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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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033:レン

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16,500PVを超えました。
 お昼の待ち合わせをしている場所につくとザクスとレンが待っていた。
「もうお腹ぺこぺこだよ」というザクスに「早く行きましょ」とレンがザクスと自分の手を引っ張っていく。
二人とも野菜たっぷりスープのセットを頼んだので同じものにした。

「本当は案内するには時期が悪いんだけどね」と近況を教えてくれた。
もうすぐ期末の試験があり、これが終わるとみんなは年末の休みに入っていく。
脳筋な皆さんは戦闘系の試験で誤魔化すのが常だけど農業・薬学・魔法の3科は真面目に試験を受ける人が多い。
また季節的に栽培するものが少なく、栽培出来てもみんな休みに入るので世話もできなくなるからだ。
最近の基礎薬科グループと品種改良グループは同じ教室で試験対策をしている人が多い。
2科とも顧問が常時いて通常は教材準備・試験問題などの作成をしているが、分からない点があったら指導もしてくれるのでお得らしい。

 食事が終わると一度教室に挨拶に行ってから畑と開墾地を見学することになった。
「こんにちはー、見学希望者を連れてきたので案内してきますね」とザクスが言うと二人の顧問が「まてまてまて」とこちらに挨拶してくる。「初めまして、魔法科のリュージです」と言うと「「ああぁ、君が」」と上から下まで見られた。
「どこかでお会いしましたか?」と聞くと基礎薬科グループの顧問は「王国の指名依頼を受けたのは君だったよね」と確認してくる。
「新種の芋についても聞いているよ、是非農業科に来て欲しかったんだよね」と言ったのは品種改良グループの顧問。「もし来てくれるなら今ならレンをつけるよ」と突然な発言に「おじさま」と語気を強めた叱責が飛んでくる。
こっそりザクスが「農業閥で研究職をしている叔父さんらしいよ」と教えてくれた。

 レンが「では行って参ります」と早めにこの場を去ろうとして二人の手を引っ張ると、当然の如く付いて来そうな顧問二人。ザクスが顧問二人もいらないですよとつっこむと真剣な顔してジャンケンらしき勝負をしていた。
この隙にザクスとレンに連れられて畑に到着した、結構広大な土地だなぁ・・・広すぎるわ。
どこからどこまでがどちらの土地でとか普段はこういうものを作っているとか色々説明を受ける。
もともと薬学科と農業科は講義内容も似通った部分も多く、協力しやすい体制が整っているようだった。
また、学園の生徒ならば個人で耕したら家庭菜園っぽいことはしてもいいらしい。

 収納からディーワンを鍬の状態で取り出すと二人は一瞬驚く。
まだ耕してない場所に一振り入れると良い感じな手応えが、ここの開墾は結構楽な部類だと思った。
悠然と勝利を勝ち誇った品種改良グループの顧問が「いい一振りだ」と拍手をしながら近寄ってくる。
「レン、優良物件は早めに予約をしないと売れてしまうよ」と尚もその話題を引っ張ってくる。
「ローレル教授、後でレンに睨まれると怖いですよ」とザクスによる助けが入った。

「それはそうとよく新しい品種を見つけたね。自分で改良したのかい?」とローレルが質問してくる。
「詳しくは秘密なんです、色々利権問題もあるので。生芋も今は出せないくらいです」と収納からまだ残っていた焼き芋を二本提供する。
「食べても?」という教授に一本渡して頷き、二人には半分に割ったものを差し出した。
「ほっほ、これはなかなか」と夢中になって食べる教授、ザクスとレンもこんな甘い芋初めてだよと驚いていた。

「ザクスから聞いたんですが、この場所って耕して何か植えても大丈夫ですか?」と教授に聞いてみる。
事前に申請が必要らしいが顧問同席なので問題ないらしい、そして「これから植えるのかい?」と聞かれたので「まだ何を作るか決めてないのですが戦闘で体を動かすよりかはしっくりくるので」と笑顔で返す。
「是非、うちの科やグループからも手伝わせて欲しい」と言われると断りきれそうもないので了承した。
「なんならうちのレ・・・」と言いかけたところでレンから冷たい視線を浴びたのは自業自得だと思う。

 大体の広さと場所を話すと後で申請書を書いて欲しいと話があった。
最近の食事事情に関してはそんなに悪くはないけど、和食が恋しくなってきたのも事実だった。
ただ味噌・醤油を作るには麹がいるだろうし、今手持ちの米を食べちゃうとなくなってしまう。
和食は置いておくとしても麺類が食べたい、出来れば本格派トマトソースがあれば嬉しいかな。
煮込みようトマトの品種を後で調べて、出来ればデュラムセモリナ粉とハーブ類を育てたい。

