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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなの

クマさん、ミスリルナイフを作る

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136 クマさん、マリクスたちと再会する

 冒険者ギルドに到着すると、入り口付近から、少し離れた位置にマリクスたちがいた。
 わたしたちのことに気付くと、3人は駆け寄ってくる。

「ユナさんが、どうしてここに?」
「それも、シアさんと一緒って」
「シア、どういうことなんだい?」

 マリクス、カトレア、ティモルが一斉に話し始める。

「久しぶり、みんな元気にしてた?」
「一応」
「ユナさん、お久しぶりですわ」
「ユナさん、久しぶりです」

 みんな元気に挨拶を返してくれる。
 でも、気になることがある。

「マリクス、その顔の痣どうしたの?」
「ああ、これか」

 マリクスは紫に色になっている頬をさする。右頬には紫色の痣がある。

「親父に殴られた。みんなを危険なことに晒して、自分勝手な行動、冒険者(ユナさん)の指示も(あお)がなかった。貴様は何様のつもりだって、親父に怒られたよ」
「それで、殴られたと」

 マリクスは頬をさすりながら笑う。

「事実だから仕方ないよ。でも、褒められもしたよ。困っている者を見て見ぬふりをして、何もしないよりも行動するのはいい。でも、自分の実力、仲間の実力、敵の情報、全てを吟味してから、行動しろって言われたよ」

 そう言えば、エレローラさんも同じことを言っていた。
 まあ、あれはわたしの落ち度でもあるんだけど、マリクスが受け入れているなら、わたしが言うことではない。

「初め、見たときは驚いたね。翌日、学園に来たら顔が腫れているんだもん」
「あれは驚きましたわね。今のとは比較にならないほど酷かったですから」
「何事かと思ったよ」
「それじゃ、今の状態はマシなんだ」

 確かに護衛任務から、時間は経っている。なのに、いまだに痣が残っているって。どんだけ、マリクスのお父さんは強く殴りつけたんだ。
 今の状態でも触ったら痛そうだ。

「もう、大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だ。大したことはない」

 マリクスは軽く自分の頬を擦る。

「よく言うわね。ちょっと触れるだけで、あんなに大騒ぎしていたのに」
「涙目になっていましたわね」
「当たり前だ。殴られた翌日に触られたら痛いに決まっているだろ」

 シアとカトレアはその時のことを思い出して、笑っているが、それは触ったら痛いよ。
 そんなの、経験は無くてもわかる。腫れ上がった顔に触れたら痛い。想像しただけで自分の頬っぺたが痛くなってくるよ。
 なんで、人の怪我なのに自分まで痛くなってくるんだろう。

「みんなは平気だったの? 怒られたりしたの?」
「先生とエレローラ様に怒られましたわ」
「わたしはお母様にユナさんへのフォローがなっていないと怒られました」
「僕はマリクスの行動を止めるのが、僕の役目だと理不尽な怒られ方をしましたよ。僕はマリクスの保護者じゃないのに」
「でも、みんな、殴られていないんだろう。ズルいぞ」

 マリクスが拗ねたように言う。それを見て、全員が笑う。
 まあ、話の会話からして、マリクスはパーティーリーダーで、みんなの行動に責任を持つ役目がある。そのこともあってお父さんが殴ったんだと思うんだけど。
 日本の親みたいに『うちの子に限って』教育じゃないから、しっかり教育しているんだろうな。
 これが、『うちの息子の行動は間違ってない。護衛をした冒険者が悪い』とか、言い出したら、エレローラさんの貸し券や、国王様の貸し券を使う羽目になるところだった。

「それで、どうしてユナさんとシアさんが一緒に?」
「商業ギルドに用があったんだけど、そこでシアに会ってね」
「歩いていたら、目の前にクマさんが歩いていたから、走って追いかけちゃいました」

 わざわざ、走らなくてもいいのに。 

「商業ギルドですか?」

 シアと商業ギルドで出会った理由と、そのあとの行動を簡単に説明する。
 そのときに解体名人として、フィナの紹介もしておく。
 でも、そんな紹介をしたら、フィナは『簡単な魔物しか出来ません』って否定をして、わたしを恨めしそうに見てきた。
 なんで? 事実を言っただけなのに。
 わたしなんて、ウルフさえできないのに。

「つまり、ユナさんはミスリルのナイフを買いに、そんな小さな子を連れて王都まで来たってことですか?」
「ユナさんがいれば大丈夫だと思いますけど。女の子の二人旅は危ないですわ」

 ティモルとカトレアが驚いたように、わたしとフィナを見る。
 まあ、確かに女の子が二人でクリモニアから来たと思えば普通は危険と思うかな。

「ユナさんにはくまゆるたちがいるから大丈夫だろ」

 マリクスが助け船を出してくれる。

「確かにそうですわね」
「でも、黒虎ブラックタイガーの解体か。普通のナイフじゃ、無理なのか?」
「できたら、王都までミスリルのナイフを買いに来ないよ」
「それはそうですわね。黒虎ブラックタイガーに簡単に刃物が通れば、倒すのに苦労はしませんわ」
「マリクスも馬鹿なこと言っていないで、少しは勉強をした方がいいよ」
「そのぐらい、分かっている。聞いてみただけだ」

