挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、学園祭に行く

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

288/427

284 クマさん、クリモニアに帰る。 & マリクス視点(学園祭のお礼)

 ノアに絵本を渡す約束をすると、嬉しそうに絵本を初めから読み直している。フィナも諦めたように隣に座って一緒に絵本を見ている。
 今度、ノアが登場する絵本の内容を考えないと駄目だね。
 そして、わたしはお城に来たもう1つの目的を行うためにティリアの方を見る。

「ティリア、国王に会えるかな?」

 くまゆるの背中に楽しそうに乗っているティリアに尋ねる。面倒だけど、国王に会って綿菓子を渡さないといけない。今日お城に来たのも、そのひとつだ。

「お父様に?」
「うん、クリモニアに帰る前に会いたいんだけど。駄目なら、伝言頼んでもいいかな?」

 今日はティリアに会いに行くことになっていたので、兵士は案内役となり、国王を呼びに行く姿はなかった。たぶん、今回もエレローラさんが気を利かせてくれたんだと思う。

「クリモニアに帰る前に食べてもらおうと思うんだけど。無理なら、今度来たときにでも渡すって、伝えておいてもらえる?」

 綿菓子の機械をクマボックスに入れておけば、いつでも作ることができる。次回、来たときに作ればよい。

「う~ん、ちょっと待って」

 ティリアは少し考えると、くまゆるから降りて、部屋の外に出る。そして、すぐに戻ってくる。

「今、来るようにお願いしたから、しばらくしたら来ると思うよ」

 つまり、国王を呼びつけたってこと?
 それって、わたしの名前で呼びつけたんじゃないよね。

「わたしから会いに行ってもいいけど」
「大丈夫。もし、無理だったら、他の者が伝えに来るはずだから」

 綿菓子を食べてもらうために国王を呼びつけるってどうなんだろう。一般的な常識で言ったらアウトだよね。
 でも、しばらくすると本当に国王が部屋にやってきた。

「今日はティリアの部屋にいるのか」
「学園祭でティリアにはいろいろとお世話になったから」
「でも、なんだ。この状況は」

 ティリアとフローラ様とシュリはくまゆるとくまきゅうと遊んでいる。ノアとフィナは絵本を読んでいる。
 とてもじゃないけど、お姫様の部屋の状況じゃないよね。

「わたしがユナの召喚獣を見てみたいってお願いをしたの」

 ティリアはくまゆるの背中の上からフォローをしてくれる。国王はそんなティリアを見て諦める。そして、わたしの方を見る。

「それで、なんだ。用があると聞いたんだが」
「先日、約束をした綿菓子を食べてもらおうと思ったんだけど、食べますか?」
「ああ、あれか。もらおう」

 わたしの言葉で国王は思い出したようだ。忘れていたなら、そのままでも良かったかな。でも、後々、思い出したときのことを考えると食べてもらった方が安心だ。
 わたしは綿菓子を作る準備をする。テーブルの上に綿菓子機とザラメをだす。すると、国王が綿菓子機を興味深そうに見る。

「これはなんだ?」
「お菓子を作る機械ですよ」

 わたしは国王の見ている前で綿菓子機のスイッチに触れる。そして、しばらくすると細い糸のようなものが出てくるので、棒にクルクルと巻き付かせる。
 あっというまに綿菓子が完成する。

「これはザラメだけで作ったのか」
「甘いから、飲み物と一緒に食べると良いですよ」

 わたしはクマボックスからお茶を出してあげる。

「おまえのアイテム袋はなんでも入っているな」

 そんな、どこかの猫型ロボットが持っているような四次元ボックスじゃないんだから、なんでもは入っていない。入れた物しか入っていない。たまに神様が勝手にいれることもあるけど、滅多にないし。

