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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、砂漠に行く

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285 クマさん、絵本を配る

 学園祭を楽しんだわたしたちは、くまゆるたちに乗ってクリモニアに戻ってきた。
 フィナとシュリはティルミナさんとゲンツさんのところに送り届け、ノアはクリフのところに送り届ける。
 大事なお子さんをお返しして、仕事は完了する。
 学園祭も楽しかったけど、しばらくは王都に行くのは控えよう。人の噂も七十五日って言うけど、流石に二ヶ月ちょいは長い。
 どっちにしろ、しばらくは王都には行く予定もないので、クリモニアでのんびりと過ごすつもりだ。

 王都から戻ってきたフィナとシュリは仕事をしたり、勉強したり、孤児院の子供たちと遊ぶ。ノアは勉強をしながら、たまにフィナと遊んでいる姿がある。わたしは新しいお菓子を作ると、フィナやノア、孤児院のところに持って行ったりして、日々を過ごす。
 そして、王都のシアからノアに手紙が届く。そこにはわたしてに、学園祭のお礼で食べた料理が美味しかったことや、お礼の言葉があった。
 でも、途中で国王の登場で困った様子が書かれていた。あの人は何をしているかな。プリンのときもいきなりわたしの家に来たし、もう少し国王らしい行動をして欲しいものだけど、あんな国王だから、わたしもフローラ様に気軽に会いに行ける。
 もし、威厳を持つ、堅苦しい国王だったら、今までのように会いに行ったりはしてなかったと思う。
 今回はシアたちの運が悪かったとして、諦めるしかない。

 今日の予定は孤児院に行って、絵本の3巻を持っていくことにする。
 決して、忘れていたわけじゃない。
 …………、すみません。忘れていました。そんなわけで、忘れていた最新刊の絵本を孤児院の子供たちのところに持っていく。

「クマのお姉ちゃん、ありがとう」
「ありがとう」

 幼年組の子供たちは嬉しそうに受け取ってくれる。絵本は前回と同じ3冊ほど置き、仲良く読むように言う。
 そして、院長先生と会話をしたあと、鳥小屋で働く子供たちの様子を見に行く。みんな、真面目に仕事をしている姿がある。わたしはティルミナさんとリズさんに鳥小屋の様子を尋ねる。

「みんな真面目にやっていますよ」
「最近は鳥が増えて、順調ね」
「あと、ニーフさんとアルンさんが子供たちの面倒を見てくるようになって助かっています」

 ミリーラの町から来た2人は元気な子供たちに囲まれながら、楽しく面倒を見ているらしい。たまには、叱っている姿も見るから、教育もちゃんとしているみたいだ。
 でも、2人が手伝ってくれると言っても、4人で孤児院を管理するって大変だと思う。
 そのことを尋ねれば、わたしのおかげでお金のことや、食べ物のことを考えずに済むようになったから、楽ですよ。とリズさんは答える。
 元気な子供たちの相手をするだけでも、疲れると思うんだけど、そうでもないらしい。
 ティルミナさんとリズさんと話していると数人の子供が部屋の中に入ってくる。

「リズ先生、水を飲んでいいですか?」
「ちゃんと、汚れを落としてから飲むんだよ」
「は~い」

 わたしは鳥のお世話にするようになってから、病気にならないように、子供たちには手洗いやうがいをするように言っている。
 それを守って、子供たちが手洗いなどをちゃんとおこなう。
 働く子供たちがいつでも水分を補給できるように、ティルミナさんが仕事をする事務所的な部屋には水飲み場と冷蔵庫を置いてある。
 子供たちは水を美味しそうに飲む。その額にはうっすらと汗が浮かんでいる。
 そう言えば最近、暖かくなってきたような気がする。鳥小屋で働く子供たちも汗を掻いている姿を見かけるようなった。わたしは見た目の暑苦しい格好と違って、クマさん装備は適切な温度調整がされているから、気付かなかったけど、そろそろ暑くなるのかな?


