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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、ミスリルナイフを作る

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137 クマさん、王都のデボラネ(仮)に会う

 これから、森に行くマリクスたちと別れ、冒険者ギルドに入ろうとしたら、ギルドの入口にサーニャさんが立っていた。

「やっぱり、ユナちゃんだったのね」
「サーニャさん?」
「ギルドの中で、くまが、クマが、熊が、って騒ぎになっていたから、絶対にユナちゃんだと思ったわ」
「なんのこと?」

 なにかをした記憶はない。
 それにギルドの中が騒がしいって。わたしが中に入れば、いつも通りに騒ぎになると思うけど、わたしはまだ中には入っていない。

「みんながクマが来たって騒いでいるのよ。クマが入口にいるとか、クマが初心者冒険者に絡んでいるとか」

 たしかに入口の近くにいたけど、初心者冒険者ってマリクスたちのこと?
 絡んでいるって、仲良く会話をしてただけだよね。
 風評被害ってやつだよね。風評被害って怖いね。

「でも、ギルドの中が騒ぎって?」
「ユナのことを知っている派と知らない派に分かれて、言い争いになっているのよ」
「……意味が分からないんだけど」

 なんで、わたしのことを知ってる者と知らない者で、騒ぎになるの?
 誰か、分かる日本語でプリーズ。

「ギルドに来た冒険者がユナの格好を見て驚いて、ユナのことを知っている冒険者がビビって、それを見た冒険者が笑い出して、笑われた冒険者が怒り出して、喧嘩になる前に職員がわたしを呼びに来たり、わたしは喧嘩理由を聞いたり、仲裁してたりしたわけ」

 わたしがマリクスたちと会話をしている間にギルドの中では、そんなことが起きていたの?
 摩訶不思議なことだ。

「ユナちゃんは、どうしてここに? それにフィナちゃんまで一緒に」

 フィナは頭を軽く下げて挨拶をする。

「いろいろあってね。冒険者ギルドに用があって来たんだけど」
「いろいろねぇ」

 含みがあるようにわたしを見る。

「とりあえず、中に入って。ここにいると他の冒険者の迷惑になるから」

 人を災害みたいに言わないで欲しい。
 でも、ここはサーニャさんの言葉に従い、冒険者ギルドの中に入る。

「クマが入って来たぞ」
「あれが噂のクマ?」
「噂ほど当てにならないものはないな」
「なんで、おまえたちは、あんな可愛いクマに怯えているんだ」
「それは……」
「可愛いクマの格好をした女の子だろ」
「それに、子供?」
「かわいい女の子じゃない」

 などと、前方の椅子に座っている冒険者の声が聴こえてくる。
 別の方に耳を傾けると。

「あれがクマか。声をかけてみるか?」
「関わらない方がいいぞ」
「俺は空を飛びたくない」
「ちょっかいを出すなら1人でやってくれ」
「なんだよ。おまえらまでビビっているのか?」
「おまえ知らないのか、クマ注意を」
「クマ注意?」
「危険だから近づくな」
「空を飛びたかったら、俺は止めない」

 クマ注意って、どこの山の立て看板よ。
 自分で言うのもあれだけど、きぐるみのクマが危険って。
 さらに別の方からは。

「関わらない方がいいぞ。過去にちょっかいを出した冒険者が殺された」
「たしか、喰われたって聞いたぞ」
「違うよ。ミンチにされたんだろ」
「ミンチにしたあと喰ったのか」

 なんか、変な話になっていない?
 わたしがしたのは、紐なしバンジーぐらいだよ?
 もしかして、クリモニアのときの話が混じっていない? たしか、初めて冒険者ギルドに来たとき、わたしのことをブラッディベアーって呼んだ冒険者がいたよね。
 そう考えると、デボラネ事件を知っている人物が王都にいてもおかしくはない。
 あのとき、デボラネのことを顔が腫れるぐらいまで殴ったからね。あれがミンチになったことになっているのかな。それとも、紐無しバンジーで潰れたことになっているのかな?
 でも、食べたって。熊じゃあるまいし。

「あんたたち、うるさいわよ。静かにしなさい!」

 サーニャさんが冒険者に向かって叫ぶ。サーニャさんの一声でギルドの中は静かになる。

「ギルマス、そのクマの女の子は」

 冒険者の1人がサーニャさんに尋ねる。

「彼女はユナ。こんな格好をしているけど、冒険者ランクCの実力者よ」

 ランクCになったことは、フローラ姫に会いに来たときに、お城でサーニャさんに会ったので話してある。

「ランクC?」
「嘘だろ」
「あのクマがランクC……」

 静かになったギルドが、また騒がしくなってくる。
 そして、同様にわたしの情報も広まっていく。
 まあ、ランクぐらいはいいけど。
 もし、スリーサイズの情報が流れたら、全員には死んでもらうけど。
 わたしのスリーサイズ>>>>>>>>冒険者の命
 これだけの価値はある。

