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天国・地獄・大地獄  作者: 瀬良浩介
第二話「高遠アキハ」

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02-20

天国・地獄・大地獄 第二話「高遠アキハ」


ただいま毎日〈月〜金のみ〉鋭意連載中!!

「【(カルマ)】はな、生前に犯した罪が形になったもんや」


 怪物は、その筋骨隆々な肩が壁や靴箱に当たらぬよう、上半身をすくめて肘を膝の上に乗せる。


「嬢ちゃんなら『穴』や。もう思い出しとると思うが、ここに落ちてくる前、つまり生前、なんか『穴』に関することで後ろめたいことないか?」


 アキハには大いに心当たりがある。

 おばあちゃんを埋めた『穴』。そして橋から飛び降りた谷底も、ぽっかりと空いた『穴』のようだった。


 アキハは、告解を迫られているのかと勘違いし、チラリと怪物に目をやった。


「ああ、別に無理して言えっちゅうんやない」


 怪物は大仰に両手を顔の前で左右に振った。


「ワイかて、こんなナリやけど元は亡者や。ただ落ちてきたんがあまりにも昔で、もう生きとった頃なんて覚えてへんのよ。聞いといて答えれんの不公平やろ」


 つくづく、社交性の高い怪物であった。アキハとは正反対の、気の()くタイプ。


「ちなみにワイの【(カルマ)】は、亡者の【(カルマ)】をひとつだけ模倣(もほう)できる」


「模倣って、コピーだっけ」


「せや。ちなみにさっきのロープの【(カルマ)】の男な。生前に片思いした女の部屋に忍び込んだあげく、無理やり首吊り心中したらしい。そういうんが【(カルマ)】として現れるんよ」


「あ」


 おぞましいストーカー殺人の話だったが、アキハには閃いたものがあった。


「なんや」


「だから、ロープ二本までなの?」


 怪物は怪訝(けげん)な表情をする。


「ああ、男と女の二本か。確かにそうかも。って、あれ?ワイさっき、二本しか出せないって説明したっけ?」


「いや、アッシを助けてくれた状況から、そうかなって」


 怪物はただでさえ大きな瞳をさらに大きくしてアキハを見つめた。たじろくアキハ。


「なに」


「いや、なかなかの洞察力やと思て。すごいわ」


 怪物は右手の親指と人差し指で顎をさすりながら、しげしげとアキハを見つめる。


「嬢ちゃん、名前は?」


高遠(たかとお)アキハ」


「アキハか」


 怪物はひとつ(うなず)き、両手で膝を叩いて音を鳴らした。勢い余って肘が靴箱にあたる。


「よし、決めたで!

 あ、ワイは牛鬼(ぎゅうき)。牛の鬼や。よろしゅう」


「ぎゅうき」


 アキハは復唱しながら納得した。

 怪物ではなく鬼だった。地獄に鬼か、なるほど。


「アキハに提案があるんやけど」


 鬼の提案とは何か、アキハには見当もつかない。鬼といったら、亡者を痛めつけ(いじ)めぬく存在ではないのか。


 そんな地獄の獄卒が亡者アキハにする提案、それは。


「ワイの代わりに、鬼にならんか?」


「アッシが、鬼……?」



第02話「高遠アキハ」・了

第三話「山吹サチ」へつづく……


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https://x.com/Koh_Serra

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