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黒姫の魔導書 作者:てんてん

第1章 言の葉は紙一重

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第04話 夢と目標

 ぼろぼろの魔導書を肩から提げられる大きな鞄に収納し、レネと杜人は試験内容の確認に向かった。最初杜人は魔導書を置いたままレネの横を飛んで部屋を出ようとしたのだが、魔導書から一定以上離れられないことが判明したため鞄持参となった。

『寮は古めかしかったが、こっちは比較的立派だな』

「あそこは一番安いところだから……。でも共同だけど掃除時間以外はいつでも入れるお風呂があるんだよ。街の下宿とかだとあそこより高くてお風呂なしが普通なんだからね」

 杜人はおのぼりさんよろしく周囲を見ながら感想を述べる。ちなみにこれでも『立派』と褒めているつもりなのだ。

『それにしてもレネにしか姿が見えないのは良いな。おかげで隠された秘境を想像しながらじっくりと観察し放題だ。もう少し見やすい服装にならんのか』

「そんなことしたら燃やすからね」

 せっかく上がった好感も急降下する発言に、レネはそっとため息をついた。杜人としてはこれから一緒にやって行くうえで、良く思われてから変なことをするより今のうちに披露したほうが良いと思っている。そのため今までの経験からわざと好感を下げる物言いを選んでいるのだ。

 自重して隠せるものなら初めから見せない。そのうちやらかすなら今が良い。考える基点が見事にずれている杜人であった。

『そう言うな。男にとって麗しい女性の秘境を見るのは生き甲斐だ。なんといってもそこには夢が詰まっているのだからな。男から生き甲斐を取りあげたら何も残らんぞ? ……ああ、レネはもう隅々まで十分堪能したから想像したりはしない。だから安心してくれ』

「……ばか」

 杜人は隣に浮かびながらによによと笑っている。そのためレネは朝の出来事を思い出したために頬を赤くそめ、もう一度ため息をついた。そしてそれを隠すように俯きながら廊下を歩いていった。






「……と思うのですが、どうなのでしょうか」

「ふむ、そのとおりだ。条件さえ達成すれば方法は問わない。良く気が付いたな」

 レネは自身の担当講師であるレゴルの部屋で試験についての確認を行っていた。壮年で厳ついレゴルの見た目は強面で寡黙だが、どんな学院生でも平等に接するため落ちこぼれてしまったレネでも話を聞きやすい講師であった。

『総合試験についての詳細を聞いておこう』

「……それと総合試験の迷宮踏破ですが、今までは棄権していたので参加したことがありません。内容を説明して頂けますか」

 レネの傍に浮かんで一緒に話を聞いている杜人は更なる情報を求めてレネに指示を出し、レネはそれを聞く。聞けるならそのほうが確実で早いので、聞くだけはすることにしていた。

「中級は第三階層の単独踏破だな。手出しはしないが試験官がついて行くから、油断しなければ死ぬことはないだろう。制限時間は太陽が昇ってから沈むまでだ。ただし、受験者ごとに入る時間をずらすので、その分は前後することになる。それと指定された場所を通過する必要があるから、最短距離で踏破はできない」

「危なくなれば試験官が介入して失格ですね? 介入する基準はどうなっていますか」

「怪我をして動けなくなった、助けを求められた、気絶した、この程度だな。基本的に死ぬ直前まで何もしないと思って良い。回復はしてもらえるが、死んだときは運が無かったと諦めろ」

 レゴルは聞かれた内容に淡々と答える。結構酷い回答にレネは顔を青くするが、杜人は平然と聞いていた。

「……持ち物の制限はありますか」

「無い。が、採点は同行した試験官が行うから、自分の魔法を使わず道具のみで踏破した場合は不達成になるだろう。魔法を使うために必要な道具以外は、地図や回復薬程度にしておいたほうが無難だな」

『なるほど。踏破は最低条件で、楽をするために余計な道具を持っていくと問答無用で駄目になるということか。なかなか酷い罠だ』

 杜人の呟きを聞いてレネは顔を微妙に引きつらせる。これは情報収集の大切さを分からせるために設定されているもので、聞けば隠さずに教えてくれるがそれ以外は答えないようになっているものだ。

