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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連
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第百十一話 ドラちゃんの従魔登録

 街に入るとき、ドラちゃんが小さいとはいえ見た目がドラゴンだからちょっと一悶着あった。
 新しく従魔になったんだって説明して問題も起こさないからって言っても、門番さんはなかなかいいとは言わなくてね。
 ここでギルドカードにドラちゃんの記載があったらまた別だったらしいけど、ドラちゃんとは従魔契約したばっかりだったからね。
 仕方がないから冒険者ギルドのギルドマスターのロドルフォさんを呼んでもらったよ。
「なんじゃい、どうした?」
「えーっと、新しく従魔が増えたんで、それで問題になってしまいまして……」
「お、おまっ、そ、そりゃピクシードラゴンかっ?!」
「ええ。珍しい種類みたいなのによく知ってますね」
「まあな。昔の仲間にドラゴンスレイヤーに憧れてドラゴンについてあれこれ調べ尽くした奴がいてな、そいつからしつこいくらいにいろいろと聞かされたからのう……」
 ロドルフォさん、何遠い目してるんですか。
「聞かされていた中にそのピクシードラゴンもいたわけじゃ」
 何でもその人はドラゴンについていろいろ調べ尽くしたのが高じて自分でドラゴン図鑑みたいなものも作っちゃったらしい。
「フェルも500年ぶりくらいに見たって言ってますし、かなり珍しい種類のようですよ」
「そのようだな。あいつもどこだかの王都の国立図書館をくまなく調べてようやくそれらしき文献を見つけたって言ってたからのう」
 ロドルフォさんのお仲間はそんなことまでしてたんだね。
 筋金入りだな。
「とりあえずじゃ、大丈夫なのだろう?」
「ええ。ちゃんと従魔契約結んでますから」
「それに、従魔契約云々の前にお主に何かしようもんなら、そこのフェンリルが黙っちゃいないわなぁ」
『もちろんだ。此奴に手出ししようものなら我が容赦せん。此奴の飯は最高だからな』
 フェル、それ威張って言うことじゃないからね。
「おい、飯って……?」
「ロドルフォさん、そこはあまり突っ込まないでください」
「そ、そうか」
 なんとも微妙な顔をしたロドルフォさんがいた。
 そんなこと言ったって、仕方ないじゃねぇか。
 この世界に食いしん坊キャラが多いのがいけないんだ。
「こいつらのことは儂が保証するから街に入れてくれや」
「ギルドマスターがそう言うなら入れますが、くれぐれも問題が起きないように頼みますよ」
 ロドルフォさんがとりなしてくれて俺たちは街に入ることができた。
「それで、ヴェノムタランチュラはどうじゃった?」
 冒険者ギルドまでの道すがらロドルフォさんが気になっていたらしく、どうだったのかを聞いてくる。
「もちろん獲ってきましたよ。でも、魔物本体を獲ってくればいいってことだったんで、そうしましたけど、クモの巣を採ってこなくて良かったんですか?」
「あんな粘着質なもん採ってこられるわけなかろう。ヴェノムタランチュラの糸はな、腹の中の糸袋にある糸の素を特殊な技術で糸にするんじゃ。まぁ、その糸にする過程は秘匿されているから、それができる職人自体少ないがな。(くだん)のブルーノ商会はその職人を抱えている商会じゃ」
 へー、そうなのか。
 でも考えたらそうだよな、木に張ってあるクモの巣の糸は獲物を捕獲するためにあるんだからベタベタだし。
 そんなのどうやって持ってきても絡まるだけのような気がする。
「あ、そうだ、2匹って言われてたんですけど、8匹いたんで全部獲ってきましたから買取お願いしますね」
「は、8匹じゃとう。まぁ、多いに越したことはないし、ブルーノ商会も喜々として引き取ると思うからいいのじゃが……フェンリルとは、こうも簡単に獲ってくるんかのう。あの森を1日で帰って来よったし」
 そこは一応伝説の魔獣ですからねぇ。
 それに超強いスライムもいますから。
 って、これ、ジャイアントセンチピードもいるって言ったら驚くかな?
 そうこうしているうちに、冒険者ギルドに着いた。
「まずはそのピクシードラゴンの従魔登録じゃな」
 冒険者ギルドに入ると、ドラちゃんがいたから注目された。
 ロドルフォさんが一緒ってこともあるだろうけど。
「あ、あれ、ドラゴンか?」
「小さいから子ドラゴンじゃねぇの?」
「子ドラゴンとはいえドラゴンなんて大丈夫なのか?」
 などとコソコソ言い合っている声が聞こえてくる。
 ドラちゃんは注目されているのが嬉しいのが「キュイキュイッ」と鳴いている。
「おう、みんな、このドラゴンはこいつの従魔じゃ。従魔やその主に危害を加えなきゃ何もされん。分かったら変なちょっかい出すなよ。見てわかるとおり、こいつにゃ他にも強い従魔がいるんだからな。そいつらも黙っちゃいないぞ」
 釘を刺すようにそう言ってロドルフォさんがフェルを見ると、冒険者たちがシーンとなってフェルを見つめる。
「さて、従魔登録しちまうぞい」
 ロドルフォさん、この微妙な空気感どうしてくれんですか。
「ん、どうした早くしろ」
 ロドルフォさんに急かされてギルドカードを差し出す。
 ドラちゃんの従魔登録が終わると、次は買取だとなって「物が物だからこっちだ」と倉庫に案内された。
 ここも倉庫は買取窓口の裏手みたいで、冒険者ギルドの作りはどこも似たような感じだね。
「ギルドマスターじゃないっすか。どうしたんすか?」
 そう声をかけて来たのは、20代中ごろの筋骨たくましい青年だ。
 よく見ると右足を少し引きずっているから、ケガで冒険者を引退した口かもしれないな。
 この青年がこのギルドの解体を担当しているようだ。
「んじゃ、ヴェノムタランチュラ出してくれや」
 俺はロドルフォさんに言われたとおりヴェノムタランチュラを出していく。
「うおっ、8匹もいるんすね」
 青年よ、驚くのはまだ早いぞ。
「あの、ジャイアントセンチピードもあるんで買取お願いしていいですかね」
「なぬっ?! ジャイアントセンチピードも獲ってきたのかっ?」
 俺はアイテムボックスからジャイアントセンチピードを取り出した。
「俺、ジャイアントセンチピード初めて見たっす……」
「このギルドでもこれが入るのは久しぶりじゃからのう。それにしても、ジャイアントセンチピードの殻は鎧の素材になるくらいに硬いはずなんじゃが、どういう攻撃をしたらこうなるのかのう?」
 顎下から脳天に空いた大穴を見てロドルフォさんがそう言う。
 いや、それはですね、スイが……。
『スイがやったんだよー、凄い―?』
 スイが鞄の中から飛び出してポンポン飛び跳ねる。
 起きたんだね、スイちゃん。
「もしかして、そのスライムがやったのかのう?」
「ええ、まぁ」
 どういう風にとは言いませんけど。
 あ、そうだ、スイが起きたならドラちゃんに紹介しないとな。
『スイ、あたらしく仲間になったドラちゃんだよ』
 スイに念話で話しかける。
『うわ~飛んでる、凄いねぇ。スイはねぇ、スイっていうの。ドラちゃん、よろしくね!』
『おう、よろしくな!』
 こちらが内輪で念話での自己紹介をやってるとき、ロドルフォさんたちも買取についての相談をしていたようだ。
「数がちょっと多いからな、明後日くらいになりそうだぞい」
「はい、それは大丈夫です。この街で服も見ていきたいですから。あー、ヴェノムタランチュラ食えるってことなんで、足だけは戻してもらえますかね。それ以外は全部買取でいいんで」
 ヴェノムタランチュラが食えるとは聞いているが、足は何とか食えそうだけど、他はちょっとグロ過ぎて無理。
 腹は糸袋があるから買取だろうけど、ほかの胸とか頭の部分渡されてもどうしていいかわかんねぇよ。
 だから食えるって言っても戻してもらうのは足だけだな。
「うむ、分かった。足は塩ゆでにすると美味いからのう。それにこちらとしても一番の目的は糸だからな」
「それじゃ、また明後日来ますんで」
「おう、布製品ならこの街が一番じゃ。服もこの街なら品質の良いものが安く手に入るぞい。よく見ていってくれよ」
「はい、いろいろ見させてもらいます」
 俺たちは冒険者ギルドを後にした。


