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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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083:グレイヴの真意

「ふむ、それで今日の用向きはどの件だね」
「どんなではなく、どのなんですね」
「色々な情報が自然と入るからな、今何が起きて何を望んでいるか大体わかるぞ」
「あらお爺様、私が一緒にここに来たという事は素性がばれているのよ。自然にと言うのは少し違うんじゃない?」
「そうか、ところで何故ばれたんだ?」
「ネコちゃんに見つかっちゃって」
窓の外を見るとさっきとは違うネコがこちらを見ていた、みんなが一斉に見つめるとネコはふいっと視界からさっていった。

「それでグレイヴ氏にはどんな意図があるか雇用主として確認に来たんです」
「俺とおやっさんは別件だけどな」
「ほう、君への答えは最後でいいかい?」
「ええ、構いません」
「では別件から話をしようとするか」

事情はどうあれグレイヴから接触してきたので、ヘルツは一度挨拶をしようと思っていた。
グレイヴは昔から若くて元気がある者を集めて仕事を斡旋していて、セルヴィスは金にはならないが貴族子弟や近所の子供などを預かって剣を教えている。
共通点も多く気の合う部分も多いと確信し、おやっさんの力になって欲しいと訴えかけた。

「昔聞いた噂とは大分違うな」
「お互い噂はなしにしようぜ、困る事も多いだろう」ニヤリと笑うグレイヴが昔話を始める。
この商会では跳ね返りや言うことを聞かない若者も多く、多くの場所で日常的に揉め事を起こしていた。
正義感が強い若者と組んでいる事が多いヘルツは、何かと喧嘩を売られる事が多かったと証言している。

「見解の相違だな、ケルベロス」
「誰がケルベロスだよ」
ジト目で見るセルヴィス、よく三人でつるんでいたヘルツ達は周りの揉め事に積極的に介入していた。
揉め事がなくても噛み付いていたのがヘルツで『3人組み・噛み付く』で多くの二つ名がついたそうだ。
一人でいる時は『ヘルズ・ヘルツ』とも呼ばれていたらしい。
セルヴィスはそんな教え子の行動を知り、静かな怒りを宿していた。

「ヘルツ、後で話がある」
「おやっさん、もう昔の事だから勘弁してくれ」

そんな噂を聞いたグレイヴは、個別に何度か部下を使って勧誘したらしい。
ヘルツの答えは勿論NOで、マイクロとヘルツは冒険者になってしまった。
強者が正義であり多くの人望を集める事となった若者時代で、冒険者になる若者は多いが無事に帰って来る者は少なく一攫千金を得る者は限りなく少ない。グレイヴは惜しい若者を亡くしたと諦めることにしたのだった。

それからセルヴィス・自分の事を語っていくグレイヴ。
アーノルド家のワインは有名だけれど、まさか自分の焼き芋売りからの事まで調べているのは意外だった。
そして今年の発布の事を言及する。

「セルヴィスさん、俺は正直今回の事件は嬉しさ半分やるせなさ半分なんだ」
「それはどういうことです?」
「そうだな、リュージ。例えば商売に大事なものって何だと思う?」
「えーっと、人・物・金ですかね」
「言い得て妙だが良い回答だ。セルヴィスさん、お宅のワインを考えると物は良いそして貴族家だけあって良い人達に恵まれている。金はどうだか分からないが食うに困る事もなければ、他所の十把一絡げの男爵家よりよっぽど良いものだろう」
「過分な評価だが素直に受け取ろう」
「だがな、やっぱり貴族なんだなと俺達は遠く感じる事もある。商会が入れる入れないは別にして、今までの成果だと思うが直接付き合っているのは商業ギルドだ。ギルドは大量仕入れや良質の商品には絶大な力を持っているのは知っている」
「それがギルドだからな」ヘルツが合いの手を入れる。

「だがな、今回少なくともセルヴィスさんは貴族を辞めたはずだ。そしてあそこが仕掛けたにせよ今回の事件に対するギルドの対応には納得いかねぇもんがある。そしてあんたにもだ」
「ワシが何か・・・」
「ピンチになった時、頼ったのが別の貴族家って事だよ。ああ、やっぱり貴族は貴族でつるむのかと」
「お爺ちゃん寂しかったのね」全員がナディアの発言に注目した。

