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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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048:要救助者

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41,000PVを超えました。
年内後2話かけたら良いな。
コテージに戻ると既にみんな戻っていた。
食事と聞き込み目的だったけど酒場で随分捕まっていたようで大分遅くなってしまった。
「「「すいません、遅くなりました」」」ほろ酔いには程遠いけどこの季節なのに少しポカポカしていた。
顧問も打ち合わせをしている班長と副長も「おかえり」と暖かく迎えてくれた。

寝場所を確保しているとヴァイスが「今日聞いた情報を摺り合わせしたほうがいいな」と言ってくる。
顧問は相変わらず静観モードだったのでヴァイスから班長と副長に得た情報を摺り合わせしましょうと呼びかけた。
「ああ、悪い。失念していたよ」と班長がテーブルに集まるように言ってきた。

班長と副長はまず村長の家に行ったようだった。
毎年の訓練でお世話になっていると丁寧に礼を受け、食事に誘われたようだったが丁重にお断りしたそうだ。
そして入山時に名前を書く小屋があると情報を貰い、そこに行って帰ってこない名前のリストを確認した。
ただ、このリストは帰ってきても消さないものも多く参考程度にしかならない事が分かった。
リストには『名前』『年齢』『入山時の衣装』『入山目的』などが書けるようになっている。
但し、基本的には山に入るのは禁止されているので、詳しく書く者や本当の事を書いている者は少ないかもしれない。地図があったのでそれを貰い食事をして戻ってきたようだった。

顧問は考え込んでいたが意見を言う事はなかった。
そしてこちらの酒場での状況と情報を報告する。それに合わせて地図にチェック地点をマーキングして重点的に確認した方が良い場所を全員で検討した。
そしてこの訓練が始まった経緯や最近の状況を話すと「その情報は必要なのか?」と副長が聞いてくる。
「そろそろ議論が煮詰まったようだな、十分な休息をとらないと明日に差し支えるかもしれない。明日は早くに発つので十分な準備をしておくように」という言葉で締められた。

12月第1週木曜日、ここからが本格的な山岳訓練だ。
村からの案内人として来たのは商業ギルドの木材部のドワーフだった。
「今日は世話になる、名はゴルバだ。わしはギルドに雇われている顧問のようなもんだ、最近は樹木の植生や植樹などを研究しておる」学者肌のようだったけどドワーフだけあってがっちりした体系だった。
木の杭や大きな木槌・ロープなど結構な準備をしてくれたようだ。
全員が自己紹介をすると「じゃあ、こちら全部しまいますね」と許可を得て収納に仕舞った。

昨晩からハラハラ降る雪は朝になっても止むことはなかった。
顧問はゴルバに「少しお時間をください」と言いこちらに「整列!」と強い口調を放つ。
「既に十分計画を立て、十分話し合ったと思う。」
「「「「「はい、隊長」」」」」
「私は少し危惧していることがある、まずはこの訓練は実践を見込んだ訓練だ」
「「「「「はい、隊長」」」」」
「今までの事は十分想定内である、この訓練では個人の資質を見たり良いものを伸ばす事に主眼を置いている」
「「「「「はい、隊長」」」」」
「一つ一つ注意することはしないが反省会はこの訓練が終わった後に時間を取っている」
「「「「「はい、隊長」」」」」

「そこで君達に問う、今すぐに答えを出さなくていいが途中で聞くかもしれない」
「「「「「はい、隊長」」」」」
「これから助けるものは社会秩序からはずれたものである可能性がある、その者は本当に助ける価値がある者か?」
「「「「「・・・・」」」」」
「今年の訓練生は真面目だな、もう一つ質問するぞ。情報収集により今まであった危険箇所がなんとなくわかったと思う、ただ騎士や騎士科の頭では想定外の事態に臨機応変に対応しきれないと考えている」
「「仰っている意味がわかりません」」班長と副長が顧問に質問した。

「こればっかりは言葉で説明してもわからないと思う。そうだなぁ・・・では、何故助ける者が山に入ったと思う?勿論明確な目的があるものではないと仮定してだぞ。ヴァイス」「わかりません」
「副長」「わかりません」
「班長」「わかりません」
「ザクス」「うーん、誰かに良い所見せたかったとか」
「リュージ」「そこに山があったから?」
「面白い答えが出たな、どの答えが正しいとはわからない。ただ、二人は何かしらの答えを出そうとしていたな。本日の訓練は他の科やゴルバ殿にも参加して頂いている。是非広い視野で学んで貰いたい」
「「「「「はい、隊長」」」」」
「では、これより初心者ルートより登ることにする。もし体調が悪くなったものなどがいたら早めに申告するように」この号令により登り始める。

防寒具をフル装備しても寒さが身にしみる。
先頭は班長とヴァイスが二列になって歩き、最後尾は副長と顧問が務めている。
顧問の説明によると出発した時間は大体9時頃で順調に行けば3時頃には目的の洞窟にたどり着くだろうと言っていた。
手ぶらで歩くのも何なので杖を持って歩く、この初心者ルートは観光コースとして踏み固められてるが、それは季節が良い時期のこと。雪が舞うこの時期にしては周りの積雪に比べて積もってはいないが所々ぬかるむ場所もある。
一歩一歩着実に歩くようにすると滑りには強いが歩く速度は遅くなった。