「受験者が偶然まとまってしまった場合や、試験以外の人と一緒になったり付いてこられたりした場合はどうでしょうか」

「当然不達成になる。故意かそうでないかは問われない。一応事前に試験が行われることを通知しているが、入るなとは言えないから受験者以外が居る可能性はある。判断に迷う場合は試験官に聞けば良い」

『これもなかなか……。こっそり誰かに依頼しておけば、他の受験者の妨害や事前に魔物の駆除ができるな。そしてそれは違反にはならないようだ。おそらく面子がかかる貴族などへの配慮だな』

 本人が直接不正をしなければ関知しないと暗に言っているのだ。この試験を達成できれば後はひとつ達成するだけで済む。表では厳しく臨む部分を示しながら、裏に抜け道を用意するのは珍しく無い。

 意外と汚い実情にレネは眉をひそめそうになっていたが、杜人はこれもわざとだと考えているので卑怯だとは思わなかった。抜け道をわざと作って暴走されるのを防ぎ、そのようなことをする者をあぶりだすのが目的だと予想している。

 持ち物と抜け道とで対応が矛盾しているように見えなくもないが、試験に不正は無く直接やらかした場合は放置しないという姿勢を見せているだけだ。要するに、やるなら見えないようにこっそりやれと言っているのだ。

 総合試験に関して聞き終えたレネは、気持ちを落ち着かせるために深呼吸してから次の質問に移った。

「操作の試験はいつもどおり、的の数と制限時間は変わらずに配置だけ日替わりで変わるのですか?」

「そうだ。多少難易度は変わるが、その程度は実力で乗り越えろ」

『これはそのとおりだから仕方が無い。練習あるのみだな』

 同じなら初日の配置を見てから難しいところを練習できたのだが、日替わりでは過去の試験から傾向を予想して練習するしかない。期間が無いため厳しいが、やらなければそこで終わりだ。だからレネは気持ちを高めるためにそっと拳を握りしめた。

「攻撃の試験の試行回数は三回ですが、連射制限や発動までの時間制限はありませんか?」

「無いが、あまり時間がかかるようならどちらも注意と警告がある。警告が二回で失格だから気を付けるように。それと連射の条件は発動前に次の魔法を構築し始めた場合に限る。発動してからでは連射とは認められない」

『二回か。注意も含めれば三回だな。これも練習するしかないな』

 攻撃に使う魔法は新しい制御項目が多くなる予定なので、その分構築に時間がかかる。予想通り無制限とは行かないようなので、これも努力するしかない。

 レネはこれも時間があれば色々試せるのにと悔しく思ったが、今更言っても仕方がないのでやるしかないと気合いを入れた。

 その後も他の試験のことを聞き、レネは礼を言って部屋へと帰っていった。

 レネが退出した後で、レゴルは顎に手を添えながら目を細める。

「……ふむ、何かあったな」

 昨日までのどこか諦めていたレネとは異なりやる気になっていると感じたレゴルは、良いことだと頷きながら中断していた事務処理を始めたのだった。




 部屋に帰ってまた机に陣取ると、杜人は歩きながら今後のことを話し始めた。部屋に帰るまでに一般常識や学院についてなど様々な情報を確認したので、それもきちんと加味している。

『これでだいたい情報は揃った。それではここで人生の大目標を決めてみよう』

「大目標?」

 唐突にそんなことを言われても理由が思いつかないので首を傾げることしかできない。そんなレネに杜人は得意げに教える。

『夢は大きくと言うだろう? だから荒唐無稽なことでも良いからとりあえず決める。後はそれに向かって進み、無理そうなら少しずつ変えれば良い。そうすれば、たとえ一歩だろうが立ち止まっている者より確実に先に進むことになる。回り道になるかもしれないが、一直線の人生なんて存在しない。したがって無駄には絶対にならない。だから決めるんだ』

