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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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092:長所を伸ばす指導

「どうしてこうなった・・・」

翌週月曜日に何事もなく休講が明けると、騎士科と冒険科に新しい講師を迎え入れる事になった。
まあ、あの人かなと思ったらその通りの人だったんだけどね。
学園の警備が少しだけ強化されたようで、それ以外はいつもと変わらない学園の始まりだった。
自分がいない間に画策された件で、真っ先にサリアル教授の所へ苦情を言いに行った。

「サリアル教授、一言言いたい事があります」
「あらリュージ君、おはよう」
「あ、はい。おはようございます」
「先週はあの後、問題はなかったかしら?」
「ええ、農場で大変だったくらいで」
「それは良かったわ。で、一言って何かしら?」
「討伐会の事ですよ!自分がいない間に進めたそうじゃないですか。学園のイベントなら一言あっても良いと思うのですが」
「ああ、それはごめんなさい。毎年あの月にあるのよ。来年もやるから覚えておいてね」
「はい・・・、ところでもうあのイベントは来年までないのですか?」
「学園長から打診がある件以外で学園主催の討伐会はないわ」
「その打診の件はゴブリン退治ですか?」

どうやら多くの教授や講師がいる中で騒いだせいで注目を浴びていたようだ。
サリアル教授は困った顔をしていて、助けに来たのが新しく講師として着任したヘルツだった。

「リュージ、元気なのは良い事だが時と場所を考えろよ」
「あ・・・、すいません」
「んで、あまりサリアル教授を責めてやんな。色々考えた結果でお前の実力が足りなかったからだからな」
「実力が足りないのは認めますけど、でも学校のイベントでやったんですよね」
「話は聞いているぞ、魔法使いなのに前に出たがると」
「それは・・・」
「学園で1年きちんと学んだ者なら問題はないんだ」

ヘルツはサリアル教授に合図をして、自分と一緒に部屋から出て食堂で続きを話す事にした。
魔法科特待生での編入だったので、まずは魔法の実力の確認と指導の仕方を重視した教育だったらしい。
通常通り入学をしてから3月くらいまで真面目に学べば、農業科や薬学科の生徒も身の守り方くらいは学ぶらしい。
魔法科の学生は適正により早く学ぶ者もいれば遅く学ぶ者もいた。

「まあ、リュージの扱う魔法なら、後期に学ぶところだっただろうな」
「扱う魔法によって違うのですか?」
「火や風の魔法使いなら早めに戦闘に慣れさせるな。癒しの魔法を使う者も現地で足手まといにならない位には指導するだろう」
「え・・・学園に入って早々に、色々な人と戦闘させられましたけど・・・」
「それはリュージが特待生だからだな。講師陣が今のお前を評価するなら支援の適正があるから立ち位置などの指導をすることになると思うぞ。俺だったらそうする」
「支援系だとゴブリンとか倒せないじゃないですか」
「何もお前が倒さなくてもいいだろう」
「それはそうですけど、ファンタジーを堪能したいんです」
「なんだそのファンタジーってやつは・・・」
「とにかくゴブリンくらい倒せるようになりたいんです」
「んじゃ、戦闘訓練受けてみるか?俺のはスパルタだぜ」
「はい、是非お願いします」

2限目に【戦闘訓練☆:武器適正1】を新入生と受ける事になった。
武器を持って走る今では懐かしい講義だ。ヘルツは多くの生徒に木剣を持たせ、自分はバトルフラッグを持って先頭を走った。
自分も最初は木剣を持って走る、朝練に力を入れていたしレベルも上がった事でこのくらい苦ではない。
この講義に出る生徒は冒険科と騎士科が多く、大多数の者は問題なくついてこれていた。
「よし、到着したものから素振り10回だ」
バトルフラッグを肩に担いで生徒の後ろを悠然と歩くヘルツ、不恰好な素振りをした者には悪い箇所に蹴りを入れていた。
「よし、では武器を変えて走ってこい」