 教室に戻ると説明を受けたであろう生徒達に色々勧誘された。
一緒に新しい品種を作ろうだとか、こういう効果を上げる薬を開発しようだとか結構情熱を持った生徒が多かった。
「レンは普段どんな研究をしているの?」と聞いてみると寒冷地で適応できるように品種改良が出来るようにしたいらしい。まだ入るかどうかはわからないけど品種改良グループは魅力的だった。
「今度は届出を持ってきます」とみんなに告げると歓声と拍手がおこり部屋を出る。「ところでどっちにだ」という声が聞こえてきたけどスルーした。

 その後はサリアル教授が顧問を務める基礎魔法グループに顔を出しに行く。
教室の前にはフレアが入り辛そうにしていた。教室に入れるスペースをあけてもらったのでドアを全開にあけて挨拶する。サリアル教授はいなかったので今度は早めに挨拶に来ますと伝えてドアを開けたまま一足先に帰宅した。

「おかえりなさいませリュージ様」の声に「ただいま」と笑顔を向ける。
執事に「ちょっと風呂場で作業しているので、何かあったら呼んでください」と話すと「少ししたら見学に行ってもいいですか?」と聞かれる。
「ちょっと試したい事があるのでよかったらどうぞ」と荷物を置き濡れてもいい服装に着替えた。

 水を表す科学式はH2Oである、詳細を説明する事はできないけどよくある表現として酸素のOは手が二本ありHの手は一本ある。これがお互いに握手をしている状態がH-O-Hになっているらしい。
【水を撒く乙女像】のターコイズがどうなっているかというと【水+地熱=お湯】が【水+地熱+加熱】で相性問題が生じてノイズが発生してしまった。
きっと【ちょっと熱いのが好みなエンチャンター】がろくに付与魔法を確認しないまま割り込んで暴走させてしまったという感じだろう。

 ではどうすればいいか?これを試していこうと思う。厳密に【水+地熱+加熱】は手を繋いではいない。
お湯が発生する魔法が握手している所に加熱が円陣を組む時に手を重ねる感じで割り込んでいる感じだった。これは出来るというイメージを自分なりに説明しているにすぎない。
多分、理論よりも感覚の問題なんだろう。

 幸い今回の魔法の要素は全部習得できている。
そして簡易エンチャントは対象のエンチャントを1回ないし回数制限で付与する魔法だった。
まずクリエイトウォータを唱えてジョウロの出口から水を注ぎ込む、そしてターコイズの加熱だけに簡易エンチャントで加熱を重ねる。かなり熱そうなお湯がぴゅーっと浴槽に注ぎ込まれた。

「感じはどうですか?」と執事が上着を脱いで入ってくる。
「今のところ順調ですね」と言うとまた鑑定をしてみる。
【水を撒く乙女像】:水と熱の魔力が込められた魔道具。ターコイズを触媒として一定量の水と熱量が設定されている。水の属性魔法・土の属性魔法が込められておりノイズが入っている。
ノイズに向けてクリエイトウォータと地熱で穴埋めをするイメージで魔力を注ぎ込むと柔らかな黄色い光が生まれた。

【水を撒く乙女像】:水と熱の魔力が込められた魔道具。ターコイズを触媒として一定量の水と熱量が設定されている。水の属性魔法・土の属性魔法が込められている。
鑑定してみるとどうやら成功したようだった。

 浴槽の栓を嵌めて魔力を流してみる。
ジョウロからお湯が落ちてくる・・・これ結構時間かかるんじゃないと思ったので執事に聞いてみると「私も聞いた話なのですが、このジョウロから実際の量が出ているわけではなく落ちた湯からも増えているようですよ」と説明された。
30分くらいで貯まるそうなのでその間に女性用の風呂場も見ることにした。
今回は侍女の一人が付き添いで来ていてハプニングが起きない対策をする、二回目なので同じ手順で順調に作業は終わった。

「ちょっとちょっとちょっと」「おい、もしかして」「風呂か?なあ風呂なのか」と女湯にみんなが入ってくる。
執事も侍女も調理場の何人かも騒ぎながら突進してきた。
お湯を貯めている状況を見て服を脱ごうとしているヴァイス。
「まてまてまて、ここは女湯だぞ」とつっこむと辛うじて理性を取り戻したようだ。
侍女が一度先に掃除をさせて貰えませんか?と言うのでお願いすることにした。
風呂場は掃除中にも関わらず見学者がいっぱいだった。

 談話室で夕食までの時間に今日の案内のお礼を二人に言う。
「そういえば男湯は自分が魔力操作でお湯を入れられるけど女湯はどうする?」と聞くと「私魔道具ぐらいならいけるかも?」とレンが手を挙げる。
お掃除終わりましたと侍女が言うと再度お湯を溜めに行く。
執事にお願いして寮母も同席で男湯の魔道具を発動させる。

 そして女湯の魔道具はレンを見ると「やってみる」と手を添えて集中している。
目を閉じて祈るように瞑想しているレンは神聖な雰囲気を纏うとお湯がトクトクトクと流れ始める。
「レン、もしかして・・・」特待生のポテンシャルは半端なかった。
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