 今日は朝一から、ラルーズの街のアルカに絵本を渡しに行くことにする。
 わたしはクリモニアにあるクマの転移門を使って、レトベールさんからもらったラルーズの街の小さな家に転移する。
 この街に来るのも久しぶりの気もするけど、それほど時間が経っていないんだよね。
 家の外に出ると、初めて来たときと違って空は青空が見える。少し距離はあるけど、レトベールさんのお店に向かって歩き出す。
 すれ違う人がチラチラとわたしのことを見ながら「クマ?」「くまさん?」と、いつも通りの声と好奇な視線を向けられる。
 この数日はクリモニアに引きこもっていたから、向けられることは少なくなったけど。他の街に来ると、すれ違う全員から視線を向けられるね。
 わたしはクマさんフードを深く被って、顔が見えないようにする。

 レトベールさんのお店に到着して中に入ると、ロディスさんがわたしを見て驚きの表情を浮かべる。

「あのときのクマ?」
「レトベールさんはいますか? アルカに絵本を持って来たんだけど」

 あまり、ロディスさんには好印象はないので用件だけを伝える。

「ちょっと、待ってくれ。旦那様に伝えてくる」 

 ロディスさんは慌てるように、お店の奥の階段を上って行く。
 お店には他の店員が1人とわたしが残される。店員はわたしに視線を向けるが話しかけることはしてこない。
 わたしはロディスさんが戻ってくるまで、軽く店内を歩く。
 骨董品や絵画が飾ってある。何か、面白いのはないかな。家に飾るインテリアがあっても良いかもしれない。でも、この手の良さはわたしには分からない。
 ノアじゃないけど。飾るならクマの置物を置いた方が良いかもしれない。
 しばらく、店内を歩いているとロディスさんが戻ってくる。

「階段を上がってくれ、旦那様が待っておられる」

 前と違って言葉にトゲがない。素直に通してくれる。あのときはレトベールさんのためにルイミンの腕輪を手に入れようとしていたからかな。
 わたしはお礼を言って、階段を上がっていく。ドアの前にレトベールさんが立っている。

「よく、来てくれた。中に入ってくれ」

 レトベールさんの厚意で部屋の中に入る。

「久しぶりじゃのう。それで絵本を持ってきてくれたと聞いたのじゃが、本当か?」
「新しいのができたから、持って来たよ」

 クマボックスから絵本の第3巻を取り出す。

「だが、王都にいる知り合いからは、まだ新しい絵本の連絡は来ていないが」

 まだ、エレローラさん。配っていないのかな?
 作ったはいいけど。忘れていた可能性もありそうだけど。
 それとも、本当に作ったばかりだったのかな? 

「それでアルカはいますか?」
「今、娘が呼びに行っておる」

 レトベールさんがドアの方を見るとアルカと母親のセフルさんが部屋に入ってくるところだった。アルカの腕の中にはくまゆるのぬいぐるみが抱かれている。大切にされているようでよかった。

「くまさん!」

 アルカはわたしに気付くと小さな足で駆け寄ってくる。

「こんにちは。新しい絵本を持ってきたよ」

 わたしはクマの口にくわえている絵本をアルカに渡す。アルカは嬉しそうに絵本を受け取ってくれる。

「ほら、アルカ。お礼を」

 母親のセフルさんが絵本を嬉しそうに見ているアルカに言う。

「ありがとう」
「どう致しまして」

 アルカは絵本を持って、ソファーに飛び乗り、絵本を広げる。くまゆるぬいぐるみはちゃんと膝の上に乗っている。
 アルカの行動に、セフルさんが注意するが、絵本に夢中になって聞いていない。セフルさんは謝罪をして「お茶の用意をしてきます」と言って、部屋から出ていく。

「すまないのう。アルカはお主が描いた絵本が気にいっているみたいで、何度も読んでいてのう。続きを楽しみにしておったんじゃよ」

 嬉しいけど、恥ずかしいね。

「それでどうして、この街に? 何か用があったのか?」
「絵本を持って来ただけだよ」
「お主、もしかして絵本を届けるためだけに、この街まで来たのか?」

 レトベールさんに驚かれる。
 確かに絵本を渡しにきただけで、街に来たって言えば驚かれるか。クマの転移門があるから、気にもしなかった。

「王都からわざわざすまない」

 レトベールさんは頭を下げる。
 そして、セフルさんがお茶を持ってきてくれる。

「娘のためにありがとうね」
「何か、お礼をしたいが?」
「前に家をもらったから、十分だよ」

 もらった家のおかげで転移門が設置できて、この街に楽に来られるようになった。絵本3冊とぬいぐるみだけでは、高いぐらいだ。だから、お礼なんて必要はないから断る。


「じゃが、わざわざ、絵本を届けるために来たのじゃろう」

 そうだけど、本当に家はクマの転移門を置くのに助かっている。
 でも、レトベールさんは考え込み始める。本当にいらないんだけど。
 レトベールさんが何を考えているか分からないけど、わたしはセフルさんが持ってきてくれた冷たいお茶を飲む。これは高級茶だね。うん、美味しい。
 最近、お城やクリフ、エレローラさんのところで出される高級なお茶を飲むようになって、分かるようになってきた。

