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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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049:クリムゾン

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43,000PVを超えました。
年内後1話かけたら良いな。
首めがけて前歯を突き出して飛んでくるうさぎにかろうじて杖を横に向けると、杖ごと噛み砕く勢いをモロに受け居反りのような形で杖ごと放り投げた。
「ヴァイス、頼む」と叫ぶと同時に短剣と片手持ちの杖を取り出す。
「おいおい、たかがうさぎだろ」と目の前のうさぎを捕まえたザクスは余裕そうだ。

「バッカ、クリムゾン種はそのエリアの主くらいの強さなんだぞ」素早く片手剣と盾を構え割り込んでくるヴァイス、そしてプロテクションの魔法を自分とヴァイスにかける。距離が接触タイプの魔法なのでザクスは後回しにした。
「うさぎの主って言ったって弱いだろう」と舐めきっている発言をしたザクスに噛み付くスノーラビット。
ザクスの軽い拘束を逃れたスノーラビットはクリムゾンラビットのもとに駆けつけると目をパチパチっとして2匹のうさぎは黒目に戻る。そして一瞬もこもこっというか大きな毛玉のように混ざり合うと又二匹に分かれてこちらを見てくる。

二列に並んだウサギはヴァイスを避けるように左右からこちら目掛けて突進してくる。
向かって右側のうさぎに短剣を投げつけると一瞬立ち止まった。
そして左側のうさぎは目標を変えてヴァイスの足目掛けてちっちゃい手を振り上げて跳んでくる。
片手剣はうさぎの行動に合わせて下に向けていたので掬い上げるようにヴァイスは振り上げる。
ガキィィィィィィンと嫌な音が響く。

「警戒しろザクス、そっちに興味がいっていないから極力動くな。あと、うさぎの主じゃないぞ。このエリアにもワイルドベアくらいいるだろ。そいつより強いってことだ」ヴァイスの指摘に固まるザクス。
腰に片手用の杖を挿し両手に投てき用短剣を取り出す。
ヴァイスに警戒してもらっている間に動けなくなったうさぎを確保し、ザクスを呼ぶと二人でロープを使い手足を縛って拘束した。すると、もう一匹がまた目をパチパチして目の色と形が変わった。

後で調べて分かった事だが同族を守るためには命をかけて戦い、もとの状態に戻るには同族の呼びかけが必要だった。今の状態だと戦って討伐するしか手段はないようだ。

昆虫の複眼を思わせる真紅の殺意がこちらを射殺しそうな程に見つめてくる。
小動物相手なのでヴァイスが戦いにくそうだったが愚痴っても仕方がない。
きっかけを掴めるように「短剣を投げてけん制してみる」とヴァイスに伝える。

腐っても短剣スキル持ちである、他にも戦闘系スキルがあれば補正もあるかもしれないけど、胴体目掛けて投げれば多少ずれてもどこかには当たると思った。
肩辺りに当たった短剣は体表を浅く削っていく、それでも一矢報いようとヴァイスの足元を崩そうと鋭い歯を剥き跳んでくる。
これを丁寧にさばくヴァイスだったが対人を得意とする騎士科だけあって戦いにくかったようだ。
腰を落とし、クリムゾンラビット対策をとるヴァイス。

短剣による投てきで徐々にクリムゾンラビットの体力と集中力を削っていたようだった。
何回目かの短剣を投げた後、今まで足元を狙っていたクリムゾンラビットはヴァイスが段々腰を落としたのを確認して狙いを変えて首に突っ込んできた。
「マイクロさん直伝、シールドアタァァァァァック」ボコッっと嫌な音が聞こえてきた。
「リュージ、チャンス」ザクスの一言で目の前に落ちてきたクリムゾンラビットの胴体に投てき用短剣をズブリと埋め込む。すると首をこちらにぎゅるんっと回して口を大きく開けると胸元にズドンと空気の塊がやってくる。

衝撃を受けて後ろに飛ばされると大きく咳き込む。
「ザクス、ポーションの準備を。あと、リュージを焚きつけるな」ヴァイスの叱責が飛ぶ。
ヴァイスはゆっくりクリムゾンラビットに近づくと警戒しながら剣を向ける。
「今ので片付いたようだね」と言うと首を落とした。

《New:レベルが上がりました》
《New:レベルが上がりました》
《New:レベルが上がりました》
《New:レベルが上がりました》
《制約/武器スキル習得難易度UPが解除されました》

ポーションを飲むとさっきの痛みが嘘のように引いてきた。
いつの間にかハンマーを構えていたゴルバは「見事な連携だ、ただ後ろのあんちゃんは魔法使いじゃないのか」と腰に挿した杖を指差す。この辺がサリアル教授の不安だったところだろう、後で報告しないといけないと思った。
ヴァイスはクリムゾンラビットの両目から2粒の結晶を取り出す、そして「墓を作ってやらないとな」と言うので「何でもって帰らないの?」と聞いてみた。
「クリムゾンは狂ってしまった個体なんだ、通常こういう個体は食べることはしない。また山に敬意を示して埋めてやるのが慣わしになっているんだ」短剣と杖を回収して、ディーワンをシャベルモードにする。
穴を掘っても大丈夫そうな場所を探し、丁寧に埋葬するとスノーラビットを開放する。
今日は狩りを目的にしていないし極力狩りをしないように言われている。

