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黒姫の魔導書 作者:てんてん

第6章 写し鏡のその奥に

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第13話 色々な選択

 騒ぎを知らないシアリーナは、図書館にある閲覧用個室にて資料を読み進めながら案を考えている。当然近くにフィリが居るのだが、話しかけたりはしないし存在を気にしたりはしない。

「……」

「……」

 しかし、正面で微笑みながら無言で見つめるティアの存在は意識しまくりである。何故いるのかとか、何をしているとか色々聞きたいことはあったが、結構長く無言の時間を過ごしたため、今更聞いたりできる雰囲気ではない。

 ちなみにティアは今までの延長で見学しているのである。そして同じく話をするきっかけを掴めぬまま沈黙している。

 心はひとつ、『どうすれば良いのだろう……』である。意外に気が合う二人であった。

「……やっぱり難しいかな」

「そうなんだ」

「……」

「……」

 ぽつりと漏れた呟きにティアは相槌を打ったりするが、邪魔にならないように会話までは行わない。そんな緊迫した雰囲気のなか、先に折れたのはシアリーナであった。

「ティア、はどんな物入れが良いと思う?」

「え!」

 突然のことにティアは驚きの声をあげ、そして嬉しそうに笑った。

「えっと、えっとね……重たくないのが良いかなぁ……。リ、リーナは?」

「……たくさん入れることができるもの、かな」

 ちなみに名前を呼びあったのはこれが初めてである。そのため二人の間に実に初々しい雰囲気が満ち、観察してるフィリはそっと微笑んでいる。

「でも、そういう考えもあるのね……」

「何が?」

 そしてようやく会話らしい会話が始まり、行き詰まっていた考えも流れ始めた。

「重さ。軽くなれば多く持てる。要望にはこれでも叶う」

「おおっ、確かに」

「少し考えてみる」

「うんうん」

 終わらずに良さげに流れ始めた二人を、フィリは静かに見守っている。そして何日かかけて検討を重ね、試作品までこぎつけることに成功した。

「おー、軽い軽い! これなら疲れないと思うよ」

「良かった。まだ余裕はあるから、もう少し改良しよう」

 ティアの背には、金と白の毛皮でできた背負い袋があった。中には重い本が入れられているのだが、ティアは苦しむ様子も無く歩いている。重量軽減は空間拡張より消費魔力が少なくて済むので、材料の魔力のみで大丈夫となっていた。

 シアリーナとティアは検討を繰り返すうちに徐々に打ち解けてきている。元々その他に話す人も居なかったこともあって、まだ双方とも遠慮はあったが急激に仲良くなり始めていた。

「魔力結晶は使わないの?」

「使うと売値が高くなるから。ただでさえも高いのに、使えば作りにくくなって売値が倍以上になるの」

 シアリーナは前回の勝負が忘れられずにいた。勝負の枠内では勝ったが、複雑で売り物にならないと言われたため実質的には負けである。そのため今回は作りやすさに比重を置いていた。予算はだいぶ余るが、使いきるだけが良品を作る方法ではないと前回のレネが示したため不安は無かった。

「倍……。ちなみに、これでどのくらいなの?」

「結構良い家が買えると思う」

 その情報に、安かったら買おうかなと思っていたティアは笑顔のまま動きを停止し、しばらくしてから慎重に扱いながらテーブルへと置いた。そして汚れてもいないのにハンカチで触れた部分を拭き、愛想笑いをしながらそっと離れる。

「えへへへ……」

「後で返却するけれど、試作品は無料だから壊しても大丈夫なのに」

「それはそれ。これはこれだよ」

「よく分からない……」

 シアリーナの指摘にティアは大真面目に返答する。不可解ではあったが、不快ではなかった。こうしてシアリーナは製作の過程で、強引に入ってくるティアを無意識の人恋しさから少しずつ受け入れていったのであった。




 一方、レネと杜人は勝負に使う材料集めの騒動が終わってから、ようやくどのような物入れを作るかの検討に入ることができるようになった。シアリーナよりかなり出遅れているが、それについての焦りは不思議となかった。そのためレネはいつもの和室で座卓にノートを広げ、落ち着いた調子で杜人と共に案を出し合っていた。