 二人に馬鹿にされてむくれるマリクス。

「でも、王都の鍛冶屋まで来て手に入らないとは思わなかったよ」
「鉱石不足か」
「そう言えば、冒険者がそんなことを言っていたわね」
「最近、耳にしますね。鉱山に魔物が現れたって」
「まあ、わたしたちには関係ない話だったから、詳しくは知らないけど」
「鉱山は遠いから、僕たちじゃ、行けないからね」
「それ以前に、そんなところに行ったら、親父に殴られる」

 マリクスの言葉で全員が、また笑い出す。

「それじゃ、みんなも詳しいことは知らないんだ」

 全員頷く。
 ってことは一般市民まで、広まっていないのかな。
 ガザルさんの話だと別の場所から仕入れているらしいから、それほど混乱するほどの不足になっていないのかな。

「ミスリルか。俺もミスリルの剣が欲しいな」
「マリクスには早いわね」
「早いね」
「僕もそう思うよ」
「なんだよ、みんなして。親父にも同じことを前に言われたけど。でも、良い武器があれば、俺ももう少し」

 マリクスは剣を振りかざす真似をする。

「実力が無いのを武器のせいにしちゃだめだよ」

 とみんなから突っ込みが入る。

「そういえば、みんなはどうしてここにいるの?」

 わたしは冒険者ギルドに用があるけど、学生のみんなが用があるとは思えない。

「みんなで、冒険者ギルドに登録したんです」
「貴族のみんなが?」
「経験を積むためだよ。前みたいなことにはなりたくないからな」

 前みたいって黒虎(ブラックタイガー)

「頑張っても黒虎ブラックタイガーは倒せないと思うけど」
「誰もあんな化け物と戦うつもりはないよ。せめて、下級魔物程度には手間取ることもなく倒したい」
「それで、冒険者ギルド?」
「ああ、でも、親父に許可をもらうのに苦労したよ」

 マリクスは冒険者ギルドに登録をする許可を父親からもらうのに、どんなに苦労したか、話はじめる。
 また、殴られそうになったとか。剣で戦わせられたとか。戦術を教わったとか。

「苦労したのは僕だよ。マリクスのお父さんは騎士団の隊長だからいいけど。僕のお父さんは財務省で働いているんだよ。その息子の僕が一時とはいえ、冒険者になるなんて許されなかったよ」
「それは悪かったって、何度も謝っただろう」
「みなさん、苦労しているのですね」
「シアは?」
「わたしはお父様に内緒でお母様に許可をもらいました」

 クリフ……、娘に相談されないなんて、可哀想だね。

「でも、依頼は近くの森にいる下級魔物だけという限定条件だけどな」

 みんなの話によると、近くの森にいる魔物はウルフだけだそうだ。だから、この森は初心者の森と呼ばれて、冒険者ランクF、Eしか入ることが許されていないらしい。
 王都の冒険者を育てるためだという。
 たしかに、王都の周りに低ランクの魔物がいなくなったら、初心者冒険者が王都からいなくなり、人材が育たなくなってしまう。
 冒険者ギルドはちゃんと考えて経営しているんだね。
 クリモニアでも、ウルフを乱獲したら、怒られた記憶もある。
 初心者冒険者のためにウルフ狩りは自粛して欲しいって頼まれた。それと同じことなんだろう。

 そんなわけで、マリクスたちは時間ができると、近くの森にウルフ狩りに行くらしい。
 もちろん、他の獣もいるから、ついでに狩ることもあるらしいが。

「それじゃ、みんなはランクEになったの?」
「まあ、ランクEぐらいはな」
「すごいね」
「ユナさんは、俺たちよりも年下なのに、ランクCだろ。褒められてもな……」

 今、なんとおっしゃいました?
 年下?
 どうやら、マリクスは頭だけじゃなくて、目も悪いらしい。
 この世界に眼医者はあるのかな?
 早く連れて行かないと手遅れになる。

「ですね。年下の冒険者ランクCの女の子に、ランクEのことを褒められても嬉しくはないですね」

 あれ、目に病気を持っている人がこっちにもいた。

「確かにそうですわね。年下のランクCのユナさんに言われても微妙ですわね」

 おかしいな。また、目が悪い人が増えた。
 4人目は、わたしの年齢を知っているのか、笑いを堪えている。

「ちょっといいかな?」
「なんですか?」
「みんな、わたしのことを何歳だと思っているの」
「13歳だろ」
「13歳でしょう」
「冒険者の規定で考えると13歳ですね。それ以上、下は無理ですから」

 シアが1人笑っている。

「えーと、どこを見たらわたしが13歳なのかな?」
「まさか、もっと下!?」
「それはあり得ないよ。マリクス。冒険者規定もあるから」
「まさか、ユナさん、年齢を詐称して……」

 疑いの目を向ける三人。

「15歳よ。どっから見ても15歳でしょう」
「「「……」」」

 三人がわたしの言葉に固まる。

「えーと、ユナさん。俺と同い年?」
「そうよ」
「冗談ですわよね」
「分かった。ユナさん、エルフだったんだね」
「違うわよ。れっきとした人間よ」

 この世界の人間じゃないけど。
 みんなの横では1人笑っている者がいる。

「シア、おまえ知っていたのか!?」
「うん、初めて会ったときに、聞いたからね。そのときにギルドカードも見させてもらったし」
「わたしと同い年ですか。信じられませんわ」
「うん」

 それから、わたしは3人にギルドカードを見せて、15歳だと訴えた。
 わたしは人より、ほんの少し小さいだけだよ。

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