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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5章 帰還

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(8)事故?

 プロスト一族の成り立ちをシュレインから聞いた考助は、少し考える様子を見せてからさらに問いかけた。
「シュレインはプロスト一族の歴史が鍵になっていると考えているみたいだけれど、具体的にはなんだろうね?」
「・・・・・・どういうことじゃ?」
「うん? いや、だって、長老と初めて会ったときに、言うべきことは言えたんだよね? ・・・・・・だったら、ほかになにかあると考えないとおかしいんじゃないかな?」
 もし、長老に伝えた内容が鍵になっているのであれば、すでに考助たちが帰るための条件が揃っていないとおかしいはずだ。
 だが、クラーラから聞いた話では、まだその条件が整っていないので時間がかかるということだった。
 となれば、考助の質問は当然のものとなる。
 とはいえ、ほかに思い当たるものが無かったために、シュレインは言葉に詰まったような顔になった。
「ほかに、か。と言われてものう・・・・・・」
 シュレインとしては、長老に伝えたことが最大限の話せる内容だったのだ。
 あれ以上具体的に話してしまえば、それこそ時間軸的におかしな状況になりかねない。
 下手につつけば未来が変わってしまう内容のため、変に具体的なことは言えないのだ。

 勿論、考助もそれはわかっているので、首を左右に振った。
「いやいや、そうじゃなくてね。・・・・・・ああ、なるほど。そういうことか」
 そう言って突然納得したように頷き始めた考助を見て、シュレインは首を傾げた。
「コウスケ・・・・・・?」
「ああ、いや、ごめん。シュレインの話を聞いて、ようやく本当の意味で違和感がなんだったのかわかったよ」
 考助は、そう前置きをしてから、自分の考えを話し始めた。

 シュレインからは、確かにこの里でならなければならなかった理由は聞くことができた。
 だが、それは、あくまでもプロスト一族側からみた理由であって、決して考助やシュレインの事情からではない。
 そもそも、考助たちが過去に来る羽目になったのは、水鏡と錫杖の暴走(?)があってのことだ。
 いくらそんな状態だったとはいえ、単にプロスト一族を助けるためだけにこの場所と時間を選んだとは思えない。
 というよりも、むしろ錫杖を使っていたシュレインのために、ここに飛んできたのだと考えるほうが自然だ。

 シュレインは、そこまで聞いたところで考助の話を止めた。
「ちょっと待つのじゃ。ということは、この錫杖は、吾のためにここに来たというわけかの?」
「最初は暴走だと思っていたんだけれどね。どうもいろいろ話を聞いていたら、違う気がしてきたんだよね」
 考助もここに飛ばされた当初は錫杖が暴走したために、こんな過去に飛んできたのだと考えていた。
 だが、これまでの状況とシュレインからの話を聞いたいまとなっては、むしろ暴走でもなんでもなく、錫杖が選んでここに来たのではないかと思えるようになってきた。
 ちなみに、考助とミツキは、無理やりに紛れ込んできたイレギュラーな存在だ。
 ただし、考助は錫杖を作った張本人であるため、シュレインと同じ扱いになっているというわけである。

「――というわけで、シュレインが本当の『答え』を見つけられないと、元の時代には戻れない・・・・・・と思う」
 考助がそう言うと、シュレインは呆れたような視線を錫杖へと向けた。
「なんじゃ。ということは、この錫杖は吾のためだけに、これだけ盛大なことをやらかしたというわけかの?」
 元の時代では、神々さえ巻き込んでの大騒ぎになっているというのに、これが事故ではないとなれば、とてつもなく迷惑をかけていることになる。
「まあ、シュレインのためだけ、というところは微妙だけれどね。おおむね間違っていないと思うよ?」
「なんというか・・・・・・いろいろと申し訳なくなって来たんじゃが・・・・・・」
 シュレインは、本気で頭を抱えたくなってきていた。