「要望を見るに、やっぱり大きくてたくさん入るのが良いのかな?」

『基本はそうだろう。だが、それが実現しないから困っているということだな』

「それじゃあ、とりあえず実現可能か調べてみよう」

 レネはノートに術式を構築し始め、やがて難しい表情となって顔を上げる。

「確かに無理かな。容量を倍にする程度でも、とても個人で携帯できる大きさに収まらないよ。空間拡張は天級魔法だから、仕方ないことなのかも」

『なるほど。だから足りない分を補うために魔石を交換したり、高価な魔力結晶を使ったりしなければならないということなのだな。一足飛びに等級を落とせるわけでもなし、材料のみでは難しいか』

 魔力の塊である魔力結晶と比べて、どうしてもその他の材料では内包する魔力量が少なくなる。そのためほとんどの魔法具は動力源として魔石や魔力結晶を使うのである。

 杜人もノートを見ながら考え始め、レネも何か無いかと考える。その隣ではシャンティナが杜人謹製『図解、簡単な折り紙』を見ながら風車を作っていた。

『ちなみに背負い袋程度ではどのくらい広げることができるんだ?』

「んー、常時使うなら一割いけば良いほうかなぁ。やっぱり維持が問題なんだよね……」

 一割では売りにならないため、二人は揃って唸り始める。隣ではシャンティナが完成した風車を回し、出来栄えを確認している。それを何の気なしに見ていた杜人は、唐突に考えが浮かんでぽんと手を叩いた。

『あれだ、周囲の魔力を吸収して維持分を補ってはどうだ? もう変換できるから組み込めるだろ』

「あれかぁ……。都度構築する魔法と常時使う魔法具は同じようでいて違うんだよ。昔から魔力を使いきった魔法具を素早く復活させる方法は研究されているんだけれど、全部駄目だったんだよね。何もなければ良いほうで、最悪は反発して爆発してる。最初は良くても使っているうちに波長がずれたら大変なことになるよ。それを避けるには最初から最後まで吸収した魔力で動かせば良いけれど、少し魔力が薄い場所に行くだけで不足すると思う」

『むう……』

 内蔵電池で駄目なら外部電源でという発想だったのだが、確かに供給元自体が無ければどうにもならない。魔法に関してはレネのほうが理解しているため、杜人は納得して別の案を考え始める。その横ではシャンティナが物入れに挑戦していた。

 そして静かな時間が過ぎ、レネは大きく背伸びをして一旦休憩に入った。そのため杜人も休憩することにし、ごろりと横になった。

「誰かに聞いてくる? どんなものが欲しいですかって」

『いや、それは駄目だ。無名の頃ならともかく、今のレネが聞けば期待が膨らむ。そして実現しなければ勝手に幻滅して行くものだ。せっかく外では良い評価なのだし、これ以上リュトナさんに迷惑をかけるのは止めよう』

「はぁ……。そんなつもりはないんだけど、そうなったら駄目だよね」

 つもりは無くても迷惑をかけたのは事実である。そのためレネは座卓に突っ伏した。その横でシャンティナは縁を綺麗に折った箱を見て、満足そうにリボンを動かしている。杜人は平和な光景に目を細めていたが、ふと思いついたことを確認するために身体を起こし、広げられているノートに図を描き始めた。

 そのためレネも身体を起こして図を覗き込んだ。図は断面図と手順図に似たもので、広げられた四角が畳まれて小さな巾着のようになる様子が描かれている。

『レネ、確認だ。例えば大きな毛皮をこんな風に折りたたみ袋状にした状態で、この内部空間に対してのみ作用させることは可能か?』

「……うん、できるよ。効果現出点を指定部分のみにして、残りを機能と維持に振り分ける。後はそれを連結させてしまえば大丈夫。作ることを考えると、折りたたむより部品を作って組み合わせたほうが楽だと思う」

