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娯楽文化とラミア



 野外用の遊具を作るのにはイマイチな成果だったが、室内では良い感じだった。


 まず、ケンダマ。


 完全に一人遊び用だが、動き回らなくても遊べるので好評だ。


 ヨーヨーを試作したが、左右のバランスが難しく断念。


 紐を巻きつけて回すコマを作ってみたが、俺が回せないので教えられなかった。


 TVじゃ、みんな簡単に回してたんだけどなぁ。


 ……


 あ、俺が教えなくても回せてるや。


 喜んでくれているので、良しとしよう。



 獣人族の男の子用の遊具ばかりだと、他の者に申し訳無いので女の子用を考えるが……


 まるっきり思いつかない。


 女の子だから……お手玉?


 小袋をザブトンに作ってもらい、中に大豆を詰める。


 本来は小豆らしいが……


 今度、小豆を作ろう。


 善哉とか作れる。


 話を元に戻して、小袋を縛ってお手玉の完成。


 とりあえず、十個ほど作ってみた。


「それ、どうするんですか?」


 そう聞かれたので、三つぐらいでお手玉をやってみる。


 ……駄目だったので、二つでやってみる。


 三回ぐらいしかできなかったが、お手玉でやりたいことは伝わっただろう。


 獣人族の女性、鬼人族、ハイエルフたちが興味を示した。


 あっと言う間に上達し、五個ぐらいでお手玉している。


 あ、二人でクロスしたり、変化を付け始めた。


 うん、教えることは無いようだ。


 素直にお手玉の増産に励むとしよう。


 食後などに手遊びとしてお手玉をする村人の姿が見られるようになった。




 チェス以外のボードゲームとして、将棋を一組作ってみた。


 チェスのバージョン違いとして受け入れられたが、チェスを初めて作った時ほどじゃないようだ。


 チェスならクロたちでもやれるが、将棋のコマはクロたちでは扱い難いしな。


 ならば囲碁だ。


 前の世界で囲碁漫画が流行った時にルールは覚えている。


 いきなり十九路盤では受け入れられ難いだろうから、九路盤で様子を見てみた。


 うん、良い感じでウケた。


 よしよし。


 今後のために十三路盤、十九路盤を用意しておく。



 では、本来の獣人族の男の子用の遊具作りに戻って、次は……双六?


 文字を読む練習にもなるし、悪くはないかもしれない。


 大きな板を用意し、そこにマスを書いていく。


 最初はシンプルでいいだろう。


 後はサイコロを用意し、やってみた。


 ウケた。


 サイコロが。


 うーむ。


 難しい事を考えずに、素直にサイコロで遊ぶゲーム……チンチロリンとかで良かったのだろうか?


 しかし、ギャンブルだしな。


 個人財産が無い今の村の現状では、村人同士の賭け事は成立しない。


 賭け事というか、ギャンブル要素や勝負要素が入る場合は俺が胴元をやっている。


 賞品を出せるのが俺しかいないからだ。


 別にこのままでも構わないが、通貨を使うことを覚えないのは将来的にどうなのだろう?


 どこかで村にも通貨を流通させないと駄目なのかもしれない。


 まあ、将来の話だ。


 獣人族の男の子の興味をサイコロから双六に誘導し、なんとか遊んだ。



 余談になるが、この世界にもサイコロに似た物は存在していた。


 ただ、正六面体ではなく、少し歪な多面体。


 数字ではなく記号が書かれており、主に占いや魔術に使われているそうだ。


 基本、一般人が目にすることはないらしい。



 色々とやってみたが、遊具を作るのは難しかった。


 凝ればいいってもんじゃないと判った。


 そして、獣人族の男の子に一番ウケたのは積み木だった。


 あ、うん、そうだね。


 まだまだ子供だったね。




「村長。

 同じような物がたくさんありますが、これも積み木ですか?」


「いや、それは麻雀牌」


 遊具としてトランプ作りに挑戦してみたが、紙が貴重なので紙トランプは断念。


 代わりに木札で作ってみたが、裏返しても木の模様で判ってしまった。


 なので裏面を粘土で塗り潰してみたが、粘土が乾くと木が乖離するので失敗。


 全部粘土でどうだろうと頑張ったが、ゲームに耐えられる薄さが難しく断念。


 トランプは完全に断念し、粘土で可能なサイズが麻雀牌ぐらいだったので、作ってみた。


【万能農具】を使って作ったので、大きさは均一、焼きムラも無く、強度も良い。


 一組完成させた後で、ルールや点計算を理解しているのが俺だけということに気付き、飾りとなってしまった。


「そんなにルールが難しいのですか?」


「難しいというか、覚えることが多い」


 とりあえず、暇そうな人を集めてプレイしてみた。


 ……


 あれ?


