第百十二話 洋服まとめ買い
今日は112話と113話更新です。
さてと、今日は買い物だ。
買いたいのはやはり洋服だ。
この街に来て初日に買った洋服の着心地が想像以上に良かったからな。
今までは気にならなかったけど、この街で買った洋服を着たら今まで着てた洋服との差が嫌でも分かるってもんだ。
今まで着ていたものはゴワゴワしてて肌にこすれる感じだが、この街で買った洋服は肌触りが柔らかくて綿に似ている心地よさだ。
ここで買った洋服を着たらとてもじゃないけど今までの洋服は着る気になれないね。
この街の店は比較的小さい店舗が多いのと、洋服を置いてる店だと店一杯に品を置いてるということもあって、フェルたちを連れて行くのは諦めた。
フェルたちには獣舎で待っていてもらうようにしたよ。
スイもそこで一緒にね。
ドラちゃんは最初「昨日美味いもん食わせてくれるって言ってたじゃねぇか」とブチブチ言ってた。
俺が「それは夜にね」って言って、それまでは飯をある程度置いていくから適当に食っててって言ったらコロっと態度を変えたよ。
適当に肉を焼いたのと、かつサンドなんかのサンド類だろ、あとあんぱんとジャムパンとクリームパン、それから飲み物(コーラとサイダーとオレンジジュース)を皿に並々注いで置いてきた。
ドラちゃんは結構甘党なのか、さっそくあんぱんにかぶり付いて「うまっ」とか言ってたよ。
3人分の食い物をたっぷりと置いてから、俺は買い物に繰り出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
通りを眺めながらどこの店がいいかと物色していく。
フェルがダンジョンとうるさいから、明日ヴェノムタランチュラの依頼報酬と買取代金を受け取ったらすぐにダンジョン都市ドランに向けて出発することになるだろう。
だから買い物できるのも今日1日だけ。
時間もないし、とりあえず良さそうなものを見つけたら即買いしようと思う。
次にいつ来れるかもわからないから、懐に余裕があるうちに着替えやらストック分も含めて20着くらいは買う予定だ。
「お、これいいな」
通りを歩いていて、飾られていたシャツとズボンが目についた。
その店に入ってみる。
目についたとは言っても、男物の洋服はどれもだいたい同じではあるんだけど。
俺がいいなと思ったのも結局はこの間買ったものと同じ感じのシャツとズボンだった。
シャツは白でズボンはダークグレーだ。
俺が店に入ると、店員がすぐにやってくる。
「お気に召されましたか? こちらは定番でとても人気があるんですよ」
シャツはスタンドカラーのシンプルなシャツで、ズボンはチノパンみたいな感じだ。
これが定番というのも頷ける。
「はい、このシャツとズボンをください。あと他にシャツとズボンを何着か欲しいのですが……」
店員さんにシャツとズボンを見せてもらった。
シャツは大まかにいうと白、アイボリー、ベージュの3色が主流みたいだ。
店員さんの説明によると、シャツは染色せずに生糸の色そのままの色で出来てるそうだ。
シャツは白系の方が何にでも合うというのと、染色するとそれだけ価格が跳ね上がるというのが理由らしい。
確かに白系の方が合わせやすいよな。
思えば俺もYシャツは白しか着なかったぜ。
一番無難だからな。
ズボンの方は対して濃い色が多い。
オリーブ色、濃い茶色、ダークグレー、紺色、黒なんかの地味な色合いが主流だ。
これも理由があって、濃い色の方が汚れが目立ちにくいからってことらしい。
確かにな。
道だって舗装されてるわけじゃないこの世界では、歩くだけでも土埃やらでけっこう汚れる。
色の薄いズボンだと、かなり汚れが目立つかもしれない。
そう考えると理に適ってるし、地味だけどこういう濃い色は嫌いじゃない。
というか、この世界に来る前だって洋服にはあんまり頓着しなかったから地味だったしなぁ。
そう考えると着るものは前の世界とほとんど変わりなしって感じだ。
俺は白いシャツとベージュのシャツを2枚ずつとそれからオリーブ色と濃い茶色、紺色、黒のズボンをそれぞれ1枚ずつ選んだ。
飾っていたものを含めてシャツとズボン5枚ずつで金貨17枚と銀貨5枚だった。
俺はその店を後にし、また通りへと戻った。
その後俺は目についた店を2店回りシャツとズボンを10着ずつ購入した。
結局のところ同じようなシャツとズボンだったが。
思ってたより多めの25着を今日購入したが、これからのことを考えればこれくらいあっても問題はないだろう。
さてと帰ったら、ドラちゃんに約束の「美味いもん」を食わせねば。