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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

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光属性のダンジョンへ

 前菜、スープ、魚、肉……馬鹿でかいテーブルの端に固まって座った俺たちは、フルコースの料理を次々と供されていた。
 あのコックの格好をした彼の姿は決してハッタリなどではなく、料理もそれに見合うものだ。
 分かりやすく言ってしまえば――

「美味い!」

 隣に座るユーミルが、俺の気持ちを代弁するかのように感想を漏らす。
 それをヘルシャが曖昧な表情で眺めた。

「貴女のマナー、何と言えばいいのか……スレスレですわね!」
「スレスレだよな……一応こいつは親父さんに連れられて高級料理店なんかも行くから、基本のマナーはできているんだが」
「汚くはないのでござるが、食べるの早いし、一口が大きいし……スレスレでござるな!」
「何もマナー違反はしていないのに!?」

 そこはかとなく漂うワイルドさが原因ではないかと思われる。
 後ろに控えたワルターも半笑いだ。

「ヘルシャ殿、最後の料理は何でござるか? コース料理だし、デザート系?」
「ああ、バフのことを気にしていますの? そうですわね……クース、例の物を」
「はい、お嬢様」

 コックの彼は「クース」というプレイヤーネームのようだ。
 実は彼の名前に、俺は憶えがあったのだが……。
 ヘルシャの指示を受けて、クースさんは厨房のほうへと引っ込んでいく。
 後で時間があったら、少し話をしてみたいところだが――戻ってきた彼が運んできたのは、ティーポットと白いカップなどのティーセット。
 食後にティーセット、そしてこの場の主の表情を見れば、それが何なのかを推測するのは簡単だ。

「ヘルシャ、これってまさか」
「ええ、ようやくお客様に出せるレベルの紅茶が完成しましたの! 基本的に生産活動をしないシリウスにおいて、唯一の生産品ですわよ!」
「ほう……あ、ありがとう。おお、本当に紅茶だ!」
「良い香りでござるなぁ」

 ちなみにバフ効果は最大MP増加だそうだ。
 全員に恩恵のある汎用性の高い効果だが、特に魔導士のヘルシャ、それと『バーストエッジ』を持つユーミルとは相性がいい。
 しばらくはカップを傾けるだけの静かな時間が過ぎ……いやー、堪能した。
 偶には人に作ってもらう食事も良いもんだ。

「ごちそうさま」
「ごちそうさまだ!」
「ごちそうさまでござる! 美味でござった!」

 ヘルシャは俺たちの言葉に満足気な笑みを浮かべた。
 そしてクースさんを近くに呼び寄せる。

「ハインド、クースは貴方に話があるそうですわよ」
「あ、はい。ごちそうさまです、クースさん。とても美味しかったです」
「貴方にそう言って頂けて光栄です、ハインドさん。実は俺も料理コンテストに出品したんですが……」

 やっぱりそうか。
 もしかしてという思いが、確信に変わる。

「知っています。確か魚料理……フカヒレの煮込みで上位を獲っていらっしゃいましたよね?」
「ご存知でしたか! あれはトゥシュシャークという魔物の食材なんですよ! ハインドさんの猪料理、圧巻でした!」
「クースさんのフカヒレも、見ていて垂涎ものでしたよ? あ、あと、レイドの時にマグロの撒き餌を――」
「ああ、それも俺です! あの時は上手く行って、心底ほっとしました!」
「やっぱりそうですよね。魚、お好きなんですか?」
「趣味が船釣りなんですよ。最近はもっぱらTBで済ませてしまっていますがね」
「なるほど。でも、TBの釣りは難易度が低くて面白くないって聞きましたけど?」
「それはモンスターじゃない現実にいるようなやつを相手にした時の話ですね。モンスターに分類される魚の手応えは、中々堪らないものがあります! 別格です!」
「へえ! ちなみに、モンスターを釣る時の釣り竿はどんな――」
「お、おい、ハインド。私たちはほったらかしか?」
「クース、さすがにお喋りが過ぎるのではなくって?」

 すっかり意気投合して話し込んでしまっていた俺たちに対し、ユーミルとヘルシャが止めに入る。
 俺はクースさんと苦笑を交わし合うと、フレンド登録を行って会話を打ち切ることにした。
 まだまだ話したいことはあるが……それはまたの機会にお預けのようである。
 その後は、シリウスのギルドホーム内を一通り見てからいよいよダンジョンに向かうことに。
 大きな門を出ると、固まった体を解すようにユーミルが大きく伸びをした。

「ところでワルターは、満腹度は大丈夫なのか? バフもだけど」
「あ、みなさんがギルドホーム内を見て回っていらっしゃる時に食べました。大丈夫です!」
「そうか。ヘルシャとギルドメンバーの食事って、普段から別なのか?」

 ギルドメンバーのヘルシャに対する持ち上げっぷりからいって、有り得ないことでもないと思ったのだが。
 ヘルシャは首を横に振って否定した。

「さすがにそんな非効率なことはしませんわ。そのまま戦闘に出る場合、バフ時間の都合もありますし」
「あのだだっ広いテーブルに一人だと、かえって人望がなさそうだものな!」
「やめてくださいます!?」

 その寒々しい光景を想像してしまったのか、ヘルシャが体を抱くようにしながらユーミルに向かって叫んだ。
 ああやって使用人がそれらしく後ろに控えているのは、客が来た時だけとのこと。
 ホームの入口で見送ってくれたカームさんはプロだし、ワルターも見習いとはいえギルドメンバーよりは板についている。
 二人の配膳、スムーズだったな……現実のマリーの家でもそうだったけど。
 街中をぞろぞろ出口に向かって歩いている途中で、アイテムを確認していたトビがふと顔を上げる。

「そういえば、肝心の光属性のダンジョンはどこにあるのでござるか?」
「ここから二つ先のフィールドです。ファレン大瀑布という場所にあります」

 答えてくれたのはワルターだ。
 相も変わらず執事服だが……使っている生地が丈夫だったり、内側の各所に目立たないように防具が仕込んであるらしい。
 そのワルターの口から出たフィールド名は、俺が知らないものだった。

「大瀑布って……そんなに凄い滝があるのか?」
「聞いただけで道行が不安になる名前でござるな……」
「ふふ、見たら驚きますわよ? 楽しみにしていらっしゃい」

 含みのある笑みを浮かべるヘルシャを不思議に思いながらも、俺たちは肩で風を切るようにして歩くその背中に続いた。
 一方のユーミルは……

「おおー! 滝かぁ!」

 滝と聞いただけで子供のように頬を上気させ、ヘルシャの言うがままに楽しみにしているようだった。
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