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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、異世界を楽しむ

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48 (フィナ視点 その5)

王都に行く前にフィナ視点です。
本当はもっと前に書くつもりだっただけど、忘れていました。
 朝起きたら、お母さんが苦しんでいた。
 いつもと苦しみ方が違う。
 意識が無い。
 いくら呼んでも返事がない。
 薬を飲ませようとするが飲み込まない。
 それでも、頑張って飲ませました。
 でも、良くなりません。
 お母さんの額から汗がすごく流れてます。
 妹のシュリは心配そうにベッドの近くで、お母さん、お母さんと呼んでいる。
 このままでは駄目だ。
 何もできない。

「シュリ、お母さんのことをお願い」
「お姉ちゃん?」
「ゲンツおじさんの所に行ってくるから。大丈夫だよ。ゲンツおじさんならなんとかしてくれるから」

 わたしは妹の頭を優しく撫でて、ゲンツおじさんの家に向かいます。
 この時間なら、まだ仕事に行っていないはずだ。
 わたしは走った。
 まだ、人通りが少ないから走りやすい。
 ゲンツおじさんの家に来ると、わたしはドアをおもっきり叩いた。

「おじさん!ゲンツおじさん!」

 ドアを叩くとおじさんが出てきた。

「どうしたんだ。こんな朝早く」
「お母さんが」
「ティルミナがどうした」
「苦しんでいるの。いつもと違うの」

 もう、涙が止まりません。

「薬も飲んでも治らないの」
「家に行くぞ」

 ゲンツおじさんは走り出します。
 わたしも一生懸命に走ります。
 家に着く頃にはゲンツおじさんの姿は見えませんでした。
 家に入ると、ゲンツおじさんがお母さんに声をかけています。
 でも、反応がありません。

「くっそ!」

 ゲンツおじさんがわたしとシュリを見ます。

「薬を探してくる。おまえたちはお母さんを見てろ」

 ゲンツおじさんは家を飛び出して行きます。
 わたしはお母さんの手を握ります。
 すると、シュリも一緒にお母さんの手を握ってきます。
 お願いします。どうか、お母さんを救ってください。
 わたしが出来ることならなんでもしますから。
 どうかわたしたちから、お母さんを連れていかないでください。
 お願いします・・・。

「お母さん・・・・」
「フィナ、シュリ・・・・・」
「お母さん!」

 お母さんが意識を取り戻しました。
 願いが通じました。

「フィナ、シュリ、ごめんなさい」

 どうして、謝るのでしょうか。
 お母さんは何も悪くありません。
 お母さんの目に涙が浮かんでます。

「お母さん」
「もう、駄目かも。もし、母さんが死んだら、ゲンツに、頼りなさい。あの人なら、きっと助けてくれるから」

 お母さんが苦しそうに話します。
 お母さんが死ぬ?
 考えたくありません。

「ごめんね。二人とも。こんなお母さんで」

 弱々しい手でわたしたちの手を握り返してきます。
 ゲンツおじさんが出て行ってから、どのくらい時間がたったのでしょうか。
 戻ってきません。
 3分ぐらいかもしれませんが、もう、何時間も経っている感じがします。
 早く、帰って来て。

「ううっ」

 お母さんがまた苦しめ始めました。
 誰か、助けて。
 シュリの小さな手がわたしの手を強く握ります。
 わたしが諦めたら駄目です。

「シュリ」

 シュリの目を見ます。
 不安そうにしてます。

「お母さんの手を握っていて」
「お姉ちゃん」
「駄目かもしれないけど、あの人なら」

 お母さんのことはシュリに任せてわたしはユナお姉ちゃんの家に向かって走ります。
 疲れたなんて言えません。
 ユナお姉ちゃんの家。クマさんの家が見えてきました。
 わたしはノックのせずにドアを開けます。

「ユナお姉ちゃん!」

 家の中に入るとユナお姉ちゃんがいます。

「フィナ、どうしたの?」 
「ユ、ユナ、おねえちゃん、お、おかあさんが」

 駄目です。声が上手く出ません。

「落ち着いて」
「お母さんがくるしんで、、、薬を飲ましても、、、駄目で、、、ゲンツおじさんのところにも行ったけど、、、薬を探してくるって言って戻って来なくて、、、、わ、わたし、どうしたらいいか」

 ユナお姉ちゃんの顔を見たら涙が止まりません。
 ここに来たけどユナお姉ちゃんはお医者様でも、薬師でもありません。
 でも、ユナお姉ちゃんならなんとかしてくれるかもと思ってしまいました。
 ユナお姉ちゃんはやさしく、わたしの頭を手をおきます。

「うん、わかったから、フィナの家に案内してくれるかな」

 わたしはユナお姉ちゃんを家に案内をします。
 家に着き、中に入るとゲンツおじさんがいます。
 もしかして、薬が手に入ったのでしょうか。

「フィナ、それにクマの嬢ちゃんも」
「ゲンツおじさん、薬は?」
「すまない」

 頭を下げます。
 そんなに簡単に薬が手に入るようだったらゲンツおじさんが手に入れているはずです。
 だから、ゲンツおじさんを怒ることはできません。
 わたしはお母さんに近づきます。
 見ていられないほどに苦しんでいます。

