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怪異妙奇譚伝 作者:Kt

壹譚目

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 もう何が何だか……

 目の前では刀を持った少年と不思議な本から魔法的な何かを繰り出す青年が、囲まれた壁を使ってジャンプしたり、駆け上がったりして駆使しながら、得体の知れぬ怪物と戦っている。
 何の躊躇いもなく、ただ冷静に。平然と。

 少年は壁をよじ登っていく。あっという間に怪物よりも高い位置へ。
 そこから、足を壁に食い込ませるように勢いをつけて、さらに高く跳ね上がる。

 「これでもっぉ——」空中を飛ぶ少年は、怪物の頭上に。

「くらえってんだぁっ!」

 重力による加速を利用し、怪物の頭めがけて思いっきり刀を振る少年。すると、怪物は顔を庇おうと、右腕を犠牲にする。
 刀が食い込む。怪物は再びこの世のものとは思えぬ呻き声を上げ、倒れた。



 再び静寂が訪れる。

 「っしゃぁ!」破ったのは、一回転しながら地面へ着地した少年。

 俺と青年のいる位置から怪物を挟んだ向こうにいた。
 少年は肩に刀を置きながらこちらへ歩いてくる。

「思ったより楽だったぜ〜」
 怪物を背にしてから、満面の笑みを浮かべる少年。

 だが、少年を覆う影が後ろで静かに——

 「イチ、まだだぁ!」青年が叫ぶ。

 少年は立ち止まり、次の瞬間目を見開いた。背後の気配に気づいたのだろう、急いで振り返る。だが、返り切る前に怪物の手の甲がもろに少年の体へ。

 勢いよく斜め上へと殴り飛ばされた少年の体は、ビルよりも全然高く飛び上がり、放物線を描きながらビルの向こうへ消えていった。

「まずいっ!」

 青年は急いで本を開き、怪物に手を向けて何か唱えようとする。
 「くっ!」囲んでいる壁を利用し跳ねて移動する怪物に照準が定まらないのか、青年は手をあちこちに向ける。

 そして、ビルの上まで登った怪物はどこかへ去っていってしまった——



 俺は呆然としていた。状況が全く飲み込めず、何が起きていたのか理解できなかったからだ。

 すると、突然ピコンと音が聞こえた。
 ビクッとしながら手元を見てみる。どうやら俺の手が録画停止ボタンに触れていたみたいだ。

 顔を正面に戻すと、こちらを見ていた青年と目が合う。

「出てきていいですよ」

 室外機裏から出て、緑の本をバッグの中にしまっている青年の元に駆け寄る。

「あ、あのー……」

 とりあえず安否確認を。

「い、一緒にいた少年はっ!?」

「あぁ。大丈夫ですよ」

 えっ?

「だ、大丈夫なんですか?」

 あんなに飛ばされたのに?

「それよりも、32歳なんですよね?」

「はい……そうですけど——」

 それよりも、なんだ……と心で呟く。

「やっぱり……」

 青年は眉をひそめながら呟く。
 やっぱり?
 それも含みのある嫌な言い方。

「あのやっぱりって一体——」

「ただいまぁ〜」

 あの声っ!
 俺は慌てて振り返る。

 向こうからボキボキと首を鳴らしながらあの少年が歩いてきている。

 本当に生きてた……

「アイツ意外と強かったわ。イテテ……」

 刀を持った右肘を押えている少年。

「あっ、擦りむいてるっ。
 チクショ、怪力過ぎ。イカれてんだろ」

 いやいや——ビルを越える程の力で殴り飛ばされたんだから、擦りむいたぐらいで済んだ君のほうが……

 「ったく……」バッグから絆創膏を取り出し、「ほら見せて」と促す青年。

 「ん」少年が手を外す。
 血が出ているところを包括的かつ綺麗に貼る青年。

「これでよしっと。
 油断は禁物っていつも言ってるだろ?」

「まさかあそこまで体力が残ってるとは思わなかったんだよ。
 それによー……」

 俺が2人の掛け合いを見ていると、メガネの青年の方が俺に気づき、
「ちょっとイチに見て欲しいものがあるんだけど——」
 と、一旦会話を中断させた。

「何?」

「この人……」
 青年は少年にそう促す。

 少年は俺の前に立ち、まじまじと顔を見てくる。

「いくつ?」

 「いくつ?」頭の整理がまだつかず、言われたことをそのまま返す。

「年齢っ」

「さ、32ですっ」

 少年も青年と同じく眉をひそめたが、「あーあー」とすぐに眉が上がる。

「あの……何がそんなに?」
 俺は訊ねる。

「お前、アイツに寿命吸われてんだわ」
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