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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第6章 ガゼンランの塔再び

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(24)新素材?

 シュレイン、ミツキと共に町に買い出しに来ていた考助は、以前来たときとは違った騒めきに気が付いた。
「何かあったのかな?」
「うむ。そのようじゃの」
 同じようにシュレインもそれには気づいていたようで、考助の呟きに反応して頷く。
「コリーが勝ったときもこのように騒がしかったが、さて、今回は何があったんじゃろうな?」
「雰囲気的には、悪くなさそうな話題のようね」
 周囲を見回しながらミツキがそう言って来た。
 確かにミツキの言う通り、様子を見る限りでは悪い話題ではなさそうな感じがする。
「そうみたいだね。まあ、噂好きの誰かが教えてくれると思うよ」
 最後に考助がそう締めくくったが、その言葉が実現するのはすぐのことだった。

「何だい、あんたらまだ聞いてなかったのかい?」
 考助たちに向かってそう言って来たのは、野菜を購入した店のおばちゃんだった。
 並んでいる客もいなかったので、考助がそれとなく話題をふったのである。
「ええ、まあ。ついさっきまで塔の中にこもってましたからね」
「ああ、そりゃあ大変だったね。・・・・・・って、この噂が流れたのは三日前だったはずだけれどね?」
「そうなんですか。今回は少し長めに滞在していましたから」
「そうなのかい。いつも思うが、冒険者も大変だねえ」
 ちなみに、冒険者が塔の中に三日程度籠ることは普通にあり得る話だったりする。
 長い場合は、一週間以上塔の中で生活することもある。
 おばちゃんもそういうこと知っていて、敢えてそう言っているのだ。

 噂好きそうなおばちゃんを捕まえて聞いたのは良いが、そういうおばちゃんは話題がそれていくのが常である。
 考助はおばちゃんに同意しつつ話題を元に戻すことにした。
「まあ、これが仕事ですからね。それで、今出回っている噂というのは?」
「ああ、そうだったね。何でも塔の中で珍しい素材が見つかったとかだったね」
「素材・・・・・・ですか?」
 考助は、色々な素材を頭の中で思い浮かべながら、首を傾げた。
 その考助の後ろでは、シュレインとミツキが顔を見合わせている。
「あれは、何の素材だったか・・・・・・ああ、済まないね。そこまでは覚えていないわ」
「いえ。十分ですありがとうございます」
 そう言って頭を下げた考助に、おばちゃんはカカと笑って右手を振った。
「いや、こんなことくらいで頭を下げなくてもいいさ。そんな事よりも、珍しい果物が手に入ったんだ。一つどうかね?」
 何ともちゃっかりしているおばちゃんに苦笑しつつ、考助は首を縦に振って三人分の果物を追加で購入するのであった。

「名前も知らない新しい素材、ね」
 先ほど購入した果物を口にしつつ、考助はそう呟いた。
 ちなみに買わされた果物は、見た目も味もキウイのようなものだった。
「なんじゃ? 気になるのか?」
「まあね。というか、シュレインだって気にしているだろう?」
 おばちゃんの話を聞いていたときに、シュレインとミツキが顔を見合わせていたことは気付いていた。
「まあ、それはな。何故この時期に、というのはあるじゃろう? それに、素材の名前が出ていないのもおかしいからの」
 シュレインの疑問に対して、考助も頷いた。

 冒険者が新しい素材を見つけてくることは、さほど珍しいことではない。
 勿論その素材が、実用できるかどうかは別にして、である。
 中には過去に見つかっていて使われなくなっていたものが、新しい素材として使われ始めるなんてこともある。
 時代の流れと共に流行り廃りのようなものが出てくるのは、当然のことだった。
 ただし、その素材のことで町中に噂が流れるというのがよくわからない。
 そこまで話題になるような素材であれば、先ほどのおばちゃんのような者でも具体的にどういった素材であるか、分かっていてもおかしくはない。
 だが、いま町で流れている噂は、ただ単に新しい素材が見つかった、というだけである。
 さらに付け加えれば、ここ最近セイチュンで起こっている騒動のこともある。
 それらのことを合わせれば、考助たちがいま町で流れている噂は、誰かが意図的に流しているのではないかと疑うのは当然のことだった。