「焦る事はないぞ、このペースで十分順調だ」班長がみんなに声を掛ける。
ザクスは雪深い町の出身なので毎日の朝練に比べて余裕の表情だった。
離れた場所にはウサギが数匹こちらを見て首を傾げていた。真っ白いウサギが雪で遊んでいると保護色になって見えにくくなる、「これが敵から身を守る手段なんだなぁ」とのどかに眺めていた。

「そろそろチェックポイントだぞ、まずは周りの安全と修繕箇所を確認しよう」副長が呼びかける。
その場所は以前足を踏み外して落ちた人がいた所だった、立て看板がありそれがぐらついていた。
木槌を取り出しまずは深めに埋めなおす。安全の為に近くの樹から立て看板を噛ませてロープで立ち入り禁止をアピールするように張ると修繕は完了である。
流れるような手際で騎士科のみんなであっという間に作業が終わる、その間は自分とザクスは休憩時間になった。

順調に修繕箇所やチェックポイントをして歩くと、予定時間を大きく超える事もなくお昼休憩になる。
前回の失敗を踏まえて班長が持ち運べる食事を人数分×2回分手配してくれたようだった。
時折消えて急に現れる白いウサギ、ヴァイスにも声を掛けると「あぁ、スノーラビットね」と山では珍しくないと教えてくれた。歩きながらだけど顧問が「冬場の動物は極力刺激しないようにしてくれ」となるべく狩りもしないように注意を受ける。冬眠する動物ばかりではないが冬でも活動しなければならない動物もいるからだ。

長めの休息を取っているとゴルバが地図にチェックをつけていく。
木材を確保するということは植樹が大切になる、また樹を管理するということは山を管理するということだ。
大まかな方向性としても山を豊かにしてテリトリーとしての棲み分けを図らなければならない。
これから成長する樹これから死にゆく樹を管理するのも木材部の仕事だった。

地図をみながらチェックをして潰していく、そんな事を繰り返しながら「後一箇所だな」と班長が大きく伸びをする。そして何かを見つけたのか「あそこ何か怪しくないですか?」と言うヴァイス。
この辺までくると登る道は所々細くなっていたけれど、そこはなだらかで広い場所だった。
「こんな場所でわざわざ無茶するか?村も見えない場所から降りるなんて自殺行為だぞ」副長が班長に賛同する。
「話すより見たほうが早いですよね」とザクスが言うと「「もっともだ」」と二人は賛同した。
足元を注意しながら近くまでいくと小動物の足跡が残っていた、そして斜面にギリギリの一部分に滑った後がみつかった。

「班長!怪しい痕跡を発見しました」と報告するヴァイス。
「考えるのは後だ、まず足元に注意しながら三人下の方を確認しつつ大きく呼びかけるんだ」班長が指示を出す。
ロープが必要になりそうだと思い取り出す、すると顧問が手近な樹にロープを何重か巻き斜面近くで待機する。
「ゴルバさん、この場で待機をお願いします。ここは班長と副長を連れて行く、ヴァイスお前はこの場で備えててくれ」顧問が指示を出すとロープを真っ直ぐ放り投げる。
ザクスが体力を回復するポーションとダメージを回復できるポーションを班長に渡していた。
三人はロープを巧みに操り山の中に消えていった。

「こんな平らな場所で足を滑らすなんて何があったんだ」ザクスが考え込む。
ずっとここに止まっていると体が冷えていくので水筒を取り出しお湯を飲む、みんなにも勧めて少し休憩を兼ねて休みながら斜面に変化がないか確認をする。
2匹のうさぎが徐々に近い距離まで詰めてきてこちらをじっと見ていた。

「救助が気になるのはわかるが周りを警戒せんでいいのか?」とゴルバが問いかける。
ヴァイスはそれもそうだとゴルバに斜面に変化がないか見てもらうことにした。
一匹のうさぎがザクスの足元に擦り寄っていた。
「随分人懐っこいな」ザクスはしゃがんで頭を軽くなでいている。
2匹とも真っ白なスノーラビットだ、目が黒々としていてまさにつぶらな瞳だった。

もう一匹のうさぎがこちらに近づいてくる。
うるうる・・・パチパチと瞬きをいっぱいしてくるうさぎ。
後数歩でザクスと同じ位置になると思いしゃがみこむと頻繁に瞬きをしていた。
パチ・パチパチパチ・・・そして長く目をつぶるとバッと目を見開く。
うさぎの目が真紅に染まり球状だった黒目が多角形に結晶化した、そして血の涙みたいな液体が両目からツーと零れ落ちた。
「下がれリュージ、そいつはクリムゾン種だ」ヴァイスが叫んだと同時に鋭い前歯を突き出してクリムゾンラビットが首めがけて飛びかかってきた。
新しいお話も考えています。
まだ構想段階なので機会があれば。
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