少しすると斜面の下のほうから「おーい」と声が聞こえてくる、今度はゴルバが周囲を警戒しヴァイスが救出の補助をする。
顧問が班長と副長の荷物をもってすいすいロープを使い登ってくると、二人はロープを器用に使い要救助者を救出していた。
全員が集まるとまずは救助者の確認をする、太ももに真っ赤な布が結ばれていたがどうやら自分で圧迫止血をしていたようだ。
救出した際にポーションを飲ませたようで大分呼吸も良くなっていた。
ただ、寒さで少し辛そうにしていたので他の怪我を確認した後洞窟へ急ぐことにした。

顧問とゴルバは「他の地点を見ながら合流する」と言い、早く救助者が安心できるように準備をするように指示した。
二人の荷物を収納に仕舞い班長が背負い副長が警戒しながらも洞窟を目指す。
30分も歩くと目的地の洞窟にたどり着いた、出入り口には焦げ後があり奥に行けば火を焚いた後があった。
ブルーシートを引き毛布を取り出す、水筒からお湯を出すと救助者に飲ませることにした。

副長とヴァイスは薪を拾ってくると出て行った。
ザクスは乳鉢を取り出しゴリゴリやっている、班長は火をつけるセットを準備していたが悔しそうな顔をしていた。
顧問と一緒に全員戻ってくる、そして副長とヴァイスは手ぶらだった。
雪に濡れた木ではどうにもならなかったそうだ、そして顧問が「リュージ君あの箱をお願いできるかな」と言ってくる。

二つあった箱を取り出すと片方から炭を取り出した。
そっちは暖を取るのに必要なものが入っていたようで地面に敷く布・大き目の上下の着替え・炭・燃料・松明などが絶妙な入れ方で仕舞われていた。これだけ揃っていれば騎士科のみんなの動きは早い、素早く暖を取れるようにすると救助者を着替えさせ怪我の状況を再確認する。そして包帯を巻くと聞き取りを始めようとしていた。

「あー、先に食事にしませんか?お腹すいちゃって」とザクスがお腹を押さえる。
日が落ちるまでにたどり着いたので日程的には予定通りだったけど、まさか本当に救助者がいるとは思わなかった。
まず大きな皿を出して収納からパンを山ほど出す、干し肉は副長さんが出して切り分けてくれた。
最後に大鍋を出すと熱さを確認する・・・「あつっ」大丈夫なようだった。
包丁の背でパイ生地をコンコンと叩くとボロボロと崩れていく、蓋を開けると熱気とトマトベースの野菜の香りが広がっていく。
ゴルバはスキットルのようなものを取り出し何かを呷っていた。

救助者から配り、素早く腹を満たしてもらう。
「この酸味と深みが最高だな」と終始静観モードだった顧問が真っ先に感想を言う、みんなは一息つけた暖かさにホォォォと目をつぶり温泉に浸かったかのような声をあげていた。
「光栄です、隊長」と敬礼すると「もう、大丈夫だよ」と苦笑いされた。
普段食べるより美味しいかもしれないなという感想に緩やかな空気が流れた。

「では、少しお話を聞かせて貰えますか?」班長が口火をきった。
救助者の名前はノウムと言い20代中盤の男性だった、急な病になった祖母の為に冬場に山で採れる薬草を採ろうと入山したようだ。この時期に訓練をやっている事は知っていて、事前に騎士が掃除をしてくれるのでモンスター対策はしていなかった。
ところがどこからかうさぎが近づいてきて警戒せずにいたら突如牙を剥き逃げ場を塞がれ、どうにかしようと動いたら斜面を降りたほうが助かる確率が高そうだと思うようになった。後は降りた先で応急処置をして救助が来るのを神に祈ったようだ。
ちなみに薬草は偶然みつけたのでを採ることができた。

この後報告会となった、まずクリムゾンラビットを見つけ現場にいたもので討伐したとヴァイスが告げる。
班長は救出した時の状況を話し、どうやって見つけたか手掛かりはどうあったかなどを話す。
また、こうすれば良かった等準備不足だった点も挙げた。
最後に顧問から「どうやら今回の騎士団からの巡回は間に合わなかったようだ」と報告された。

ノウムには厳重注意ということで反省を促し、今回の訓練及び巡回を知っているようだったら同行させてもらうよう頼むべきだったと理解を求めた。身内の病の為、考えが及ばなかった点は情状酌量の余地があるので注意で終わりだ。

この後二人ずつ野営を決めて休息を取る事になった。
出入り口に松明を2本刺し班長とザクス・副長と顧問で野営を行った。
この場所は風を防ぐことができて野生の動物もくることが少ない多くの人に知られている休息場所だったので野営では問題がなかった。何回かザクスがノウムの確認をする為に起きたようでノウムの安定した寝息に問題はないようだった。

本来は初級者コースから入り上級者コースから降りる予定だった。
「騎士団が来ていない以上上級者コースから戻るルートは中止にする、足を負傷しているノウム氏のことを考えて安全で素早く戻れるよう全員気を使って欲しい」
「「「「「はい、隊長」」」」」
「それはもういいと昨日言っただろう」悪乗りが過ぎたしっぺ返しがきたようだ。
朝食を取りそろそろ移動しようかと言うところで出入り口から「よぉ・・・」とある人物が顔を出してきた。
ウサギじゃ盛り上がらなかったかもしれない。
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