第49話 生存者の拠点
招かれるままに俺達はバリケードの向こうへと入る。
僅かなスペースの端には扉があった。
男の手で開かれたそこは、どうやらスタッフルームらしい。
雑然とした室内の中央部には、床に穴が掘られている。
覗き込むと梯子が設けられていた。
梯子は複数のフロアを跨いで続いており、底が見通せないほどに深い。
俺は感心しながら男に尋ねる。
「この先が拠点なのか?」
「ああ、フロアを貫いて安全地帯を確保しているんだ」
「そいつはすげぇな」
他の生存者達も色々と工夫を凝らして、モンスターの脅威を防いでいるようだ。
俺達は梯子を使ってフロア下へと向かう。
五つほど下ると、そこから瓦礫だらけの通路を一列になって進んでいった。
「しばらく足元が暗くなる。転ばないように気を付けてくれ」
薄暗い通路は照明が破損し、目を凝らさなければ先が見通せない状態だった。
所々にバリケードや罠が張られている。
現在は解除されているものの、モンスターの侵入も想定してあちこちをリフォームしているのだろう。
装飾からしてここもカジノフロアのようだが、その面影はかなり薄れていた。
殺伐とした雰囲気は紛争地そのものである。
「迷宮の構造改竄は、専門の魔術師にしかできない。このグループに所属する術者は、かなり優秀と見ていいだろう」
「なるほどな……」
ミアナによると、全域に結界も張られているらしい。
かなり緻密に構築されているようだ。
魔術師がどんな奴か知らないが、少なくとも生存者達と上手く協力できているのだろう。
そうしてグループ全体を守っている。
「ところで、君達はどこの階から来たんだ?」
「最上階付近のスイートルームさ。それなりにハードな道のりだったよ」
「なるほど……さすがは傭兵だ。我々はこのフロアからの脱出に難儀しているというのに」
男が褒め言葉と同時に嘆く。
どこか心労の窺える声音だった。
「進路にヤバいモンスターでもいるのか?」
「それもあるが、我々は大所帯なんだ。フロア間の移動もままならなくてね」
男は即席バリケードの脇を抜けながら言う。
「まだそんなに生き残りがいるのか」
「君達のように少人数で動ける方が珍しいと思うよ」
「確かにそうか」
モンスター達は油断ならない強さを持つ。
ゴブリンでさえ危険なのだ。
どこから襲われるか分からない状況で、一般人が相手をするのは骨が折れるだろう。




