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047:訓練とは

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39,000PVを超えました。

この作品面白いのかつまらないのか正

直結構不安です。まあまあの一言でも

良いので感想欲しいのは我侭かな?。

 12月第1週火曜日、門前に行くと既にみんなが集まっていて馬車も待機していた。

「本日の護衛は【平穏な羊】が務めます。リーダーをやっているサヴァンと申します、皆様宜しくお願い致します」

王都の冒険者ギルドで新人の洗礼を受けた時に助けてくれた人だった。

馬車は二台あり、御者はサヴァンが務めて【平穏な羊】の新人が隣に座る。

こちらが学園のメンバーが乗せて走るほうだった。

もう1台には【平穏な羊】の女性メンバーが御者を担当し新人が隣に座った。

こちらは荷物を積み込んで走るほうだったが、自分が結構持ったのでそんなに積み込む物がなかったようだった。

どうして新人二名が分かったかと言うと、【冒険者講習その1】で一緒になった同郷の二人組みだったからだ。


「今回は高名な【平穏な羊】の方々に来ていただいた。同じ冒険者の者、自分の方が強いと思う者等いるかもしれない。ただ、現場まで護衛をお願いしている以上、リーダーの指示には必ず従って欲しい分かったか?」

「「「「「はい、隊長」」」」」

「「俺達より出来るイメージだな」」「依頼を受けた以上あなた達はプロよ、きちんと勉強させて貰いなさい」各所で指導が入っていたけど、意外とこの世界は新人に優しいと感じた。


 馬車の旅はとにかく揺れる。勿論舗装しつくされた道を走っているわけでもなく、馬車の作りの問題かもしれないが人や荷物を運ぶのに必ずしも優しくはない。それでも大量に荷物を運べたり、徒歩とは比べ物にならないスピードが出るので重用されている。

「思いの他揺れないですね」ヴァイスが呟く。

「さすがは【平穏な羊】だな、噂に相違なしだ」顧問が【平穏な羊】について教えてくれた。


 【平穏な羊】は王都では3本の指に入るパーティーである。

パーティーと言っても大規模なクランのような存在であり、護送・輸送・採取・礼儀作法などの基本知識を教えてくれる新人冒険者には夢のような存在だ。ここで一定の勉強をした者は他のパーティーに行っても評判が良く、王都の冒険者に【ならくれもの】が少ないのに大きく貢献している。

とくに護送と輸送に関して定評があり、独自に馬車を持っていて運転がうまく揺れへの対策がしっかりしているなど商業ギルドで特に人気があった。

「戦闘に関してはからっきしだけどね」前のほうから声が聞こえてくる。


 朝から早くもなく遅くもないペースで馬車を走らせ、お昼頃には馬を休ませて食事の準備をする。

寮の3人組分は朝出かける時に料理長が昼と夜分の屋外で食べられる簡易的なものを持たせてくれた。

ここで班長と副長が「「あっ」」と声をあげる、お昼の準備は話し合ってなかったみたいで顧問が様子をみている。

保存食はあったけど二日分+αを用意していたくらいで予備も救助があった際に使う予定だった。

顧問は食事を持っているとも持っていないとも言っていなかったので夜分の食事を三人に分けることにした。


 【平穏な羊】はテキパキと簡易的なカマドを作り、麦粥を作っていた。

馬を十分休ませ学園のメンバーが十分休息を取り、ストレッチが終わると午後の移動となる。

輸送でのメインルートとしてよく使われているだけあって平穏そのものだった。

夕方近くに【旅の小屋】に辿りつく。


 この小屋は本当に雨風が凌げるだけというようなものだけど、それでも中継地点として重宝されている。

大人数で泊まれるような場所ではないので当初の予定通り【平穏な羊】に小屋で休んでもらい、こちらは野営の経験をすることにした。

まずは班長と副長にカマドを用意してもらう。

大鍋を出した所で顧問を見たら特に何も言われなかったので、包丁やまな板・野菜各種を取り出し大きめにザクザク切り出した。ヴァイスとザクスは木の枝などを探しに行き、塩漬けの肉を切り全部を入れて炒めると最後に水筒からお湯をドボドボ入れて灰汁を掬う。【平穏な羊】の新人二人も同じような工程で作っていたけど収納・魔道具・手際と三拍子揃ったこちらと比べて手際が悪かったが、サヴァンは周りを警戒しつつ暖かく見守っていたようだった。


「火を囲んで食べる食事って美味しいですね」

「リュージ君悪いね、今回かかった費用は遠慮なく申告してくれないかな?」顧問が頭を下げる。

「いや、大丈夫ですよ。みんなが今回の訓練の計画を立てたように自分も出来ることをやっただけですから」

「収納持ちとは羨ましいね、こんな出来立てのパンまで戴いてしまって」

「王都のクロウベーカリーはお勧めなんですよ、今度機会があったら行ってみてください」


 食事が終わり野営の準備に入る、お茶が欲しい人には入れてあげた。

概算だけど20時から1時まで1時から6時までの2交代制だ。

顧問・副長・ヴァイス・ザクスが最初に見張りを行い、サヴァン・班長・自分が後半の見張りを担当する。

最初サヴァンは勿論、ザクスと自分は野営を行う必要はないから休むようにと勧められた。自分は冒険者志望だったので野営の必要性は感じていたし、サヴァンは最初から護衛を引き受けた以上安全に現地まで案内するのが責任だと考えていたようだ。

