料理と飲み物事情
竜のドライムが村によく来る理由は二つ、料理と酒だ。
その二つは、他の村人も褒めている。
しかし、前の世界の記憶がある俺にはそれほどとは思えない。
料理は何か一味足りず、酒は熟成が甘い。
料理に関しては、前の世界ほど物が揃っていないのが原因だ。
また、食材や調味料、調理器具を用意できても、料理に関しての知識が俺の素人レベルの知識だけではどうしようもない。
米が炊けるだけマシというものだ。
一応、料理や調味料の方向性や調理法の予想をアンたち鬼人族に伝え、料理や調味料の研究をしてもらっている。
だが、その研究過程の料理でも絶賛されるのが少し困る。
俺の要求が、理不尽な感じになってしまうからだ。
しかし、食事に関しては妥協しない。
俺も頑張るので、皆も頑張ってほしい。
一応の成果として、ドンブリ系の料理ができた。
米は偉大だ。
また、焼き物、煮物、鍋物なども満足とまでいかなくても納得の行くレベルになっている。
調味料ではマヨネーズが完成し、村の料理界に革命が起きた。
マヨネーズの大事な原料は卵と酢。
卵は鶏さん、ありがとう!
卵はサルモネラ菌が怖いので、生食をするためには卵の殺菌が必要。
なのだが、殺菌剤など無い。
困ってルーたちに相談したら、こっちの世界で卵を食べる時に使う薬剤の存在を確認。
フローラがそれを作れたので、頑張ってもらう。
ルーも作れるらしいが、妊婦なのでそういった物に近付かないでほしい。
何があるかわからないから。
卵の次は酢。
最初、ワインが古くなると酢になるという言葉を信じて実験したが、酢にはならなかった。
次案として、日本酒造りの過程で酢ができるので、そっちを頑張ってみた。
それっぽいのができたので、マヨネーズにチャレンジしたら、上手くいった。
酢を混ぜるのだから、卵の殺菌はいらないかなぁとも思うけど、安全は心掛けよう。
根本的な問題として、異世界にサルモネラ菌が存在するのだろうか?
……
細かいことは気にしないでおこう。
マヨネーズの評判は最上。
色々な料理に使えるので、味の幅が広がったと俺がニッコリ。
今度は魚介類が欲しいなぁ。
酒に関しては、皆が早々に飲むのが問題なのだ。
寝かせようと訴えても、なんだかんだと飲まれてしまう。
我慢が足りないのだろうか。
その辺りを踏まえて酒用のブドウ畑を増やした。
ふふふ。
これで寝かせることができる。
できるよな。
できるといいな。
酒と並行して、普通にジュース作りやお茶作り、コーヒー作りも行っている。
酒と水以外にも飲める物をと求めた結果だ。
酒の消費量を減らす目的も最近はできつつある。
しかし、村人の消費量はそれほどでもない。
果実を絞ったジュースは酒を飲むのは早いと思われる獣人族が主に消費し、お茶とコーヒーに関してはハイエルフや鬼人族の一部に熱心な愛好家が生まれたが、普及には遠かった。
逆に、魔族のビーゼルにお茶が喜ばれており、去年の冬前に大量購入していってくれた。
ありがたい。
春の恒例行事になっているクロたちの角の生え変わりが行われ、蜂の巣分けが行われ、ザブトンの子供たちが旅立った。
そういえば、去年出ていった三十頭のクロの子供たちはどこに行ったのだろうか?