「そっかグレイヴさんよ、それは誤解だぜ。相談はあったにしろ自発的に動いてくれたのはこのリュージだし、ちゃんとギルドも協力してくれた。頭からすっかり抜けていたけど、あんたがお嬢ちゃんを派遣してくれたんで俺達に足りないものも分かったつもりだ」
「グレイヴさん、今までの付き合いを切る事は出来ない。ただ、ワシはもう貴族ではなくなったんだ。これからは子供達に剣を教え、この子供達が安心して過ごせる方法を考えて行きたいんだ」
「それがワインバーか、面白い事業だな」
「ワインも大事なうちの子供達だからな」
「では、当然その大事な子供達を不幸にさせたやつらは・・・」
「きちんと処理するさ」
「それは貴族としてか?それとも王国民としてか」
「勿論、王国民としてさ。貴族として必要ならうちの長男がなんとかするだろうよ」
「では、改めてお誘いしよう。【先代会】に入らないかい?そして・・・」

セルヴィスとグレイヴは握手をして、ナディアは本人の希望もあり通いで事業に参加する事が決まった。
帰る間際にグレイヴがヘルツを呼ぶと内緒話をしていた。最初の言葉に断りを入れ、続く言葉にお礼を言っていたように見える。

翌日に事業場へ行き仕事が順調に始まった事を確認するとワインバーへ行く。
セルヴィスとグロリアとヘルツとルオンが集まると店の名前の会議が始まった。
多くの意見を出してもらって検討した結果、『GR農場』と『大衆ワインバー芳醇』に決まった。
この後ワインバーの招待客の打ち合わせをした所、プレオープンは2日に分けて開催することになった。
誰を何時呼ぶかを決め、招待状の手配はルオンとヘルツが担当してくれるようだ。

翌日はガレリアと一緒に冬越しの施設へ早めに向かった。
本日この後解体イベントがあるようで、その前にこの場所を労いたいとお願いしたからだ。
するとガレリアは丁度良いと、この前言っていた教え子を紹介してくれることになった。

「リュージ君、彼女が元教え子の・・・」
「ハイハイハーイ、ガレリア先生の元教え子のナナでーす」
「少しは落ちつかんか」
「折角先生に呼んでもらったのに・・・。私は嬉しいんですよー」
「えーっと、ナナさんお願いします」
「はい、リュージ君お願いしますね」
「魔法には恵まれなかったけど、その分を元気と元気と元気とちょっとした管理に適正がいったようだな」
「大丈夫ですか?」
「仕事は任せて、ガレリア先生に迷惑をかける事は決してしないよ」
経理業務と商業ギルドの折衝役を引き受けてくれて、自分の秘書のような事もしてくれるらしい。
挨拶が終わるとガレリアとナナは施設の外で色々話をしていた。

施設の中に入ると伸びをする、ふと何か突起物のようなものを見つけたので近くにいくとモグラさんがいた。
丁度良いので土の精霊さまが近くにいるか聞くと「すぐ呼べるよ」と久しぶりの看板で返事をしてくれた。
「呼んだのじゃ?」「呼んだかしら?」「僕も来たよー」いつもの土と水と植物の精霊さま達だった。
この施設が今日で取り壊される事を伝えると、軽くブーイングが聞こえてくる。
何とか説得をすると精霊さま達は渋々納得をしてくれたようだ。

「後ですがお約束のワインを仕入れてきました」
「あら、今度はちゃんと覚えていたのね」
「ええ、それでもし可能ならばですが女神さまにも飲んで頂ければ」
「良い心掛けなのじゃ」
赤と白を1樽ずつ出すとお礼を言われる。ここで最後の宴会をしたいとおじいちゃんが言うと、水の精霊さまが嗜め精霊さま達は樽と共に消えていった。

しばらくすると騎士団がやってくる、そして近衛と一緒に来たローランド王子が演説を始めていた。
外に出るといつの間にか人だかりが出来ていて何が起きるのかを静観していた。
冒険者ギルドからはギルド長が何名かの冒険者と一緒に見学している。
今日は土曜という事もあり、ガレリアの周りには学園長やサリアル教授達までいた。

「・・・と、今年はこの施設のおかげで異例の死者が0になった。また、多くの貴族家当主達の尽力により新しい王国民の支援もしてもらっている。役目が終わったこの施設だが、その敬意を表して安全性を皆に伝えたいと思う」
王子が片手を挙げると両脇にいる近衛騎士が抜刀し施設に斬りかかる。
ガキッ・・・あっさり弾かれる片手剣、王子には以前報告にあったのでこれは想定内だった。
すると納刀した近衛騎士が下がり、王子が再び手を挙げると今度は破壊槌を持った8名の騎士がやってきた。

丸太の先端部を凸にして金属コーティングをし、持手を加工しただけの物だ。
こっそり文官と話していた先頭の男が若干遅いんじゃないか?という速度で施設に破壊槌を打ち込む。
若干鈍い音がしたかと思うと傷ひとつついていない施設、王子は文官に冷たい視線を送ると再度手を挙げた。

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