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十年分の献立を書き置いて参ります~あなたが「家事くらい誰でもできる」とおっしゃったので~

あらすじ
十年間、誰にも褒められなかった。

子爵夫人イレーネは夫の屋敷を支え続けた。 保存食の仕込み、献立の設計、帳簿の管理。 すべてを一人で担い、すべてを当然だと扱われた。

ある晩、夫が愛人を食卓に連れてきた。 家事くらい誰でもできる、と夫は言った。 イレーネは泣かなかった。 微笑んだまま、離縁を申し出た。

三晩かけて十年分の献立表を書き残した。 月ごとの仕込み、祭事の料理、封蝋の温度。 書けることは全部書いた。 書けないものだけが、自分の中に残った。

塩を三つまみ。 その三つまみは、イレーネの手の大きさでしか量れない。

荒れ果てた実家の農地に帰ると、土は五年分の固さで迎えた。 母が遺したレシピノートと、竈が一つと、鍋が一つ。 それだけを手に、もう一度台所に立つ。

隣領から来た寡黙な農政官は、五年前の領主会議でイレーネの保存食の瓶を見たと言った。 封蝋の仕方を覚えていると言った。 理由は語らなかった。

毎朝、畑に水桶が置かれている。 誰が運んだのか、イレーネはまだ知らない。
Nコード
N5148LW
作者名
秋月 もみじ
キーワード
女主人公 西洋 ハッピーエンド 貴族 ざまぁ 離縁 溺愛 恋愛
ジャンル
異世界〔恋愛〕
掲載日
2026年 03月06日 12時03分
最終掲載日
2026年 03月06日 12時04分
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