なるべく木製の鎌を取らないように武器を選んでいると、「リュージ、お前は木製の短剣と鎌に見込みがあると聞いているぞ、どっちか持って走れよ」とヘルツが言ってきた。
みんなが二周目を走り出したので木製の短剣を2本持って走り出す。
素振りをした後、木製の短剣を持って三周目を走り出した。
素振りをした後、木製の短剣を持って・・・という所でヘルツから指摘があった。
「リュージ、誰もそれ取らないから鎌持てよ・・・これ指導官としての命令な」

走るのは問題ない、指導を受けるって言ったのも自分だしね。
走り終わった後、諦めの境地で鎌を振るうことにした。

《New:両手鎌スキルのレベルが上がりました》

「ほう、なかなかだな」
ヘルツの関心を余所にため息をつく。武器の格好良さを求めている訳ではないけど、前世の自分が死んだのは鎌のせいだ。出来れば鎌を振るうのは遠慮したいものだった。

「はい、にーい」
ヘルツがこちらを見てないのを確認しつつ二回目をハーフスイングで止めてみた。

《Ne・・・》

お、何とかなったようだ。
一瞬振り返ったヘルツがこちらを見つめている。

「さーん」
じっと見つめられては振らない訳にはいかない。

《New:両手鎌スキルのレベルが上がりました》

ヘルツは後ろに回り込んで歩いているようなので、いちかばちか次はハーフスイングをする事にした。
「はい、よーん」
途中までは本気で前回の《Ne・・・》が出た時点で止めた。するとその鎌の刃とは逆の背の部分に蹴りが入った。

《Ne・・・w:両手鎌スキルのレベルが上がりました》

ヘルツの目を掻い潜ることは出来なく、両手鎌スキルはレベル10まで上がり諦めた次の1振りで+の文字がついていた。
その間二回《New:両手鎌スキルの武技が習得できます》というコメントが出てきた。
それからはいくら武器を変えてもスキルが上がる事はなかった。

講義が終わるとヘルツがやってきた。
「リュージ、お前本当に魔法使いか?」
「え・・・そうですけど」
「純粋なアタッカーかと思う振りがあったが、武器の扱いが一振り毎によくなっていたな」
「やっぱり短剣ですか?」
「そうじゃねーよ、短剣は料理くらいにしとけ」
「えー・・・、じゃあ」
「鎌の動きはいいな、今すぐ武器の購入を勧めるレベルだ」
「鎌はいらない・・・です」
「それ以外なら、まだまだ戦闘訓練が必要だな。とにかく身を守る手段は何個か覚えておけ。無手での訓練も良かったら俺が教えてやるよ」
「はい、そっちはお願いします」

「それにしても、あそこまで良い動きなら武技も視野に入れるレベルなんだがなぁ」
「武技ですか・・・、もしかして冬越しの施設でやったあの技ですか?」
「ああ、あれも武技だな。いくつか傾向があるんだが簡単に説明するぞ」

武技とは簡単に言うと必殺技らしい、それはいくつかの傾向に分かれると言う。
通常は一回振る所を二回以上振る、もしくは連続技として当てたりフェイントを繰り出す。
通常は届かない急所に攻撃をする、もしくは次に繋げる為当てたりフェイントを繰り出す。
魔道具や魔法と組み合わせて新しい技を繰り出す。

これには長い年月の修練が必要で、一日二日で覚えられるものでもないらしい。
どちらにせよ講義が終われば鎌とは無縁の生活を送ることになる、農場での収穫も職員に任せているので大丈夫だ。
「覚えられるようになったら相談します」
「おう、精進しろや。Bランクの冒険者でも武技を使えるのは一握りだから地道にな」
「はい、ゴブリン退治の件覚えといてくださいね」
「それはお前の実力次第だな」

朝練は続けた方が良いと言われ、魔法使いなら魔法使いの戦い方を覚えるべきだなと指摘された。
「そのうち鎌を使った個人指導をしてやる」という言葉を丁重にお断りして、とりあえずは冒険科の講義を多く受ける事を決めた。


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