「そっか、そうだよね。立ち止まっても解決しない。……うん、それじゃあ私は『大賢者になる』にする」

 納得したレネは少し考えると、少しだけはにかみながら明るく宣言した。

『ほう、すばらしい目標だな。何か理由があったりするのか?』

「うん、大賢者エスレイム様は私と同じ黒髪に紫の瞳だったんだって。だからここに来たときは大賢者の再来と言われていたんだ。けれど今は大賢者もどきって言われる。だからそんなことを言った人を見返してやりたい」

 レネは当時の悔しさを思い出し、拳を握りしめて俯いた。杜人はだいぶ根が深そうだと思ったが、今その話題に触れても目的から外れるだけなので、触れることなくそのまま進める。

『なるほど、では次だ。大賢者になるために最低限しなければならないことは何だと思う?』

「……まずはここを卒業すること……かな。その程度もできないなら無理だと思う」

 少しだけ考えて思いついたことを述べる。それを聞いた杜人は満足そうに頷き話をまとめた。

『それが分かれば後は簡単だな。卒業するには特級認定試験に合格しなければならない。同じく特級を受けるには上級、上級は中級だ。つまり、大賢者になるためには中級認定試験に合格する必要があるわけだ。そして合格するために今努力をしようとしている。どうだ、目標に繋がっただろう?』

「本当だ……」

 感心するレネに杜人は鼻高々にふんぞり返っている。大きく遠い存在になるために努力しろと言われても、大抵の人は進む道が見えずに諦めてしまう。しかし、道がきちんと見えていて背伸びをすれば届きそうな場合は頑張ろうと思えるものだ。

 この発想自体は難しいことではないのだが、意外と気が付かない。目先のことしか見えていなかったレネにとっては、いきなり遠くまで視界が開けたような気分だった。

 ちなみにレーンでは初級で見習い、中級で半人前、上級で一人前、特級で一流扱いである。そのためフィーレ魔法学院を卒業するということは、国が認めた一流の魔法使いであるという証しになるのだ。もちろんその門は入り口と異なりとても狭い。

 杜人が言ったことはかなりこじつけに近いが、素直なレネには曲がること無くきちんと届いた。瞳にやる気が現れたのを見て取り、杜人は作戦の成功をこっそりと喜ぶ。無茶を通すには信念が必要であり、半ば折れかけていたレネには新たな何かが必要だった。そのため目に見える目標を与えたのだ。一度きりの魔法だが、失敗すれば路頭に迷うだけなのでためらう理由はなかった。

「良し、やるぞ! ……ところでモリヒトはどんな目標を立てているの?」

 やる気が出たところで疑問が浮かび、首をこてんと横に倒して聞いてきた。その問いに杜人は胸を張って答える。

『よくぞ聞いてくれた。俺の目標は身体を実体化させてかわいい女の子をはべらせ、酒池肉林でうはうは生活を送ることだ!』

「……」

 せっかく上昇した好感をまたしても底辺までめり込ませたが、本人は真面目に答えているので恥ずかしがったりしていない。当然レネから冷たい視線を向けられるが、杜人はそれを受けながら『甘いな』というように指を横に振る。

『単純な欲望は人を動かす原動力としては最適なんだぞ。レネの目標だって名声欲と自己顕示欲を言い換えているだけだ。それに実体化するには膨大な力が必要であり、俺の力が高まれば契約者であるレネにも多大な恩恵があるんだ。外側ではなく本質を見るようにしないと遠くの目標に辿り着けなくなるぞ? レネの悪いところはそこだな。頭ではなく心で物事の本質を受け止めないと、そのうち損をすることになる』

「え、え? う、うん。ごめんなさ……い?」

 杜人は腕を動かし大きく首を振りながら、自信ありげな声音で流れるように話した。その際、ついでにレネが悪いことにして諭す。会話においては先に言ったことより後に言ったことを強く憶えているものなので、それを利用してなすり付けた。本当の悪者はもちろん杜人である。

