挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
73/79

073:生活向上計画

続いて見学に行ったのは、養鶏を行う予定の場所だった。
こちらもそこそこの規模の建物が出来ていて、がらんとした空間の奥に藁がどさっと積んであった。
若干寒さが残るのはここも一緒で、さっきより気持ち高めの温度に調整していると馬車が来たようだった。

やってきたのは茶色の身が引き締まった鶏なのかな?どちらかと言うと闘鶏のような気性の激しい鶏を手配したようだった。
「隣村からお約束のクルックを20羽、お届けにあがりました」
御者を買ってでてくれた騎士さんが、この場所の視察中に届けてくれるように手配してくれたようだ。
この建物の外は柵があり、広い庭になっていた。クルックを庭近くに放つと寒さのせいか暖かい建物のほうに駆け出していく。

出入り口はスロープになっていて、ところどころに滑り止めの細く薄い板が打ち付けてある。
クルックは苦もなく駆け上がり部屋に入ると、一直線に藁に飛び込み早速巣作りを始めていた。
隣にある小屋にクルックを入れていた籠や飼料などを仕舞い、この後は水飲み場やお世話担当などを決めるそうだ。
この辺の差配は村長が担当してくれるらしい。

「だいたいこんな感じでいいですか?」
「そうじゃの、後は二つの畑をどうするかと何か娯楽的なものがあればのぉ」
「村長、畑はともかく娯楽は難しいんじゃないですか?リュージ君にお願いするにしろ、何か具体的に言ってあげないとやりようがないでしょ」
「うーん、そうですね。まずは畑の二面をどうするか考えますか」
「あの4面と他の設備で大分よくなったからの、新しい芋でもいいんじゃが何か新しい穀物があればいいの」

「土を持っていったことで掘り下げられた畑を活用するかぁ」呟いてみて、ふと収納をさぐってみる。
「何か良いものがあるのかの?」ここに来て最初に持っていた米を出してみた。
「その白いのは穀物の実かの?」
「はい、穀物なんですが説明が難しいなぁ。いったん調理出来る場所に移動しますか?」
大将と女将さんに挨拶して宿屋の調理場を借りる、ここで一品作ってどんな素材なのか紹介しようと思う。

米をといでザルに載せ、水をよく切っておき必要な材料を並べる。
ベーコンは薄切りにしてから細切りにし、玉ねぎも小さめに切る。
時間があった時多めに作ってもらったスープを取り出し別の鍋に準備をする。
トマトを出すと湯剥きしてザク切りにし、篩を使って裏ごしをする。

もう一つの鍋を使いオリーブオイルを入れてから米を炒める。
米が透き通ってきたらベーコンと玉ねぎを投入し、軽く炒めてからスープを少し入れ混ぜながら煮含めるイメージで混ぜていく。
数回スープを投入したら裏ごししたトマトを入れ、最後にオリーブオイルを一回し入れるとパセリを散らして完成だ。
5人分を皿に分け少し早い昼食を取ることにした。

「うん、これはうまいな」
「この赤い野菜もいいけど、この小さな粒もしっかりうけとめてるんだね」
「大将、女将さんありがとうございます。この米は普通に炊いても美味しいんですよ」
「リュージ君、初めて食べたけど癖もなくていいね」
「パンとも芋とも別物じゃの、お腹にたまる感じがいいんじゃの」

なかなか好評だったので簡単に説明をすることにした。
米を精米までして食べられる状態にするには手間が少しかかること。
飯ごうを取り出して白米を炊くには、こういう道具や土鍋などが必要な事を説明する。

続いて米を作るにあたって注意点を挙げてみた。
水田になると思うのであの2面を繋ぐ必要があった、隣接しているので特に問題はないと思う。
水の管理をするとしたら魔道具を使って、水を一定量に保つよう調整をしないといけない。
そもそも米の現物はあるけど稲は持っていなかった。

「課題が多そうじゃの。余力ということであそこは寝かしてもいいし、リュージ君が戻ってから土作りをするのもいいの」
「そうですね、何でもかんでもリュージ君頼みじゃ先行き不安ですしね」

大将達はお昼の準備に入ったようで、テーブルの一角を借りて打ち合わせをする。
基本的に今回設置した魔道具は紫水晶を使っているので、自動的に魔力の維持が出来るようになっている。
そして孤児院の子供が魔法を使えるようになった事については、マザーの許可のもと魔法を使って貰う事に落ち着いた。
その際、決められた費用を払うものとし管理はマザーが行うようだ。

