おまけ
〈魔王一家のお散歩〉
「子ども達~、お散歩するよ~」
キティがそう言うと、どこからか子ども達がわらわらと湧いてきた。
「は~い、みんな後ろ向いてね」
キティの呼びかけで子ども達は素直に両親に背を向け、横一列に並ぶ。
「さあ取り付けてくよ~」
キティは子ども達にある物を取り付けると、最後に自分も夫に背中を向けた。
「ジーク、どうぞ」
「ああ」
いつも散歩している丘に着くと、ジークハルトは抱えていた子ども達を芝生の上に下ろした。
「皆、あまり遠くには行くなよ」
「「「「「は~い」」」」」
子ども達プラスキティは元気良く返事をすると、それぞれ好きな方向に歩き出した。その背中からは迷子紐が伸びており、その先を辿っていくと、全てがジークハルトの手の中に行きつく。
「とーさま! すすめない! こっちきて!!」
「おれもすすめね~!」
「と~さま~!!」
子ども達の背中から出ている紐はピーンと伸びているので、これ以上はジークハルトが動かないと前に進めない。そのジークハルトは若干戸惑った雰囲気を出しつつその場で立ち止まっている。
「……皆同じ方向に歩いて行ってくれ……」
ジークハルトが小さな声で呟く。
それを傍から見ていたレオンは思わずといった様子で突っ込んだ。
「……犬の散歩か!」
「レオン、それは思っていても言っちゃいけませんよ」
〈初孫バンザイ〉
産声が聞こえてきた瞬間、リンドヴルムは部屋に飛び込んだ。
「生まれたの!?」
「生まれたよ~」
ベッドには未だ汗を浮かべているキティが横になっていた。その隣には魔法で綺麗にされた赤子が寝かされていて、大きな鳴き声を上げている。
「叔父上、この子を抱いてやってくれ」
キティの右手を握ったままジークハルトがそう言う。産後のキティに回復魔法をかけているのだろう。
リンドヴルムは小さくて脆い存在を抱いた瞬間、堪えようのない涙がブワッと込み上げてきた。
「うぅ、かわい゛い゛!!」
「パパさま、鼻水出てるよ」
リンドヴルムのあまりの感極まり具合に、部屋がクスクスとした笑いに包まれた。
〈新米パパの悩み事〉
「……なんで俺の顔を見ると泣き出すんだ……」
ジークハルトは自分の腕の中で泣き喚く我が子を見下ろす。
魔王様の最近の悩みは我が子に泣かれてしまうことだった。
「ジークの顔が怖いからじゃない?」
キティはあっさりと言い放った。ジークハルトが微かにショックを受けた顔をする。
「……顔、怖いか?」
「とんでもないイケメンさんだけどジークは笑わないからね。キティと笑顔の練習しましょ~」
「……ああ」
ジークハルトはコクリと頷くと、グスグスと泣いている息子をキティに手渡した。
キティは手慣れた様子で我が子をあやす。
「お~よしよし、パパこわいね~」
「キティ……」
ジークハルトはキティの言葉に何とも言えない表情をした。
キティはあっという間に息子を寝かしつけると、ジークハルトの頬を両手で挟んだ。
「ジークは表情筋が固いんだよね。キティちゃんが揉み解してあげよう」
「……ありがとう」
ムニムニと自分の頬をいじるキティに、ジークハルトは素直に礼を言った。
暫くジークハルトの頬を揉んだ後に雑談をすると、キティはあっさりと寝に入ってしまった。育児の疲れが溜まっているのか、キティは最近寝落ちすることが多い。
ジークハルトは優しくキティを抱き上げ、息子の隣に寝かせた。
二人を見降ろす自分の顔が優しい微笑みを浮かべていることに、ジークハルトはまだ気付かない。