 おかしいな。


 皆、俺より素人だよね。


 点数計算とか、まだ覚えきってないよね。


 捨て牌からの推測が的確過ぎる気がするんだけど……



 麻雀を楽しんだ。


 結果は語るまい。





 ダンジョンアタックしていた三十頭のクロの子供たちとザブトンの子供たちが帰ってきた。


 五匹……五人ほどの魔物を引き連れて。


 魔物は上半身が人間、下半身がヘビのラミアだ。


 全員、女性なのだが……見た感じ、ロングヘアの眼鏡が似合いそうな知的美人さん。


 そんな彼女たちが、上半身だけとは言え胸を放り出しているのはどうにかならないのだろうか。


 目のやり場に困る。


 さらに、長い髪が胸の先っぽを隠したり見せたりして、エロい。


 はい、すみません。


 村の住人の視線が痛いので見ないように努力します。


 無理。


 ザブトンたちに頼み、チューブブラっぽいもので胸を隠してもらった。


 勿体無いが、仕方が無い。



「貴方がこの狼たちの長ですか?」


「ああ」


 俺が返事をすると、ラミアの代表者が頭を下げ、他の者たちもそれに倣った。


「私たちはこの狼に降伏しました。

 命ばかりはどうか」


 そう言われても命を奪うつもりはないが……


 ラミア。


 俺の知っているラミアは、人間部分の上半身で人間を誘い、下半身のヘビ部分で絞め殺す魔物。


「人間を捕食する魔物だっけか?」


「わ、私たちは人間を食べません」


「魔物ではありません。

 亜人の一種です」


 俺の疑問に、ラミアの代表とその後ろの者が慌てて答える。


 俺は近くにいたフラウに意見を聞いてみた。


「ラミア族は、姿は変わっていますが亜人の一種です。

 魔物ではありません。

 また、人間を食べるという習慣があるとは聞いたことがありません」


 魔物は会話できないと言われた。


 納得。


「失礼なことを言った。

 申し訳ない」


 そして謝罪。


 人間を捕食するとか言って、申し訳なかった。


 思い込みで話をしてはいけないな。


 うん。


 反省。


「じゃあ、話を戻して……降伏したって、クロたちと戦ったのか?」


「攻めてきたのはそっちです」


「?」


 事情を聞くと、ラミアたちはあのダンジョンの奥で暮らしていたらしい。


 というか、あのダンジョンの支配者だったらしい。


 そこにクロの子供たちが攻勢を仕掛け、長々と抗戦していたのだが……力及ばず降伏したと。


「うう、強いし硬いし、魔法は避けられるし、侵入できないようにした場所にはクモを使って登ってくるし、なんなんですかアレ」


 大変、申し訳ない。


 しかし、クロの子供たちは、獲物を獲得した顔で褒めの言葉を待っている。


 ザブトンの子供たちもだろう。


 ……


 三十頭のクロの子供たちとザブトンの子供たちを褒める。


「よーしよしよし、よくやったぞー」


 ひとしきり褒めた後、ラミアの対応に関して本人たちに相談する。


「ダンジョン内部は、無事なのか?

 戻って生活はできるか?」


「え?

 ええ、大丈夫です。

 戦力は減りましたが、最後の方は降伏待ちされましたから」


 色々と話を聞くと、感覚的には村人がやられたワケではなく、家畜を殺された感じらしい。


 ……


 俺、鶏や牛、山羊、馬が殺されたらブチ切れる気がするけどな。


「この村に対して、敵対の意思は?」


「ありません。

 全面的に降伏します」


 まあ、攻略していた三十頭の出迎えに、その倍以上の数のクロたちの姿が見えているからなぁ。


 敵対の意思があっても、心が折れるか。


「わかった。

 じゃあ、戻っていいぞ」


「え?」


「いや、だから戻っていいぞと」


「いいのですか?」


「ああ。

 それとも、ここに居たいのか?」


「い、いえ、私たちは洞窟の方が生活しやすい場所ですので」


「なら戻ってよし」


 とりあえず、ここまで来させたことで余計な恨みを買わないためにもお土産を渡す。


 お土産……作物かな?


 樽に入れて運べる分だけ渡そうと思ったが、想像していた量の三倍ほどをヘビ部分で持った。


 それで移動できるのかな?


 問題ないようだ。


「ありがとうございます」


 ラミアたちと友好な関係を結べたと思う。


 時々、ダンジョンで採れる物を持ってきては作物と交換する姿を見ることができた。





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― 新着の感想 ―
[一言] 降伏させて朝貢外交させたと
[一言] コミカライズで読んだけどラミアさんたち本当可哀想
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