↓ ↑ページトップへ

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

潮待ちのレール ― 夕立の縁側 ―

あらすじ
薄暑の茶の間で、相沢湊は人が考えきれないままでも、宿の生活のぬくもりの中から日々へ戻っていけることを見た。
第十七作『夕立の縁側』では、そのさらに先として、宿の内と外がもっとも近く触れ合う場所――縁側が前景に出てくる。

縁側は、庭のように外へ開かれているが、完全な外ではない。
茶の間のように生活に近いが、完全な内でもない。
そこでは、夏の手前の湿りや光、にわかにやって来る夕立の気配、雨を待つ空の重さが、人の気持ちや言葉の置き方に直接触れてくる。
人は縁側で、部屋の中へ戻りきる前の顔になり、外へ出ていく前の顔にもなる。
つまり縁側は、春口の宿における**“天気の変わり目を人の時間へ受け渡す場所”**だったのである。

澄江の記録や聞き書きを辿るうち、湊と汐里は、澄江が夕立の来る日の縁側をとくに大切にしていたことを知る。
雨の前に人が何を黙るのか。
雨音が来たあとで、誰が少し楽になるのか。
濡れた庭を前にすると、どんな声が低くなるのか。
澄江はそうした“天気が人に触れる順番”まで見ていたのだった。

湊はここで、父にもまた、茶の間で日々へ戻るだけでなく、そのあと縁側で夕立を前に少し黙り、ようやく自分の中の重さを天気へ預けるような時間があったのではないかと考え始める。
そして汐里もまた、茶の間のぬくもりを知ったその先で、縁側に入る風、雨の気配、夕立の音の深さを、その日の人に合わせて扱える人へ変わっていく。

『夕立の縁側』は、宿の中で最も気象に近い場所を通して、人が言葉にならない重さを、夏の手前の雨へ少し預けていく時間を描く巻である。
庭、門、客間、廊下、茶の間を経たあとで、春口の宿が“天気まで人の時間に変えてしまう場所”であることが、静かに明らかになる。
Nコード
N5746MF
シリーズ
潮待ちのレール
作者名
たむ
キーワード
キーワードが設定されていません
ジャンル
純文学〔文芸〕
掲載日
2026年 10月05日 15時00分
最終掲載日
2026年 10月13日 15時00分
感想
0件
レビュー
0件
ブックマーク登録
0件
総合評価
0pt
評価ポイント
0pt
感想受付
受け付ける
レビュー受付
受け付ける
※ログイン必須
誤字報告受付
受け付ける
※ログイン必須
開示設定
開示中
文字数
25,278文字
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから

同一作者の作品

N5999KQ| 作品情報| 連載(全381エピソード) | ホラー〔文芸〕
―人の闇に、妖(あやかし)は映る。だが、影を作るのは、いつも人間だ。 現代日本。 都市の片隅でひっそりと探偵業を営む男――城戸蓮司(きどれんじ)・35歳。 過去のある事件をきっかけに、“人には見えぬもの”にも目を向ける//
N9366LH| 作品情報| 連載(全304エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
灰が降っていた。 まるで天が、ひとつの名家の終焉を弔うように。 ヴァルステッド家の紋章は、炎の中で静かに崩れ落ちる。 罪は知らぬ。だが罰だけが与えられた。 まだ幼い少女の瞳に、赤い世界が焼き付く。 忠臣は断末の声を上//
N3490KZ| 作品情報| 連載(全343エピソード) | 童話〔その他〕
春、夏、秋、冬――四季の移り変わる日常の中で、子どもたちは小さな冒険を繰り返します。 学校の教室や校庭、図書館、公園、そして家やおばあちゃんの庭まで、身近な場所での発見や遊び、挑戦が次々と描かれます。 それぞれは独立し//
N8480MM| 作品情報| 連載(全61エピソード) | ローファンタジー〔ファンタジー〕
王国の片隅で暮らす青年、レイン・アスターには、幼い頃から他人には見えないものが見えていた。 誰もいない墓地で話し続ける老人。 焼け落ちた屋敷の窓から、毎晩外を眺めている少女。 古戦場で、終わったはずの号令を繰り返す//
N6430KV| 作品情報| 連載(全436エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
ピザ屋でバイトしていた青年・相川レンは、ある日、店の業務用オーブンに頭を突っ込んだ瞬間――異世界へ転移してしまった! 魔法とモンスターが当たり前のこの世界に、「ピザ」という料理は存在しなかった。 だが、食った者を虜にす//
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。