「じゃ、フェルとドラちゃんは獣舎でね」
 そう言うとフェルはすたすた歩いて獣舎に敷いてある自分の布団の上に横になった。
『え、俺も獣舎なのか?』
 ドラちゃんが何か不満そうだが、ここは俺も引けないよ。
「小さいからって言っても、さすがにドラゴンを宿の部屋に入れるわけにはいかないだろう」
『えーっ? 俺は小さいんだからいいじゃねぇかよー。スイは部屋で寝るんだろ? ズルいぞ』
「スイは鞄に入ってるからいいんだよ。小さいって言っても飛んでるドラちゃん連れで宿に入ったら、いくらなんでも女将さんに怒られるよ」
 スイは鞄に入ってるから、外からは見えないし大丈夫なんだよ。
『えー、何だよそれー、俺人間の宿に入ってみたかったのにー』
「まぁまぁ、明日美味しいもん食わせてやるから我慢してくれよ」
『えっ、美味いもん食わせてくれんの?! やった! ヒャッホー!』
 ドラちゃんが俺の回りを飛び回って喜んでいる。
 食い物で機嫌も直っちゃうんだね。
「だから今日は獣舎でな」
『そういうことなら我慢してやるぜ』
「じゃ、明日の朝な」
『おうっ』
 ドラちゃんって、案外扱いやすいのかもしれないな。




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