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双子になった私たち  作者: 四月三日
3/10

第三話 っふう、スッキリした……

 ほとんどの物語において、新しい住人が加わったときには都合よく両親が仕事などで家を空けていたりする。もしくは、物置にしていた部屋があってその部屋を空けたり、不思議な道具で不可思議に部屋数が増えていたりと、部屋の問題は物語に関係なく解決される。

 私の家の場合。

 一階は二つ分の部屋がつながった広さの居間がある。二階には、両親の部屋、私の部屋、明の部屋そして部屋ではなく物置……押入れがあるだけ。

 つまり

 光瑠が新しく入れる部屋がないわけなんだよね。

 そしてその本人は

 もとは私だったわけでもあるから私の部屋で暮らしていた記憶があるわけで……


「やっぱりこうなるよね……」


 私は一部屋にしては大きめの自分の部屋の中心、左右の壁にそれぞれ置かれたベッドの間で項垂れていた。その片方、青を基調としたベッドの上に座る光瑠は苦笑いをする。


「母さんのことだからわかってはいたけど、既になってたかー」


 呑気に笑ってるけどあんたはいいわよね。同い年の女の子と同じ部屋でっ。女の子はいろいろ大変なのに!だいたい、いきなり弟ができたとか訳の分かんないことになっているのに!同じ部屋!?ギャルゲーの主人公かってのあんたは。


 うん、ごめん。ちょっと荒れてしまってた。

 でもこの言い分はわかってほしい。いきなり同い年の男の子と同じ部屋とか……一緒に育った実の双子でも高校生(になる前だけど)ともなれば、違う部屋のはず。

 実際、(柊)お姉ちゃんと(樹)お兄ちゃんは別々の部屋だし。


 とかいろいろ言っててもこの結果は変わらないんだよね。うちのお母さん一度決めたらぜったい変えないし。

 まあ、いいか。人間諦めが肝心、女は度胸、っていうしね。それに、自分になんて欲情なんてしないでしょ。襲われる心配はないんじゃないかな。


「いつまで落ち込んでんだ、あんま薄着でいないでほしいんだが」


 光瑠の反対側、私のベッドの上からそこそこ大きめの枕を顔面向かってフルスイング!! っふう、スッキリした……このバカっ!



 ◇◆◇◆



 男として、同じ部屋にたとえ血がつながっていようと(実際はDNAまで同じなんだが)一つの部屋に同い年の女の子が暮すとなればそれは、新男子高校生としてはつらいものがある。

 それが恋人同士ならまだいいだろう。

 俺の場合は。


 目の前でがっくり項垂れている光璃を見る。

 肩に少しかかるくらいの黒髪は男だった頃とは違って細くさらさらしているし、小学生の時よりは大きいが、男の俺より小さい手してるし、服で隠れてわかりにくいけど手足や腰回りは細いし、なんかいい匂いしてくるしっ。

 いろんな意味で身の危険を感じるわ、これ。

 だから、


「いつまで落ち込んでんだ、あんま薄着でいないでほしいんだが」

 

 っと言ったら、ふらふらと立ち上がった光璃は自分のベッドへ。わかってくれたかと安心したのも束の間、顔面に衝撃がした。そのあと枕が飛んできたとわかったが、同時に枕も当たり具合によってはめちゃくちゃ痛いことが分かった。わかってしまった。

 おまけというかなんというか、枕の衝撃で俺の上半身はベッドを横断したもんだから、その後ろ、壁に後頭部を激突させた。痛い。



 ◆◇◆◇



「あー、うん。それはお兄ちゃんが悪いねー」

「でしょ!?やっぱり明もそう思うよね?」


 枕をフルスイングしてそのまま明の部屋に直行した私は、ことのままを話した。

 時間は夕刻。光瑠はお母さんが(なぜか)買ってあった荷物を片付けていてその間に私は明の部屋に入り浸っていた。


「でも、お姉ちゃんだってお兄ちゃんの言ったことわかるでしょうに」

「う……そ、それは……ま、まあ、少しくらいは……」


 確かに。昔男だったから、だけではないけど光瑠の言いたかったことはわかる。冬を過ぎ、だんだんと暖かくなりつつあるからと、少しずつ肌が見えるような服装になっている。でも今日は部屋着だし、まだまだ寒い日もあるし……


「それにお姉ちゃん一部を除いてスタイルいい上に、体のラインが分かりやすい服着るもんね」


 腕を組んで胸をこれでもかっ、というくらいアピールしてくる。だから、余計に腹が立つ。中学生のくせに。私よりも年下のくせに!


 そうなのだ。明は体全体は割と小さいほうで、顔も子供らしさを残している。それなのに、胸だけは私よりもあきらかに大きい。それは、明が中学生のわりに胸だけ成長しているのに加え、私の胸が、ち……あまり成長が著しくないからだ。

 元男として胸はあまりなくてもいいとは思っていたけど、これはいかがなものか。他がしっかり成長している分バランスが取れない。これもイケメンと呼ばれる所以なんじゃないかと思う。


「とりあえず、お兄ちゃんのデリカシーは置いといて、」


 いや、それ置いちゃダメでしょ。


「枕を全力で投げたことは謝ったほうがいいよ?」

「う……ぐ……」

「いくら女の子の力で相手が男の子とはいえ、顔は痛いよ、顔は」


 それはそうだ、だれであろうと顔に当たれば痛い。そのことをつかれた私も痛い」


「くだらないこと言ってないで、謝るついでにお風呂くらい一緒に入ってあげたら?」


 へ?


「あれ?口に出て……って、はぁ!?」


 今さらっとありえないこと口にしませんでしたか、この妹は。

 そのとき一階から声がした。


「そろそろご飯だから、降りてきて手伝いなさぁ~い」

「は~い」

「いや、ちょ……明っ!? 待って……え?」


 私の引き留めもむなしく、明は部屋から出て行った。


「…………降りよ」


 明の部屋の電気を消す。

 答えの出ない問題は、とりあえずは後回し。

 

 いや、でもお風呂って……。

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