 レネは図をじっと見つめて考えていたが、やがてはっきりと言った。広まっている普通の術式ならば全体に効果が及んでしまうが、走甲車で開発した連結積層術式を応用することによって術式を切り分けながらも連動させることが可能となる。今まで色々経験してきたレネだからこそ組み上げることができる術式だ。

 そしてレネなら地図魔法で培った技術でひとつの材料に複数の術式を封入することが可能だが、流通品として売るならば技術頼りの方法よりも作りやすい方法のほうが良いのだ。

「でも、これだと大きいものは無理だし、魔力不足はまだ解消されないよ? 小物入れにするの?」

『ふふん。それについては案がある』

 問題点を指摘されても、杜人は想定済みのため得意げに図に追加で書き込みを行う。

『まずはこの重なりの間、内側と外側の間に魔力結晶を入れて、足りない分を補う。使うのは天虎の毛皮だから何かがぶつかっても砕けることはない。万が一砕けても、そのときは間違いなく所有者のほうが先に死ぬ。自然に回復させるために外の魔力を導く必要があるかもしれないが、わざと吸収させなければ問題ないだろ?』

「それは大丈夫」

 不明な点を確認し、説明を続ける。

『さて、指定された品は個人携帯の物入れだ。要望ではたくさん荷物を持ちたいとあったが、大きな物入れを作れと指定されたわけじゃない。予算と主に使う材料を指定されただけだ』

「あ……」

 そう言われてレネは考え方が偏っていたことに気が付いた。多く荷物を持ちたいという要望を聞かされたので、大きな物入れでなければならないと思い込んでいたのである。杜人はそれを確認して笑みを浮かべた。実際杜人も最初はそう思っていたのだ。

『そして探索者は休憩時や狩を行うときは採取したものを地面に置いているように思う。そしてここで質問だ。レネは一流の証を荷物になるからとどこかに置いたり、緊急時に捨てて逃げたりすることができるか?』

「無理。肌身離さず持ち歩きたいし、たぶん捨てられないよ」

 レネは黒姫徽章を思い描き、重かったとしても捨てられない気持ちをきちんと理解した。

『俺もそう思う。ならば、作るのはいつでも身に付けることができて捨てなくて済むものが良い。そして行動中に意外と邪魔なのが武器だ。特に長物は周囲にも気を遣わなければならないから大変だ。これを収納できる程度の物入れなら、不足分を魔力結晶で補えば極端に大きくする必要はない。内部空間の形状を固定しないで体積で収納できるようにして、口元を紐で調節できるようにすれば色々なものに対応できる。入れたものが軽くなるなら最高だな』

 杜人は図を仕上げ、どうだと言わんばかりに胸を張る。

 レネは色々飛び出た要求に苦笑しているが、否定はしない。良さそうな案を出してもらったのだから、それを実現するのは己の役割と承知しているのだ。

『それと、これは一流の証だから魔力結晶を使って高価になっても良品なら売れる。むしろこの場合、買い手は金を持っているから、半端な妥協が命取りとなりかねない。だから今回は価格を考えずに限度額まで思いっきり行け』

「良し、それじゃあ急いで術式を作って、試作品をお願いに行こう。そうすれば完成度もあがるからね」

 レネもその理由に納得し、さっそく頭の中で術式を考え始める。色々案が出されたので、実現するために新しく術式を考えるだけでも楽しくなってきていた。杜人も腕組みをして頷いている。

『おやつの供給は心配するな。というわけで、シャンティナには増量だ』

「どうぞ。苺のショートケーキです。そしてこれはおまけの牛乳プリンです」

「やったあ。良し、頑張る! 目指せ勝利!!」

「ありがとうございます」

 発想をもたらしたシャンティナには二種類おやつが出され、それを見たレネはやる気を燃え上がらせながら笑顔でケーキを食べていく。対してシャンティナはリボンを嬉しそうに動かしながらゆっくりと食べている。

 杜人はその様子を見守りながら微笑んでいるが、内心では需要がなかったらどうしようと胃が痛くなりそうであった。これまで出会った探索者を観察した結果出した結論だったが、確証があるわけではもちろんない。最近のレネは鋭くなったので『だろう』とか『かもしれない』という言葉では納得させにくいのだ。だから不安を飲みこんで、杜人は思考を誘導して断言した。