「お主は王都に住んでいるんじゃったよな」

 ちょっと違うけど、王都のギルドマスターのサーニャさんと一緒にいたため、王都の住人だと思われている。本当のことを言うとさらに面倒なことになりそうなので、黙っておく。

「お主、商業ギルドのギルドマスターは知っているか?」
「お婆ちゃんだよね」

 一度だけ、土地を購入するときに会っている。

「それじゃ、もし何か、困ったことがあれば、ギルドマスターにわしの名前を出すと良い。少しは融通してもらえるように伝えておくから、相談すると良い」

 エレローラさんや、グランさんなどのコネもあるけど。王都の商業ギルドではお世話になるってことがないんだよね。
 でも、未来のことは分からないので、お言葉はもらっておくことにする。コネは多いことには困らないからね。

「それじゃ、なにか困ったことがあったら、相談させてもらうね」

 わたしの言葉にレトベールさんは嬉しそうにする。
 そして、お茶を飲みながらレトベールさんと会話をしていると、絵本を読み終えたアルカがわたしのところにやってくる。

「くまさん。小さくなれるの?」
「絵本の中のくまさんだけね。本物はなれないよ」

 フローラ様と同じ質問をしてくるので、本当のことを教えてあげる。大きくなったときに、恥ずかしい思いをするのは可哀想だからね。
 わたしの言葉を聞いたアルカは悲しそうにする。
 将来のことを考えたら、嘘を教えることはできないから、仕方ない。
 でも、アルカはくまゆるやくまきゅうのことを知らないからフローラ様よりは納得してくれる。


 お茶を飲み終えたわたしはお礼を言って、レトベールさんとアルカと別れる。
 初めは適当に街の中を回ったり、冒険者ギルドにどんな依頼があるか、覗こうかと思ったりしていた。でも、わたしに向けられる視線が多い。これじゃ、冒険者ギルドに行っても絡まれる可能性が高い。

「ユナか?」

 後ろを振り向くと、ルイミンの腕輪のときにお世話になった冒険者のミランダさんたちがいた。

「やっぱり、その後ろ姿はユナだったわね」
「ミランダ。誰が見てもユナだろう」
「そうね。あの可愛らしい尻尾を見ればわかるわ」

 ミランダさんはパーティーメンバーから、呆れ顔で言われる。
 まあ、わたしの後ろ姿を当てても、凄くもなんでもない。クマの格好をした人物なんていないからね。

「それで、どうしてこの街に? もしかしてルイミンはいるの?」
「ルイミンはいないよ。わたしは、レトベールさんにちょっと会いにね」

 ルイミンは村から出しちゃダメだと思う。もし、村の外に出ようなら、人に騙されて、不幸の道を転げ落ちて行く人生が見える。
 本当にこの街で出会った冒険者がミランダさんたちで良かったと思う。そうじゃなかったら、人には言えないことが起きていたかもしれない。
 わたしはルイミンを無事にエルフの里に送り届け、別れたことを伝える。

「そうか、ルイミンは無事にエルフの里に戻れたんだな。よかった」
「ちょっと、みんなで心配していたの」
「あの性格だからね」

 やっぱり、思うことは一緒だね。

「ユナはこれから、どこかに行くのか?」
「う~ん、冒険者ギルドを覗こうと思ったけど、止めて帰ろうと思っていたところ」
「仕事をするつもりだったのか?」

 わたしは首を横に振る。

「この街はどんな仕事があるか気になっただけだよ。仕事を受けるつもりはないよ」
「なんだ。仕事をするなら、わたしたちが一緒に受けてあげたのに」
「また、今度お願いね」

 いつ来るか分からないけど。

「もし、ルイミンに会ったら、たまには顔を見せに来てって伝えておいて」

 ミランダさんたちと軽く会話をして、クリモニアに戻ってくる。

新しい章に入る前に、絵本配りです。
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