 レネはというと、迷わず断言されたため杜人の目論見どおり混乱していた。それを逃さず杜人は大げさな身振りを行いそのまま突き進む。

『そして俺が力を高めるにはレネの協力が絶対に必要だ。だから俺はレネを全力で支えて高みへと押し上げてみせる! 決して契約者だからという無味乾燥な理由ではないぞ』

 絶対に必要と強調し、義務ではないと断言する。人は頼られれば嬉しく思うものであり、理解できる理由があれば納得しやすい。そして人は意外と細かいことを聞いていないものだ。だから抑揚の違いで印象を変えることができる。

 最後に杜人は頼もしさ溢れる笑顔でレネを見つめ、片手の親指を上に出して握ると力強く突き出した。

「あ、ありがとう……」

 手の意味は分からないが、いつの間にか良い話になっていたのでまだ混乱しているレネは感動して礼を言う。この時点で既に何が起点の話だったのかすっかり忘れていた。こうして長い孤独によって乾いてひび割れていたレネの心の中に、杜人の存在が深く染み込むことになった。

 ちなみに杜人はこのような事柄に関しては意図して行ったことは無い。そのため相手の好意に気が付かず、この後にやらかして永遠のお友達を量産していたのだ。

『さて、次だな。レネは普段どうやって魔法を使っているんだ?』

 話の論点をずらしてうやむやにすることに成功したため、我に返られて蒸し返される前に次の話題に入る。狙い通り、レネの興味はそのまま次の話題に移っていった。

「えっと、これを使っているよ。ここに来たときにもらった魔法書。頑張って勉強して、特級より上の天級までの術式を書き込んであるんだ。……使えないけどね」

 机の隅にある小さな書棚から一冊の古びた本を取り出して机に置いた。レネにとってこれは初めて持った自分の所有物なので、古くなっても大切な宝物だった。

 魔法具はすべて使える魔法等級の上限が決まっている。もし許容等級以上の魔法を使用した場合は耐えきれずに壊れてしまう。レネの魔法書は中級までしか扱えないものなので、上級の術式を書いていても使えないのだ。

 そんな魔法書に杜人は簡単に触れ、悩むように腕組みをした。

『微妙だな……。実験がてら取り込んでみるか。レネ、すまないがこれを魔導書に対して差し込むように置いてくれないか。もしかしたら魔法が使えるようになるかもしれない』

「本当に!? 縦に置けば良いの?」

 レネは思いがけない言葉に喜び、言われたとおりに魔法書を縦に置いた。すると魔導書に触れたところから溶けるように吸い込まれていくので、目を丸くして驚いた。そしてそのまま見つめていると、魔法書の姿は完全に無くなってしまった。

『少し待て。……やはり駄目か』

「ま、魔法書は?」

 頭を掻く杜人にレネは慌てて聞く。失敗して無くなりましたでは大変困るのだ。

『取り込んだだけだから大丈夫だ。今から複製を出すから中を確認してくれ』

 そう言うと杜人は魔導書を指さした。すると今度は先程の逆回しのように中から古びた魔法書が現れた。レネは驚きながらも手にとって言われたとおり中身を確認する。

「あれ? 白紙になってる……」

 びっしりと書き込まれていたはずの術式は初級のものを除いて消え失せ、残った術式も歪んでいた。

『消えた要因はいくつかあるが、大きいものは魔導書自身の力が足りないためにきちんと複製できないことと、魔法書の素材が悪いことだな。力はそのうち回復するとして、素材はもっと高価なものなら今でも初級程度はなんとかなる。後はレネの習熟度だな。氷針の術式はきちんとしているだろう? 身体で憶えている分は契約による結びつきで情報が反映される。このようにそれなりの魔法具を取り込めば、俺を介して魔法を使えるわけだ。難点はそこいらで売っている安い魔法具を取り込んでも、今は役に立たないことだな』

「この白紙部分に書き込めば使えないの?」

 もしかしたらと希望を込めて見つめるが、その質問に杜人は静かに首を振った。

『複製されたものは魔導書の一部だから追記できない。レネが俺を介して魔法を使う場合は、相応の魔法具に術式を書き込んでからそれを取り込み複製したものを使うか、複製した増幅系魔法具を使ってレネが一から魔法陣を構築するしか方法はない』