『純粋に売り物というだけなら、こんな思いはしなくて済んだのだがな……』

 楽しむことは好きだが、誰かを踏みつけてまではしようとは思わない。だが、今回は落とし穴を見つけても相手に意味なく教えるわけには行かないのである。だから杜人はせめてレネの負担が減るように、もしものときは自らが悪者になることに決めたのだった。




 そしてレネは数日かけて術式を組み上げると、意気揚々と試作品を頼みに行った。そしてダイル商会へ到着したとき、裏口のほうへ案内されて歩いていく探索者の集団に目を丸くして驚いた。

「なに、あれ?」

『……例のやつじゃないか?』

 こんな騒ぎになる事柄を簡単に思いつく二人は、見なかったことにして中へと入っていった。そして受付に居たやつれ気味のリュトナに思わず身を引く。しかし、何とか笑みは維持し、応接室に移動してから何があったかを聞いてみた。

「えっと、大丈夫ですか?」

「はい。ちょっと忙しくなっただけですので」

『ちょっと、か……』

 どう考えても原因は例のアレである。そのためレネと杜人は視線を交わすと、危険な話題に触れないことで意見が一致した。

「そ、それでですね。今日は試作品のお願いに来ました。ちょっと特殊なので、一度部品を作って頂いてから術式を封入し、再度組み立てて頂く形になります。それでも大丈夫でしょうか」

 レネは仕様が書かれた書類を渡し、リュトナはそれを確認していく。最初は表情に疲れが見えていたのだが、読み進めるうちにいつもの微笑に戻ってきていた。そのためレネと杜人は良さそうだとこっそり頷きあう。

「正式には実際作らないと何ともいえませんが、予算枠きりぎりといったところでしょうか。特にこの術式に関しては走甲車で経験を積んでいますので、他の店よりずっと金額を抑えることが可能です」

「良かったです」

『これで機能を削らずに済むな』

 最大の懸念事項をとりあえず解消できたため、レネは安心して出されていたお茶を口に含んだ。杜人も何とかなりそうな気配に満足そうにテーブルの上で頷く。そのためそんな空気を読んだリュトナの瞳が光ったのを見逃してしまった。

「これで暴動は起きないでしょう」

「ごひゅっ」

『うおっ!』

 いきなりの発言にレネはお茶を噴き出しそうになり、慌てて容器をテーブルに置いて口を押さえる。杜人はいきなり真横に置かれたために奇妙なポーズで固まった。

「ごほっ、暴動?」

「はい。ここ最近、天虎関連で問い合わせが多く入りすぎまして、結局抽選をすることになったのです。しかし、皆様の意気込みが強く、手に入れられないと分かった時点で暴れ出しそうだったのです。しかし、これなら何とか宥められそうです」

『……』

 杜人は重要な情報をリュトナがわざと漏らしたことに気が付いた。そしてまさかリュトナが漏らすとは思わなかったため、見事に想定外の出来事であった。

 リュトナは今回の勝負における窓口なので、今の時期ならシアリーナが作る作品の詳細を知っているはずである。その上でレネの作品なら宥めることができるということは、シアリーナのほうでは駄目だと判断したと言うことと同じなのである。

 リュトナとしては普通ならば口出しはしないが、今回は変な品物を出せば無視ではなく必要以上に貶められる可能性が高いと判断していた。そして反目はあってもこれでは導くことにならないと思ったため、余計なことではあるがあえて教えた。

 杜人は表情からまだレネが気が付いていないと分かったが、リュトナなら気が付いて無視したことと、本当に気が付いていないことの違いを見抜くと思っている。そしてわざわざ言うということは、しっかりと落とし穴にはまっているが良いのかと問われていると判断した。