「でも、おまえは本当に不思議なことを知っているな。ザラメでこんなことが出来るなんて知らなかったぞ」

 まあ、国王なんだから、知らなくても普通だと思う。食べ物のことは料理は料理人が知っていれば良いことだ。国王は国王の仕事がある。
 国王は豪快に綿菓子にかぶり付く。

「甘いな」
「砂糖だから、甘いお菓子ですよ」
「この溶ける食感が面白いな」
「おとうしゃま。わたしもたべたい」

 国王はフローラ様に綿菓子を渡してあげると、嬉しそうに食べ始める。
 とりあえず、これで約束を守ったから、あとで文句を言われることもないね。

「そういえばエレローラの奴はいないんだな」
「エレローラさんなら、仕事の資料を取りに家にいましたよ」

 それを忘れて、シアと話し合っていることは黙っておくことにする。わたしがお店のことを話してしまった原因でもある。
 約束とお礼を済ましたわたしは、フローラ様が遊び疲れて寝ると、起こさないようにお城を後にした。

「ユナ。また、来てね。今度からはわたしがいるときにね」

 そんなことを言っても、来るのは気が向くままだからね。偶然を祈ろう。今までのことを考えると、偶然に頼ると一生会えない気がするけど。


 その日の夜、エレローラさんが帰ってくると、国王に叱られたって言っていた。

「シアたちとちょっと話し合って、ゼレフと相談してから仕事に戻っただけなのに」

 それって、仕事をする時間はないですよね。今回はわたしにも責任はあるけど、大人なら優先順位ぐらいちゃんと決めないと駄目だと思う。

「そんなの娘の方が大事に決まっているでしょう」

 エレローラさんらしい答えだ。迷わずに答えるエレローラさんは親の鏡だ。でも、今回は命や将来が掛かっている大事なことじゃないんだから、仕事をしようよ。と言いたくなる。

 その後、エレローラさんに絵本の話をして、印刷してもらった3巻をもらう。ノアは1巻から3巻までもらっていたので、わたしがあげる必要はなくなった。

「お母様も、絵本のことを黙っていたなんて酷いです」
「ユナちゃんから聞いて、知っていると思っていたのよ。2人はクリモニアにいるんだから、普通はそう思うでしょう」
「そうですが」

 ノアは口を尖らせて、少し納得がいかなそうにしている。

「それに絵本を作っているのは、目の前にいるユナちゃんなんだから」

 責任転嫁が来た。確かに、同じ街に住んでいるから、離れて暮らしているエレローラさんよりはわたしの方が筋が通る。しかも、作者はわたしだ。反論することができない。

「新しいのができたら、今度はプレゼントするから」
「約束ですよ」

 ノアに約束をさせられる。これは早めに絵本の内容を考えないと駄目かな。

「それでユナちゃん。明日、帰るのよね」
「いつまでも王都にいるわけにはいかないですからね」

 フィナとシュリをいつまでも連れまわすわけにはいかないので、明日の朝、クリモニアに帰ることになっている。
 クマの転移門を使えば、すぐにクリモニアに帰ることができるけど。すでに使うことができない包囲網が敷かれている。

「それじゃ、馬車を用意するから、王都の門まで送るわね」
「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんと一緒です。シュリ、一緒に乗りますよ」
「うん!」
「明日の朝、マリクスたちも見送りに来るって言っていましたよ」

 とてもじゃないが、馬車も見送りもいらないとは言えないし、ノアとシュリもくまゆるたちの移動を楽しみにしている。とてもじゃないが、クマの転移門が使えそうにない。今回は諦めて、くまゆるとくまきゅうに乗って帰ることにする。

「フィナちゃん、シュリちゃん、いつでも来ていいからね」
「はい」
「うん」
「ノアはしっかりクリフの言うことを聞くのよ」
「分かってます」
「ユナちゃん。もし、この子が我が侭なことをしたら、わたしに言ってね」
「お母様!」

 いろいろと別れの言葉をもらい、その日の夕飯は豪華に振る舞われた。





 マリクス視点

 ユナさんがクリモニアに帰り、学園祭のことも徐々に落ち着いてきた。
 今日は学園は休みで、お店を手伝ってくれた友達やクラスメイトを誘って食事会をすることになっている。場所はエレローラ様の紹介で、今度新しくできるお店だ。
 場所はシアしか知らないため、一度、学園の前に集まってから、みんなで移動することになっている。

