短編・童話集

六月の中頃、梅雨のはじまりの朝。 ひどく雨が降ったその日、通学路を歩くぼくに突然助けを求めてきたのは、それまで決して関わりのなかった優等生のクラスメイト、黒羽つぐみだった。

山に生活を支えられている男は、ある日の帰り道に、口の利けない子どもと出会った。 身の上のわからないその子を我が子として育てることにした男に、運命の夜がやってきた。

幼い頃、ぼくの住んでいたアパートからは隣の家の窓が見えた。 ある日、その窓の向こうに同世代の女の子を見つけた。手を振ると、彼女も振り返してくる。それだけの交流を続けていたのだけれど。

男は科学者で、そしていま、世紀の発見をしていた。光速を超える方法を見つけたのだ。その発見のことは、男はしばらく、秘密にしておくつもりだった。しかし論文をまとめたその夜に、事件が起きた。

わたしは冬の妖精のユキ。 その日は冬の終わりで、冬の妖精が眠りにつく日だった。妖精たちは、ねむりのくすりを飲んで、一年間の眠りにつくの。 だけど好奇心旺盛なわたしは、他の季節のことを気にしていて、ねむ//

事件が起こった。 同級生に杉浦という、男前のやつがいる。 彼とデートに行けるチケットを、クラスメイト間のオークションに出品していた私だったが、そのチケットが盗まれたのだ。 犯人は誰だ。

十四歳のその少女は、ロボットだった。本人はそのことを知らなかったが。 人間として育てられ、自分が普通の人間だと思い込んで生きてきた彼女の望みは、『夢を見ること』だった。

宇宙の帝王は美食家だった。うまいものには目がない彼の千回目の誕生日を祝おうと『一番の美食を用意した者に、望むものは何でも与える』催しが開かれることになった。 そこに目をつけた悪党がいた。

ギャンブルに狂った男はある日、右手の小指がない、美しい婦人と出会った。 指を失った理由をたずねた男が聞いたのは、婦人が賭け事に狂う夫を止めるために行った『指を賭けるギャンブル』の話だった。

お小遣いの足りないぼくは、奇妙なバイトをはじめることにした。 配達業と説明されていたそのバイトには、どうやったって説明できない、不思議な現象が関わっているらしかった。

わたしの身になじみのない妙な感覚が生まれたのは、彼氏にフラれ、そして髪の毛を伸ばしはじめてからだった。 不思議なことに、伸ばしたわたしの髪の毛は、他人の位置を感じ取ることが出来るらしかった。

チョコが嫌いなぼくは、バレンタインデーの朝、あることを思い出そうとしていた。 片思い相手の白村あずさに、『チョコ嫌い』の話をしたことがあったっけ？ その日に限っては、とても重要なことだった。

心やさしい時計がいました。その時計は頼まれるとつい、時間を動かしてしまうのです。 時計の友達に、小さな女の子がいました。女の子はある日、時間を動かして欲しいと、時計にお願いしたのでした。

女には夢があり、それは死者の意識を受け入れるシステムの完成だった。死者たちはそのシステムの中で、いつまでも安楽に暮らすのだ。 自ら『天国』と名付けたそのシステムを、女はその日、起動した。　

大学の講義がなかったその日、ぼくは娘に出会った。 だけどぼくは結婚しておらず、そもそも彼女すらいない。 そんなぼくの元に現れた娘は、タイムマシンに乗って過去へとやってきたらしかった。

少年・ネルポーツは祖父の残した自宅で、たった一人で暮らしていた。 変わらぬ日々を過ごすネルポーツはある日、家の前に見知らぬ少年が倒れているのを見つけた。 その少年は珍しい、羽の生えた人だった。

ある女性が、夜、空を見上げていた。 空には動く二つの光があった。やがて二つの光は重なり、一つになった。 その不思議な光の正体を、彼女の夫は知っていた。

小さな少女が、夕暮れの迫る公園で泣いていた。母の指輪を勝手に公園に持ち出し、そして失くしてしまったのだ。 帰りたいけど帰れない、そんな少女の元に現れたのは、制服姿の不思議な女の人だった。

男は酒が好きだった。だが、肝臓を壊し、医者でもある妻に、酒を止められてしまった。 酒は飲めない、しかしどうしても飲みたくてたまらない、そんな男が見つけた解決方法は、『夢の酒』だった。

男はアストラル体になっていた――つまり、幽体離脱をしていた。 その現象が『夢の一種』と考えた男は、モノをすり抜けることができるその体で、親しくしていた女の部屋に忍び込もうと思い立った。

