第八十九話 一仕事した後の揚げたてメンチカツ
今日は88話と89話更新です。
まずは、ワイバーンの回収を……って待てよ。
「スイ、あのワイバーンの中にある血を全部吸い出すことってできる?」
そしてブラッディホーンブルの血の池を綺麗にできたんだから、できるような気がするんだ。
『うん、できるよー』
『ワイバーンの血をだと? 何をするつもりだ?』
フェルが怪訝な顔をしている。
「あのな、しっかり血抜きした方が臭みもなく美味い肉が食えると思うぞ」
『おお、そうなのか。スイ、血を全部吸い出すのだ』
美味い肉が食えるって言ったらそれかよ、まったくもう。
「あ、そういやワイバーンって毒あるじゃん。その毒って血とか肉には影響ないのか?」
『ワイバーンの毒は尻尾の毒針と尻尾の中間あたりにある毒袋に注意すれば大丈夫だ。血や肉には何ら影響はない』
へー、そうなんだ。
「スイ、尻尾の方に毒袋があるみたいだから、それに注意してな。じゃ、血抜きお願いできるか?」
『うん、分かったー』
そう言うとスイがブルブル震えだす。
お、ビッグスライムになるのか?
ということは分裂体にやらせるのか。
『みんなー、あそこにいる魔物たちの血だけ吸い出してー』
スイが分裂体にそう指令を出すと、分裂体がワイバーンに向かっていく。
そしてスパッと切れた首の断面に張り付いて血を吸い出していく。
透明だったスライムがだんだん赤く染まっていく。
少しすると、血を吸い終わった分裂体がワイバーンの首の断面からはがれた。
『あるじー、終わったよー』
「スイ、ありがとな」
血を吸い出されたワイバーンをアイテムボックスにしまっていく。
頭をどうしようかと迷ったけど、一応持って帰ることにした。
飯の準備をと思ったけど、どうにも血生臭い。
「スイ、悪いけど、この辺にあるワイバーンの血も吸い取ってもらっていいか?」
『うん、いいよー』
分裂体が草原に零れ落ちた血をどんどん吸い取っていく。
よし、これで綺麗になったな。
「ありがとうな、スイ。美味いもの作るからな」
『やったー! 早く食べたいなー』
『ぬ、我にも美味いものだぞ』
「分かってるって」
さて、何を作ろうかと考えて、青空の下で揚げたてのあれを食ったら最高だよなと考えて決めた。
作るのは、メンチカツだ。
ネットスーパーの惣菜でフェルもスイも食ったことはあるが、やっぱり揚げたては格別だ。
しかも作ろうと思ってるのは、ブラッディホーンブルの肉100%のメンチカツとオークジェネラルの肉100%のメンチカツ、それからその2つの合いびき肉のメンチカツだ。
まずは玉ねぎをみじん切りにしてと。
メンチカツのたねを作っていく。
ハンバーグのたねに似ているけど、今回のメンチカツには店で食うメンチカツを意識して生パン粉を使っていこうと思う。
ということで、ネットスーパーで足りなかった生パン粉を購入した。
それから揚げたてのメンチカツとは絶対に相性抜群のプレミアムなビールを買うのも忘れない。
まずは合いびき肉のメンチカツだ。
メンチカツのたねは、まず生パン粉を少量の牛乳でふやかせた後、肉、玉ねぎのみじん切り、卵、塩胡椒を入れて粘り気が出るまでよく混ぜる。
メンチカツのたねを平べったい丸形に形成していく。
さすがに普通の大きさのメンチカツは何個も食えないから、俺用のだけは、小さめの形に形成した。
これで3種類を食べ比べできるな。
形成したものを小麦粉、溶き卵、生パン粉の順につけて油でカラッと揚げていく。
ゴクリ……なかなかに美味そうに揚がっているではないか。
1つ味見を。
何も付けずに一口。
サクッ。
ジューシーだねぇ。
肉汁がじわぁっと来たよ。
揚げたて美味い。
生パン粉を使ったからサックサクだぜ。
シンプルなメンチカツだけど、揚げたては何もつけないでもイケるね。
『おい、何お主だけ食っているのだ。我らにもよこせ』
あーはいはい、ちょっと待ってね。
「はい、どうぞ。まずは合いびき肉のメンチカツ、ブラッディホーンブルの肉とオークジェネラルの肉で出来たやつだ。熱いから気を付けろよ」
『おおっ、これは熱いが美味いな。中から肉汁があふれてくる』
『ホント、これ美味しい』
2人とも何もつけないメンチカツをペロッとたいらげてしまった。
「じゃ、次はこのソースをかけたの食ってみろよ」
ソースをかけたメンチカツをすすめる。
『おおっ、この黒いのがかかってるとより一層美味いな』
『うんうん』
2人はソースをかけた方が好みみたいだね。
じゃあ、どんどん揚げていきますか。
合いびき肉、ブラッディホーンブルの肉100%、オークジェネラルの肉100%とどんどん揚げる。
「これはブラッディホーンブルの肉だけのメンチカツね」
「こっちがオークジェネラルの肉だけのメンチカツ」
2人ともバクバク食っていく。
「3種類あるけど、どれが1番好きだ?」
『うむ、どれも美味いが、我はこのブラッディホーンブルの肉だけのものが好みだ』
『スイもみんな美味しいと思うけど、1番はこれかなぁ』
そう言ってスイの触手が指したのはオークジェネラルの肉だけのメンチカツだ。
「そうか。俺はやっぱり合いびき肉が美味いかな。3人とも見事に好みが分かれたな」
『なに、どれも美味いのだ。全部作ればいいことだろう。これは美味いからまた作ってくれ』
『スイもまた食べたい』
全部作ればいいって作るのは俺なんだけどね。
まぁ、確かに3種類とも美味いからまた作ってもいいけど。
『ふ~、スイもうお腹いっぱい』
『うむ、我もだ』
合いびき肉のメンチカツを1枚だけ除いて、多めに揚げて残った分は保存用っと。
さてと、最後にゆっくり食いますか。
プシュッ、ゴクゴクゴク。
ハ~、ビールが美味い。
揚げたてのメンチカツ、今度はソースをかけたものを一口。
サクッ。
肉汁じわぁで美味いな。
メンチカツを飲み込んだ後、すかさずビールをゴクリ。
「フ~うめぇ、最高だぜ」
俺はゆっくりとメンチカツとビールのコラボを楽しんだ。