冬の備えと全裸少女?
なんだかんだと生活をしていると、いつの間にか肌寒さを感じ始めた。
クロやクロイチたちの子供も、まだ可愛さは残しているものの、それなりに大きくなり牙の生えた兎とかを狩って来るようになっていた。
もうすぐ冬かと少し憂鬱になる。
果実系の木は、まだ実をつけなかった。
来年に期待だ。
食料の貯蔵は、かなりしている。
地下室を増設したぐらいだ。
万全と言えるだろう。
今、育てている作物を収穫すればさらにだ。
そして反省。
水路は完成しなかった。
さらに、塩をまだ確保できていない。
俺、大丈夫だろうか?
この世界に来てから塩分を摂取していない気がするが……
食べた物は、狩った動物か収穫物、後は魚。
……
動物の肉で補充できているのかな?
よくわからない。
焼いてるし。
しかし、生肉を食べる気にはなれない。
体調が悪くなってからだと手遅れなんだが……今からではどうしようもない。
来年の目標にしよう。
優先順位は最優先。
次に水路作り。
でもって……奥さんが欲しい。
夜、一人で寝るのが寂しい。
クロたちが家族で和気藹々としているのを見ると、尚更だ。
そんな俺を、ザブトンが慰めてくれる。
ありがとう。
俺が冬の間にすることだが……
今年も木や石で色々と作ることにしたので、その材料を集めておく。
一応、これまでの成果で、木組みで水の漏れないマスが作れるようになった。
接合部を樹脂で補強する方法なら、かなり前からできたのだが、目指したのは樹脂を使わない木組みオンリーで水漏れしないマス。
材木の接合部の角度を工夫し、筋を彫って間に繋ぎ用の木を入れることで、水漏れを防ぐことができた。
水漏れは防げたが、そのまま大きいマスを作ったら水の圧力で分解してしまったので、内側からの力に強くなるように接合部のカットを工夫した。
万全。
現在、犬エリアの水飲み場の水入れとして利用している。
これで風呂に一歩近付いた。
うん。
果実系の木も良い感じだし、本格的に檜を育てることを考えてみようかな。
風呂用に。
クロイチたちの子供は、一匹を除いて名前は付けていない。
数が多過ぎるからだ。
それに見分けも難しい。
ザブトンに名札用のスカーフでも作ってもらえるなら考えるが……
クロの新しい子供、四匹には名前を付けた。
クロゴ、クロロク、クロナナ、クロハチだ。
クロゴ、クロロクがオスで、クロナナ、クロハチがメスだ。
差別ではない。
俺の寝床に近い場所に居るので、接する機会が多いだけだ。
一匹、エリスとクロヨンの子供の中で真っ白な子犬が産まれている。
これは完全に見分けられるので、名付けた。
フブキ。
ユキの時に考えた御下がりだが、似合うと思う。
メスだし。
子犬たちの額に、はっきりと角が生え始めた頃。
北側に異変があるとザブトンが知らせてきた。
普段よりも緊急性が高そうな感じだったので、嫌な予感がする。
それを肯定するように、クロたちが殺気立ち、一斉に北側に走り出したので驚いた。
子犬たちも同様にだ。
なんだ?
ヤバいヤツでも来るのか?
俺は【万能農具】を取り出し、クロたちの後を追った。
クロたちの居る場所に到着した時、目に入ったのは全裸の少女。
小学校の低学年ぐらいで、目立つのはその銀髪と美貌。
将来、絶対に美人になりますと主張しているような顔立ちだ。
しかし、その身体はクロたちにやられたのか傷だらけで、大きな木を背にクロたちに対峙している。
クロたちは一匹が突出し、少女の意識を向けた後、他の場所から別の一匹が襲い掛かる。
一撃離脱。
少女が敵だとしても、クロたちとの体格差が明らかなのに、クロたちが押さえ込みに掛からないのはなぜだろう?
いやいや、待て待て。
なにを冷静に。
手を叩いてクロたちに俺が到着した事を伝えても、クロたちの警戒は解かれない。
しかし、囲まれている少女は俺に気付いたようだ。
「た、助けて」
良かった。
言葉が通じる。
そして、久しぶりの言葉を聞いた気がする。
「わかった」
俺はクロたちの間を抜けて、少女の前に出た。