「ギルマス! それじゃ、俺がそのクマに勝てばランクCにさせてくれるのか」

 デボラネみたいな男が立ち上がって、そんなことを言い出す。
 この男のことはデボラネ(仮)と呼ぶことにしよう。

「するわけないでしょう。馬鹿なの」

 サーニャさんがデボラネ(仮)の言葉を小馬鹿にしたように言い放つ。

「でも、信じられるわけないだろう。そのクマがランクCって」

 デボラネ(仮)の言葉に部屋にいる半数以上が同意している。
 その反応に気をよくしたのか、デボラネ(仮)はわたしに近づいてくる。

「おい、止めろ」
「それじゃ、俺も倒したらランクCにさせてもらおうかな」
「止めた方がいい」
「それじゃ、俺、三番目を予約」
「死んでも知らないぞ」

 見事に意見が2つに分かれている。

「ダージュ、それ以上、ユナちゃんに近づくなら、わたしが相手になるよ」

 サーニャさんが、デボラネ(仮)をダージュと呼んだ。
 名前、デボラネ(仮)じゃなかったんだ。

「なら、試合をさせてくれ、俺がランクDなのに、こんな小娘がランクCなんて、あるわけがない!」
「彼女の実力は本物よ。あなたじゃ勝てないわよ」

 サーニャさんが少し声を強めにして言う。

「そんなのやってみないと分からないだろ」

 でも、デボラネ(ダージュ)もサーニャさんに負けず劣らず言い返す。
 なんか、変な方向に話が向かっている。
 おかしい、わたしは鉱山の話を聞きに来ただけなのに。
 なんで、こんなことになる?
 答え、クマのきぐるみのせい。答えはすぐに出てくる。
 わたしは面倒になってきたので、口を開く。

「サーニャさん、この試合受けるよ」
「ユナちゃん?」
「わたしが負けたら、その人をランクCにさせてあげて。その代わりにわたしが勝ったら、その男には1つ言うことを聞いてもらうから」
「そんなこと、できるわけないでしょう。ランクを上げるにはちゃんとしたルールがあるのよ。それを曲げたら、冒険者ギルドの存在価値が無くなってしまうわ」
「サーニャさん。もし(・・)、わたしに勝てれば、その人はランクC以上の実力はあるよ」

 自分で言うにもあれだけど、このクマチートを着ている限り、負ける気はしない。

「それとも、わたしが負けるとでも?」
「うーん、分かったわ。でも、ユナちゃん。彼になにをさせるわけ? 無理なことはさせられないわよ」
「もし、今後、今回同様に騒ぎになったら、防波堤になってもらうだけだよ」
「防波堤?」
「他の冒険者が絡んできたら、まっさきに立ち上がって、わたしの前に立ってもらうよ」

 わたしがそう言うと、デボラネ(ダージュ)は薄ら笑みを浮かべると承諾する。

「いいだろう。もし、他の冒険者が貴様に絡んできたら、俺が叩きのめしてやるよ」
「もう、分かったわ。もし、試合結果が納得がいかずに逆恨みしたら、冒険者ギルドから除名します。それで良いならギルドマスターとしてこの試合を認めます」

 サーニャさんは溜め息を()きながら宣言をした。
 その言葉にデボラネ(ダージュ)は頷いた。

 わたしたちはギルドの奥にある練習場に移動する。
 ギルドの中にいた冒険者たちも一緒に付いてくる。
 そして、試合が始まった。

 ……数分後。

「うわぁーーーーー」「止めてくれーーーー」「俺が悪かったーーーーー」「うぎゃーーーー」

 デボラネ(ダージュ)は1人で上空に飛び上がる。デボラネ(ダージュ)が自ら空を飛んだわけではない。試合が始まった瞬間、わたしが風魔法で下から吹き上げた。
 飛び上がったデボラネ(ダージュ)は悲鳴を上げて空から落ちてくる。
 練習場は屋根なしの体育館ほどの広さはある。
 落ちてきたデボラネ(ダージュ)は見えない風のクッションに受け止められると、トランポリンみたいに跳ねて、次の瞬間には空に向けて飛んでいく。

