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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、王都に行く

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73 クマさん、パン職人ゲットする その2

 国王も帰り。
 外の騒がしいゴミも消え、部屋には静けさが戻る。
 でも、何か部屋の雰囲気が違う。

「えーと、どうしたのみんな?」

 みんなのわたしを見る目が変わった気がする。

「えーと、ユナさんは何者なんですか。もしかして、貴族様ですか」

 モリンさんが恐る恐る尋ねてくる。
 もし、わたしが貴族と思ったら怖くなったのだろう。

「違うよ。普通の冒険者だよ」
「ですか、国王様とあんなに親しげに」
「偶然に知り合う機会があっただけよ」
「でも、国王様、自ら家に来るなんて」
「プリンが食べたかったからでしょう」
「でも」

 なかなか信じてくれない二人、フィナまでがわたしのことを貴族のように見始めている。
 あの国王は余計な面倒ごとを持ってきたもんだ。
 いきなり、天と地のほどのある身分の差がある人が目の前に現れ、その人物と知り合いだとすればその人物もそれなりの人物だろうと思うのも仕方ない。
 どこの世界でも一緒だ。
 政治家なら政治家の知り合いが多い。
 医者なら医者の知り合いが多い。
 教師なら教師の知り合い多い。 
 芸能人なら芸能人の知り合いが多い
 小説家なら小説家の知り合いが多い。
 引きこもりなら引きこもりの知り合いが多い。(ゲーム内でいつも会う)
 どの職業でもやっぱり、同じ関係者の知り合いが多い。


「ああ! とにかく、わたしは貴族でも無ければ王族の関係者でもないから、普通にして」

 無理やりこの話を終わりにしてプリン作りの話をする。

「それじゃ、予定よりも少し早いけど2人には明日から一緒にプリンを作ってもらいますので」
「わたしたちが国王様の晩餐会の料理を作るってことですか?」
「そうだけど」
「そんなの無理です」
「どうして?」
「国王様のお口に入るのですよね?」
「まあ、食べるでしょうね」
「そんな、恐れ多いこと出来ません」
「別に毒物を入れるわけじゃないし」
「もし、食べてお腹でも壊したら。そう考えるだけでも無理です」
「どうしても、嫌?」
「どうか、許してください」

 なんか、虐めているみたいになっている。
 一般的な考えからして平民が国王の料理を作るのはありえない事なんだろうな。
 まあ、わたしも総理大臣や某国の大統領に作れとか言われたら断るだろうし。
 無理強いはよくないのでフィナと作ることにする。

「それじゃフィナ。2人で作るしかないね」
「わたしも無理です!」

 フィナが首を横に振る。
 フィナ、おまえもか!


 翌日、1人寂しくプリンを作っている。
 3人は結局、首を縦に振らなかった。
 そんなに国王の料理を作ることが嫌なのかな。
 3人は横でプリンの作り方を見ている。
 せめて、卵ぐらい割って欲しいんだけど、それさえもやってくれない。
 そんな思いも3人には届かない。
 仕方なく、100個の卵を1人で割ることになる。
 まあ、こないだも1人でやったんだけどね。
 でも、人がいるのに手伝ってもらえないのは悲しい。
 黙々と一人で卵を割り、黙々と一人で卵をかき回す。

 結局、最後まで1人で作ってしまった。
 大型冷蔵庫に100個ちょっとのプリンが並ぶ。


 せっかく補充した卵も全て使い切り、朝食も寂しくなると思ったけど。クリモニアの街に行くまでの間モリンさんがパンを作ってくれることになり、美味しいパンが食べられることになった。

