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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、海に行く
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76 クマさん、お店を改築する

 翌日、必要な物の準備をするために店に向かう。

 それにしても大きいな。

 店を出すならファーストフードのイメージをしていたわたしには屋敷の前に立つとどうしてもそう思ってしまう。

 まあ、買ってしまったのだから考えても仕方ない。

 立地条件としては申し分ない。

 孤児院からも近く、土地も広い、街の中央通りの端の方だけど、お客様が来れない距離でもない。



 店の中に入ると、キッチンに向かう。

 まずはパン屋に必要な石窯を作らないといけない。

 邪魔な物は一度クマボックスに仕舞って、キッチンを広くする。

 パンとピザを焼けるように石窯を3つほど設置する。

 このぐらいあれば大丈夫かな。

 足らなかったらまた作ればいいし。

 次に冷蔵庫をどうするか考える。

 キッチンの隣にある小さな倉庫を見つけて中に入ってみる。

 小さいと言っても倉庫、10畳以上の広さはある。

 食料庫だったのか窓ひとつ無い。

 壁にあるスイッチを押すと光の魔石が倉庫の中を照らす。

 倉庫の中は何も入っていない。

 ここでいいかな。

 土魔法で壁を二重にして熱が入ってこないようにする。

 氷の魔石を数ヶ所に設置して大型冷蔵倉庫にする。

 あと、必要な物はあるかな?

 考えてみるが思い付かない。

 他に必要な物はモリンさんが来てから相談することにする。



 次に店内の装飾だ。

 元が貴族の屋敷だったらしいけど。

 長い間、掃除もされていなかったのか、カーペットと壁紙が汚れている。

 これはミレーヌさんが業者に頼むと言っていた。料金に含まれることだからお任せする。

 2階に上がる。

 客間、寝室だと思われる部屋。カップル用だと広くない?

 誕生会とかイベント用?

 でも、こんなところでやるかな?

 まあ、2階の活用は店が始まってから考えよう。

 庭に出る。

 少し広めの庭園がある。

 でも、かなり汚い。

 誰も住んでいなかったため、草木が伸びきっている。

 これも業者がやってくれるのかな?

 やってくれなければ自分たちでやらなければならない。

 綺麗にすればカフェテラスに使えるかな?

 まあ、それはお客様の人数しだいかな。

 作ったはいいけど、誰も使わなかったら意味が無いし。

 これは保留かな。



 それから数日間、料理を教えるために孤児院に通った。

 その間に店の改築はミレーヌさんがしてくれている。

 ピザも具材も種類を揃え、プリンも一工夫をする。違う味を作ったり、トッピングに果物を添えたりメニューの幅を広げる。

 メニューも数が多くても良いことばかりじゃないので、ヘレンやミレーヌさん、エレナにも感想を聞いたりしてメニューを絞りこむ。


 店の準備を着々と進めていると王都からモリンさん親子が到着する。

 到着したモリンさんは約束の場所、孤児院にやってきた。


「ユナさん、もういたのですね」


 クマの転移門で帰ってきたとは言えず。


「ええ、ちょっと先回りをして」


 2人は長旅で疲れたのか疲労が見える。


「今日はこれからどうしますか」

「疲れているので宿でも探そうかと」

「泊まる場所は用意してありますよ」

「それは助かります。長旅で疲れてますので」


 2人を連れて孤児院を出る。


「それで、ユナさん。どこに行くのですか?」

「ああ、モリンさん。わたしのことは呼び捨てでいいですよ」


 年上の人にさん付けで呼ばれるのは慣れない。


「なら、ユナちゃんって呼んでいい?」

「はい。それでお願いします。あと向かっている先はモリンさんが働くお店です。お店に空き部屋が沢山ありますから、そこに住んでもらおうと思って」

「ありがとう」

「いいよ。わたしが無理を言って来てもらったんだから」


 そんでもってお店(?)にやってきました。

 モリンさんとカリンさんが固まっています。


「ユナちゃん、これはお屋敷?」


 目の前にはお店という名のお屋敷が建っています。


「元ね。今はわたしのお店で、モリンさんたちが働くところだよ」

「お店? もしかしてここでパンを売るのですか」

「まだ、中しか改築終わってないけどね」


 まだ、看板もお店の名前もない。

 それはみんなで考えようと思ったため。

 軽食屋、喫茶店、パン屋、ピザ屋、プリン、何屋?

