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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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072:頑張っては魔法

小説関係のブログを始めました。
軽い宣伝です。

http://odaryou.hatenablog.com/
4面を再度掘り起こして畝を作り、2面の植え付けが終わった。
最初の指導だけすれば後はみんなが進めてくれるようで、残りは明日にまわすそうだった。
あの後、大人達の適合試験を終わらせると子供達がやってきた。
そして「僕も私もやらせてー」と数人ずつ試していくと、サラとルーシーが触った際に魔力が灯っていた。

日も暮れると農作業を切り上げる。
今日は孤児院の方で『おかえりなさい会』を開いてくれるらしく、早めに帰ったシスターアンジェラが腕によりをかけてご馳走を作ってくれるそうだ。マザーと子供達と一緒に久しぶりの孤児院へ帰っていく。

「なんか久しぶりだなぁ」
「リュージ君、おかえりなさい」
マザーのおかえりなさいに少しジーンとするものを感じた、するとサラとルーシーが手を引っ張り花壇があった場所まで連れられていく。

「「お兄ちゃん、凄いでしょー」」
「え?あれ??花が咲いてる」
「僕と」「私が」「「お世話したんだよー」」
花壇一面に咲いていた花は、お別れの時にこっそり渡した種から咲いたものだった。

「さあ、まだ寒いので早く入りましょう」の言葉に促されて孤児院に入っていくと、玄関にみんな集まっていた。
みんなの「おかえりなさい」がひとつになった。
今年はこの孤児院を出る者がいないせいか、旅立ちの部屋が空いていたようだ。
荷物をそこに置き、今日はこの部屋を使うようにとマザーから指示を受ける。
顔や手の汚れを拭うと、「夕食の時間だよー」と声が聞こえてきた。

夕食では以前よりちょっとだけ良い食事にみんなホクホク顔だった。
質があがったのはちょっとだけど、量はかなり充実したらしい。
村人もそうだったけど、みんなどこか血色が良くなったように感じる。

食事中の話題は『王都ってどんなところ?』とか『綺麗なお洋服』や『王子さまやお姫様の話』などメルヘンに溢れる事をいっぱい聞かれた。みんなの夢を壊さないよう話していくとマザーと目が合う。
そして人伝に聞いた『とあるお姫さまと恋に落ちた美男子』の話をすることになった。
途中、ワーワーキャーキャーと女の子チームを中心に話を聞きたがり、お姫様の美しさを表現すると男の子チームが興味を持った。そしてハッピーエンドかバッドエンドか分からない最後を話すと子供達が議論を始めた。

食事が終わり、そのままお茶の時間に突入する。
普段はみんな早めに寝るよう注意されていたようだけど、「今日はいいでしょー」と大勢の声にマザーとアンジェラは根負けしたようだ。まずは、自分が出た後の村のお話を聞かせてもらった。

自分が旅立ってすぐに第一陣の冬越しの物資が届いた。
王都直轄領でもありマザーもいるので、本当はこの程度の支援はポケットマネーでも余裕で来てもおかしくなかった。
ただ、表立って特別扱いが出来ないと、王家が気を使ったのが裏目に出ていたのだ。
ところが例の事件を重く見た王家は合法的に介入することを決めた。

それからあれよあれよと言う間に領主代行が到着し、建築資材が届き追加の救援物資が届いたのだ。
つい先日には穀物倉庫が完成し、養鶏の場所と芋の加工場は確保出来たので、明日は畑に集合した後村長と領主代行と一緒に村を回る予定になっていた。

一通り聞くと、花壇の話題になった。
「「ねえねえ、驚いた?」」サラとルーシーが近くに来て服を引っ張る。
「春になったら蒔いてね」と言って渡したのに、時期を間違えたんだと思ったんだけど、見事に咲いていた花壇を見ると経緯はともかく見事に育てられたと思う。

「言っちゃおうかなぁ」
「ダメだよ、ルーシー」
「じゃあ、サラちゃん秘密に出来るの?」
「うーん、お兄ちゃんならいいんじゃない?」
「じゃあ言っていい?」
「ダメー、私が言うの」

二人がひそひそと相談している、どうやらお互い納得出来た様で自分の前に二人が立つと堂々と宣言した。
「「実は」」「僕と」「私は」「「魔法使いになったのー」」
二人は同時に腰に手の甲をあて『えっへん』のポーズをした。
「え?」と思わずマザーとアンジェラを見ると噴出しそうに微笑んでいる。

自分がここを去ってから一生懸命、二人が中心になって花壇のお世話をしていたそうだ。
その過程で植物や土や水に話しかけてお世話をしたら、きれいな花が咲くよと二人に言われてそれを続けた結果サラは植物に対して、ルーシーは土に関する魔法を覚えたようだった。