 現時点で杜人自身が制御できる魔法は氷針だけである。力が回復して修復が進めば杜人専用の魔法を魔導書に登録していけるが、今はまだ無理なのだ。そして試験の合格はおんぶに抱っこではなく、レネの手で行わなければ意味が無いと杜人は思っている。そのため多少違う説明をした。

『つまり、これしかない現状では氷針しかまともに使えないということだ。後は練習して習熟すれば初級ならなんとかなるが、それ以上はこの魔法書では無理だな。後はいつになるか分からない魔導書の修復完了を待つか、他の魔法具を新たに手に入れるしかない』

「……つまり、現状と変わらない?」

 そのとおりと杜人は頷く。初級を使うだけならこの魔法書で十分であり、魔法書では魔力不足で中級を使えない。現時点では杜人を介して使えるようになるにはもっと高価な魔法書が必要なのだが、半端なものでは練習して習熟しないと使えない。そして金が無い現在は他の魔法具も買えないので対処もできない。

 それを理解したレネはがっくりと肩を落とした。

『完全に無駄というわけではないぞ。能力を把握する役に立ったし、俺がある程度制御して試験用に調整した氷針を見せることができる。後はレネがそれを練習すれば、ひとつめは完成だ』

 杜人は魔導書の基礎能力によって魔法を制御することができる。ただし、それは手足をただ動かすようなものであって、長い間練習してきたレネのような精密な制御はまだできない。そのため見本を見せて、レネが制御したほうが良いのだ。

「あ、そうなんだ。良かった」

 それを聞いたレネは顔を上げるとにこりと笑った。

 簡単に復活したレネを見て、その不安定さに杜人は頭を悩ませる。追いつめられていて心の底では不安が渦巻いているからだとは分かるが、これでは一度の失敗で立ち直れなくなりかねないと思ったのだ。

 しかし杜人は心の専門家ではないので、強引に引っ張る以外の方法を思いつかない。そのため何もせずに話を続けるしかなかった。

『それと魔導書も確認してくれ。魔法書が追加されているはずだ』

「あ、本当だ。ただ、絵は歪んでいて書いてある文字は歯抜けだし、見たことも無い文字で書いてあるよ? どこの文字?」

 レネは杜人に該当ページを開いて見せた。そこにはミミズがのたくったような日本語で書かれた文章と、落書きのような本の絵が白黒で載っていた。

『歪んでいるのは双方とも力が不足しているからだな。おそらくもっと良い魔法書ならば綺麗になると思うから、そのうち何か手に入ったら検証してみよう。文字は暗号だ。見ただけで誰でも分かるようでは困るからな』

 日本語に関しては異世界のことを説明しなければいけないので、あえて言わない。実際知らない人には暗号と大差ない文字だから嘘というわけでも無い。

 まだ魔導書の修復が進んでいないので、読みだせない情報が多く存在している。そのため日本語になった原因までは分からないが、おそらく魔導書の意思として入り込んだからだと杜人は推測している。

「ふうん、そうなんだ。子供に与えるものだから当たり前かな」

 レネは魔導書を閉じると机に置いた。品質が悪いと言われてもそのとおりなので気にならない。思い出を汚されれば別だが、そのような意味で言ったのではないことくらい分かる。文字に関しても何も言わなかったが、後で解析してみようと考えていた。

 杜人はレネの知識欲の程度を普通の人と同じと思っていたが、レネは知らないことは一度調べないと気になる性格だった。そのため『読めないから良いや』という選択肢は存在しない。レネの知識欲に火をつけたことを知らないまま、杜人は話を進める。

『理解したところで一度練習をしよう。魔法書に書かれていた術式を取り込むことだけはできたから、もうひとつも案はできた。それは口頭で説明する。人が居ない場所が良いのだが、どこかないか?』

「練習なら狭いけれど実習室でもできるから、そこを借りれば大丈夫。ほとんどの人は屋外の訓練場で練習するから多分空いているはず」

『ではそこに行こう。途中で中断するのもなんだから、その前に腹ごしらえをしておくか』

「うん、分かった」

 決まったところで杜人はレネの横に浮かび、仲良く早目の昼食に向かったのだった。
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