 そんな感じでわたし一人の脳内では決まらない。


「こんなところでパンを……」

「お店のことは明日にでも説明しますから、今日はゆっくり休んでください」


 2人を連れてお店に入る。


「すごいわ」

「お母さん、本当にここでパンを売るの?」


 綺麗になったフロアを見渡す2人。


「1階をお店に使う予定だから、2階の部屋を使ってください」


 2人は2階を見る。

 大きな階段の先にはたくさんの部屋がある。


「構いませんけど、わたしたち本当にここに住むのですか?」

「仕事場が近いからいいでしょう」


 2階の奥の部屋、2人には中に入ってもらう。

 目立った装飾品はないけど、綺麗な部屋だ。

 貴族が住んでいたためか窓枠一つとってもおしゃれな部屋になっている。


「とりあえず、王都から持ってきた荷物を出すけど、配置とかリクエストあったら教えてね」


 ベッドやクローゼット、タンスを配置していく。


「部屋と合ってませんね……」


 壁、床、カーテンなどが綺麗なのに、

 取り出したベッドなどが庶民的なためだ。

 ベッドは小さく、クローゼットは汚れている。

 広い部屋にぽつんとある小さな机。

 違和感がありまくりだ。


「貴族様の家具を買います?」

「わたしたちには似合いませんね」

「その前に、わたしこんな広い部屋で寝れるかな」


 カリンさんが小さくつぶやく。


「あと、お風呂もありますから、自由に使ってください。掃除はしてありますからいつでも使えますよ。他に必要な物があれば言ってください」

「特には、凄すぎて」

「わたしもです」

「それじゃ明日。店を手伝ってくれる子供たちを連れてきますので今日はゆっくり休んでください」





 翌日、孤児院に寄って店で働く6人の子供たちを連れてお店に向かう。

 子供たちは店には何度か来ている。

 店の庭の草むしりをしたり、枝を切ったりしてくれた。

 2階の各部屋の掃除もこの子たちがしたものだ。


 店に着くと焼きたての美味しそうなパンの匂いが漂ってくる。

 店に入りキッチンに向かうとモリンさんとカリンさんがパンを焼いている姿がある。

 作っているなら朝食を食べてくるんじゃなかった。


「おはよう」

「ユナさん、おはようございます」


 カリンさんが挨拶をしてくれる。

 モリンさんは奥でパンを焼いている。


「よく寝れた?」

「はい、疲れていたみたいだったので、布団に入ったら一瞬で」

「それは良かった」


 モリンさんがこちらにやってくる。


「ユナちゃん、おはよう」

「もう、パンを作っているんですか?」

「この石窯の調子をみたかったですから。パンの材料もありましたから夜のうちに仕込みをして」


 結局、わたしが帰ったあと家の中を調べたのかな?


「それで石窯の調子はどうですか。調子が悪かったら言ってください」

「大丈夫です。とってもいい石窯です。あとは焼いてみて、石窯の癖をみて経験を積みます」

「石窯の癖?」

「熱が篭り易い場所、どのくらいの時間で温度が上がるのか。それぞれの石窯によって変わってきますから、それによってパンの焼き具合が変わってきます」


 職人のプロだ。

 わたしなんてピザを焼くとき気にしないで焼く。

 全てが適当だ。

 だから、あの美味しいパンが作れるのか。


「それで、その子供たちが店を手伝ってくれる子たちですか?」


 わたしの後ろにいる子供たちを見る。

 子供たちは前に出るとそれぞれ挨拶をする。


「この子たちにパンの作り方を教えてあげてもらえますか。もし、教えられないようでしたら、それでも構いませんけど」

「大丈夫です。プリンの作り方を教えてもらったのに、わたしが教えないなんてことはしません」

「それじゃ、みんな。午前中はパンの作り方を教わって、作ったら孤児院に持っていってあげて」


 子供たちは元気よく返事をする。 



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