 言えばレネが悩むことになるが、言わなければリュトナはレネに失望するかもしれない。だから杜人は苦労を背負う覚悟を決めてレネに話すことを選んだ。

『レネ、要するにリーナの作品では駄目だということだ』

「……」

 杜人は淡々とした声で言い、レネはその言葉を考えながら再度お茶を飲む。そして容器を置くと立ち上がってリュトナに頭を下げた。

「ありがとうございました。それではよろしくお願いします」

「はい。こちらこそよろしくお願いいたします」

 レネの変化に気が付いたリュトナは引き止めることなく、頑張ってと思いながらそのまま見送った。そして通りに出たレネは歩きながら考え続け、迷うように杜人を見る。葛藤を理解している杜人は、笑顔を向けると先に話し始めた。

『まだ時間はあるのだから、もっと苦労すれば良いだけの話だ。それに心を折る仕事はレネの役割であって、他人がすることではない。だから迷う必要はないんだ。だいいち、俺とレネが作り上げた渾身の自信作が負けるはずないだろう?』

 迷いを言い当てられた上に吹き飛ばされたレネは、恥ずかしそうに視線をそらした。それでも不快にはならず、口元は嬉しそうに上がっている。

「……ありがとう」

『どういたしまして、だ。伝え方は任せる』

 小声のお礼に杜人は大仰に頭を下げて応えた。そしてレネは対策のため急いで家に帰った。





 レネの講義後、シアリーナはいつものように図書館で術式の調整をしていたのだが、そこでそれまで黙っていたティアが申し訳なさそうに話をきりだした。

「あのね、この間小耳に挟んで調べたんだけれど、探索者は狩りをするときになるべく身軽になるように、荷物を離れたところに置くんだって」

「そうなんだ」

 シアリーナは何を言いたいのかという顔になるが、ティアの表情は真剣である。

「使う天虎の毛皮製品は、探索者にとっては一流の証なんだよね? そんな高価で大切なものを手放して遠くに置いたり、いざというときに捨てたりできる? 私はできないよ……」

「あ……」

 シアリーナはテーブルにある試作品の背負い袋を見て、天虎の毛皮だから発生する落とし穴に気が付いた。一流の証を捨てるということは、一流ではないとみなされてもおかしくない。他の材料であればこれでも良いが、今回は駄目だと分かり一気に顔を青ざめさせた。ティアも自分の提案が元になっているため、すまなそうに俯いている。

「……大丈夫。まだ時間はあるから、変更は可能。むしろ教えてもらえなかったら危なかった。……ありがとう」

「う、うん……」

 シアリーナは笑顔を見せるが、ティアの表情はまだ曇っている。その様子に離れた場所で見ていたフィリは隠しごとをしているのではと推測したが、言ってはいけないことだからだろうとも分かるのでそのまま見守っている。

 この重要な情報は講義中に配られた資料に挟まっていたメモに書かれていたのである。最初は間違いと思って返却しようとしたのだが、内容を読んで思わず制服のポケットに隠してしまったのだ。

 そこにはレネからの指示が書かれていて、シアリーナに伝えレネから教えられたとは決して言わないようにと書かれていた。

 レネとしても巻き込みたくはなかったが、直接言えば情報を探った卑怯者と受けとられ、すべてが終わってしまうため言うわけにも行かず、時間もないので次善の策として実行していた。杜人も危険性は承知していたが、自然に情報を入手させる時間も無いので了承している。

「考え直そう。常に身に付けていて、物入れが必要なもの……」

「うん。……うーん」

 やがてティアも後ろめたさを吹っ切って考え始める。

「武器?」

「そうだけど、種類がありすぎるから無理」

「防具……」

「脱がないでしょ」

「……あ、魔法薬!」

「それ、それよ!」

 探索者は魔法薬を戦闘中も持っている。ならば、それを入れる物も常に身に付けているはずだと考えた。

「しかも複数入れられて、取り出しやすくすれば……」

「軽くて丈夫な魔法薬入れの出来上がり!」

「良し、すぐに試作品を作り直してもらわないと」

「頑張って!」

 シアリーナは急いで図案に取りかかり、ティアは元気に応援する。その光景を、フィリは温かい目で見守っているのであった。
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