興味が沸いたので聞いてみると使える魔法は【おはよう】と【がんばって】と【おやすみ】らしい。
二人とも同じ魔法名だったようだ。
【おはよう】の植物魔法は発芽と覚醒のようで、土魔法は微弱な腐葉土化らしい。
【がんばって】の植物魔法は成長促進のようで、土魔法は微弱な活性化らしい。
【おやすみ】の植物魔法は休眠らしく種苗の保存や花が咲く時期を延ばすもの、土魔法は疲弊した大地を少しだけ癒すものだった。

これを繰り返すうちに、花壇はまだ寒さが残る時期にも関わらず順調に育っていた。
孤児院のみんなは村人にも秘密の約束をして、特別に村長と領主代行だけには報告することを合意していた。
領主代行からは二人が大きくなった時、希望の教育を受けたいと望むなら特待生枠を確保すると言ってくれたようだ。

話が一段落するとみんなが寝室に向かっていく。
マザーはアンジェラとサラとルーシーを呼び止めると、協会に来るように促す。
自分も含めて大事な話があると真剣な顔で話していたのだ。

薄暗い協会に星の明かりが差し込む、「まずお祈りしましょう」と言うマザーに従い全員で瞑想を行う。
孤児院に住む子供達は、お仕事中に入ってはいけないと言われている協会に度々入ってきてしまう。
まだ小さかったり家族の温もりや優しさを感じたい年頃の子が集まれば仕方がないことだ。
そして、静かにしているなら咎められる事はまずない。すると目を閉じ自然と瞑想を覚えることになる。

しばらくすると動く気配がしたので瞑想を止めると、アンジェラは涙を流していた。
「前からお告げはあったようですね」
「はい、光は数多の場所へ注がねばなりません。分けられた灯火は次へ繋げなさいと」
「まず3人はリュージ君の魔法を受けて魔道具を使えるようになりなさい。それがこれからこの村の、そしてあなた達の力になります」
「「「はい、マザー」」」
この後、サリアル教授直伝の着火を使い、仕舞ってあった明かりの魔道具をそれぞれに渡す。
これは淡いオレンジ色の間接照明くらいの明るさを出すもので数個預かっていた。
無事3人に魔法を施すと魔道具を使えるようになり、マザーとアンジェラを残してそれぞれの寝室へ向かった。

翌日は畑に行くと、もう村人が畑仕事をしていた。
この芋栽培の労役により、普段かかっていた麦に対する税率も下げられたようだ。
また、この芋は村内消費分を除いた分を、王都商業ギルドが王家指導の下、高価買い付けをする予定で商品開発部の何名かが既にこの村に入っている。
村長と領主代行と一緒にまずは穀物倉庫を見学することになった。

土地が無駄に広いので自然と穀物倉庫も広くなっていた。
害虫や害獣対策もしてあるようで、辺境の村にはあるとは思えない素晴らしい造りになっていた。

「大きくて良さそうな倉庫ですね」
「そうじゃの、王国の本気具合が伺えるの」
「それはもう、この村に対する謝罪もありますけど直轄領でもありますからね」
「でも、やっぱり土地柄というかちょっと寒いですね」

これは十分予測されていた状況だった。
ガレリアの経由の依頼により農業指導とその他の補助を頼まれていた。
お金はいくら使っても申告すれば予算として組めるので、自由にやっていいと言われていた。
そして大小の紫水晶数個と宝石を預かっている、早速ガレリアとエントから習った技を披露することにした。

扉を開け放ち陽の暖かさを倉庫内に入れる。
「ちょっと肌寒いくらいが良い感じじゃの」
温室の魔法での課題は鉄筋棒にあった、簡単に言うと空間指定に粗があったのだ。
中くらいの紫水晶を取り出すと、奥の目立たない場所に魔力を流しながら埋め込む。
空間の温度だけを閉じ込める常春さまの技術だった、無事に発動したようで一安心した。

「ま・・・まさか、これは噂に聞いた常春さまの・・・」
「それ以上は言わない約束でお願いします、今お世話になっている方々にも迷惑がかかるので」
「まあ、大丈夫じゃの。一回失敗した者の代わりに来たくらいだからの」
「は・・・はい。もちろんです」

若干脅迫じみた形になってしまったけど大丈夫だと思うことにする。
入学式までに王都に戻らないといけないので時間には限りがあった。
一つの村が豊かになれば、近隣やそこに至るまでの村や街も豊かになるのでやれる事は頑張ろうと思った。
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