「それで? どうするのじゃ?」
 答えは分かっているぞ、と言いたげな表情になっているシュレインに、考助は苦笑しながら答えた。
「まあ、予想していると思うけれど、取りあえず支部に向かおうかな? 買う物を買ってからだけれど」
「そうじゃろうな。それでこそコウスケじゃ」
 褒められているのか、それともあきられているのか、シュレインのその微妙な答えに、考助は何とも言えない表情になるしかなかった。
 もっとも、もし考助がこの話に乗らずに無視して塔の戻ろうとすれば、間違いなくシュレインが首を突っ込もうとしただろう。
 そういう意味では、どっちもどっちといえるのかもしれない。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 消耗品を買い込んだ考助たちは、予定通り支部を訪ねていた。
 もともと支部長と直接話をしようとしていた考助だったが、受付嬢に名前を告げるとすぐに奥の部屋に通された。
 その受付嬢の話によると、考助が来たらすぐにそういう手配を取るように通達されているとのことだった。
 手際が良いと思うべきか、変に注目を浴びることになることに文句を言うべきか、微妙な気分になっているところに、ドノバンがやって来た。
「・・・・・・ん? どうしたんだ、そんな微妙な顔をして」
「いえね。あまり目立ちたくないなあ、と考えていたところでしてね」
 何とも曖昧な言い方だったが、ドノバンはすぐに考助が何を言いたいのか察して切り返してきた。
「何を言ってやがる。そもそもコリーを引き連れて歩いているだけで、そんなことは気にするだけ無駄だろう?」
 そのもっともすぎるドノバンの返答に、考助は返す言葉を持たず、すぐにここに来た目的を果たすことにした。

「まあ、それはいいです。そんな事より、町の中で妙な噂が広まっているようですが?」
 その考助の問いかけに、ドノバンは途端に渋い顔になった。
「ああ、あれか」
「その顔を見るところ、話半分といったところでしょうか?」
「いや、噂自体は正しいぜ。だが、今すぐどうこう出来る素材ってわけでもねーんだ」
「ということは、もう既に何の素材かは突き止めているんですね」
 首を傾げた考助に、ドノバンは首を縦に振った。
「ああ、そうだ。あちらさんからわざわざ教えに来てくれたからな」

 ドノバンが語ったところによると、町に噂が広まる前にバトル商会の支部長が、数日前にわざわざクラウン支部を訪ねて来ていた。
 そして、新しく見つけた素材について、バトル商会が扱うこととその詳細について語って行ったそうだ。
「なんというか、分かりやすいですね」
 クラウンに対して圧力をかけるのが目的だというのがまるわかりである。
 勿論、クラウンだけではなく他のギルドにも同じようなことをしているだろうが、闘技場の件からも理解できる通り、クラウンを敵視しているのはわかる。
「ああ。だが、分かりやすいが効果的だ。闘技でコリーに負けたのが効いているんだろうな」
「そうでしょうね。それだけ今回は自信があるのでしょうが・・・・・・。そういえば、素材の名前は聞いているのですか?」
「そりゃあな。念入りに取って来た物まで見せてくれたぜ?」
 ご丁寧にも支部長は、その素材そのものをドノバンにみせたらしい。
 こんなところまで、以前に考助がこのセイチュンで行ったことと同じように動いているのだ。
 単に敵視しているだけなのか、それとも何か考えがあるのか、意味が分からずに考助は思わずため息を吐いた。
「それで、その素材というのはなんでしょうか?」
「ああ、それがな・・・・・・」
 ドノバンは、そう前置きをしてからとある素材の名前を言って来た。
 そして、その名前を聞いた考助は、予想外のことに目を丸くして驚くのであった。
前々回の報告の結果、いよいよ表立って動き始めました。
そして、見つかったという新しいアイテムとは何か!
・・・・・・次回へ続く。(すいません。終われませんでした)
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