「ザクスはなんだかんだ言っても付き合いいいよね」ヴァイスが言うと「もう慣れたんだよ」と疲れた声で言った。


 前半の組が終わったようで自分達の野営の番になる。

サヴァンは長槍を立てかけ野営の極意を話してくる、究極の極意は寝ないことだった。

班長は剣と盾に手をやり、座っていながらも緊張感ビンビンに周りを見回している。

「そんなに張り詰めていると、いざと言う時動けないぞ」とサヴァンが言うと昔話をしてくれた。

ザクスが置いていった薬草茶を一口飲むと苦さで目が冴える、一回だけ遠巻きにはぐれ狼が来たみたいだったが火と人の多さにしょんぼりして帰っていった。

そうこうするうちに何事もなく日が昇る、昨日の残りで食事を取り快適な走行で日が高いうちに無事に麓の村まで辿りついた。


 薄っすら雪が降っているようだ、二日移動しただけでこんなに寒くなるものかと服を着込む。

「ここが本日お世話になる宿だ」そこはスキー場とかにある小さいコテージのようだった。

宿泊だけの施設で二日間予約をしてあり、すぐ発てるように荷物はほどいていない。

「明日は朝早くから出立する、本日はこの後食事を兼ねて情報収集を行って欲しい。では、各自解散」顧問は予算を伝えると後で清算するから適当に食事を取ってくるようにと話す。鍵は顧問と班長がそれぞれ持ち夕食を求めて繁華街らしき場所に移動した。


 班長と副長は打ち合わせと軽い反省会をしたいと言っていたので別行動することになった。

二人は既に卒業後騎士の仕事に就くことが決まっていた、見習いから始まるのでどの部署に配属になるかはわからないけどね。

唐突だがこの国では仕事に就けば成人としてみなされる、また15歳で職に就くものが多く結婚も出来れば酒も許されている。

では、酒場に15歳くらいの少年が入るとどうなるか?やはり浮いて見えるようだった。


「坊主、ここにはミルクは置いてないぞ」と下品な声があがる。

ヴァイスがカチンときていたようだったがザクスが「品揃え悪い店なんですねー」と惚けた発言をすると「ミルクは置いてあるから安心しろ」と店主らしき人が声を掛けてきた。「そこに突っ立ってると商売の邪魔だ、適当に座ってくれ」空いているテーブルにつく。

「ワインをグラスで三つと一番人気の食事を3人前お願いします」とウェイトレスにお願いした。


 食事を持ってきたウェイトレスに明日の山岳訓練に来た学生だと話すと色々教えてもらった。

この山は中腹までは登山コースとして人気のスポットで、気候が良い時期は観光地として潤っている。

ただ冬はどこもそうだけど基本的に出歩くことは少なく、冬までに潤った自由業の冒険者が短期の貸し別荘のような場所を借りることもあるらしい。

また、若く無茶をしたい時期のバカが冬場の仕事が休みの時期に山にチャレンジすることがあるようだ。

そして毎年無駄に命が散っていく、何故か危険な方に危険な方に行く者が後をたたないからだ。


 登山ルートは初級者コースと上級者コースがある。

冬場の山は基本的に閉鎖はされているが、初級者コースには中腹まで入山するものはいる。また上級者コースとは言っても足腰に多少影響あるくらいで初級コースから入り上級者コースから降りるものもいる。

冬場に騎士を派遣してもらうには理由がいる、バカが冬の雪山に突っ込みました「助けて」じゃ誰も動いてはくれないのだ。

冒険者を雇うにも予算が必要だ、保険制度などは勿論なく山狩りに行くとなると多額の賠償金を請求しなければならない。


 そんな状況に待ったをかけたのがとある学生だった、学生の山岳救助訓練と題目を掲げれば少なくとも調査にいけるだろうと。

それに意義を唱えたのが王国であり、それなら騎士の見習いを派遣しようとことになった。

本末転倒であった、そして折衷案としてあがったのが『騎士が先に山を見回りモンスター等の外敵を排除した後、騎士科の生徒がルートの備品補修』を担当することになった。


 大の大人が15~18歳の子供に救助されるのは恥ずかしい、また騎士に救助されたらこってり絞られるのだ、そして場合によって家や商家に連絡がいくことになる。するとどうだろう、そこそこのバカが激減したのだった。

これにより村では大きく感謝されることになった。

山岳訓練と言った途端周りの状況が一変していた、「酒の飲みすぎは良くない牛乳飲め」にはうんざりしたけど一杯ずつだけは素直に奢られることにした。ツマミを1皿ずつ置いてくるとテーブルはたちまちパーティー状態になる。


 そして立て看板の劣化している場所や毎年無茶しそうな場所、入山時に念の為名前を書く小屋があるので是非確認して欲しいと多くの情報が次々とやってきた。なんだかんだ言っても若い命が散っていくのは寂しいと皆心配だったようだ。


 この感じだとちょっと歩きにくい程度のハイキングかなと思い「あれ?最近はもう無茶する人が少ないんですよね。では、もうこの訓練の必要性はなくなったのですか?」と周りの人に聞いてみると。

「それがなぁ、バカでチキンな奴が出るようになった」山岳訓練の少し前に無茶をして、最悪助けて貰えばいいんじゃね?と考える奴が出てきたようだった。

これから助けに行く想定の人はそんな相手だった。


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