「これで全員そろったな」

 全員、時間通りに集まってくれた。これで出発ができる。

「マリクス、楽しみにしているからな」
「俺は朝食を抜いてきたぞ」

 ユナさんとエレローラ様が美味しいって言うから大丈夫だと思うが、実際に食べたことがないから、少し不安でもある。それに国王陛下の指示で作られているお店だ。不味いわけがない。

「ティリア様はあとで来るんだよな」
「場所は知っているみたいだから、あとで来るって」

 この中で場所を知っているのはエレローラ様に教わったシアだけになる。シアにどこにあるか、尋ねたけど、笑って誤魔化された。あれは、絶対になにかを隠している顔だ。

 そして、シアの案内で俺たちはお店に向かう。
 ぞろぞろと大人数で歩くが、みんな楽しそうにしている。
 目的地の店の前に立つと、全員、お店の入り口にある物に目を奪われる。

「シア、ここなのか?」
「うん」

 お店は大きく、立派な建物だった。そして、何よりも目を引くのが入り口にある2つのクマの置物だ。
 クマの置物は巨大なスプーンを持ち、もう片方のクマは巨大なフォークを持っている。

「なんだ」
「クマ?」
「ああ、この店なら家族から聞いた」
「わたしも、クマの置物があるって」

 何人かは知っていたみたいだが、ティモルやカトレアは知らないみたいだ。

「シア、もしかして、この店って」
「うん、ユナさんが関わっているみたい」
「ユナさんが……」
「だから、料理の味は大丈夫だと思う」

 確かにユナさんが出す料理はどれも美味しかった。不味いものはなかった。でも、ユナさんって言葉を聞くと不安になるのは気のせいかな。

「とにかく中に入りましょう」

 シアの言葉で俺たちはお店の中に入る。すると、料理人の格好をした女性が出迎えてくれる。

「お待ちしてました。学園の生徒の皆さんですね」
「はい。騒がしくすると思いますが、よろしくお願いします」
「大丈夫ですよ。エレローラ様からお話は伺っています。それでは席の方にどうぞ」

 外にはクマがあったけど、お店の中は高級感がある店内だった。てっきり、店内にもクマがあると思ったけど、なくてよかった。
 みんな、店内をキョロキョロと見渡しながら、席に座る。
 テーブルの上にはすでに美味しそうなパンがテーブルに並んでいる。

「他の料理もお運びしますね」

 女性は頭を下げると奥の部屋に下がる。
 俺は1人立つと、みんなを見る。

「えっと、みんな、急なお願いだったけど、お店を手伝ってくれて、ありがとう。みんなのおかげで屋台部門で3位になることができた。お礼にお腹一杯食べてくれ!」

 コップを持って乾杯をして、料理を食べ始める。

「それじゃ、料理をお運びしますね」

 エレローラ様の言う通り、運ばれてくる料理は、どれも美味しい。
 みんなも美味しそうに料理を食べていく。

「マリクス、どれも美味しいぞ」
「お金は大丈夫なのか?」
「大丈夫だから、気にしないで食べてくれ」

 俺の言葉にみんなは遠慮をしないで食べ始める。
 始めは断られたが、料理の代金は一応、エレローラ様には渡している。

「本当にいらないのに」
「いえ、手伝ってくれた友達には、自分たちで支払いたいですから、受け取って下さい。もし、足らないようだったら、そこはオマケしてください」

 一応、代金は払ったけど、本当はどのくらい掛かったんだろう。国王陛下のお店ってことだけで、高そうな気がする。怖くてエレローラ様には聞くことができなかった。
 そんな俺の気持ちを知らずに、みんなは料理を食べながら学園祭の話で盛り上がる。

「今回の学園祭はいろいろなことがあったな」
「クマの賞品ゲット事件だろ」
「あれね」
「俺、見たぞ。クマの格好した女の子が簡単そうにナイフを的に当てていたぞ」
「わたしはすれ違ったけど、可愛いクマさんの格好だったよ」
「シアの知り合いなんだよね」
「うん、まあ。でも、彼女のことは話せないから」

