第12話 非常階段の魔物
小鬼は全部で七体いた。
踊り場で人間を解体しながら、下卑た笑い声を上げている。
なんともスプラッターな光景である。
悪趣味と言う他ない。
「大した歓迎だな。感動で涙が出そうだ」
俺は小声で皮肉を洩らす。
隣ではミアナが杖を構えていた。
彼女は目つきを鋭くして小鬼達を睨む。
「ゴブリンだ。単体だと弱いが小賢しい。奇襲に注意しろ」
「分かっているさァ!」
俺は軽く跳ぶと、階段の手すりに着地した。
そのまま滑り落ちつつ、金属バットを振りかぶる。
すぐさまゴブリンが短剣を突き出してきたので、金属バットでガードした。
甲高い衝突音が鳴り響く。
ゴブリンは大した腕力ではなかった。
勢いだけで戦いの素人らしい。
俺は短剣を振り払うと、手すりからジャンプした。
そこからゴブリンの顔面に蹴りを浴びせると、着地しながら拳銃を三連射する。
反撃しようとした三体のゴブリンを撃ち殺した。
「残りは四体」
俺の呟きと同時に、ゴブリンが真正面から棍棒で殴りかかってきた。
そこに金属バットのフルスイングを見舞う。
顔面を粉砕されたゴブリンは、血飛沫を上げながら吹っ飛んだ。
壁にぶつかると、踊り場を越えて下の階へと転がり落ちていく。
「ハハッ、ホームランだ!」
俺は落下するゴブリンを嘲笑う。
その間に、残るゴブリン達が取り囲んできた。
彼らの姿を見た俺は、嬉々として襲いかかろうとする。
「トニー・ヴァーナー、動くな」
上方からミアナの声がした。
直後、雷撃が飛んできて三体のゴブリンを正確に貫く。
一瞬にして焼け焦げたゴブリン達は白目を剥いて、黒煙を吐きながら倒れて絶命した。
俺は金属バットを下ろすと、振り向いてミアナに尋ねる。
「今のも魔術かい?」
「そうだ。攻撃魔術も一通りは習得している」
ミアナは杖を手に頷く。
他にも様々な魔術を扱えるらしい。
詠唱を要する点は少し面倒だが、破壊力を考えると妥当だろう。
それどころかオーバースペックなほどである。
俺はゴブリンの死体を踏み越えて階段を下り始めた。
その際、ミアナを称賛する。
「さすが異世界の魔術師様だ。頼りにしているぜ」
「……そうか」
ミアナは少々の間を置いて反応した。
微妙な表情だ。
不機嫌になったのかと思いきや、頬が少し赤らんでいる。
どうやら照れているらしい。
かなりクールな学者肌だが、意外と褒められ慣れていないようだ。




