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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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093:それぞれの居場所

久しぶりの学園だけど、新入生にとって今月の学食は一年通えるか通えないか勝負の月だった。
特待生は基本的に学食は無料なのでよく通っている、時間的によく一緒になるのはザクスとレンだった。
端の方で食事をとっていると、今日もザクスとレンが一緒になった。
そして少しすると取り巻きを連れて、ソラと一緒にやってきたのはローラだった。

こちらに合流したそうに見えるけど、特待生を見たい新入生が周りにいて近くの席を確保できそうになかったようだ。
「学園内はさり気なく見守ること・・・って結構厳しいね」
「ソラも一緒にいるし大丈夫よ」
「それにしても貴族の子息子女さま達はわかってるのかな?」
「学園内は治外法権だからねぇ」

貴族家がローラや特待生に何かをするのは禁じられているけど、学園内にいる時は大目に見られているらしい。
過保護にする事も出来るけど、折角の貴族専門ではない学園の生活である。
レイシアが体験したようなロマンスを求める事は難しいかもしれないけど、多くの学生と触れ合う事も大切だと思う。

食事も終わりゆっくりお茶を飲んでいると、レンが近くにいた知り合いの女の子を誘っていた。
グループ活動の勧誘で新入生に、「もうどこに所属するか決まった?」とナンパをしているとザクスに冷たい目で見られている。
女性達の会話が盛り上がっているので、ザクスにこの後の予定を聞いてみる事にした。

「今日はこの後どんな予定かな?いつも通り基礎薬科グループに顔を出すのかな?」
「そうだね、特に予定がなければそっちかな?リュージは?」
「まずはサリアル教授に今週の予定と講義の相談をして、週末には魔法科で戦闘訓練かな?」
「リュージは実践戦闘グループで訓練はしないの?」
「あそこは初回で懲りたからね」
「わかる・・・でも、同じくらいの強さの人もいるから実践には勉強になるよ」
「へぇぇ、そういえばザクスも自衛の手段を習ったの?」
「うん、強くはないけど不意打ちなら何とかレベルかな?」
「じゃあ一度一緒に戦ってみない?」

そんな話をしていると勧誘が終わったのか、レンがこちらの話に興味を持ってきた。
さっきの勧誘は草の根運動で一日一回は続けるようで、今日のノルマは終了したようだった。
二人は興味を持ったのかサリアル教授のところへ一緒についてくるらしい。

魔法科のグループへ到着するとサリアル教授が熱心に指導をしていた。
魔法科に入った新入生の半分はこのグループに入り、残り半分は実践戦闘グループに入るのがいつもの傾向らしい。サリアル教授に挨拶をすると今週受ける講義を報告した。

「冒険科の講義が多いですね、そしてヘルツの講義も・・・」
「はい、春になったので体力作りに力を入れて、ゴブリン退治に早くいけるようにしたいです」
「はぁ・・・、あなたが思うほどゴブリンとは良いものではないですよ」
「そこはファンタジーの第一歩なので」
「よく分かりませんが魔法使いが動けるのは良い事です。あなたはこの学園以外でも多くの事を学んでいるようですし、成長しようと努力する姿を止めるつもりはありません。ただ・・・」
「ただ・・・?」
「報告は受けていますよ。あなたは鎌を使った戦いが得意なようですね」
「それは誤解です、【戦闘訓練☆:武器適正1】でたまたま他の武器がダメだっただけで」
「武器の購入を勧めるレベルと聞いていますが」
「それでもです、一般生活で大きな鎌持ってたら怖いですよ」
「あら、あなたは収納を持っているはずだけど」
やぶ蛇だった。とりあえず短剣の修行を頑張って、少しでも強くなって早く冒険に出たいと思う。

後でザクスと戦闘訓練ができる場所を借りたいと申し出ると、場所は大丈夫だけど講師か教授の誰かがついていなければ申請が降りないと言われてしまった。
ザクスに予定を聞くと何時でも良いと言っていたので、その指導員待ちということで申請を行った。
魔法を使った戦闘訓練は金曜日予定なので、みんなに声を掛けて退出しようとしたところでサリアル教授から待ったがかかる。

三月に学園を卒業していった後、空席になっていたグループ長の席があいてるけどやってみないと聞かれる。
真面目に魔法を努力している人がやるべきだと話すとあっさり受理された。
サリアル教授ともう1名は土属性に目覚めたし、努力を続けている者はそれぞれ次のステップに移れる程成長したらしい。ちょっと影が薄くなっているフレアが微妙だったけど、このグループで頑張ってるなら大丈夫だと思う。
再度退出の挨拶をして品種改良グループの教室へ向かった。

