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松伏銀河の事情 ~隠し事~

【作者より】

このお話は『杜坂東の事情』のサイドストーリー、小話的なものです。

読まなくても大体の話は分かりますが、読んでおくと物語がより楽しめる……かもしれません。


尚、今回は終始松伏銀河視点となります


本文は以下から始まります。


-----------------------


この学校には、いじめがある。それは、俺の友人である佐藤でも、支援クラスにいる丑満時でさえ、誰もが知っている事だ。

そして佐藤も丑満時も、いつ、何処で、いじめの標的にされるか分からない。そんな学校。

だが、佐藤でも丑満時でも知らない『現実』がある。

――それは。



「……またか」

俺は自分の机の中に入っていた手紙の文を読み、溜息を吐いた。

机には『死ね』『調子のんな』などの文字。

そう。これが、佐藤も丑満時も知らない事。俺は、所謂『いじめ』にあっているのだ。

佐藤にバレる前にと、俺は自分の机の落書きを丁寧に落とした。

落とし終えると、俺は再度手紙の文を読み返す。

『お前が本当は女である事を知っている。バラされたくなければ金持ってこい』

「……くだらん」

そう呟いて、俺は手紙をなるべく小さくちぎってゴミ箱に捨てた。


――俺が本当は女なんじゃないかという噂は、男子生徒の間では有名だ。

知らないのは、支援クラスにいる男子生徒陣と、佐藤くらいじゃないだろうか。

女子生徒からはそんな噂を耳にした事がない。知らないのか、関心がないのか――それとも。

ある男子生徒に理由を聞くと、「身長も低い方だし、声変わりもしていないからそんな噂が流れる」んだと。

……ただ、噂に対する否定はしなかった。否、出来なかった。


何せ、その噂は、『事実』だからだ。


これは佐藤にも丑満時にも、誰にも話していない事だが、俺は本当は女である。

しかし、うちの家系は『子供は男の子しか認めない』という、普通じゃ考えられない家系だった。

そんな中、女である俺が生まれてしまった事で、両親は恐らく物凄く焦ったのだろう。

女が生まれてしまった。どうする? 何処かに捨てるか? そんな事出来ない。じゃあどうするんだ。……と、こんな具合に。

結果、俺は『銀河』と男のような名前を付けられ、幼い頃から『男』として育てられてきた。俺も、幼い事は「自分は男なんだ」と信じて疑わなかった。

だが、俺はある日知ってしまったのだ。自分の本当の性別を。自分が『女』であると。

だが同時に事情も知ってしまった為、両親を責める事も出来ず、結局自分はこれまで『男』として生活してきたのだ。

勿論不便な事はある。着替えやトイレは特に不便だ。

だが、そうしなければならない。そうしなければ、どうなるか分からないのだ。


多分俺は、これからも『男』として生き続けるのだろう。

『いじめ』や、『噂話』に、耳と目を塞ぎながら。


そしてそれは、『佐藤光輝』も、『丑満時真梨恵』も、『坂杜様』も。

一生、知る事はないだろう。


【松伏銀河の事情 ~隠し事~ 完】

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