理科の授業の最中に、少女はその落書きを見つけた。 「この時間はいつも退屈だ。誰か相手をしてくれないかな」 まったく同じ気分だった少女は、その落書きの相手をするために、机に文字を書きつけた。

伊藤真理子はわたしの親友で、そしてちょっとおせっかいな女の子だ。 校内で『幸運の女神』と呼ばれている彼女が持っているのは、単なる幸運なんかではなく、普通の人間にはない、とある力だった。

ぼくの友人、高野尚子は女子高生のくせに競馬をやっていた。 そしてぼくにはまったく興味のない競馬だけど、彼女が言うには、ぼくは『競馬に絶対勝つ方法』に関わっているらしかった。

ぼくはその日、大好きな女友達の佐倉（さくら）に渡す、ホワイトデーのプレゼントを探していた。 以前にぼくからの告白を断ったことのある彼女が好きなものといえば、「甘いもの」だった。

その夜、男は押し入れの中から、子どもの頃遊んでいたおもちゃを発見した。 はるか昔に作られたその通信機は、同じ通信機を使っている人としか通信が出来ない。 長い夜の戯れに、男は、もう誰も使っていないはず//

ある日の昼休み、友人の杏子が「面白いもの」を持ってきた。 その「面白いもの」とは、人形が入った箱だった。

誕生日の朝に、彼は恋人からプレゼントをもらった。 そのプレゼントの箱の中は、からっぽだった。

絵本作家の友人は、毎日夢を見ていました。 そんな彼女がある日出会ったのは、夢を食べる動物でした。

ある日、目を覚ますと、自分の髪の毛に噛んでいたガムがからまっていた。 長い髪の毛を切りたくなくて、美容師の姉をわたしは呼んだ。

男はいつもヒットマンに狙われていた。 その日、男はあるヒットマンを返り討ちにし、その素顔を改めた。 ヒットマンは、美人だった。

少し前まで、売れない小説家だったぼく。 しかし今では、なぜか売れてしまったヘンテコなエッセイ本で大忙しだ。 そんな日々の暮らしの中、妻は毎日ヒマそうにしている。 そしてその事件が起きたのは、退屈だ、//

ぼんやりとしていて、静かなクラスメイトがいる。 彼女の名前は水原美紀子。 ある日、ぼくは彼女の意外な一面を知ってしまった。 実は彼女、めちゃくちゃ歌がうまいんだ。 なのにどうしてか、それを認めようと//

帰省中の車の中で、男は「超足が速い人」に出会った。

子どもの頃の一時期、ぼくはお母さんとうまくいっていなかった。 嫌われたんじゃないか、と思っていた。 そんなある日、ぼくは知らないお姉さんから「やさしい花」の種をもらった。 その種を育ててみると、芽を//

金森歩美はいわゆる「ドジっ娘」だ。 そしてぼくはその幼なじみ。 バレンタインデーの近いある日、そんな彼女がぼくを呼びだした。 チョコの味見をして欲しい、という話だったけれど……。

泉はわたしの友人で、わかりやすい女の子だ。 彼女はわたしたち共通の友人である、神田という男子が好きだ。 そして神田も泉が好きだ。 なのに二人の仲は、なかなか発展しない。 その原因は主に、泉の奇妙な振//

かえるがかえるになったとき、かえるは自分の探している何かを見つけに、旅に出かけた。

プロ野球選手のその男は、プロでやっていく自信を失っていた。 そして男はバットを持った老人と出会った。

高校球児のぼくには、心臓病を患っていた兄がいた。

男はワールドシリーズの勝負を分ける打席に立っていた。 そしてそのとき、タイム・クエイクが起こった。

空の国の女は地上を目指した。 あくなき知を求める彼女は、まだ何も知らなかった。

ある日、彼女はラブレターを受け取った。 そしてそれは、彼女に宛てたものではなかった。

大学生の頃、美貌の友人がいた。 そして彼は少女に恋をした。

人類はポータブルＸを生み出し、亜空間の活用をはじめた。 それが人類の未来を担うとも知らずに。

少年たちは空を飛ぶことができる。 だがその力は、いずれ消え失せる。

孤独な老女の作るぬいぐるみは、どういうわけだか、生命を持つかのごとく動き出す。

四歳のある夏の夜、眠った彼女は十四歳になっていた。 そしてその夜、眠った彼女は再び四歳に戻っていた。 そんな奇妙な二重生活を送る彼女に、ある運命が襲いかかる。

女が男に恋をした。 そこには、腕の悪い恋の天使が関わっていた。

心を読める超能力者「リスナー」が語る、「テレパス」と「リスナー」の違いと、人の心の明るい側面について。