無事でいてくれると良いのだが……
などと思っていたら、その三十頭が帰還してきた。
全員が傷だらけだが、試練を乗り越えた後みたいな顔付きで凛々しくなっている。
何をしてきたのか知らないが、無事で良かったと思っていたら、数日後に残っていたザブトンの子供たちを背中に何匹かずつ乗せてまた行ってしまった。
本当に何をしているのだろうか。
変なことをしていなければ良いが……
風呂の建築希望が出た。
これまでは、俺とハイエルフが作った風呂を村人が入りたい時に入る感じで使っていた。
基本、男は俺だけで、他は女性か男性未満の子供だったので混浴状態だった。
しかし、男性ドワーフが村に住むことになったので男性専用の風呂の建設希望が出たのだ。
だが、村としては女性の方が多い。
なので新しく建設するなら女性専用の風呂となった。
悪い話ではない。
混浴状態では俺が気を使うので、入りたい時に入れなかったのだ。
今の風呂を男性専用の風呂とし、新しく女性専用の風呂を作る。
だが、これに待ったが掛かった。
女性専用の風呂を作ると、俺との接点が減るとの主張が女性陣から出た。
いや、風呂以外で接点を持てばいいだろうと言ったが聞いてもらえなかった。
結果、これまでの風呂を俺専用。
希望者は入浴可能。
新たに、男性専用風呂、女性専用風呂の建設がされることになった。
……
俺も風呂がのんびり使えるようになると思うので、いいだろう。
水量も、なんとかなると思う。
しかし、風呂が増えるとマキの心配が出てくる。
風呂を焚くために消費するマキは意外と多い。
周囲が森だとは言え、ガンガンと消費するのは気が引ける。
マキに代わる燃料を考えないといけないだろう。
とか思っていたら、魔法で水を沸かすことになった。
一応、水を沸かすためのカマドは用意するが、火の魔法が使える者が協力してお湯を作っていくらしい。
獣人族の魔法の練習という側面もあるらしい。
なるほど。
頑張ってほしいものだ。
……
マキよりも魔法の方が早く準備ができるので、便利だった。
自分でできるとさらに便利だろう。
魔法の勉強をした方が……いやいや、俺にそんな才能は無い。
できる人に任せよう。
果実エリアに植える木に関して、嘆願が出た。
嘆願者は蜂。
蜂からザブトンの子供、ザブトンの子供から俺へと伝えられた。
ザブトンやその子供たちと会話はできないが、ジェスチャーなどで意思疎通を行った結果だ。
曰く、森の自生している木を果実エリアでも育ててほしいとのことだ。
果実エリアの木だけでも十分らしいが、一部の蜂の女王が求めているらしい。
危害がなければOKと、俺も快諾する。
快諾はするが、実際に目的の木を移植するワケではない。
目的の木を俺が確認し、理解することで【万能農具】で植えることができる。
だが、その目的の木が近くには無いらしい。
あるなら、ワザワザ嘆願などせずに勝手に森に行くだろう。
なので、まずはその目的の木を探す必要がある。
蜂が求める木に関してはザブトンの子供が理解している。
俺がザブトンの子供を連れて森を探索するかと考えていたら、早々に解決した。
クロの子供たちがザブトンの子供たちを背中に乗せ、森を探索。
早々に見つけて戻ってきた。
俺はその案内に従って移動するだけで終わる。
その移動もグランマリアに運んでもらうことで、極めて短い時間で終わった。
はい、さっさと新しくその木を植えます。
畑を広げたことだし、果実エリアも広げる。
現状、果実エリアの東側に牛達が居るので、西側に拡張。
一気に倍にして、畑八×八のサイズに拡張。
蜂が求めた木は、俺の知らない花を咲かせる背の低い木だった。
実を付けるらしいので、少し多めに植える。
同時に、ゴムの木やアロエ、ヤシなどを植えてみた。
果実エリアのサイズは拡張したが、他の者達から希望があった時に対応できるようにスペースを空けておく。
ふう。
一段落。
気付けば父親になっていた。
あっと言う間だった。
正確には、産まれると聞かされてから子供を抱くまでの間の記憶が無い。
うーむ。
相当パニックになっていたのだろう。
しかし、無事に産んでくれて一安心。
健康な男の子だ。
……
俺なんぞが親になっていいのだろうか?
いやいや、今更何を。
生まれた子供のためにも頑張らねば。
色々あるが、その日から村では宴会がしばらく続いた。
一文字 50×50メートルぐらいの大きさ。
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□□□□□□□□果実果実果実果実◆牛◆◆◆◆◆◆
□□□□□□□□果実果実果実果実◆◆◆◆◆◆◆◆
□□□□□□□□□□□□畑畑鶏畑○○○○○○○○
━上水路━━━━━池池□畑◇◇畑○犬○○○○○○
━下水路━━━━━池池□畑◇◇畑○○○○○○○○
□□□□□□□□□□□□畑家家寮○○○○○○○○
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←五キロぐらい向こうに川。
ワサビ水田は、規模が小さいので描いてません。