 だが、それに対して考助は、首を左右に振った。
「いや、別にシュレインのせいというわけじゃないからね? それに、今回の件で無事に戻ることができれば、次からは騒がれなくなる思うよ?」
「なんじゃと・・・・・・? というか、次じゃと?」
 まだ解決もしていないのに、いまと同じようなことが起こると示唆する考助に、シュレインは思わず顔をひきつらせた。
「シュレイン。その錫杖はあくまでも道具だからね。特に、変に悪意とかも感じていない、というよりもシュレインのためにことを起こしている以上、また同じようなことが発生すると考えるのが普通だと思うよ?」
 道具というのは、あくまでも使用者を助けるための物であって、製作者がよほどの悪意を持って作らない限りは危ない状況にはならない。
 勿論、世の中には神器などの例外はあるが、少なくとも考助は錫杖をそんな危ない道具としては作っていない。
 ここでも道具は使う者次第ということが当てはまるのである。

 そこまで考助の話を聞いたシュレインは、はたと考えたくない事実を思いついてしまった。
「もしかしなくとも、この状況になったのは、吾が望んだからということは・・・・・・?」
「いや、さすがにそれはどうかな? さすがに考えすぎ、だと思うけれどね」
「そうか、それは良かったの」
 考助の答えに、シュレインは思わずホッとため息をついた。
 さすがにこの状況を引き起こしたのが、自分のせいだとは思いたくなかったのである。

「ちょっと話が横道に逸れてしまったけれど、とにかく、この時代にきたのがシュレインのためだとすれば、さっきの考えはずれているということになるね」
 シュレインが考助に話した歴史は、繰り返しになるがあくまでもプロスト一族の側から見た恩恵である。
 となれば、シュレインにとってのなにかメリットのようなものが無ければ、元の時代には戻れないということになる。
「言いたいことはわかるのじゃが・・・・・・こんな時代に吾のためになることなど、あるかの?」
 そういって首を傾げるシュレインに、考助はなんとも曖昧な表情を浮かべた。
「あー、うん。やっぱり気付いていない・・・・・・というか、自覚していなかったんだ」
「なんじゃと? ということは、コウスケはもうなにか思いついているということかの?」
「うん。まあ、なんとなくは」
 これまでの里でのシュレインの言動を見ていれば、錫杖がなにを見せたかったのかは推測できる。
 問題なのは、いまのシュレインの態度を見てもわかる通り、彼女自身がそれに気づいていないことだ。

 考助の返答に、シュレインは驚きと悔しさが混ざったような顔になった。
 話の流れと考助の言葉から、それがなんであるかは自分で思いつかないと駄目だということがわかったのだ。
「といわれてもの。本当に、なにも思い浮かばないのじゃが・・・・・・」
 しばらく考えた漏らしたその言葉は、シュレインの完全な本音だった。
 いままでもさんざん色々と考えて来たのだから、改めて今更自分のためになることと言われても思いつくはずがない。
 どうして考助が思い付けたのか、逆に不思議だった。
「うん、まあ。シュレインにとってはそれ(・・)が当たり前すぎて、気付きにくいのかもね」
 自分が手助けをして直接言っていいのかわからずに、考助はあえて言葉を濁してそう答えた。
 その顔には、答えを言えないもどかしさのようなものが浮かんでいた。

 その考助の顔を見たシュレインは、再び真剣な表情で悩み始めた。
 考助がそう言っている以上、自分の中になにか答えがあるのは間違いないのだ。
 しかも、考助はその答えが鍵としてほぼ間違いないと確信しているように見える。
 これだけのヒントをもらえたのだから、あとは自力で答えを見つけるべきだということは、シュレインもよくわかっているのであった。
いままでさんざん事故だと言っておきながら、こんな流れになりました。
あとは、シュレインが答えを見つけるだけです。
これまでの話でパラパラと言ってきているので、皆さんにはもうわかっているでしょうか?w
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