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名前のない十二冊を書いた妻の話

あらすじ
四年間、私は義母の名前で物語を書き続けた。

伯爵家に嫁いだリディアの仕事は、義母の代わりに小説を書くこと。 構想も、台詞も、一文字残らず自分の手で紡いだ十二の物語。 けれど表紙に刷られるのは、義母の名前だけ。

侍女はいない。 食事は厨房の隅で一人。 月の小遣いは、紙とインクを買えば消える額。 それでも書き続けたのは、自分の言葉がどこかの誰かに届いていると信じたかったから。

ある朝、夫が言った。 お飾り妻は用済みだ、と。

泣かなかった。 代わりに、十二冊分の初稿ノートを日記帳と偽って持ち出した。 義母は中身を確かめもしなかった。

実家に戻ったリディアが手にしたのは、亡き母の書斎と、父が婚姻契約に忍ばせていた一行の条文。 そして、ある編集長が三年前から抱えていた、一つの確信。

義母の本を読んだ人間のなかに、文体の正体をずっと探し続けていた者がいる。

代筆者がいなくなった伯爵家の書斎には、白紙だけが積まれていく。 自分の名前で最初の一行を書いたリディアの指先は、震えていた。

それが恐れだったのか、別の何かだったのか。
Nコード
N5082LW
作者名
九葉(くずは)
キーワード
女主人公 西洋 貴族 ざまぁ 婚約破棄 ハッピーエンド すれ違い 溺愛
ジャンル
異世界〔恋愛〕
掲載日
2026年 03月06日 11時08分
最終掲載日
2026年 03月06日 11時09分
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