「ゲンツ、もし、わたしに、何か、あったら、娘たちのこと、お願い」
「な、何を言っている。もしってなんだ!」
「あなたには、いろいろ、迷惑を、掛けたわね。薬のことも、フィナのこともありがとうね」
「大丈夫だ、寝ていれば、良くなる。もう、しゃべるな」
「シュリ、フィナ、こっちに来て、最後に顔を見せて」
「「お母さん!」」

 涙でお母さんの顔が見れません。
 お母さんは力無い手でわたしたちを抱き寄せます。

「何もしてあげられなくてゴメンね。それと、ありがとうね。フィナ、シュリ」

 わたしたちを離し、ゲンツおじさんの方を見ます。

「ゲンツ、二人のことをお願いね」
「分かったから、もう、しゃべるな。二人のことは俺が面倒をみる。だから、おまえは休め。休んで病気を治せ」
「ゲンツ、ありがとう」

 お母さんが目を閉じました。
 もう、目を開けることも出来ないみたいです。
 お母さんの手を握り締めます。
 お母さんの手が冷たいです。
 もう、このまま目を開けてくれないでしょうか。
 二度と名前を呼んでもらえないのでしょうか。
 お母さん、お母さん、お母さん。


 ポフポフ。
 後ろで変な叩く音が聞こえました。
 振り向くとユナお姉ちゃんが手を叩いていました。

「とりあえず、3人とも落ち着いて」
「ユナお姉ちゃん?」
「出来るか、分からないけど、診るからどいて」

 ユナお姉ちゃんはベッドからわたしたちを引き離します。

「少し我慢をしてくださいね」

 ユナお姉ちゃんはお母さんの体の上にクマさんの手を乗せます。 

「キュア」

 お母さんの体が光ります。
 その輝きは綺麗で、神様がいるような温かさを感じます。
 お母さんの呼吸が落ち着いてきます。
 信じられません。
 さっきまで、息苦しそうにしていたお母さんの呼吸が落ち着きました。

「ヒール」

 次に違う魔法を唱えました。
 お母さんの目がゆっくりと開きました。
 そして、何事も無かったのようにベッドから起き上がりました。

「・・・・・苦しくない」
「「お母さん」」

 わたしは駆け寄ります。

「どうやら、成功したみたいね」
「お嬢ちゃん、何をしたんだ。まるで、上位神官様のようだった。いや、それはいい、お嬢ちゃん、ありがとな」

 ゲンツおじさんがお礼を言います。
 そうです。お礼を言ってません。

「ユナお姉ちゃん、ありがとう」

 それから、ゲンツおじさんとお母さんでお礼の話になりました。
 そうです。前にゲンツおじさんに聞きました。
 お母さんの病気を治すには高いお金を払って神官様に頼むしかないと言ってました。
 その金額は凄く高かったのを覚えてます。
 わたしの家にはそんな払うお金はありません。
 でも、お母さんの命の恩人です。
 わたしが出来ることがあれば一生かかってでも払います。
 でも、ユナお姉ちゃんの出てきた言葉は違いました。

「別にお金も何もいらないわよ。わたしはフィナの笑顔を守っただけよ」

 また、泣きそうです。
 わたしは生きている間にユナお姉ちゃんに恩を返せるのでしょうか。

「でも、それじゃ」
「そうだ、俺に出来ることがあれば何でも言ってくれ」
「わたしも元気になったら、何でもするわ」

 そうです。ユナお姉ちゃんがお礼を要らないと言ってもそれでは駄目です。
 わたしも出来ることがあれば何でもします。
 でも、ゲンツおじさんとお母さんが『何でも』と言った瞬間、ユナお姉ちゃんの口元が吊り上がったように見えました。

「それじゃ、二人にしか、お願い出来ないことをしてもらおうかな」

 ユナお姉ちゃんがそんなことを言い始めました。
 部屋の空気が重くなります。
 何を言われるのでしょうか。
 ユナお姉ちゃんは部屋を見渡し、最後にわたしとシュリを見ます。

「フィナ、妹さんと一緒に美味しいものを買ってきて、お母さんに栄養が付くものを食べさせてあげて」

 そう言ってお金を渡してくれます。
 わたしたちには聞かせたくない話なのでしょうか。
 ユナお姉ちゃんは、お母さんたちに何を言うつもりなんでしょうか。
 でも、ユナお姉ちゃんの言うとおり、元気になったお母さんに栄養があるのものを食べさせたい気持ちもあります。
 結局、シュリを連れて栄養があるものを探しに行くことになりました。
 気になりますが仕方ありません。

フィナ「ユナお姉ちゃん、お母さん治してくれてありがとう」
ユナ「気にしなくていいよ」
フィナ「お礼にわたしの大事な物あげます」
ユナ「わたしたち女よ」
フィナ「知っています。でも、わたしにあげられる物はそれしかないから」
ユナ「フィナ・・・」
フィナ「わたしの人生、ユナお姉ちゃんにあげます。もらってください!」
ユナ「別の意味で重いよーーーーーー」

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