使える紫水晶は後数個、ただあまり急激な環境の変化は好ましくないようで、後一箇所何か作るか作らないかというところだ。
「畑の使い道、娯楽施設・・・。そうだ、温泉はどうでしょう?」
「温泉とはどういうものだい?」
「温泉は簡単に言うと大きな風呂です、厳密には地下から汲み上げていないので温泉と言うには語弊がありますが」

村の人口と邪魔にならなくて皆が集まれる立地を聞き規模の説明をする。
資材は余っているらしく、風呂場だけ何とかすれば後は村で付帯設備はなんとかしてくれるらしい。
休息も十分に取れたのでこのまま現地の視察をすることにした。

「ここからここまでは使えるんじゃの」
ディーワンを鍬モードで取り出し、指定エリアの四隅に印をつけるように振り下ろす。
湯船には源泉かけ流しのように常時湯が入り、湯が流れる傾斜をつけ排水の場所を決めそこで消えるようにと考える。
男湯と女湯を分けるなら一箇所から二股に別れて二箇所の湯船に入るようにしたいと思う。
村長に地面に書いた図を使って説明すると、「ゲイツに言えば大丈夫じゃの」と返事が来る。
竹を使って流し素麺のような状態にすれば行けそうだと説明してくれた。

ゲイツさんへの依頼と資材調達はこの後二人がやってくれるらしい。
これから手配をするようで二人は一旦戻るようだ、この場所は自由に使って良いと言ってくれたので色々試すことにした。

まずは敷地内を開墾し大きな岩や石を取り除く、それをクラックやブレイクを使って砕きウォーターボールの中に入れて激しく回転させると角を取っていく。一通り処理をすると一旦収納に仕舞った。
足元に魔力を流し敷地内の足場を硬化していく、裸足になって歩いてみたけど違和感がないくらいの硬さだ。

「折角体を洗っても足元が土だと汚れそうだなぁ」
課題は先送りにして浴槽候補の二箇所を、トンネルの魔法を使い掘り下げる。
男湯と女湯の仕切りを地面に描くと考え込んだ。
「うーん・・・、とりあえずお湯入れてから考えるか」

魔力を大量に集め巨大なウォーターボールを作るべく、集中すると肩をポンポンと小さい手に叩かれた。
「え?」振り向くと頬に指が刺さっていた。
「これ精霊界でも流行ってるんですか?」
「あら、集中を切らさないのは偉いわ」水の精霊さまはふよふよ浮いていた。
魔法を維持したまま加熱をしてゆっくり浴室に放り込むと水の精霊さまと向き合った。

「水遊びをしているのかしら?」
「えーっと、大きなお風呂を作っているのですが・・・。色々課題が出てしまって難しいですね」
「あら楽しそうな事をしてるわね、最近はおじいちゃんや坊やの魔法ばかり使っているので忘れられたと思ったわ」
「そんな事はないんですけど・・・、最近は商品開発や魔道具の修行ばかりしています」
「相談に乗ってあげるから、課題をお姉さんに言ってごらんなさい」

一旦整理する為に目を閉じ考えてみる。
大体まとまったので相談しようと目を開けると、土の精霊さまと緑の精霊さまも一緒に並んでいた。
「あ・・・えーっと、こんにちは」
「呼ばれたから来たのじゃ」
「僕もきたよー」
「そういえば最近みんな魔力を分けなくても人型になれるんですね」
「あら、これだけ魔力の残滓が多いなら普通になれるわよ」
「そうなのじゃ」
「あなたの近くに急に魔法を使えるようになった人増えてない?そういうことよ」

どうやら自分が滞在している近くにいる人には魔法に目覚めやすくなるらしい。
そして驚くことに、この村は元々魔力が集まりやすい土地のようだった。
女神さまがここに送り込んだ理由の1つが分かった気がする。

「なるほど、それって問題はないのですか?」
「大丈夫なのじゃ、そもそも魔法を使えない者などいないから問題ないのじゃ」
「うん、ただ向き不向きがあるからね。平和な時代は僕達の魔法が流行りやすいんだ」
「そうね、ただどの属性も利便性とは別に災害に結びつくから油断は禁物よ」
「わかりました。では、本題に入りますね」

今作っている施設の説明をして課題を上げてみる。
精霊さま達はうんうんと頷いたり、それは簡単だよねーとひそひそ話をしていた。
一個ずつ解決する為に、まずは自分のやろうとしている事を発表した。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