 形は違うがヘレンと同じアクセサリーだ。


「ありがとうございます」

「それで、お店の方はどうなったの。どこかいい場所あった?」

「はい。いい場所がありましたから、確保しましたよ。あとはお金しだいです」

「いくらなの」

「このぐらいです」

「高くない?」


 指定された金額はクマハウスの土地を購入したときの10倍ぐらいする。

 転移門を設置したあとに、今住んでいる土地は購入している。


「今回は建物付きになります。しかも、かなり大きな建物になります」 

「そんな大きなお店必要ないと思うけど」

「何を言っているんですか。プリンですよ。大きい建物にしないと駄目に決まっているでしょう」


 受付から飛び出す勢いで言われる。


「そう?」

「そうなんです。とりあえず見に行きましょう。それから決めましょう」


 そんなわけでやってきました。購入予定の店を……


「店?」


 どっから見てもお屋敷です。

 大きさは小さいけどお屋敷です。


「わたし、店を頼んだんだけど」


 想像したのはジャンクフードを購入するようなお店。

 でも目の前にあるのはお屋敷です。


「ですから、こちらを改築して店にしてはどうかと。お屋敷ですからキッチンも付いてます。人も沢山入れますから迷惑もかかりません」

「そうだけど」

「とにかく、中に入ってください」

 

 ミレーヌさんに屋敷の中に連れていかれる。

 ドアを開けて中に入ると正面は大きな階段があり、そのまわりはおおきなフロアになっている。


「このフロアにテーブルと椅子を並べます」

「二階は?」

「二階の部屋は予約席にすればいいと思いますよ。あとは個室のカップル用とかにするとか」

「キッチンは」

「この奥です。一階にも部屋が沢山ありますから食材置き場にも困りませんよ」


 脳内でシミュレーションしてみる。

 先払いの食券タイプやカウンターで商品とお金を交換するシステムにするのか。

 後払いの食べてから払ってもらうシステムにするのかで配置が変わってくる。


 先払いならキッチンの近くにカウンターを作り、購入後には席には自由に座ってもらう。

 後払いだと支払いを出入り口に置かないといけない。

 しかも、何を注文したかメモ、あるいは領収書を書かないといけない。

 孤児院の子にやらせるのは難しそうだ。

 そう考えると、前者の先払いシステムがいいみたい。


「どうですか? やっぱり、広すぎるなら他の場所を探しますけど」


 お金なら日本から持ってきたお金もあるし、盗賊退治で得たお金もある。


「買うわ。お金は後でいい?」

「はい、構いません。内装、掃除、テーブル、椅子はサービスしますね」


 ミレーヌさんと別れたあと、その足で孤児院に向かう。

 わたしを見つけた子供たちが駆け寄ってくる。

 毎度、毎度、元気な子供たちだ。

 中に見覚えのない子もいるけど気のせいかな?

 近寄ってきた子供たちを集め、お土産として王都で買ってきた果物を渡す。

 この街に見かけたことが無かった果物だ。

 食べてみたけどリンゴみたいな甘酸っぱい果物だった。

 全員で仲良く分けるように言う。

 子供たちは素直に返事をして食堂に向かう。


「ユナさん、戻られたのですか」


 玄関が騒がしかったのか院長先生が部屋から出てきた。


「今日、戻ってきました。院長先生、子供たちはどうですか」

「ユナさんのおかげで元気ですよ。よく食べ、よく寝て、よく働いています」


 それはいいことだ。


「孤児院の子たちに新しい仕事をさせたいんだけど大丈夫かな?」

「どのような仕事ですか」

「食べ物屋になるのかな。パンをメインとしてウルフの肉、先日作ったプリン、あとピザかな。たぶんこれからも増えていくと思うけど。だから、料理を作るのが好きな子と接客が好きな子供がいれば店で働いてほしいんだけど」

「何人ぐらいですか」

「そうね、調理、接客、ともに3人欲しいから6人かな。もちろん、ローテーションで回すから全員には一通り仕事は覚えてもらうけど」

「わかりました。とりあえず、子供たちを集めて本人たちに聞いてみましょう」


 食堂に向かうと子供たちが仲良く王都で買ってきた果物を食べている。


「あなたたち、食べたままでいいので話を聞きなさい」


 子供たちの視線が院長先生に向かう。

 みんな、いい子に育っている。これも院長先生のおかげだろう。


「ユナさんが食べ物屋の店を開くそうです。そこで、6人ほどお手伝いをしてほしいそうです。やりたい子はいますか」

「何を作るのですか?」

「パンをメインとした料理、あとプリンも作るよ」

「はい! 俺やります」

「俺も」

「わたしも」

「言っておくけど、プリンは売り物よ。自分たちが食べることはできないよ」

「え~~~」

「当たり前でしょう」

「あと、接客もお金も扱ってもらいます。なので字の読み書き、数字の計算ができる子を優先にしてもらいます」

「え~」

「わたし、字の読み書きも計算もできます。やりたいです」

「僕もできます」

「俺も少し計算は苦手だけど、やりたいです」

「わたしも料理作りたいです」


 次々と手が挙がる。

 先着6名になったところでその6人に決める。

 女の子4人、男の子2人。

 一番年上が13歳のミル。

 彼女にまとめ役をお願いする。


「でも、コケッコウも増えているのに、6人も回してもらって大丈夫?」

「その件なんですが。ユナさんが王都に行っている間に孤児の子供が増えまして、申し訳ありません」


 頭を下げる院長先生。

 なるほど、だから、見たことがない子がいたんだ。


「気にしないでいいですよ。子供たちの面倒を見ているのは院長先生ですから。それに院長先生が孤児の子供を見かけたら見捨てたりしないでしょう」

「ありがとうございます」

「それに、しっかり躾ができているみたいだし、我侭を言う子もいないし」

「それはリズとガウルがしっかりしてますから」


 リズは若い副院長先生みたいな女性。

 ガウルは最年長の15歳の男の子。

 リズが女の子をガウルが男の子の面倒を見ている。

 仕事の割り振りも二人がやっているそうだ。

 わたしの仕事が減っていいことだ。


 その日は6人の子供たちにプリンとピザの作り方を教えて、ピザは夕飯に食べることになった。


 

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