 だよな。話したとしても、信じられないことばかりだからな。
 それに、エレローラ様にもユナさんのことは話さないように言われている。

「あとは綿菓子のお店も話題になっていたよ。不思議な食べ物だって」
「絶対に一位になると思ったんだけどな」
「お腹が膨れないのと、飽きるのが難点だな。せめて、違う味があれば一位を取れたかもしれないけどな」

 確かに、練習で何度も食べたけど、飽きてくる。あれって味付けが出来るのかな? できれば、来年は一位が取れるかもしれない。
 それから、学園祭でなにが一番面白かったとか話が盛り上がる。

「俺はルトゥム様と女の子の試合が凄かったな」

 俺も見たかったのに、こいつは偶然に試合に居合わせて、試合を見たと言う。
 口に出して言えないが、俺はその女の子と知り合いなんだぞ。

「あんなに可愛い女の子がルトゥム様の剣を捌き、躱し、凄かった」
「分かるわ。あの流れるような動作は綺麗だった。あと、動くたびに左右に揺れる長い髪も綺麗だったよ」

 ユナさんの話にリーネアも入ってくる。たしかにユナさんの髪は長いよな。

「その前の騎士様との試合も凄かったよな」
「うん、女の子でも、あれだけ強くなれるって知って、自信が出てきたよ」

 試合を見ていた者は感動しているようで、盛り上がっている。
 くそ、羨ましくなんてないぞ。今度、その人物と試合をしてくれるって約束をしたんだ。試合を見るよりはやる方が良いに決まっている。

「でも、ティリア様の友人か。もう、会えないのかな?」

 シアの話ではユナさんは王都によく来ているらしい。あのクマの召喚獣がいると、簡単に来られるみたいだ。
 でも、ユナさんはパンツを見られたから、制服は二度と着ないとシアに言ったらしい。現れるとしてもあのクマの格好なんだろうな。パンツだって、話に聞くと見えたのは少しだけだと言う。だから、気にしなくてもよいと思うんだけど。それを言ったら「女の子は少しでも見られたら恥ずかしいの!」って、シアとカトレアに怒られた。

 そんな感じで、楽しく学園祭の話をしながら食事をしていると、ドアが開く音がする。ドアの方に視線を向けると、ティリア様がいた。そこに、もう1人立っている人物がいる。

「お父様! 何度も言っているけど、邪魔だけはしないでくださいよ」
「わかっておる。おまえの友人の顔を見たら帰る」

 ティリア様のお父様って、国王陛下じゃないか。どうして、ここに。
 それは俺だけが思っていることじゃない。ここにいる全員が思っている。そして、全員が俺やシアの方を見る。
 シアは首を横に振る。もちろん、俺だって知らない。

「そんなに気を張らなくてもよい。顔を出しただけだ」
「わたしをダシにして、仕事から逃げて来ただけでしょう」
「うるさい。国王の威厳がなくなるだろう。おほん! 近日中に開店する店を視察に来ただけだ。それで、食べた感想などはあるか?」

 尋ねられるが、答えられる者は誰もいない。
 その後のことは国王陛下の前で騒ぐこともできず、みんな静かに料理を食べることになった。料理の味は国王陛下が気になって、分からなかった。
 途中でエレローラ様が現れて、国王陛下と言い争いをして連れ出していたけど、凄い人だ。みんな尊敬の目でエレローラ様を見ていた。
 シアは「そんなに凄くないからね」と言っていたけど。国王陛下にあれだけのことができるんだから、凄い。俺たちはシアに感謝の言葉をかけた。
 そして、食事会も無事に? 終わり、料理を作った料理人から味の感想を聞かれたけど、国王陛下がいた間の料理の味は覚えていなく、曖昧に答えることになった。
 でも、美味しかったのは間違いない。
 最後にプリンが出てきたときは、みんな美味しそうに食べていた。
 これもユナさんが考えた料理なんだよな。

これで、学園祭編は終了です。
少し、短かったのでマリクス視点を書きました。
一応、国王は偉い人ですw

しばらく、クリモニアでのんびりしたら、新しい章に入ります。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