「たずけてくれ~~」

 うん、デボラネ(ダージュ)が飛び上がる空を見る。いい天気だ。デボラネ(ダージュ)の叫び声がなければ、昼寝日和だね。
 見学をしている冒険者も開いた口を閉じずに、落ちて来るデボラネ(ダージュ)を見ている。

「たのむ~~」

 わたしはクマボックスから、オレンの果汁をだして飲む。今日は王都に来て歩いたからね。クマ装備のおかげで疲れはないけど、のどは渇くからね。
 冷たくて美味しいね。クマボックス感謝だね。

「しぬ~~~」
「フィナも飲む?」

 少し離れた位置にいるフィナに聞く。

「ユナお姉ちゃん……」

 フィナが呆れたような目で見てくる。
 どうして、そんな目で見るのかな?

「えーと、ユナちゃん。そろそろ止めてあげたら?」

 サーニャさんがデボラネ(ダージュ)を見て、わたしに聞いてくる。

「えっ、だって、まだ勝負ついていないでしょう。サーニャさんの勝敗の言葉がないから、まだ、続いていると思っていた」
「えっ、わたしのせいなの!?」

 驚いたようにサーニャさんはわたしを見る。
 だって、試合って審判が止めない限り続くものじゃない?

「とにかく、もう、止めてあげて、もう、気を失っているわよ」

 わたしが風魔法を止めると、デボラネ(ダージュ)は地面に倒れて動かない。
『反応がない。屍のようだ』
 冗談はそれまでにして、水魔法で水を頭からぶっかける。
 ちゃんと、勝敗の言葉を本人から聞かないとね。

「目が覚めた?」
「……おまえは」
「負けを認める? それとも、もう一度、戦う?」

 デボラネ(ダージュ)は周りの状況を見て、頭を下げて小さな声で負けを宣言する。

「俺の負けだ。二度とおまえさんにちょっかいは出さない。おまえにちょっかいを出す者がいたら、できる範囲で防波堤になってやる」

 デボラネ(ダージュ)はふらつく足どりで立ち上がる。

「おまえたちも同じような目に合いたくなかったら、クマには手を出すなよ。俺が手加減されていたのはわかっているだろう。もし、手加減されていなかったら、俺は空から落とされて死んでいた」

 そのことは周りで見ていた冒険者たちも分かっているようで頷いている。

「はいはい。それじゃ、勝負も付いたことだし、あんたたちは戻りなさい」

 見学している冒険者に向けて言う。

「サーニャさん、なにを言ってるの。あと二人いるでしょう。わたしと死合したいって冒険者が。予約をしたんだから、ちゃんと戦ってあげないと」
「ユナちゃん、ちょっと、怖いわよ」

 こう言う場合は1人よりも2人、2人よりも3人だ。
 壁は多い方がいい。

「えーと、誰だっけ? そこの冒険者だっけ?」

 適当にクマさんパペットを向ける。
 もちろん、誰の言葉だったかなんて分かっていない。
 わたしに指をさされた冒険者は首を思いっ切り横に振る。

「ああ、あなただったっけ?」

 さらに適当にクマさんパペットを向ける。
 指された冒険者は同じく激しく首を振る。

「ユナちゃん、そこまでにしてあげて。ほら、みんなもこれでわかったでしょう。彼女には逆らっちゃ駄目よ。ダージュだけじゃなく、わたしも容赦しないから覚えておいて」

 サーニャさんの言葉で冒険者たちは逃げるように練習場から消えていく。
 デボラネ(ダージュ)はわたしに近付いてくる。

「俺はダージュ。凄い魔法だった。なにか困ったことがあったら言ってくれ」

 ダージュはそれだけ言うと、練習場から出ていった。

「彼のことは許してあげてね。ランクが上がらなくて、ストレスが溜まっているのよ。実力的にはギリギリCはあると思うけど、運がないのよね」

 ストレスが溜まっているからって、わたしに喧嘩を売られても困るけど。でも、ちょうど良い宣伝になったからいいけど。
 これで、前回のバンジーに続き、今回のことを含めれば、少しは王都の冒険者ギルドに来ても絡まれることは無くなるかな?
 なにぶん、王都の冒険者は数が多い分、ちょっかいを出してくる者も多い。

「それじゃ、ユナちゃん。話はわたしの部屋で聞くわ」

 やっと、これで本題に入れる。
 なんで、鉱山の話を聞きに来ただけで、こんな大事(おおごと)になるかな?
 わたしとフィナはサーニャさんにギルドマスターの部屋に連れて行かれた。

今回は書いていたら2回ほどパソコンが止まりました。
保存はこまめにしましょう。
同じ文章は頭から出てきませんw
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