 出来立てのパンを食べ、出かけようとすると、ランゼルさんがクマハウスにやってきた。
 会うのは盗賊団のアジトを制圧したときに報奨金をもらいに行った以来だ。
 国の兵士はザモン盗賊団のアジトを制圧して捕まっていた人を救い出した。アジトには盗賊団が集めた宝があり、その所有権の多くはわたしになった。話を聞くと被害者も多かったらしいのでお宝の所有権は放棄して、被害があった関係者に渡すようにお願いをした。
 でも、アイテム袋だけは有効利用が出来そうなので貰っておいた。

「どうしたの?」
「先日、捕まえたジョルズの件で話がありまして」
「ああ、あのガマガエルね」
「国王の名を使ったことも犯罪なんですが、その他にも多くの犯罪が見つかりまして、その一つにユナさんが助けたパン職人の件も入っているのです」
「あの2人? なら、呼んでくるね」
「助かります」

 話の内容は次のことだった。
 借金は無くなること。
 あのパン屋の店は正式にモリンさんの物になること。

「ほんとうですか」
「はい。ジョルズの財産は没収となり、今後の調査次第では死刑になります」
「死刑・・・」
「国王の名を使った犯罪は、王の名を汚すものです。まして、国王陛下がその現場を見ているのです。言い逃れは出来ません」

 それはそうか。
 国王の知り合いだと言って脅迫をしてきたのだ。
 きっとモリンさんだけじゃないだろう。
 他にも多く言っていれば国民は国王のことを犯罪者の仲間だと思う人がいておかしくはない。

「あとで正式に書類を持ってきますので、自分はこれで失礼します」

 ランゼルさんは頭を下げると去って行く。
 残されたわたしは静かな沈黙が訪れる。

「よかったね。旦那さんが作ったお店が守れて」
「ユナさん・・・・・」
「本当はクリモニアの街に来て欲しかったんだけど」
「・・・・・ユナさん。わたし」
「気にしないでいいよ。旦那さんも自分の店を守って欲しいだろうし」
「申し訳ありません。こんなによくしてくれたのに」
「ここは喜ぶところでしょう」
「はい。ありがとうございます」


 翌日、改めてランゼルが来て、お店の書類を持ってくる。
 正式にあのパン屋はモリンさんの物になった。
 それをなぜか、わたしに差し出してくる。

「・・・・・?」
「受け取って下さい。そして、わたしたちをクリモニアの街に連れて行ってください」
「どうして?」
「昨日の夜、娘と話し合ったんです。ユナさんはわたしの・・・・夫のパンを認めてくれました」
「わたしだけじゃないでしょう。店に出来たお客様、行列がいい証拠でしょう。あなたの作ったパンが美味しいから」
「はい、皆さん美味しいって言ってくれました。でも、ジョルズに襲われたときに、助けてくれたのはユナさんだけです。そして、今後働く場所を与えてくれようとしました。さらに国王様が直々頼みに来るプリンの作り方も教わりました。なのに、夫が残してくれた店が戻ってきたからと言って、恩を返しもせずに戻れません」
「そんなこと気にしなくても」
「それではジョルズと同じになってしまいます。昨日はいきなりのことだったので、喜んでしまいましたが、それはユナさんにたいして、とっても失礼なことだと気づきました。それに夫の店を他の人に渡すわけではありません。ユナさんに渡すのです。ユナさんなら夫の店を上手く使ってくれると思います。別にパン屋でなくても構いません。ユナさんの好きなように使ってください」
「本当にいいの? わたしは嬉しいけど」
「はい、娘同様よろしくお願いします」

 頭を下げる二人。
 二人は正式にわたしのところで働くことに決めたので、この王都でお世話になった人に挨拶をしてくるそうだ。

 二人の出発は誕生祭が終わった翌日になっている。
 誕生祭が終わると、集まった人たちがそれぞれの場所に帰って行く。
 それはクリモニアの街も例外ではない。
 大勢で移動するため、魔物にも盗賊団にも襲われずに移動が出来る。
 そのクリモニアの街に向かう一団と一緒に向かってもらうことになっている。


 わたし?
 もちろん、クマの転移門で……

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