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迷宮探索紀行 ~世界一の高層ビルが鬼畜ダンジョンになったらカオスすぎた~  作者: 結城 からく


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第16話 迷宮惨事

 それにしても、異世界人との戦いは新鮮だった。

 何年も戦場を渡り歩いてきた俺だが、全身鎧の騎士と殺し合うことなんてなかった。

 なんとも素晴らしい体験だったと言えよう。


 銃を持つ俺は、剣や槍と比べればリーチで優位である。

 ただし、戦いの舞台はスイートルームや廊下が主だ。

 したがって絶妙に間合いが取りにくい。

 近付かれると今度は俺が不利に陥ることだって少なくない。


 弾丸の通じないモンスターよりはマシな気もするが、彼らの技量も決して侮れなかった。

 凶暴化によって単調になりがちであるものの、それでも直撃すれば致命傷だ。

 こうして無傷でいられるのは、今までの経験のおかげだろう。

 新人時代ならとっくに殺されている。


 騎士との戦いにも慣れてきたが、やはり気を抜くことはできない。

 今後、魔術師も登場するかもしれないからだ。

 ミアナを見て分かる通り、 連中は何をするか分からない。

 彼女から基礎的な知識は学んだものの、やはり完全とは言い難かった。

 不意の魔術攻撃には注意を払うべきだろう。


 武器の点検を終えた俺は、テレビの電源をつけた。

 リモコンを操作してニュース番組に切り替える。


 そこには別の迷宮が映り込んでいた。

 上空からの中継だ。

 どうやらヘリコプターから撮影しているらしい。


 外国のテーマパークが丸ごと変貌していた。

 返り血塗れ着ぐるみが駆け回り、鉈を掲げて人々に襲いかかっている。

 パーク内のクルーだろうか。

 迷宮の精神汚染により、モンスターの一種になってしまったようだ。


 ゴブリンの集団が屋台を破壊し、ポップコーンやチュリトスを貪っている。

 そばには解体された人間が転がっていた。

 食べ残しのように散らかっている様子を見るに、味が悪かったのかもしれない。


 そこから東のエリアでは、ジェットコースターが倒壊していた。

 巨大な粘液が密着して、端から溶かして捕食している。

 キッチンにいるミアナが「スライムだ」と解説を入れてくれた。

 強力な個体になると、都市一つを呑み込むほどに肥大化するらしい。


 パーク全体が阿鼻叫喚の様相を呈していた。

 小声で罵倒は、おそらくカメラマンのものだろう。

 あまりにも凄惨な光景を前に堪え切れなかったらしい。


 その時、地上で一つ目の巨人が動き出した。

 黒に近い褐色肌で、腰巻きだけを身に着けている。

 額からは角が生えていた。


 巨人はヘリコプターを凝視すると、近くにあった自動車のレプリカを掴む。

 そして、台座から引き千切るように待ち上げて、勢いよく投げ飛ばした。


 カメラマンの焦る声がした。

 パイロットに何事かを叫ぶも、迫るレプリカが命中する。

 轟音に次ぐ爆発音を経て、中継が途切れた。

 映像はスタジオへと戻される。


 沈痛な面持ちのキャスター達が映るのを見て、俺はテレビの電源をオフにした。


「ハハ、最高だなこりゃ」


 俺はリモコンを置いて嘆息する。

 煙草を吸おうとして、もう一本もないことに気付いた。

 舌打ち混じりに空箱を握り潰して捨てる。


 報道ヘリは無断で敷地内に侵入したのだろう。

 きっと視聴率を求めての中継だ。

 上司から命じられて急行したに違いない。

 他人事だが、気の毒だと思わざるを得なかった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >外国のテーマパークが丸ごと変貌していた。 ……つい思い浮かべてしまった。 著作権に厳しい某黒いネズミが「ハハッ!」と笑いながら鉈を(以下自粛) [一言] 続きも楽しみにしています!…
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