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迷宮探索紀行 ~世界一の高層ビルが鬼畜ダンジョンになったらカオスすぎた~  作者: 結城 からく


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第83話 背後の脅威

(ったく、やはりこうなったか)


 殺された二人を眺めつつ、俺は胸中で盛大にため息を吐いた。


 銀行員は荒い鼻息で、神経質そうに死体を睨む。

 次に俺達へと拳銃を向けてきた。

 手を上げろなんて言っていたが、どうせ助けるつもりなんてないのだろう。

 ここで全員を殺して、自分一人だけが逃げ出す気らしい。


「さっさとしろよ! 撃ち殺されたいのかァッ!?」


 銀行員は苛立ちを隠さずに言葉を重ねる。

 引き金には指がかかっている。

 ちょっとした弾みで発砲しそうだった。


 俺は両手を上げつつ、嘲りを込めて鼻を鳴らす。


「やめとけよ。ここで暴走する奴なんて、碌な死に方をしないぜ?」


「う、うるさい! 勝手に喋るなァ!」


 銀行員が即座に発砲したので、俺は片腕で防ぐ。

 弾丸は鱗に阻まれてどこかへ飛んでいった。

 命中した箇所を確かめるも、特に傷は残っていない。


 俺は片手を振って笑ってみせる。


「おいおい、危ねぇな。もうちょっとで脳味噌をぶちまけるところだった」


「くっ、気色悪い魔物野郎が!」


 今度は胴体を狙った射撃だ。

 俺は甲殻部分で的確にガードしてみせる。

 腕に僅かな衝撃が走るが、やはり痛みと言うほどではない。

 生身の肉体にさえ食らわなければ問題なかった。


 視線や構え、銃口の角度から着弾箇所は予測可能だ。

 これくらいは造作もない。


 相手は荒事にも慣れたエージェントだが、俺はそれ以上の経験者である。

 幾多もの死線を、実力と悪運で切り抜けてきた傭兵だ。

 いくら優秀とは言え、この程度の男に撃ち殺されるほどヤワじゃない。


(このまま近付いて殺すか)


 俺は銀行員の射撃を凌ぎながら思考する。

 挑発のおかげで、ターゲットは俺に固定されていた。

 ミアナやイーサンが狙われる兆しはない。


 このまま弾切れに合わせて接近し、そして叩き殺す。

 実に簡単な作業である。


 新たな生存者は全滅することになるも、まあ仕方ない。

 イーサンは悲しむだろうが、これが追い詰められた人間の本性だった。

 その醜さは彼も理解しているはずだ。


 銀行員を注視する俺は、銃口の動きから意識を逸らさず、殺害に向けた一歩を踏み出そうとする。


 その時、何か妙な音を鼓膜が捉えた。

 鳥の羽ばたき――それを何十倍にも大きくしたようなものだ。

 時折、ガラスが軋んで割れる音も混ざっていた。

 踏み締めるような音だ。

 心なしか熱気も感じられる。

 それらはすべて銀行員の背後から発生していた。


 やがてヘリポートの端から黒い影が現れる。

 這い上がってきたのは、血を滴らせるドラゴンであった。

 ドラゴンは全身が傷だらけで、顔面の鱗が剥げて肉が抉れている。

 頬が破れて、折れた牙と歯茎が露出していた。

 両目も潰れたままである。

 鼻が小刻みに動いていることから、嗅覚を頼りに行動しているらしい。


 俺は乾いた笑いを洩らした。

 上げたままの両手で指差しつつ、銀行員に忠告してやる。


「……おい、後ろを見た方がいい。ゆっくり、落ち着いて、振り向くんだ」


「下手な演技はよせ! 騙すつもりなのは分かっているッ! 隙を見せたら襲いかかってくるつもり――」


 俺の言葉を信じない銀行員は、引き金を引こうとする。


 刹那、ドラゴンの片腕がその身体を鷲掴みにした。

 破滅的なパワーで握り潰すと、放り投げて口でキャッチする。

 ドラゴンは口内からグロテスクな残骸をこぼしながら、憐れな銀行員を噛み砕いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] ……え゛? うぞっ? 生きてたのかあいつ…… トニーが獲得したはずのせっかくの称号がおあずけか……。 それにしても、銀行員(のふりした奴)…
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