レンが先頭を歩き教室のドアを開けるとと誰もいなかった。
「あれ?うちもいないじゃん」
「これは・・・ああ、見学かな?」
教室から外を見ると結構な行列が規則正しく動いていた。

二グループの長が先頭を歩き、ローラとソラが後をついていく。
その後を聖騎士団から自然発生的に生まれた【警護隊】が目を光らせ、その後ろはグループ見学者を2グループの生徒が挟んで説明を始めていた。顧問は最後尾でさりげなく広範囲を警戒している。

「これは・・・凄い効果ね」
「今年の農業科はローラがいるからね。順当にいけば品種改良グループに入ると思うけど溢れるね」
「土地も広いし開き教室もいっぱいあるから良いんだけど・・・」
「ザクス何か問題あるの?」
「研究って多すぎると進まないんだよ、人海戦術が必要なジャンルじゃないしね」
「こういう時に新しいグループがうまれたりするんだけどね。誰かが音頭をとらないといけないの」
「へぇぇ、とりあえず興味を持っていて続く人がいいね」
「「だね」」

見学が終わるまでは教室で待つことにした。
通常新入生を迎えると、この二グループは学園内の開墾を始める。
そして品種改良グループは夏までに収穫できる野菜を作り、半分を研究用素材として色々試すようだ。
基礎薬科グループは薬になる薬草などの生育状況を体験し、隣の品種改良グループと合同研究という形で効果のすり合わせを行っていた。最初の開墾で人数が必要になるけど、学者肌の者と実地の者に分かれる為、この二グループの定着率はそれ程良くはなかった。
自分がこのグループに入り浸っているのを黙認されているのも、農業を重視した王国ならではだと思う。

「そういえば二人に聞きたかったんだけど、いま農場で困っている事あるかな?」
「ああぁ、お兄さんが自領に戻るんだったね。いつぐらいかな?」
「うん、リュージからいっぱい種生姜をもらったから早く戻りたいって言ってたけど、何かゴタゴタしてて今月末くらいになるんじゃないかって言ってたよ」
「ゴタゴタって先週の何かと関係ありそうだよね」
「多分そうだと思う。きちんと結果を出したら、『あの侍女を捜す事を許す』ってお父さんと約束したみたいだし」
「随分すんなり納得したんだね」
「そんな訳ないじゃない。あの後こっちの手伝いが終わったから戻るはずの侍女が戻ってないって大騒ぎして、夜中なのに外に飛び出して大変だったんだから」

結局、当主によりルオンの覚悟を問われ、「暇を出したのは理由がある」と説明し自領の運営で結果を残したらという条件を取り付けたらしい。後で農場に最後のお別れと、その後で商売の話がしたいと言っていたようだ。
色々情の深い人だと思っていたけど、きちんと貴族としての才覚も持っていたみたいだった。

「ザクスは農場で何か困ってる?」
「いや、特には。ところでリュージが取得した商業ギルドの許可ってどこまで出来るの?」
「卸売りと加工品販売は一定量をギルドに、敷地内だったらお店を開いてもいいらしいから、食堂でも直売場でも運営していいらしいよ」
「一定量以外はワインバーか」
「そうそう、系列店なら敷地内扱いらしいからね」
「この前のような見学会があったらどうするの?」
「そこなんだよね、週末くらいなら何かイベントも出来るし今後見学会は増えると思うんだ」
「「いっそ週末にレストランでも作る?」」

これから暑くあるのでテイクアウト方式の物だと傷みやすくて問題になる。
オリーブオイル・トマトソース・酢漬けの商品はワインバーを中心にギルドにも流している。
普通のトマトとレモンも何かしらの方法で市場に流す予定だ。
週末だけのレストランや喫茶店、ケーキや焼き菓子屋なんかも一つの案にはなりそうだけど、その分職人と売り子が必要になってくる。貴族相手なら礼儀作法が整った人まで必要になるのは正直厳しい。

しばらくは農場のラインナップを増やして安定した経営をする必要がある。
レンには食べたい物や気になった物があったら教えてもらうアドバイザーと、背後に伯爵家がいる・・・。
「そういえばレンって伯爵家のお嬢様だっけ?」
「「今更??」」
「貴族のお嬢様ってのは知ってたけど誰も話題にしなかったし」
「聞かれてなかったし」
「そうだね、お兄さんが挨拶に来る日教えてね」
「うん、そこはきちんとしてもらうね」

今日は雑談でグループ活動は終わりそうだった。見学から帰ってきた団体が多すぎたので後で打ち合わせをするらしい。ローラ達に穏やかな学園生活が来るのか少し心配になるけど、安全に配慮してこの状況なので周りが落ち着くまで時間がかかるのは仕方がないなと思った。


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